異世界に勇者としてTS転生させられたから常識通りに解決していくと、混沌化していくのは何故なのでしょうか?   作:ひきがやもとまち

24 / 36
最近、レトロゲームにはまっているせいか微妙に原点回帰したいと言う願望から逃れられずに雰囲気だけでも戻してみました。新キャラ(ぽいのが)登場します。

尚、今まで書いてこなかったトモエの設定も(ようやく)解説させて頂いております。


第23章

セ「今話から火縄銃を封印しようと思うんですよね」

め「なんでですか? 数少ないって言うか唯一の取り柄でしたのに」

セ「いや、流石にご都合主義過ぎててチート臭いなーと」

ト「“ちーと”とは何なのかは分からぬで御座るが、正義は拳と刀で語り合うもので御座るよーっ!」

セ・め「「・・・え? あなたの其れ(刀)って・・・抜けた上に使えたんですか・・・?」」

ト「ヒドすぎる!(>o<) 切るどころか抜くことさえ許してもらえない展開は拙者のせいでは御座らぬのにーーーっ!!!(>_<)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近、色々あって疲れてたので(英雄さんとか王女様とかで)少し気楽に異世界旅を満喫しようと思って、目的地を決めずに棒きれ拾って適当に倒して指し示してた方向へ進んでいくGEETな自衛隊の手法で歩みを進めてきたわけですが。

 

 町から出立して三日ほど経った頃に馬車の前へと躍り出てきた方が現れました。

 

「止まれ! そこの馬車! ここで会ったが百年目だ! 今こそお前たちに殺された兄の恨みを晴らしてやーーぐへぇっ!?」

「・・・ん? 今、なにか踏んづけたで御座るかパトラッシュ?」

「さぁ~あ? 私はセレニアさんとお話ししていて見ていなかったですけど、ゴブリンでも現れた途端に倒された系の話なんじゃないですか?」

「馬車の車高って以外と高いですからねぇ。しかも幌馬車だと中から外はほとんど見えませんし、馬の背中って予想を超越してデッカかったりしますし。突然前にでて来られても気づく前に踏んづけて終わっちゃう場合も、あるにはあるんですよね」

 

 旅も三日目に入ると怠惰な日常にも慣れてきて、神経が弛緩してきちゃうんですよねー。なので馬車を引いてる馬さんに前方注意の概念がないのも手伝って、交通事故が多発しやすいのが馬車で行く旅路。ハンドルもブレーキもない馬車は、急にどころか結構ゆとりがないと止まれないことが多々あります。御者さんの腕とかのもありますし。

 

 こう言うことも考慮して、街道では馬車と徒歩での旅人がかち合った際には徒歩で歩いてる方が道を譲るのが基本です。

 つか、一度はずれたら元の道に戻ってくれるのにスンゲー手間取る馬車と人とでは優先順位が違いすぎてて比べるバカなんていやしません。そう言うものです。

 

 なので馬車の目の前に飛び出してくる相手は、よほど身分が高くでもない限りはバカで済みます。街道を一人で歩いてる時点で平民階級なので、たとえひき殺されても自己責任ですしね。問題ありません。

 

「まぁ、踏んづけちゃったかもしれないなら仕方がありません。通り過ぎてから背後に死体でも落ちてたら埋めるか追い剥ぐかのどちらかを選ぶで構わないのでしょうから、気にせず行きましょう」

 

 キングス・フィールドで死んでいたミーナさんみたいなものです。作品のヒロイン的ポジションにある女性が魔物に殺されて死体となった後に見つけられたというのに、主人公の感想が「ミーナの死体」だけだった時は素直にファンタジー異世界の怖さに震えたものですよ。懐かしい話です。小学生の頃の私は純粋無垢だったな~。

 

 何ヶ月も一緒にやってきたお陰か、私の性格や思考法にもスッカリ慣れていただけたお二人は「死んだ後じゃ仕方ないか」と言った感じに肩をすくめて提案を受け入れていただけましたが、やはり死体からアイテム持ち去ることには倫理的な理由により抵抗が激しく、諦めざるを得なくなりました。ちょっとだけ残念です。良いアイテム持ってる場合もあるんですけどね・・・。

 

 

 

 

 

「ーーで、『埋めるなら言い出しっぺが』を口実にしてセレニア殿を当事者から外したわけで御座るが・・・これ、一体どうするおつもりか? メガミ殿・・・できれば追い剥ぐ以外の代案を頂戴できれば助かるので御座るが・・・」

「・・・・・・ないですよ、そんなもの。て言うか、あるわけないでしょう? だって私、セレニアさんを当事者から外したかっただけですもん。

 これ以上あの人を関わらせたら絶対ろくでもない方向に向かうの確実だと思っただけが行動理由でしたからね」

「・・・・・・同じ穴の狢が気づかず共闘し、自らが落ちる穴を二人で掘ってただけで御座ったか・・・」

 

 本気でどう致そうか、この死体・・・。埋めるにしても地面を掘る道具なんてないので御座るが・・・。

 

「メガミ殿。死人対処の専門家、ハイ・プリーストとして何かしら役立つスキルなり能力なり魔法を修得しておられては・・・」

「死者の軍勢を相手に祈りながら十字架振り回して戦う聖職者の在籍する宗教など実在しません!」

「いや、いるで御座るよ拙者の祖国にも故郷にも!? でなければアンデッド最強伝説が確立されてしまうでは御座らぬか! 聖なる力で祈って除霊が神官系クラスの十八番だったはずでは!?」

「死者の魂を肉体とともに消滅させることは除霊と言わない! 単に相手の存在を消滅させる悪の大ボスがよくやる攻撃です! つまりは神と魔王は紙一重!」

「お主の信仰心は奈辺ぐらいに!?」

 

 驚愕の不信徳ぶりで御座るな、この御仁! 引くわ! 全力で引くで御座るわ! 宗教建前に使うでないわ!

 

「はぁ・・・。仕方が御座らん。とりあえずは道ばたに寄せておいて、次の町に着いたら場所を伝えて供養をお願いしておく程度で妥協いたすしか状況で御座ろうからな・・・埋葬は諦めるで御座るよ」

「賢明ですね。それじゃあ私は、なにか目印になりそうな巨木でも探してきまーす」

「お願いするで御座るよー、メガミ殿ー」

 

 ふぅ、では拙者も自分の仕事としてメガミ殿が良い場所を見つけてくるまでの一時保管場所として道の脇に移動させて、と。・・・よし、ここまで運べばもう安心。無理なくゆとりのある埋葬計画が遂行できそうで安心したで御座るよ。

 

 ーーしかし、見れば見るほど不可思議な格好。顔どころか性別すら見ただけでは分からなくしてあるなど、いくら恥ずかしがり屋さんでも限度という物があーー

 

「あーーーにーーーのーーーかーーーたーーーきーーーーーーーーーっ!!!!!!」

「ぎゃーーーーーーーーーっ!?

 死体が! 死体が呪いの怨嗟の叫びとともに蘇ったで御座るーーーーっ!!!!!」

 

 無念を残して死んだ人の魂がアンデッド化したで御座るーーーーーーーっ!!!!!

 間合いが近すぎて刀を鞘走らせることすら出来そうにないで御座る! 助けてくだされメガミ殿ーーーーーっ!!!!

 

「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーMEN!!!!」

 

 ズゴンッ!!

 

 ごごごごごごごごごごごごごっ・・・・・・・・・。

 

 ーーーぐわっしゃあああああああああああああ!!!!!!!!

 

「き、きゃあああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」

 

 ひゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 スタスタスタ。

 

 どやぁぁぁぁぁぁん!!!!

 

「どうですか! この神なる祈りの一撃のすさまじい威力は!

 神に拳で祈りを捧げることで地を割り、地割れを起こし、敵を大地の裂け目より地の底へと落下させて封じ込めてしまうという、まさに伝説的聖者の御力!

 ふっ・・・。歴史的大偉人と同格に並び立つまで上り詰めた、私の聖職者としての徳とアガペーが恐ろしすぎる件について」

「・・・まぁ、確かに恐ろしかったで御座るがな? 主に威力と主義主張の内容が・・・」

「そうでしょうとも! さぁ、もっと私を崇めるが良いのです愚民ども! 真なる神は私なり!」

「信仰心は!?」

 

 ダメで御座る! この人本当にダメな人だったで御座る! 早く何とかしないとな人で御座ったよーーーーーーーーーーっ!!!!

 

「さぁ、埋葬は済みました。セレニアさんが待っています。先を急ぎましょう。

 なぁに、天災雷火事親父・・・どれが起きても全部あなたたちの信仰心が足りないせいだと言い張れば大概のことは通ってしまうのが宗教と神を崇める民衆との関係ですので無問題ですよトモエさん。世は全て事もなし、東部戦線異常なしです」

「そうで御座るな確かに! 世の中にある問題ではなくて、お主の中にある心の有り様に問題がありすぎてるだけで御座るからな!」

 

 特一級の危険人物たちと旅する自分の将来が不安で仕方なくなる拙者の名は『平家トモエ』。没落した名家を先祖に持ち、お家再興を目指して剣の修行に勤しんでいる武者修行中の若武者で御座る。

 

 腕を上げて父上や御師匠様のような剣豪に大成し、世のため人々のため悪を討つ正義の剣士になることを夢見て故郷を飛び出してきたので御座るが・・・・・・最近、挫折ぶりがヒドすぎる気がしているで御座る・・・。

 

 ーーされど負けぬ! 死なぬ! 武士道を奉ずる一人の侍として、正義を貫くことは拙者の義務なので御座るぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!!!

 

「・・・ちょいと? 何やってんですかあなた、置いてきますよ。奴隷身分から解放されて借金帳消しになる代わりに、生活費が手持ちの小銭だけの状態で独立させられたくなければ急ぎなさいですよね」

「やぁ~ん、メガミ殿様ったらせっかち様で御座るなぁ~☆ トモエは主様方の忠実なる可愛い狗なので御座るから置いて行っちゃ御座るよ~☆ いけずいけずはい・や・よ・で御座る♪」

「・・・・・・・・・キモ」

 

 ーーく、屈辱! されど暖かい食事と屋根のある寝床に代えられる物など何ひとつとして無し!

 ただ生きていくだけの家畜に墜ちようとも、人は生きていかねばならぬで御座る! 死んで花実が咲くものか! 生きてこそ叶えることの出来る下克上の夢を掴むまで、この命! そなたらに預ける故、存分に弄ぶが良いので御座る! 何度負けても最後で勝てば官軍で御座るよーーーーーーーーっ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひゅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・がしっ!!

 

 

「あ、兄の仇を討つまでは私は決して死んだりしません・・・。兄の無念を、執念を、無慈悲な悪に破れた正義の志を引き継いだ私こそが正義の勇者。必ずや魔王を倒し、世に正義を敷く為にも、まずは仇を討って聖剣を取り戻す!

 そうです! 私は正義! 世のため人のために戦う正義の味方から金を取ろうなんて不届きな輩がおかしいだけなのに借金の抵当に入れられてしまった我が家に伝わる伝説の聖剣を取り戻すためにも兄の仇であると教えられた三人組を討ち果たすのが我が使命!

 銀髪の巨乳、ピンク色した着物の美人。そして・・・エロい格好のハイプリースト! 

 教えてもらった特徴に間違いがない以上、あの人たちさえ倒せば聖剣が・・・聖剣が・・・聖剣が、あ、あ、あ、あ、あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 つるっ!

 

 

 がら! ガラガラガラガラガラガラガララガラガラガラーーーーーーっ!!!!!!

 

 

「一度負けたくらいで諦めたりするものか! 正義は必ず最後には勝つのだからな! 

 次こそ私が勝って、お前たちをぎゃふんと言わせてやるんだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁん!

 ・・・でも、いやいやいやぁぁぁぁっ!!! 落ちるのは嫌なの! 落ちてくのは嫌なのぉぉ!!

 正義は、悪にはめられて負かされて穴に落とされるのが一番イヤなのよーーーーーっ!!!!」

 

 

 

 

 ひゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・ボッチャン。

 

 

 

 

 

「・・・ちっ、使えねぇ辺境出身の田舎勇者様だぜ。まあいい、あれで時は稼げたんだ。罠の用意は万全。後は仕上げとしてお優しい勇者様にもう一働きしてもらうとしますかねぇ。・・・人質として、ね」

「へへへへ、正義だの人助けだのと甘っちょろい事ほざいてる苦労知らずどもに、本当の悪の怖さを思い知らせてやりましょうぜアニキ。そしてその後はあのダイナマイトボディを・・・うひひひひ」

「ああ、そうだな。楽しみだよな。

 ーーだが、しかし・・・・・・」

 

「「さっきの地割れは何だったんだ? 魔法にしては呪文が聞こえなかったけど・・・・・・雨で地盤が緩んでたのかな? ・・・・・・分からん・・・理解不能な現象だったわ・・・・・・」

 

つづく


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。