異世界に勇者としてTS転生させられたから常識通りに解決していくと、混沌化していくのは何故なのでしょうか?   作:ひきがやもとまち

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最近、小説を読んでいると新たなアイデアが沸いてしまって書きたくなる。書きたくなって書いてたら読む時間が大幅に減る。減った分だけ読めてないから、書くのに必要な文章力が低下することが、ガチに解決すべき問題点となってきました。

早く何とかしないとヤバいなぁー・・・。


第21章

 英雄クライスラーさんからの依頼を受けた私たちは一路、隣国を含む辺境地域の一部の集合体『バレアンヌ地方』を目指して歩みを進めておりました。

 彼が言うにはバレアンヌは元々この地域一帯を示す名前ではなく、地方を形成している一小国の王都を指していたんだとか。

 

「?? たかが一国の王都の名前が、どうして地域全体の名称に? 連合国家を形成するにしたって、もう少し妥当な名前がありそうなものですけども・・・」

 

 話を聞いた私は疑問を口にしました。

 軍事力で他国を飲み込み支配下におき、属国だらけと化さしめたなら支配国の名前が付けられるはずであり、比較的優位な軍事国家が中心となって外的から身を守るために形成された軍事同盟ならば中心国の王都名は用いないと思うんですよね。角が立ちそうだったので。もう少し国を意識させない穏便な前を採用するのが基本なのではないかなーと。

 

 すると彼は肩をすくめて見せてから。

 

「そこはそれ、ファンタジー世界故の厄介事があるものでな」

「と言うと?」

 

 興味を持った私が尋ねると、彼はバレアンヌ地方独特のファンタジー感について説明してくださいました。

 

 

 ーーかつて、この大陸にも全土を巻き込む大きな戦、戦乱の時代があり、バレアンヌ地方は地形と気候さえも激変させてしまう強大さ故に封印された魔法『禁呪』と呼ばれるファンタジーのお約束魔法が行使された大陸国家内でも唯一の国が存在していたのだそうです。

 

 “していた”と言う表現から推測できるとおり、今は存在しておりません。滅びました。人の身に余る強大な力『禁呪』を人同士の争い事に用いたことで滅びたのです。

 

「つまりーー心得違いをした者が禁呪を蘇らせた! だけど、禁呪がもたらしたのは勝利ではなく滅亡だったと・・・そう言うことですよね英雄さん!?」

 

 ・・・なんか鼻息荒げた女神様が横から割り込んでこられました。しかも、言ってる内容にどこかで聞き覚えが・・・ああ、『伝説の巨人』ですか。騎士ガンダム物語の。子供の頃に好きだったので覚えています。

 思い出したら見直したくなってきましたねー、OVA版。もう二度と観られることはないのでしょうけどね。

 

 ーーどうでもいいですが、女神様の好きな王道ネタが妙に古すぎる件について。

 

「いや? 戦には普通に勝利したよ?」

「・・・ほへ?」

「だって、最凶の力行使できるんだもん。たかだか一地方にある国同士の戦で負けるはずないじゃん。封印してあるんだから制御方が記録されてないわけないし」

 

 女神様の勢い込んだ質問に対して英雄さんはキョトンとした顔で普通に応じ、今度は女神様の方がキョトンとされてしまいました。

 

 私は肩をすくめながら一言。

 

「まぁ、封印を解けた以上は、封印の仕組みについても解析できてたはずですからねぇ。封じ方は解らないまま解き方だけ解ってるってのも微妙な設定ですし」

「いくつかの王家に分割して跡継ぎのみに受け継がれていくってのも難しいしなー。

 ーー今思うと、あれって継承させる時どうやって封印を移植してたんだろう? 『BASUTADO!!』のシーラ姫が封印破られた時って、子宮の辺りが破裂してたよな確か。・・・処女のはずのシーラ姫が・・・」

「さぁ? 普通に母親の胎内に居た時点で受け継がれていたのでは? 実際、メタ・リカーナ王家の中では彼女だけしか子宮をもてる者である女性はいなかったようでしたしね」

「・・・一子相伝で四百年間、封印を継承していくのか・・・? 娘を政略結婚の道具に使えねぇじゃん。よく四王家の同盟関係維持し続けれたな。女性に優しい世界を描く萩原先生、マジ紳士。超リスペクトっす」

「女性のお尻丸出し装備が基本の世界観で紳士もなにも無いかもしれませんけどね」

 

 いけません、脱線しすぎました。軌道修正、軌道修正と。

 

「それで? 禁呪を使った結果、その国はどうして滅びたのですか?」

「ん? ああ、スマン。女のおケツについて考えるのに夢中で言い忘れてたな。

 ーー先祖代々敵対関係にあった隣国を禁呪で地形変動引き起こすほど完膚無きまで徹底的に滅ぼしまくった国は、当然近隣諸国から従属の申し出が相次いだ。当たり前だけどな。誰だって国一つを一発で滅ぼせる核弾頭以上の破壊力持った国相手に戦いなんか挑みたくねぇし」

「まぁ、宇宙から地上を狙えるメメント・モリを相手に地上にある国家は従属以外に打つ手がありませんからねぇ。

 移動するコロニーレーザー程度だったなら、艦隊持ってるサイドでも対応策はありますけども」

「足止めれば済むだけだもんな、あれ。逆に地上から空だと何もできん。何かしようにも、上からなら丸見えだし。従属を求めてるだけなんだから、素直に白旗揚げといた方がマシってもんだ」

「それに、戦乱の時代ですからねー。支配したりされたりを繰り返すような時代に、意地や矜持は生き残るのに邪魔なだけですし。ましてや一地方にある国家群たちなら尚更です」

「そうそう。・・・って、またまた話が逸れてたな。戻すぞ?

 ーー戦には勝利したし、各国も従属させることが出来た。戦わずに勝てた王として当時の王様は希代の名君として崇められたが、それも長くは続かなかった」

「その理由は?」

 

 彼は再び肩をすくめ、両手を大きく広げてみせる外国人的ジェスチャーで「どうしようもない」と表現すると、

 

「先祖代々敵対関係にあった隣国だ。当然、国力も規模も比肩しうる物があるだろう。交流も部分的にはあっただろうし、産出する特産品で依存し合ってる部署だって無いことはない。

 そんな隣にある対等な巨大さを持った大国が、一晩にして地形変動させられるほど破壊し尽くされたらどうなると思う? 異常気象が続発して環境被害は甚大、隣国と国境を接する地域には寒波が襲い飢餓が蔓延し、飢えた流民たちが絶頂期にある王都へ向かって流入してくる。辺境地域との境目に長大な石壁を作って隔てようとした封じ込めにも失敗し、地方国家の属国になるような国が遠方にあるはずもないから二度目の禁呪使用を躊躇っている間に内部から崩壊。

 今では禁呪で永久凍土と化した元敵国の隣に廃墟として残っているだけの亡国だよ」

「えぇ~・・・」

 

 化学兵器を過信しすぎた軍事国家の末路・・・と言うべきなのでしょうかね。哀れなんだか、自業自得と言うべきなのかサッパリです。

 

「で? 結局バレアンヌ地方という名前の由来については?」

「おう。こっからは近代史になるんだが、禁呪で滅びてからバレアンヌではーー当時は別の名前で呼ばれてたんだがーー地方一帯に存在している国々を纏めた連合国家思想が生まれてな。狭い地域で隣人同士が殺し合ってても意味ないから、協調路線で外敵から身を守れるようにしておきましょうと。つまりはロードス島戦記に出てくる英雄戦争勃発前のモス公国だよ。あんな感じで一つの大公国を中心に纏められてる」

「禁呪の存在は? 抹消するなり消滅させるなりしたのですか?」

「うんにゃ、戒めとして残してる。と言っても国が管理しているわけじゃないけどな。

 協調路線、平和路線への切り替えと同時期に教会側から『平和を愛するもの同士』として支援があり、それを契機につながりを持った連合国は教会に禁呪の監視を委託してバレアンヌの地に巨大な大聖堂をぶっ建てさせた。

 感激した教皇猊下は禁呪を欲深き者共から守護し、教会側も決して使うような不届き者が出ないよう数人の枢機卿に神殿騎士団を率いさせて常駐し、近隣諸国を丸ごと守護しながら治安維持につとめてもいるから、比較的に他より平和が保たれてる国ではあるな。

 ちなみにバレアンヌってのは元々都市の名前ですらなくて、禁呪を蘇らせた暴君の名前だ。人類が犯した過ちを決して忘れさせてはならないと未来永劫残るように愚か者の名を大聖堂のある街に付けるよう連合国側に要請したんだそーだ」

「それは・・・・・・」

 

 なんと言いますか、何と言っていいのかすら解りませんが・・・・・・

 

 

「ーー完全に恫喝目的で故人の名前を利用しているとしか思えませんね。自分たちは『かつて人間をして、この大地の主と成した奇跡の技と力を我らは復活させた。我らに従うならば・・・』って感じでしょうか?」

「うええええええええええええええっ!? 今の流れでその答えに行き着いた勇者ってはじめて見ましたよ私っ!! 夢を! もう少しだけでも夢を見ましょうよセレニアさん!」

「ああ、銀髪ロリ巨乳の解釈で大体は合っている」

「合ってるの!? 教会が国とグルになって旧世界の環境破壊兵器を秘匿しちゃったとか言う最低最悪の推測が合ってていいんですか! この異世界の秩序を守らせてる世界さぁん!?」

「実際にバレアンヌの各所に福利厚生目的を建前とした教会がいくつも建てられてるから他国の軍隊が進駐し辛いことこの上ない状況が作り出されてしまってから数百年以上もの間、この国は対外的には戦死者を一人も出していない。

 その分、裏側での暗闘と身元不明者の死体と事故死と病死と行方不明者と、何でかよく分からんけど身内が死んでましたので跡継ぎますとか言う不審死と、お家の継承問題でのゴタゴタが続発しまくりだったが、秩序を保つための暗闘ならば世界の秩序的にはOKだ。問題ない」

「・・・貴方を派遣している世界さんて人は、随分アバウトな方なんですねぇ・・・」

「そんなもんだろ。精霊ルビスによる性格診断とか、プレイ開始時のタロット占いでハッピーエンドを迎えられるか否かを確定しちまう占い師のウォーレン爺さんとかもそんな感じだったからな。

 つか、世界を救う勇者個人には勇気と正義とかいう感傷的な加護だけ与えて、自分たち解放軍全体には栄光と勝利っていう実質的な利益を求めるような連中に厳密さなんて求めちゃダメだし、官僚は責任逃れと分散こそが本領だって『異世界転生騒動記』に書いてあったし」

「世知辛い・・・」

 

 なにが一番世知辛いって、異世界に転生しておきながら普通にオタク話に花を咲かせちゃってる自分が誰より何より世知辛いのですよ・・・。

 何故に異世界まで来て学校の級友とおしゃべりしているかの様なお話を・・・? ホントの本気で自分が解らなくなってきた瞬間でした。

 

「まぁ、そんな感じでバレアンヌは教会側が威信と支配領域をかけて全力での統治が行き届いてるから、冒険者ギルドの出る幕が全くない。

 支部さえ作られてないから冒険者だろうと国内では戦えないぞ、気を付けとけよ? 下手したら剣抜いただけで豚箱に放り込まれかねないほど冒険者へのマークが厳しすぎる国だからな」

「わかりましたけど・・・」

 

 そこまで来て、尚更解らなくなってた質問を付く前にしておきます。もうじき目的地に着いちゃいますのでね。

 

「私たちの存在って何に必要なんです? 今のお話だと、居ても邪魔にしかならないと言うか、なれないと言いますか・・・」

 

 私が聞くと相手の方は「あ~・・・」と、気まずそうに視線を逸らして頭をかきながら、どう答えれば傷つけずに済むかと考えているようでした。

 やがて答えが出たのか、決心が付いたのか割り切れたのか。どれだったとしても彼は私の質問に答えるため、目を見つめながら口を開かれます。

 

「・・・実のところ、アンタら自身に何かをしてもらいたい訳じゃあないんだ。アンタらを含めて介入する口実に使わせてもらいたいんだよ。その為のキーマンを用いるための条件がアンタだったって言う、ただそれだけの事なんだ。黙っていて済まなかったな」

「いえ、別にそれはいいんですけども・・・」

 

 ぶっちゃけ英雄のお手伝いとか嫌すぎましたし、拒否権あるなら拒否してましたし、選べる選択肢があるのであれば即座に縁を切って帰りたいこと山の如しでしたからね。

 単なる口実役なんて、むしろウェルカムでしかありません。

 

 ・・・どちらかと言えば私たちの使い方について興味を惹かれ、少し強めの声で重ねて問います。

 

 彼は空を見上げて、明るい日の光に遮られない特殊な眼で視て星の位置と月の満ち欠けから時刻を推し量りでもしていたのでしょう。「時間的にはピッタリのはずなんだが・・・」と、つぶやき。

 

「ーーお、キーマン発見。こっちに気づいたみたいだぜ」

 

 うれしそうな表情を浮かべて指さされた先に立っておられた方はーー

 

 

「「げっ!!」」

 

 私と女神様が異口同音に悲鳴を上げ、

 

「おお! ヨヨ王女殿ではござらぬか! 斯様な僻地で奇遇でござるなー!」

 

 システムから会話に参加できずに参加した気にだけされていたトモエさんが、嘘偽りなくシステムには関係してない喜びの声を上げました。

 

 そうです。そこに立っておられたのは・・・・・・。

 

「うふふ、またお会いできましたわねセレニア様。わたくしとっても嬉しいですわ・・・」

 

 希代の悪女王女様ヨヨ・ミレイユ・アリシア・イスパーナ様で在らせられました。

 

「・・・・・・・・・」

 

 無言のまま疑問の視線を投げかけると英雄様は「まぁ、そう言うことだ」とのこと。

 どう言うことだよ、ちゃんと説明しろよ。事と次第によっては只では帰さん。泣いてやるからな、大声で。

 いい歳した銀髪ロリ巨乳のお子様に泣かれる事が男にとって如何に恐ろしいか、其の身を持って思い知るがいい。

 

 

「だからーーな?

 如何にもなお姫様が陰謀たくらんでる国に訪れたら浚っちゃうのが悪の大臣のお約束というものだからして」

「そして、浚われた哀れで可憐なお姫様を救い出す際に、行きがけの駄賃として蹴散らされるのが偶然にも仕える国の大臣が悪だった一般兵士の皆さん。即ち・・・戦争を仕掛けるために必要不可欠な戦力なのですわ」

「姫様が浚われる目的で入国し、予定通り浚われてった姫様を救い出すため身分も国も関係ない。平民出の冒険者が国家権力相手に挑んで何が悪い! 伝説上の英雄は皆そうやって英雄と呼ばれるようになったんじゃないか!ーーと。で、その結果・・・」

「・・・勇気ある若者よ、汝こそが真の勇気を持つ選ばれし者。その名は『勇者』。力を貸そうぞ・・・と?」

 

 そうそうと、気楽にうなずいてみせる秩序の守護者にして世界最強の英雄剣士クライスラーさん。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かんっぜんに、マッチポンプじゃないですか! 漆黒の英雄を笑えませんよ!

 

 

 実在する伝説の英雄の中にもモモンガ様もどきが混じっていた可能性について考えさせられてしまうクエストと相成りました。

 

つづく


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