異世界に勇者としてTS転生させられたから常識通りに解決していくと、混沌化していくのは何故なのでしょうか? 作:ひきがやもとまち
「ふむ・・・・・・」
冒険者ギルドの扉を通って外にでた私は、先ほど受付の人から渡された紙の資料を眺めながら感慨深げに息をつきました。
ふー、ようやっと一区切りつく所まできましたね、と。
「なになに? 何かあったんですかセレニアさーん。水臭いじゃないですか、私にも見せてくださいよ~」
「むむ? セレニア殿が上機嫌とはなんとも面妖な事態・・・。今宵は雨か霙か、はたまた天変地異なのか!? 気になって夜も眠れなくなりそうで御座る故、拙者にも見せてほしいで御座るよ!」
「・・・あななたち・・・」
少しは成長してくださいよ、ようやく一区切りついたんですから・・・。
ーーとは言え、彼女たちが野次馬気分で他人事のように語れるのも無理がありません。
だって実際、他人事ですからね。他人にとってのみ重要な意味のある問題なのですから、無関係な周りの人たちにとっては大部分が他人事で聞き流してもいいお話なのです。
「大したものでもありませんよ。単にジョブランクが上がっていたことを伝えるためのお知らせです」
私はピラピラと紙をつまんで振り回しながら、皆さんにも見えるように書かれている文字についての補足も行います。
曰く、『冒険者ランクが半端な割にスゴい依頼ばかりが押し寄せてきていたため依頼料として含まれていた分も合わせたらジョブランクがひとつ上がるので、手続きをして欲しい』とのことでした。
なので最近だとあんまり来れてなかった冒険者ギルド支部へと出頭し、依頼成功料の引き替え係でもある受付さんに案内していただき各所を盥回しにされた挙げ句に刷新したステータスとスキル表とを記した紙をいただけたと言うわけですね。
私がそう説明すると、お二人からは「あ~・・・」と半ば納得半ば呆れたと言った感じの曖昧な返答を返されてしまいましたとさ。
「そういえば私たちって中堅ランクの癖してご指名依頼ばっかり受けてましたよね最近だと。しかも結構身分高い人たち相手からのばかり。
そりゃランクも上がりますし、ギルドこなくても生活には困りませんよね。パトロンついてるに等しい高待遇ぶりですから。転生勇者のご都合主義万歳」
「しかも国を跨いでの長距離移動ばっかりしていて、一つどころに落ち着いて腰を据えた経験も皆無で御座るからな~。
普通そう言うのは上級以上の冒険者がやるものなので御座るが、拙者たちは拠点となる町すら探したことが御座らぬし横紙破りにも程があるで御座るよな~。・・・・・・ところでテンセイユウシャって何の話で御座るかメガミ殿?」
――ちぃっ! ピンク侍がいつも気にしてなかったことを、今日に限って気にしてきやがった! 誤魔化さなければ!
「・・・・・・ま、其れは一先ずおいておくとしまして。私の新しいジョブ名とステータスとスキル表です。詳しくご覧になられますか? 一応は個人情報ですので詳細は別の紙に記されているんですけど?」
最近だと忘れられがちですが、冒険者は基本的にアウトロー集団であり「農家なんてつまんない仕事を継ぐのはウンザリだ! 俺にはもっと相応しい仕事があるはずだから都会に行くぜ!」なノリで上京してきた方々がなるのが一般的なイマドキ日本の若者的人たちが多く、それら血の気ばかりが多い経験不足のバカ者もとい若者たちをコントロールして制御するためにあるのが冒険者ギルドの本業です。
要するに、犯罪者の息子さんたちとかを生活保障してあげる代償として軍人になる訓練受けさせて、一般人の代わりに最前線へ送り続けている米軍みたいなものです。
使い捨ての駒にされるけれど成果を出せばそれなりに良い暮らしも送れる。殺されて死んだら終わりと言うあたり、微妙にこの世界の冒険者システムに近いですよね、アメリカの更正プログラムって。
ですので冒険者にとって同業者は、必ずしも味方とは限りません。場合によっては裏切られる恐れは常にありますので野良パーティー組むときとかは気をつけた方がよろしいでしょうし、自分の切り札とかも伏せておくに限ります。知られてなければ対処法も想定外ので切り抜けられるかもしれませんから。
「良いので御座るか? では、早速・・・」
そんな安全保証上とても重要な個人情報を「友達から大切な秘密を教えてもらっちゃった♪」とか言ってキャピキャピして見せる少し前のアホキャラ美少女高校生みたいなノリで受け取り嬉々として見始めるトモエさんに多少ながらジト目をむけてしまう私でしたが、この場にいる後一人だけの女神様も一緒になってご覧になられ出しちゃいましたので私の方が空気読めないアホの子状態です。なんか微妙に悔しい。
ーーーんで、ここからが私の新しいステータスね。まずは出だしから。
『セレニアのジョブランクが1上がった!
職業《指揮官(大尉)》が《指揮官(中佐)》になった!』
「「だからなんだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!」」
お二人絶叫。
美少女二人が満面の笑顔で友達から受け取った紙をみた数秒後の般若の表情うかべて叫び声を上げられたのですから、そりゃ周囲にいる人たちはビックリ仰天するでしょうね当然。ガヤガヤと騒ぎはじめて視線が痛いのですが、騒ぎの中心にいるお二人は気づいてさえいません。これが当事者たちと周囲の人々との温度差と言うものです。
「変わってないじゃん! 指揮官のままじゃん! 単に階級が二つ上がっただけじゃないですか! 二階級特進しただけじゃないですか! これのどこが成長だ! むしろ戦死した人扱いされてるだけなんじゃありませんかねぇ!? つか、ただの昇進だこれ!」
「見たことない名称なので詳しいことは分からないで御座るが、サムライがマスターサムライになれたのとは全く違うということだけは理解できるで御座るぞ拙者にも!
て言うかこれって、どこがどう今までと違うので御座るか!? 『大』が『中』になって下がったようにも見えるので御座るが!?」
トモエさんが意外にも的確な表現をされてきました。ピンポーン、半分だけですが正解です。
「よく分かりましたねトモエさん。昇進(ランクアップ)したことで分かったことなのですが、指揮官は階級があがる度に前線には立たなくなるのでステータス自体は低下していく一方なんですよ。
その代わりとして指揮できる兵数と権限、つまりは攻撃可能となる対象が増えたり攻撃手段が増加したりと言ったメリットがあります。
デメリットとしては先にも言ったステータス低下の他に、同じ能力でも内容に変化が生じてしまって別物に近くなるのが出てきますので試し撃ちや演習が必要不可欠になることぐらいで・・・」
「結構デメリット多いで御座るな!」
「階級が上がるとはそう言うものです。出来ることが増えるのですから、やらなくてはいけない仕事、果たさなければならない義務の数も増加する。
地位に伴う責任の増量は当然の義務ですからね。基本です」
私は当たり前の常識だけを告げて、次へと移ります。ステータスの詳しい変化についてです。
・・・まぁ、詳しいもなにも滅茶苦茶おおざっぱに表現されてるのを一言一句過たずに読み上げるだけなんですけどねぇー・・・。
『セレニアの、知力以外すべてのステータスが低下した!』
「「やっぱりデメリットが多すぎる!!」」
『新たなスキルを覚えた! 今までのスキル内容が変化した!
火縄銃《革新/地獄》が使用不能になった!』
「「滅茶苦茶弱くなっちゃってるじゃん! たった一つの取り柄だったのに!!」」
・・・おい?
『火縄銃を使った新たなスキルとして《ファイエルボール》が使えるようになった!
効果は火縄銃からファイヤーボールを撃ち出せると言うもの。異界の技術が使われてるので魔力を消費しなくても撃てる。
ただし威力はバカ高くなり、一定の火力の弾しか撃てなくなるので使う場所はよく考えること。連射可能』
「「キチガイに大砲(魔弓)!!」」
「・・・お二人とも・・・? いい加減にしないと、私でも怒るときはあるんですよ・・・?」
『指揮官らしく《乗馬スキル》が使えるようになった』
「なんで!? 指揮官がなんで乗馬スキル!? 近代なんでしょ指揮官って職業は!? 騎士団長とかでもないのに、なんで乗馬スキルなんかが!」
「あれ? 女神様はご存じなかったのですか? 太平洋戦争頃まで軍の移動手段は車ではなく馬でしたから、指揮官にとっての乗馬は必要不可欠な嗜みだったのですけれど?」
「つくづく現代じゃなくて近代ですね! この《指揮官》って職業は!」
「まぁ、あれで戦争のやり方が大きく変わったわけでしたからーーーーーって、そうだった。乗馬スキルで思い出しましたよ。
トモエさーん、ちょっとこっち来てくださーい」
「ん? なんで御座るかセレニア殿。ーーーああ、拙者も此度の一見でランクアップを果たしたので奴隷の持ち主として内容を確認しておきたいと・・・・・・」
ガチャン。コション。・・・・・・ポイッ。
「はい、これで首輪はとれましたよ。長い間ご苦労様でしたね。はい、これ。今までの慰労金。長旅お世話になりましたー」
「え。・・・・・・あの、ごめんで御座る。ちょっと意味が・・・・・・・・・」
「え? だって私、貴女のことを馬車を扱う乗馬スキル覚えるまでの御者代わりに雇っていたつもりでしたから、乗馬スキル覚えた今となっては無理に残ってもらう必要性ないのでイヤならお暇しても構わない自由をお与えしようと・・・・・・」
「拙者の存在価値って今までは御者オンリーだったので御座るか!? 残るで御座るよ! 慰留するで御座るよ!
ここまで一緒に旅してきた仲間から御者としてしか思われてなかったままパーティー離脱なんて絶対に絶対にイヤで御座るーーーーーっ!!!
ヤダヤダヤダヤダヤダヤダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
子供のように泣きわめき、歩道の上でジタバタしはじめるトモエさん。
・・・これは明らかに、『奴隷設定があったことすら忘れていた件については』秘密にしておいた方がいいパターンですよね・・・。
いや、悪気があって忘れていたわけじゃないんですよ? ただ、元々の奴隷として買った理由が馬車あっても御者なしじゃ役立たないし、旅の間中使うんだったら専属でないければ意味ないですし、お金で雇って荷物だけ持ち逃げされたりするのは困るので裏切れないし逃げられない御者スキル持ち奴隷を買えるんだったら一番安心できるのにな~とか思っていたところで偶然襲ってきたからという、只それだけが理由だったのでね?
うん、悪気はないんですよ悪気は。本当になかったですし、今でもないです。
設定を忘れていたのだって『思想や理想とは無縁で、純粋に金だけを目的として戦う傭兵。報酬次第で誰からのどんな依頼だろうと請け負う戦闘のプロ』とプロフィールには書かれている人でなし傭兵キャラクターが最初に払った1000ゴールドかそこらで一生ついてきてくれるのがRPGのお約束なわけですから何となく・・・ね?
「あ~・・・、わかりましたからトモエさん。道路の真ん中で転がりまくって駄々こねるのは止めましょう? 通行人の皆様方に迷惑ですから邪魔になっていますから」
「・・・くすん。少しだけ気になっている思い人からの扱いが微妙な上に、拙者自身もこんなのが気になる理由が曖昧になってきたで御座るよ・・・」
「あら、イヤですわトモエ様ったら。そこがセレニア様の魅力の真骨頂じゃありませんか☆」
「「アリシア王女!?」」
・・・・・・また出ましたか、この悪女姫様は・・・。しかも何やらコスチュームチェンジしてパワーアップしているように見えなくもない?
具体的な変化としましては、動き難すぎていたドレス姿が機能的に変化して、動きやすそうなレベルにまで進化した感じなので・・・・・・《武道家のドレス》?みたいな印象を受けなくもない、お上品で清楚な感じの矛盾した姿です。そんな装備は実在しないとは思いますけどね。
ついでに言えばスカート姿ではなくて、緩やかに大きく広がったスカートの下に大きめのズボンを穿いた、何というかいまいちよく分からない格好なのに、上半身がいろいろと綺麗に飾られてるので結果としては清楚でお嬢様っぽく見えている。そんな感じの言葉では言い表し難すぎる複雑怪奇なドレス?もどき姿のアリシア姫様。
・・・本気で職業が何なのか見た目からでは想像できない人になっちゃいましたね~、この人も・・・。
「で? 今日は何のご用なんですかお姫様。私たちこれから新しく上がった能力を試すため、演習代わりに軽く遠征しようかと思ってたんですけれども?」
これは無論、口実にすぎません。厄ネタっぽい人には早々と御退場いただくに限るのです。
「あら、それはグッドタイミングでしたわね。やはりわたくしとセレニア様は結ばれる運命にあったようです。
ランクアップして新たに得た能力を試すのでしたら、是非わたくしも一緒に連れて行ってくださいませ。足手まといにはなりません。これでも職業ランクを上げて強くなりましたから」
「・・・は? え、ちょっと意味が分かりかねるのですが、姫様の就いてる職業っていったいーーーーー」
シュバッ!!!
一瞬後、私の目の前には姫様の握りしめられた拳があり、そこから落下していくのは一匹の蠅。
一国の姫君で在らせられるアリシア姫様は、拳一つで飛んでいる蝿を撃墜できる宮本武蔵以上の格闘家にまで成長されていたようです・・・。
「セレニア様と一緒に旅しながら悪者さんたちを退治できるようになるため、わたくしは精一杯修行いたしました・・・・・・」
目を伏せながら涙ぐみ、今までの辛かった日々を思い出しては胸が引き裂かれる想いがしているようにジェスチャーしてくる王女様。
ですが、右手の位置だけは先ほどと変わらないまま私の眼前から1ミリたりとも微動だにしてくれていませんので単なる恫喝と判定して良いものかどうかの見分けが非常に難しい状況です。
主に、恫喝と判定した場合の後に起こるであろうスプラッタ劇場が原因で。
「セレニア様への想いを捨てきれないでいたわたくしは、寂しさを慰めるために身分を隠して市井を散策し、ガラの悪い殿方に声をかけられても毅然とした態度で臨み、セレニア様に相応しい女として王族の威厳を保ち続けました。
時には悪者さんに捕まってヒドい目に遭わされそうになることだってありましたが、セレニア様を想うわたくしの気持ちに小波ほどの揺らぎさえ生じさせることは不可能だったのです」
「セレニア様から人の抱える事情の違いと、自分と違ってしまった人たちへの敬意をわたくしは決して忘れませんでした。
悪の魔道師に囚われた時だって、国に失望して己の正義を見失っていた黒騎士様にセレニア様から教えられていた『人の評価を決めるときには、もっと長いスパンで見る必要性』について語ることで理解を得ました。
貧乏な農村にすむ農民たちが悪い人たちに脅されている振りをして正義の味方さんを騙したときにだって、『動乱の時代に生きる民衆たちはそうでもしないと生きていけない。状況判断と柔軟性という表現をすれば非難するものではなくなる』の精神のもと、わたくしは民衆たちを擁護する側に立ち続けました。
肉親としての情より国の行く末を取らざるを得なかった父王が、国防の必要性から剣術大会の優勝者にわたくしを嫁がせようとしたのだって『立場の違い』について教えられていた私は甘んじて受け入れました。
その直後、国よりも愛を選んでくれた幼馴染みによって浚われた時にも、父の命令に従い騎士としての義務を遂行するため救出にきてくださった英雄様と幼馴染みの騎士が合い争うことになった時にも『王族の果たすべき責務』として、勝利した方に嫁ぐ運命を受け入れる覚悟は出来ていたのです」
「「「う、うわ~~~・・・・・・・・・」」」
「・・・ですが、わたくしの純愛は同性愛という悪しき文化と誤解され、運命を司る神の呪いをうけることになったのです・・・。
黒騎士様は自らの絶望にこれ以上、人々を巻き込み続けるわけにはいかないと決意して悪の魔道師退治に協力し、その直後に民衆たちの復讐によって倒れられました。
勇者様を裏切った民衆たちも、王位継承権をもたない王女のもつ影響力程度では守りきることができずに全員牢獄行き・・・。
英雄様と幼馴染みの勝負は相打ちに終わり、わたくしは常に一人残され見送る側に立ち続ける悲劇的な運命を背負わされてしまったのです・・・・・・よよよよ・・・」
よよよ、じゃねぇよ。全部お前のせいじゃねぇですか。拳が目の前から動いてなかったら全力でツッコんでいた所でしたよ今のお話、その全てがね。
「当初は悲しみに暮れたわたくしでしたが、やがてセレニア様が残してくれた言葉と想いを胸に抱き、明日に向かって飛び立つことを決意しました。運命に抗い、向き合い、対決し続けることを誓ったのです」
「手始めとして、まず一連の出来事で牢獄行きとなった人々をわたくし自身の手で罰する役を負いました。自分が原因で罪人となってしまった人たちの怨嗟と怒りを一身に受けることにより、他の人たちへ怒りや憎しみが向かうことを避けるためでした。
わたくしは自分が悪者になるために拘束されて身動き一つとれない彼らを、想いを込めた拳で殴り続けました。
『人を殴れば自分も痛いのだ』とするセレニア様がどこかの小父様から聞いたことがあると仰っていた教えの通りに、人を殴れば殴るほど自分も罰せられているのだと信じて信じて信じ続けて、殴って殴って殴りまくって殴り殺し続けたのです」
「やがて王国内にアンデッドが大量発生する事件が多発し、超弩級レベルの無念が数千人分ひとつの場所に密集していた場合にのみ召喚しうる史上最悪の存在『デーモンロード』が魔界より喚び出されたことを知らせる急報が城にもたらされました。
わたくしは自らの犯した罪と決着をつけるため、数千人を殴り殺していく過程で獲得した膨大な経験値と熟練度を武器にしてデーモンロードに戦いを挑みに行ったのです」
「「マッチポンプ! それ、ただのマッチポンプですから! 悲劇口調で英雄譚ぽく語ってますけど、実際には悪魔も真っ青レベルの最悪すぎるマッチポンプに過ぎませんからね!?」」
「まっちぽんぷ?」
「わたくしは悪魔の王と三日三晩の間、休むことなく戦い続けました。
戦って、戦って、戦い続けて、最後の一発で勝利をつかんで勝ち残ったわたくしは、国に混乱を招いた責任をとる形で出奔し、国境間の移動が楽になれるアウトローな冒険者となり、盗賊さんに襲われては浚われて、浚われていった先にある盗賊団のアジトを内部から制圧し血の海へと沈めてから宝物庫に赴き、持てるだけの銀貨を手に入れてから近くの村に盗賊さんたちを退治したことを教えて上げて、貧しい村なりに何かお礼をと言ってくれる心優しい村人たちに元王族として負担をかけまいと丁寧な態度で断りを入れて再度旅立ち、こうしてセレニア様にお会いできるまでの旅費をやりくりしながら参った次第です」
嫌すぎるロバーズキラーでした。見た目がお嬢様っぽくて、胸まで大きくなってるからドラ股さんより性質悪い気がするほどです。
「ドラゴンも跨いで通ると言うよりかは、ドラゴンを股に挟んでくわえ込みそうなドラ股女に急成長しましたね。この外見詐欺お姫様サブキャラ」
「女神様、お下品ですよ」
私も似たような感想を思わなくもなかったのは内緒です。
「今のわたくしが就いている冒険者としての職業は、『人々の血に染まり、怨念によって呪われた武道家』。正確なクラス名を《魔拳士》と言います。
大変に珍しいエクストラジョブで、攻撃時には呪いの追加効果が付与される場合などがありますし、黒魔術系の攻撃魔法と呪殺系の魔法もいくつか使えるようになりました。
決して足手まといにはならないよう努力しますので、どうかわたくしをパーティーに入れて、一緒に連れて行ってくださいませセレニア様。
ーーーでないとわたくし・・・わたくし・・・次は自分が誰を犠牲にしてしまうのか不安で不安で仕方がなくて、あまりの恐怖から思いあまった行動に出てしまいそうで・・・・・・」
「わかりました。わかりましたから、落ち着いてる本音を隠して取り乱してる振りするのは止めなさい。嘘泣きもだめです。指揮官の目はごまかせませんよ?」
「・・・・・・・・・・・・てへ☆」
・・・・・・笑顔と見た目だけは可愛いんだけどなぁー・・・・・・。
「・・・セレニアさん?」
「心の底から反省していますので、どうか今回のばかりはお仕置きはご勘弁を。・・・絶対に償いきれる気がしないほど罪が重すぎるの確実なので・・・」
ここまでヒドい状態にまでなってしまった人は始めて見た気がしますよね。
同じ『乱心王女』ならデスマーチのアリサさんの方がいいのですが、取り替えっこシステムってないんでしょうかね? 通信交換でも可です。
半端なチートが手に入ったばかりの私じゃ手に負えない相手としか思えませんし、この際ロリっ子な全裸に襲われそうになるぐらいなら耐えられます。これと比べたら異世界中あらゆる王女様キャラの誰だろうとマシです、確実に。
「はぁ・・・。とりあえずパーティ全員ランクアップして、今までよりかは強くなったと言うことで宜しいんですよね?
では早速新しい能力の試し討ちのため簡単な遠征クエストをーーーーーーそう言えば女神様の職業ランクは? なんか最初の冒険者就任以来なにひとつ変わったという認識がないんですけど・・・」
「え? なに言っちゃってるんですかセレニアさん。私、神様ですよ?
完全にして絶対的な超越者的存在なんですから、変化なんてするはずないじゃないですか」
「ーーーーーつまり・・・?」
「いくら敵倒しても経験値は得られませんし、ステータスがカンストした状態ではじまる仕様ですから体力も魔力も素早さも上がったり下がったりは致しません。
当然! 知力なんか与える側である私たちゴッドには英知が満ちていますので上げる必要まったく無しなのですよ!!!
知恵の実や生命の実を食べてドーピングしないと、完璧な存在になれない人間なんて下等生物とは物が違いすぎるのです。えっへん!」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
つづく
セレニアたちのステータスが更新されました。
セレニアの職業:指揮官(大尉)=指揮官(中佐)。
入手したチート能力『ファイエルボール』。弾数がチート(無限ではない)。
専用装備品:火縄銃(革新/地獄)=火縄銃(民主革命/怨嗟の子守歌)
注:大佐じゃないのはアニメ版より小説版の方が好きだから。ファースト的に。
アリシア姫の職業:小国の王女=魔拳士。
種族:悪意のない魔性美人=この世すべての絶対悪女。
キャラ名も『ヨヨ』で次から統一します。
トモエの職業:武者修行サムライ=元服サムライ。
女神の職業:この世界が終わろうとも何一つ変わることなどあり得ない。