異世界に勇者としてTS転生させられたから常識通りに解決していくと、混沌化していくのは何故なのでしょうか?   作:ひきがやもとまち

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実は本編23章を書く前には本気でやり直しを検討しており、途中まで書いたところでボツにして本編を書き直したため中途までは出来てた別ルートの「異世界にTS転生勇者」1話目。

折角なので途中までとは言えボツ案として出しとく事にします。
今朝方に更新した本編23勝は1話手前ですので戻って閲覧ください。


ボツ案「別ルート1章目」

 ぴーん、ぽーん、ぱーん、ぽーん。

 

 この物語は前回で区切りよく終われたことと、ストーリーが有って無きが如しなままでは問題あるかもなと危惧した作者により、途中から分岐したと言う形で今までとは別展開に進めさせていただきます。お許しください。

 

 また、どこら辺からどう分岐してという類の方針変更ではなくて、最初の国で何事もなくクエスト終えて次の国へと向かっている途中ぐらいに大雑把なくくりで解釈しておいていただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ?」

 

 私が口の中にあるパンをモグモグと租借し終えてごくんと飲み込み、コップに残っていた牛乳もどきで綺麗サッパリ流し込んだとき、違和感に気づいてお尻の後ろにあるポケットに手を伸ばすとあるべき感触がなくなっていることに気がつきました。ーーいつの間にやらスられてたみたいです。

 

「ふぇ? ほうひはんへふか、ふぇへりあさん?」

「とりあえず、口の中にある物飲み込んでからしゃべってもらえませんか? 女神様。さすがに美少女に見た目でそれは・・・ちょっと以上に辛いです・・・」

 

 特に“元”男としては、ね。

 私の意を汲んでくれたのか否かは分かりかねますが、目の前のハムスターみたいに口を食べ物でいっぱいにしている女性、エロい格好した青髪青目の美少女ハイ・プリーストにして私を異世界に勇者として(拒否権なしで無理矢理に問答無用で)召喚した女神様は口を閉ざしてから黙り込み、超スピードで早送りするビデオ再生みたいな勢いで口の中の物を飲み込み終えると「ふぅ」と息をついてから。

 

「で? どうしたんです? もしかしてお財布でもスられてたんですか?」

 

 ・・・何事もなかったかのように平素と同じ顔で会話を再開しやがりましたよ・・・。どうなっとんねん、女神の肉体構造は。マンガかよ。

 

「ふむ。この賑わいの中で御座るからなー。そういう事をする輩もでてきているので御座ろう。嘆かわしきことに御座る」

 

 隣で蕎麦に似たナニカ(余談ですが地球だと、麺料理の元祖は中国産ではないと言われているそうです)をズルズルと啜っていた黒髪黒目で総髪の髪型している、ピンク色の着物をまとった侍少女(正確には元服前らしいので武家ではあれど制度上は国に出仕して仕えている侍ではないそうです。ジイヤとかに教育されてる若様の中堅階級バージョンでも連想しといてください)この世界で最世に訪れた国で出会って、紆余曲折あった末に刑務所に入れられて出所してきて文無し宿無し一文無しだった所で泣き着かれて、致し方なしにパーティー加入を認めてあげた借金浪人のトモエさんが他人事のように論評されました。・・・給料減らしちゃってもよろしいですかね?

 

「どうやらそうみたいですね。まぁ、大した額が入ってたわけでもないので構わないと言えば構わないのですが・・・」

「入れてなかったんですか? 大金を?」

「夕食食べに訪れただけの屋台へ、大金持ってやってくる人って何です?」

「・・・ま、まぁ確かにそうなんですけども・・・」

 

 微妙すぎる表情の女神様。それでもキッチリご飯を食べる速度だけは落とさない当たりは流石と言えるのでしょう。

 

 

 異世界に勇者として召喚するため、地球での現世で殺されて転生させられた私は(改めて考えてみるとスゴい犯罪臭ですね・・・)最初に訪れた国でのチュートリアルみたいなイベントを消化し終えてから次の国へとやってきたばかりの地点にいます。

 

 具体的にはウォルロ村から旅にでてセントシュタイン城に着いたばかり。あるいは北から訪れたせいで砂漠の城フィガロについたら王城に先に着いちゃったけど、本来ならこっちが先の城下町サウスフィガロの町に着いたところ。そんな感じですかねー。もしくはごった煮した中間点。

 

 次の国に到着して最初に訪れた国境近くの町。これがたぶん一番の大正解。

 

 この町は宿屋が食堂を兼ねておらず、食事は各々が外にでて食べてくると言う西洋様式に統一されてるみたいでして、日本式の“おもてなし”は期待できません。宿屋に泊まれば問答無用で食事が付いてくる日本の古いお宿は世界的に見て少しだけどおかしいのです。無論、良い意味でですよ?

 

 

 宿屋で食事を取るか取らぬか選んでもらうためには、常備されてる広々とした食堂が必要不可欠ですからね。デスマーチの門前宿レベルのスゴい高水準のサービス精神でもない限りは妥当な選択だったと私は高く評価いたします。

 ・・・13歳であのスタイルと美貌を併せ持つチートな看板娘のいる宿と比べられても迷惑なだけでしょうからね・・・。

 

 

「どのみち異国情緒あふれる屋台が建ち並んだ、人並みでごった返してる街の一角です。スリが頻発する条件は満たしているのですから油断してスられて大金取られる方が悪いのですから気にする必要もないでしょうよ。

 ここの払いぐらいは他の箇所に隠してありますしね。問題ありません」

「ほほぉう。流石はセレニア殿、用意周到で御座るな。・・・して、財宝を隠した場所とは何処に?」

「徳川の埋蔵金じゃないんですけどね、私のへそくり・・・。普通に靴の下や靴下の中、服の内ポケットとか裏側とかに縫いつけてあるだけですよ? 別に珍しくもないふつうの隠し場所ですよ」

「・・・なぜに町の吹き溜まりみたいな悪所で暮らすしかない戦災孤児の持つ生活の知恵を、現代日本で暮らしていたあなたが知っているんですかね、セレニアさん・・・?」

「基本です」

 

 復興は日本人のシンボルであり、忘れてはならない心根です。大事にしましょう。

 

 

 

 

 ーーと、言うわけで普通に食事を済ませ、支払いも終えた私たち一行は町の広場を冷やかしながら観光して回っている私たちでしたがーー

 

 

 

 

「退いた退いた! そこ退いたぁぁぁっ!!」

 

 ドンっ。

 

 走ってきた少年に体当たりされてよろめく私に構うことなく「へへーん、トロ臭い姉ちゃんゴメンよぉー!」と言って、そのまま走り去っていく継ぎ接ぎした服を着ている男の子。

 ・・・・・・なんとまぁ・・・・・・

 

「「80年代アニメな・・・・・・」」

 

 異口同音にユニゾンする女神様と私。

 どこかの国のマルコ君みたいな見た目をした少年が、同時代の別作品に登場していたモブキャラ少年と混同されちゃってました。悲しいものですね、世界観の違いって・・・。

 

「・・・いやだから、お主らだけが解せる言語での会話は同行者として止めてほしいと、あれほど申し上げているのに・・・」

 

 置いてけぼりにされてる現地人トモエさん。意味わかんないですよね、当然ですね。

 でも、説明して分かってもらうには途轍もなく時間が必要だろうなと思いますのでパス1で。

 

「あれ? でもセレニアさん、さっき財布スられてましたよね? 新しく買い換えてたんですか?」

「まさか。そんな無駄金は使いませんよ。再発を防ぐ意図で別の物を入れといただけです。ドラマじゃないんですから、スったばかりの財布が本当に財布であるかどうかなんて確かめようとはしないでしょうからね。

 逃げ延びて落ち着いてから中身を確かめようとするはずです。その時に効果があれば御の字かな、と」

 

 スリが主人公のミステリードラマが多い中で、時折見られる意味不明なスーパー無駄テクニック。あれって本当にスリには必要なんですかね? もっと別の仕事に就くのに役立てた方がお得なのでは? 雑伎団とかにでも。

 あと、犯罪者がミステリードラマの主人公の名探偵役って訳わかんね。

 あれはあれですかね?

 名探偵なんて言う存在は仕事ではなく役割につけられてる俗称に過ぎなくて、名探偵としての機能さえ持っていたら問題ないとか言う「王様は国を治めるための機械だ」なセイバーさんの正義論が適用されているのでしょうか? だとしたら杉下さんとかの独善的すぎる自己満足な正義感にも納得がいくんですけども。

 

「それで? 何入れといたんです? まぁ、職業クラス『指揮官』じゃ何も作れないでしょうし、即席で用意できる物なんて大したことないんでしょうけども」

 

 女神様が上から目線の表情と視線を付け加えながら仰られてきました。・・・その通りではあるんですけど、微妙に悔しい気持ちにさせられてしまう私はまだまだ全然、感情を処理できないゴミの如き人間みたいですね。

 

 私は心の中でも肉体的にも肩をすくめて見せながら。

 

「確かに、大した物じゃありませんけどね・・・成果だけではなくて、もう少し努力自体も見てもらいたいと言いましょうか・・・」

「新人サラリーマンみたいなこと言ってないで早く吐いちゃってくださいよ。何入れたんです? 何入れちゃったんですか?

 もしかして爆弾ですか? 爆弾なのですか? もしかしなくても爆弾なんですよねぇ!?」

 

 何故そこまで暑苦しいまでの爆弾プッシュ・・・。紅蓮の錬金術師とか好きそうなタイプですね、この人も。・・・私もなので何か言う資格持ってないのが残念無念です。

 

「子供がスリで戸口を凌いでいるとしたら間違いなく貧乏でしょうからね。百合の根とかの美味しそうな見た目をしているのなら食用に使って飢えを一時だけでも脱しようとするのではないかなーと・・・」

「ああ、なるほど! それは確かにで御座る! あれは我が家でも食した事がありまするが、花に似て根も中々に美味な食べ物になる面妖で不可思議な有り難みのある草花で御座ったなー」

「・・・そういう風に考えてしまう可能性を考えてヒガンバナの根っこを袋の中に入れておきました。百合の根に似ていますが、食べたら危険な毒の花です。

 症状としては吐き気や下痢などが有名で・・・・・・OK、女神様。今回は私が全面的に悪かったので謝ります許してくださいもうしませ(ゴチンっ!)・・・痛い・・・」

 

 心に修羅ならぬ不動明王を宿した女神様の怒りに満ちた正義の鉄拳が、手段を選ばぬ報復攻撃にたいして報いを与えてくれました。正義は守られたのです。良かったですね。

 

「・・・・・・二度目はない。女神は仏と違って三度も人を許さない・・・・・・」

「・・・・・・はい・・・・・・」

 

 謝罪して、二度と毒攻撃を用いないことを誓わされる私です。卑怯な手段を用いる犯罪者には、正攻法たる圧倒的武力でもって思い知らせてやるのが最前の抑止力だと語ってくれているようでした。現代日本人として断固として反対したい思想ですが、勝てないので言えません。

 抗い続けても踏みつぶされて終わりという場合は幾つもありますからね。今回のがそれだったと言うだけのこと。今日も一日平和に過ごせましたとさ。


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