異世界に勇者としてTS転生させられたから常識通りに解決していくと、混沌化していくのは何故なのでしょうか?   作:ひきがやもとまち

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昨日の夜に急遽思いついたから書いてみた、変態王女メインの回です。
彼女の恐るべき本名が今明かされる!

あと、ついでとして魔改造火縄銃の説明も少し入ってます。


第18章

 ゲームにおいて銃という武器は意外と威力が低く、空を飛ぶ飛行系のモンスター以外には然したるダメージも与えられないことが多かったり、剣で切る方が強い遠距離戦でしか役に立たない武器扱いされてるケースが多くRPGでは割を食う印象がある武器でした。昔はですけどね?

 

 最近だと強力な武器として登場しますし、主人公が持ってる場合も多くなってきてます。近代兵器なのにどう言うわけか古代兵器として登場する『魔銃』とかのアレンジはお約束の一つとも言えるでしょう。

 

 ーーですが。

 根本的な疑問として私はファンタジー世界の銃系武器に、昔から気になり続けている点がありました。弾の補給です。

 店で売っているならともかく、教団の秘匿技術として温存されてる『ガン』とかの武器は、火薬はともかく如何にして薬莢を確保しているのでしょうか?

 

 その疑問が、この世界では私自身にも適用されています。火縄銃です。魔改造されたとは言え、単発式にすぎない火縄銃があれだけ撃ちまくっても弾切れにならないはずがない。

 

 

 

「ーーと言うわけで、燃料切れです。しばらくは私、火縄銃撃ちませんので、そのおつもりで」

「「・・・・・・はい?」」

 

 朝食の席において放った私の言葉に、トモエさんと女神様がそろって小首を傾げられました。

 ・・・なんかおかしな事言いましたかね私は? 身に覚えが全くないんですけども・・・。

 

「え、え? あ、えっと・・・冷やし中華? 冷やし中華はじめました?」

「・・・なぜ火縄銃が冷やし中華に・・・? そうじゃなくて火縄銃ですよ火縄銃。先の戦闘で撃ちまくりすぎたのでエネルギー供給が間に合わなくなりました。

 その為、しばらく温存するつもりだとお伝えしているのです」

「エネルギーって・・・それ、エネルギーで撃っていたので御座るか!?」

「そうですよ? エネルギーじゃなかったら、一体なにを撃っていたと思っていたのですか?」

「えっと・・・か、神のご加護とか?」

「・・・貴女の祖国東の国って、仏じゃなくて神を崇めてたんですね・・・」

 

 そういえば思い出してみるとこの世界、一応は統一宗教を国教とすることでまとまっていた世界でしたよね。武士が中世ヨーロッパ風異世界にある大陸に渡ってきている以上、東の国にも宣教師とかが渡来してないとおかしくなりますか。道理ですね。

 

「まぁ、今まで整備以外はしてきませんでしたし、弾込め作業もやってなかったですからね。弾数制限なしと誤解されるのも無理はないかとも思いますからお気になされずに」

「はぁ・・・。しかしセレニア殿。弾切れがあると言うならそのテッポウ、一体どのような理屈で弾を撃って補充もしていたので御座るか?」

 

 ふむ? そう言えば今まで一度も説明したこと無かったですね。うっかりです。

 ちょうど良いタイミングを得られたわけですし、折角なので解説しておきましょう。

 

「端的に言うとこの火縄銃は、大気に満ちた負の情念を吸収することでエネルギーに変え、一時的に弾丸という物質へと変化させられるという呪われた一品です。

 弾の形状をとっていられるのは弾倉内に収まっている間だけで、撃ち放たれた瞬間から崩壊が始まり、三十秒以内に世界から完全消滅して消え去るのが通常弾頭。一分以内か、それ以上保つのが特殊弾頭として類別されてるみたいですね。

 言うまでもなく負の情念だけで形作れるほど特殊弾頭は容易くなくて、最低でも人間一人分の命と魂を弾丸に変えてしまう必要がありまして、撃ち殺した相手の魂は転用可能なれども自給自足を可能とするには変換効率が悪く、他人が殺した人間の魂の方が断然回復速度は速くなるそうです。

 魔物なんかでも魂でさえあるなら吸収、弾への変質が可能。その代わりとして負の情念が人と比べて原始的であり本能的な理性無きものでしかないから効率は悪く、自分が殺されなければならない理不尽さと怒りと屈辱が最高の火薬となり得る作りになっておりましてーー」

 

「「捨ててしまいなさい! そんなキチガイ殺人兵器!

 呪われてるとは思ってましたけど、呪いのレベルが半端じゃなかった!!」」

 

 ーーだから最初から呪われてるって言っておいたのに~・・・。

 

「お二人とも、落ち着いてください。大丈夫ですから、呪いは解いてもらってますから。いくら負の情念を食らっても、暴発の心配はありません」

「そこは気にしてねぇんですよ! あぶなっかしい殺戮兵器と旅をしていること自体に危機感を抱いているんです!」

「・・・人を殺すために作られた兵器なんて使い方次第で、どれも同じ殺戮兵器に成り得ますよ?」

「だとしてもで御座る! その様な禍々しいと言うか、完全に呪われてる仕様の武器と一緒では安心して旅できないで御座るよ! 早急に捨ててくるで御座る!今すぐに!」

「ううう・・・でもでもこれなくなっちゃったら私、なにひとつ取り柄がなくなっちゃいますし・・・」

「「大丈夫!(で御座る!)まだちゃんとある!(で御座る!)

 デッカイおっぱいが!(デカパイがで御座る!)」」

「怒りますよ!?」

 

 さすがの私もこれには席を立たなければなりません! 今生において最大限の侮辱を受けて黙っていては男が廃ります! 早急に謝罪と前言撤回を要求したい!

 

「おっぱい・・・。それは異世界最強のエクスカリバーである・・・」

「なに、カッコ良さげな顔して格好悪すぎること言ってんですか女神様! つか、アンタが私に押しつけてきただけでしょうがコレ!」

 

 それにアンタにも付いてるだろ立派なのが! 人の物ばっかり見てんじゃねぇ!

 

 

 バンッ! ガタンッ!!

 

 

「セレニア様のおっぱいと聞いて飛んで参りました! この国の王女です!」

 

 余計に場を悪化させそうな人キタ━(・∀・)━!!!!

 会いたくなかったから報奨金もらった直後にトンズラして、城下の中でも中堅どころの周囲に紛れて分かりづらいけど普通に繁盛はしている宿屋の二階に宿泊場所を選んでおいたのにーーっ!

 

「おや、王女様では御座りませぬか。おはようで御座るな」

「貴女もおはよう御座いますわ、トモエ様。ご機嫌麗しゅう」

「・・・面目ない。拙者、武に生きんと欲する無骨者故に宮中での作法などトンと分かり申さぬ。どうかご寛恕あられたい」

「ふふ、お気になさらずに。わたくしも礼儀を気にしないですむ気楽な食卓の方が好きですわ。ご同席しても構いませんかしら?」

 

 賢しくも王女様は、頼まれれば断る気満々の私ではなく、許しを願って許しを与えられたばかりのトモエさんに許可を求めて承諾され、彼女の隣の席を確保してしまわれました。

 ちなみにですが、安宿の個室は高いです。お値段が。長旅には向いていません。

 どのみち同性しかいないのだからと中くらいなサイズの部屋を一つだけ貸し切り、全員まとめて寝泊まりしているこの部屋は大部屋というカテゴリーな割に四人入れば隙間が殆どなくなってしまう狭苦しい作り。

 宿代をケチった訳ではありませんではありませんでしたが・・・見つからないように目立たないようにと立地を考えすぎた結果、思わぬ危機を招いてしまったみたいです。

 

 ちゃぶ台みたいな形をした背の高いテーブルでは、トモエさんと私と女神様が簡易式の円卓みたいな配置になっていますので、必然的に誰の隣に座っても私の隣か対面にしか席がない!

 

「うふふ・・・これは、とっても美味しそうなソーセージですわねセレニア様。

 ーーはむ。ん、ちゅ、んえろぉ~ん・・・」

 

 くっそーーーーーーーーーーーっ!!!! 完全に狙ってやがったなビッチ王女め!

 お前みたいな女がRPG世界で悪女になるんだコンチクショーーー!!!

 

 

「そう言えば自己紹介がまだでしたわね。わたくしの名はイスパーナ王国の第三王女、

 『ヨヨ・ミレイユ・アリシア・イスパーナ』と申します。以後、お見知り置きを」

「アリシア? アイリスじゃなかったの?」

「そちらは父がつけてくれた愛称です。親しい血縁者と、勘違いした若手男性貴族の方々は好んでその名を使いたがりますが、わたくし自身はあまり好きな呼び名とは感じていません。できればヨヨか、ミレイユか、アリシアのどれかで呼んでいただきたいものです」

「なにか拘る理由でもおありなので御座るか?」

「いえ、特には。ただ、なんだかとても好ましく思えて。わたくしにはぴったりな名前だと幼少の頃からずっと感じていて大好きなんです。ただそれだけですわ」

「「ほほ~」」

「ちなみにわたくし、アリシアと親しげな態度で呼んでくる騎士の幼馴染みが大好きでしたが、今では過去の思い出ですのでお気にされないでくださいねセレニア様?

 わたくしは前を向いて生きていく女・・・。いつまでも過去を引きずるほど未練がましくもなければ女々しくもありません。

 面倒くさくないサッパリした恋愛しやすい女ですのでお得ですわよ? い・か・が・で・す?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 全戦力を持ってしてでもお断りしたい気持ちでいっぱいなんですが、撃っても良いですか? エネルギー回復量は・・・くそ! ガッツが足りない! 一発撃って外れたら犯されてしまう!

 

「・・・・・・私如きには恐れ多いことです。なにやら不穏な空気が漂っているようですし、私どもは早急にこの国から出て行くことにいたします。お世話になりました。ネレイドさんによろしく。ではっ!さようならっ!」

「あっ、ちょっとセレニアさん!? 珍しく準備もしないで出発なんて王道っぽい真似、私をおいてはさせませんよ!」

「ほほう。姫君を救った国から逃げるように国外逃亡・・・これは人助けの予感がするで御座る! いざ行かん! 正義の旅へ! とおーーーっう!!」

 

 

 ばたん! どたん! がっちゃんごっちゃんデデーン!!!

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うふふ♪ 逃げられてしまいましたか。残念です。

 でもまぁ、助けてもらったお礼に今回だけは逃がして差し上げますわセレニア様。

 次会うときまでオッパイを揉んで洗って綺麗なまま、守り抜いてくださいましね? 間違っても男どもなんかに揉まれたり触られたり見られたりなさいません様に。

 ーーでないと・・・・・・ヒッドい事しちゃいますからね?(クスクス♪)」

 

 

つづく




変態王女の名前の由来となったキャラたち

ヨヨ(バハムートラグーン)
ミレイユ(魔界塔士Sa・Ga)
アリシア(LIVE A LIVE)



――ゲーム世界三大悪女から名前の全てを受け継いだ王女の過去は推して知るべし。

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