異世界に勇者としてTS転生させられたから常識通りに解決していくと、混沌化していくのは何故なのでしょうか?   作:ひきがやもとまち

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久し振りに書きたいように書きまくったRPGあるあるネタ回です!やはり世界観が複雑化しちゃうとこういうのがやり辛いですからね! 舞台変えたのは正解だったと今では自負しております!書き上げるまでは不安で一杯でしたけども・・・。

何はなくともRPGネタテンコ盛り(予定)の東大陸編スタートです。


第27章

 敵からの襲撃によって知り得た魔王の陰謀(発端は魔王さんの戦略ミスによるものでしたが)それを未然に防ぐため(と言う建前のもと)長くもなく短くもない航海を終えて陰謀渦巻く東側大陸へと到着した私たち。

 

 船が寄港地としている東大陸の港町カレッカにて、はじめて来た町の定番である住人たちから話を聞きまくっての情報収集をしていたところ。

 

 

「きゃー! カワイイーっ☆ セレニアさんって意外とミニスカートも似合ってたんですね! 次はコレ着てみてくださいよ! コ・レ♪」

「いやいやメガミ殿。普段は素っ気なくて冷たいけど偶に優しいセレニア殿にはギャップが魅力となり得るもので御座る。

 然らば常のイメージからは想像もできないようなファッションこそ、セレニア殿には似合っているかもしれぬで御座るよ!?」

「わたくしは是非ともセレニア様には、ネコミミスーツとウサミミスーツをお勧めいたします。小さくて可愛らしい女の子には年相応の格好がもっとも相応しく似合うものですから」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 ・・・・・・何故かは知らねど服屋さんでファッションショーを開催させられておりました。本当に、何故にどうしてこうなった・・・・・・?

 

 

「あの、みなさん? 情報収集のほうは・・・・・・?」

 

 私からの弱々しい嘆願は、圧倒的女子力の前では無力でした。

 

「えー? だって女の子だけで海外旅行してるんですよ? ふつうに考えて海外に来たら現地の服屋さんで珍しい服見つけて騒ぐのが女の子旅でしょ~?」

「そうで御座るよセレニア殿。如何に冒険者と言えど、拙者たちは年頃乙女。普段は荒みきった生活を送らねばならぬ身の上だからこそ、太平の世の中では女子らしい嗜みを楽しまなくてはならぬ義務があるので御座るよ」

「うふふ、やはり市井で生きるふつうの女の子としての生活は楽しいものですわね。女の子が戦わなくていい平和な世の中とは本当にすばらしいものです」

 

 

 魔王軍と戦っている最前線から遠く離れた後方地域。

 平和な風景、平和な町並み、平和な日常生活。

 それらを見た数時間後にはすっかり平和ボケに染まりきってしまった現代日本人ーーーの私以外の異世界人と女神様方。

 

 平和・・・・・・恐ろしい子!!!

 

 

 

「結局買わされてしまいました・・・・・・」

 

 私たちって、この大陸に何しに来たんでしたっけ・・・? つか、私って何のためにこの異世界へ転生させられたんでしたっけか・・・。

 

「まぁまぁ、セレニアさん。たまにはいいじゃないですか、こう言うのも。冒険者にだって勇者にだって休息は必要不可欠というものですよ♪」

「然り然り、まさしく持ってその通り、メガミ殿も偶にはよいことを言うで御座る」

「うふふ、本当にそうですわね。似合っていますよ? セレニア様♪」

「うー・・・・・・」

 

 まさか本当に「足がスースーする・・・」だなんて、スカート穿かされた女体化主人公の定番セリフを口にしたくなる日が訪れるだなんて・・・。屈辱です・・・。

 

「・・・しかし、これ、思ってたよりずっと動き辛い履き物だったんですね。足の可動範囲そのものは何も穿いてないのと変わらないのに、一応は穿いているという認識と知識の違いで感覚が狂ってしまいそうですよ」

「・・・・・・その感想を口にするスカート穿かされた女体化主人公には出会ったことありませんでしたね、女神である私でさえも・・・」

「神様が全知全能ではないという、よい証左となって良かったじゃないですか? ガンバって精進してください、女神様。前に進むことを止めてしまった生き物には停滞と衰退しか待っていませんのでね」

 

 お店で買って、そのまま着て帰らされてしまった私のミニスカート姿。いったい、誰得なんでしょうね、この無様な醜態姿・・・。

 

 

 そんなこんなで姦しくも女子らしい(元男が混ざっていますけど)女の子オンリー冒険者パーティーが観光していたところーーーー

 

 

 

 たったったったった・・・・・・・・・・・・

 

 

 ーーーーーばさぁっ!!!

 

 

 

「あっ」

 

「やったぁ! お姉ちゃんのパンティ純白だぁ!」

 

 

 ・・・走ってきたお子様にスカートめくりをされてしまいました。

 

「あ! こら、マセガキ! 私のセレニアさんが穿いてるパンツをただ見したのに逃げる気ですか!? 待ちなさい! 逃げるんだったら金払えやコラーーーっ!!!!」

「へっへーんだ! 油断していた方が悪いんだよーっ! 悔しかったら捕まえてみろベロベロバー!」

 

 アッカンベーをしながら背中を前に向けた状態で走り去っていく器用な少年。

 

 ・・・子供の頃にクラスメイトがやっているのを見たことあった気がしますが、まさか自分がやられる側に立つ日がこようとは・・・・・・。

 

 

「・・・・・・軽い自己嫌悪に陥ってしまいそうです・・・」

「「なんでっ!? スカートめくられた被害者の側でしょあなたは!!」」

 

 

 認識を共有できない女の子と、元男の子。ジェンターの違いって難しい問題ですよね。

 

「ーーってぇ、こんなことやってる場合じゃなかった! あの色ガキを取っ捕まえて縛り首にしてやらなければ! 早く追いかけましょうセレニアさん! 処刑台を見下ろしながら飲む極上の美酒があなたを待っています!」

「・・・どこの独裁者なんですか? 女神様の中に君臨している私の姿って・・・」

 

 あるいは民が苦しむ姿を見て悦しむ暴君。どっちにしても、なりたくねー。

 つーか、そんなことよりも何よりも(と言うほどでもないですが一応重要)重大なことが起きていますので、そちらの方を優先しましょうよ女神様。

 

「別にいいじゃないですか、スカートめくられてパンツ見られるぐらいなら。ミニスカート穿いて戦闘すれば必ず見えてしまうもんなんでしょうし、穿いてるからには無視して然るべき問題でしょう?」

「世に五万といるミニスカ服美少女戦士たちを愚弄する気ですかセレニアさん!?」

 

 しませんて。つか、元男が女としてパンツ見られて恥ずかしがってたら、それはそれでイヤでしょうに。むしろ、男のパンツなんか見せられて喜んでいた少年の不幸を哀れむべきだと思ってしまう私はTS転生勇者のセレニアです。

 

「まぁ、その件は一先ず置いときまして・・・・・・財布を盗まれてますね。おそらくはさっきの少年がスカートめくる際にスっていったのではないかと」

「・・・・・・は?」

 

 (゜д゜)ポカーンとした表情をされる女神様と違い、ヨヨ姫様は「ああ」と手を打ち理解を示してくれました。頭脳労働ができる人が増えるのは良いことです。

 

「職業:盗賊としての『盗む』スキルですわね。・・・なるほど、平和な大陸においては冒険者として魔物と戦う盗賊の需要は少ないというわけですね・・・」

 

 彼女の言葉に私は大きく頷いて賛意を示し、「だと思います」と声にも出して表明しました。

 

「少なくとも敵モンスターと戦ったりダンジョン探索で役立つよりかは、この手の犯罪行為に手を染める人達の方が需要の多い職業でありスキルと言う認識なのでしょう。

 戦闘やダンジョン探索などのクエストが少なくなると生活が立ち行かなくなるのが冒険者の背負っている宿命ですからね。こう言った仕事で虎口をしのいだり、子供たちにスキルを教えて盗賊ギルドを結成したりとかも平和な大陸では有り得ることではと」

「・・・戦わなくていい世の中で、魔物対策用の冒険者が犯罪に走ってしまうだなんて・・・思っていたより平和とはずっと怖くて、難しいものだったのですね・・・」

 

 しんみりされてしまったヨヨ姫様。・・・この異世界って、こういう話をするタイプのファンタジー世界観でしたっけ?

 

「ーーいや、だからそうじゃなくて! スカートめくり犯! そして泥棒! この二つが揃えば追いかけてって罪を償わせるのが正しい大人の在り方ってもんでしょう!?」

 

 女神様が熱い口調で主張されますが、どうにも私たち残っている三人はこの件について淡泊にならざるを得ません。

 

「・・・そうは言いますけどね、女神様。実際に私が油断していたのは事実であり、ミニスカートを穿いていながら油断してしまった時点で責任の半分は私にも生じてますし、必ずしも少年だけを責めるというのはいささか酷ではないのかな、と・・・」

「え」

「『油断していた方が悪い』というのは、ある意味での真理と呼べないこともないですし、無理に断罪するため追いかけるほどではないと私は判断しているのですが・・・」

「え、えええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 驚愕する女神様。

 その後ろでは、現地異世界人の侍少女とプリンセスが「うんうん」と何度もうなずいておられる姿が見受けられました。

 

「左様。まったく持ってその通りで御座る。戦場で油断した側が銭を奪われるなどよくあること。油断しなければ盗まれない程度のザコ盗賊にスられている方が間抜けとそしられても文句はいえませぬ。

 ーーダンジョン内でときおり出会す盗賊系モンスターによる『ひったくり』など、こちらが油断してようがしてまいが一切合切関係なく持ってかれてしまうで御座るからな。あれと比べたらこの程度の罪など、軽い軽い」

「そうですわよねぇー。『盗む』系のスキルを使う盗賊さんの中には、手を触れることなく相手の着ている服や穿いている下着まで盗んでしまえる超ハイレベルの変態シーフさんたちが実在しているのだと聞いたことがありますし、この程度のザコ盗賊スキルぐらいで盗まれてしまったのは、言葉は悪いですけど醜態と呼ぶより他ないかと・・・」

 

 二人の仲間から口々に突きつけられる、異世界西大陸(魔物と戦う前線)での一般常識。

 魔物と戦うことが日常を守る一環となっている『自己責任』の社会において『出来たのにやらなかったから損害を被ってしまった場合』相手が悪いで済ませられるのは既得権益層である王侯貴族と金持ちだけに許されている特権だったりするのでした。

 

 とは言え、油断していから盗まれてしまった相手の醜態が、盗んだ側を正当化するものであるはずないんですけれど。

 

「じゃ、じゃあセレニアさんは物盗まれたときに盗まれた側がバカだったからで済ませてしまえる役立たず探偵みたいな考え方の持ち主なんですか!?

 『騙した方が悪いに決まっている』的な格好いいイケメンキャラっぽいこと言った人の方が悪くて悪だと、そうおっしゃるつもりなんですか!?」

「まさか」

 

 私は軽く肩をすくめて見せてから、西大陸側の倫理観に私流のを織り交ぜてみた感じの論を展開してみます。

 

 

「『騙す人の方が悪い』のは当然のことです。犯罪ですからね。人から物を盗んでおいて相手の油断を正当化の理屈として用いたがる理屈が私にはまるで理解できません。

 あくまで『油断していた方が悪い』と言うのは本人の心がけの問題であり、盗まれた本人の防犯意識が欠如していたことを示す物であるに過ぎません。

 油断していて盗まれた方も悪いですし、油断している奴からは盗んでいい等と犯罪を正当化したがる子悪党さんも当然ながら悪い。

 でも、その悪徳は全く別種の悪です。人の心を裁く法律などあるわけないですし、それは自分自身で自戒し自罰し是正してゆくべき問題点。盗んだことへの法的な罰則とは何ら関わり合いのない事柄ですので、現場に居合わせたときには問答無用で何を言っても聞く耳持たずガン無視して治安維持の担当者の元に突き出してしまえばよいのではと、私はそう考えています。

 ーーですので今回の一件は私の不注意から盗まれてしまったこととして無理して追うことなく水に流し、いつかどこかで彼が再犯をしてしまっている現場を押さえたときには容赦しないという形で収めてしまうのが一番良いのではと愚考した次第です」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

「・・・・・・なんで黙り込むんですか皆さん、返事してくださいよ。話し終えた途端に距離が広がってたみたいで寂しくなるじゃないですか・・・」

「いやまぁ・・・ただセレニアさんはやっぱりセレニアさんなんだなぁと思っただけで他意はないんですよ? 本当の本気で大本気に」

「で御座るなぁ。セレニア殿はどこまで行ってもセレニア殿で御座るからなぁ」

「セレニア様は永久に不滅なのですわね。うふふ、女が愛し合う相手として求める最高の条件に適合していていただけて嬉しく思いますわ♪」

「・・・・・・・・・なんか納得いかないんですけど・・・・・・」

 

 

 そんなこんなで東大陸編スタートです。

 

 

おまけ『東大陸の冒険者事情』

 

セ「本格的な侵攻が行われていないせいで出没する魔物がザコばかりですねぇ・・・。  

 まぁ、そのおかげで兵士の皆さんのレベルが上がらず簡単なザコの討伐まで冒険者に依頼してくれてるみたいですから仕事にあぶれなくて助かりますけど・・・」

 

メ「でも、村の近辺に出没するようになったクマ退治とか、下水道にスライムが大量発生したから駆除してほしいとかの依頼は正直どうなんでしょうかねぇ・・・。

 日常生活に直結しているインフラ保全までもを不確実で不確かな冒険者への依頼に依存できる精神性だけは、ゲーム時代から理解できません・・・・・・」

 

ト「・・・うわっ! なんで御座るか、この依頼!? 『迷子になった私のペットを探して』って、そこいらに張り紙でも張っておけばよいものまで冒険者に依頼するとはこれ如何に!? しかも結構ギャラ高っ! あと、『挑戦者求む!』ってこの依頼なに!?」

 

ヨ「・・・『太古のエルフの呪いで村全体が覚める事なき眠りについてしまった村人たちを助けるために、古代神殿にあると言われる秘薬が必要だ。取ってきてほしい』・・・この国には毎日を歌って踊っているだけで王が果たすべき義務を果たしたことになる法律でもあるのでしょうか・・・? わたくしの祖国である小国でも軍を派遣して国民を助けていましたのに・・・。

 ーー平和になるとここまで他人の手に委ねてしまうものなのですわね・・・本当に平和というのは難しいです・・・」

 

セ「・・・・・・(び、微妙に心が痛いです・・・(T-T))」


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