異世界に勇者としてTS転生させられたから常識通りに解決していくと、混沌化していくのは何故なのでしょうか?   作:ひきがやもとまち

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突然ですが、作者は「いせスマ」ではユミナが好きです。大好きです。冒険するお姫様と言うのは、いつの時代も可愛いものだと思います。・・・パーティーに加えると、面倒くさそうですけどね。


と言うわけでユミナのこと考えてたら変なキャラを最後ら辺で付け足しちゃったのでご勘弁を。


第16章

『どうだ!? 見つかったか!?』

『ダメだ! どこを見渡しても、それらしいモノは見当たらない!』

『くそぅっ! 光源が乏しすぎるし、光魔法の使い手が少なすぎる! このままだとジリ貧だ!』

『いったい、何をどうすればいいんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!』

 

 

 

 

 ・・・・・・いきなり阿鼻叫喚の地獄絵図です。

 このままでは訳が分からないでしょうから、簡単に説明させていただきますね?

 

 

 そも、この事態は至るには昨日の晩に到着した新たな国の辺境にある地方都市まで話を巻き戻さなくてはなりません。

 

 門番さんたちから「防衛上の観点から、夜はあまり開けたくないんだがな・・・」と苦言を呈されながらも私はたちは無事に入国及び街へと入ることが許されました。

 魔物は獣タイプが多いので夜目が利きます。都市の防衛を勘案した場合、夜は門を閉め切っておくのが一番安全だと言う意見は私も同意できますし、街のトップである市長も含めて行政側は「良し」と考えているようなのですが、街に住む住人たちの方々は正反対。

 

「夜こそ儲け時」と叫んで、夜だけ営業する裏っぽい酒場や賭博場。歓楽街と呼ぶには細やかすぎる規模ですが、それでも“もどき”ぐらいは自称できそうな夜の裏街みたいな場所が、ド田舎の中心地でしかない田舎町では主要な収入源となっているんだとか。

 

 それらの店で歓迎される顧客はもちろん冒険者。根無し草でならず者の皆様方です。

 

 結果的に町の主産業は冒険者向けに娯楽を提供する歓楽街としての機能が充実し(辺境としてはですよ?)綺麗どころが近隣の村々から仕事を求めて集まってくるので、辺境という言葉とは裏腹に町は綺麗に掃除されてて「衛生的だな」と感じたのが強く印象に残ってます。

 

「綺麗でござるな。やはり若い女子が多いと町は華やかになるもので御座るよ」

「いえ、おそらく性病対策だと思われます。不特定多数の男性と性的交渉をするお仕事は病気を移されやすく、病を患った遊女は商品としての価値がダダ下がりしますから店側も気を使うのはとうぜーーあ痛っ!」

 

 ーー左右からグーで叩かれた事も、今となっては良い思い出です。

 

 そんなこんなで辺境都市までやってきた私たちですが、ダメ元で訪れた冒険者ギルドでは緊急クエストなるものが受注されたばかりだとかで、詳しく説明を聞くことにしました。

 

 曰く「王女殿下がお忍びで遊びに来るから馬車の護衛を雇いたい」との事でした。

 

 面妖なことです。なぜ王女様ともあろう御方が根無し草に護衛を依頼するのか、むしろ情報を売られて窮地に陥るだけでしょうに・・・。

 

 そう思い、そう質問してみたところ、帰ってきた説明役のお姉さんのお言葉は、

 

「だから、護衛に雇うんでしょ?」

「なるほど。納得しました。クエストを受注させてください」

 

 納得してサインした私と、心得顔のお姉さん。

 振り返った私の背後でハニワみたいな顔して疑問符浮かべてた女神様とトモエさんの二人が面白かったです。

 

「要するに、陽動役の囮馬車を護衛しろって意味です」

「「なるほど(で御座る)」」

 

 アッサリと納得した二人とともに護衛隊に参加し、敵の狙いを誤魔化すために適当な場所をうろついてるもんだとばかり思ってましたが・・・・・・。

 

「まさか、囮と見せかけて本人が乗ってる馬車だったとはねー。不覚にも気がつきませんでしたし、側近以外に教えてなかったから雇った誰が密告したのかも分かりません。難儀なものです」

「・・・落ち着いてる場合ではないで御座るよセレニア殿! 拙者たちは、どことも知れぬ真っ暗闇の空間に閉じこめられたので御座るぞ!

 不意打ちで転移させられて平然としているキチガイが、いったい何処に・・・」

「「ここにいますが?」」

「・・・・・・」

 

 挙手した私と女神様に白い目を向けてこられるトモエさん。

 いやいや、違うから。そうじゃないから誤解ですから、そんな人を辞めた生き物見るような目で見ないでください地味に痛い。

 

「現時点では魔法によって転移されたと言うことしか判明していないから、動くに動けないだけです。畑違いで素人でもある私としては、もう少し状況を確認してから動きたいんですよ。それだけです」

「・・・・・・」

 

 ぜんぜん信用してもらえてませんね、この白い瞳は。この前の一件を、まだ根に持ってるんでしょうか?

 高校生にもなって(前世ではです。今生では生まれ変わってから生後数ヶ月ぐらいですかね)泣き疲れて眠りにつくという赤っ恥をかいたのは私もですし、いい加減水に流してくれても良さそうなものなのに・・・ふぅ、やれやれだぜです。

 

 ・・・まぁ、今の会話で大方の事情は理解できたと思われますが、最後のまとめは一応入れときます。

 道中、転移魔法をかけられて護衛隊もろとも馬車を真っ暗闇の空間に飛ばされました。現在は閉鎖空関係へのディスペル魔法と、結界を構築している起点になっているはずの魔法陣なり水晶球なりを探し回っていて難航中。以上です。

 

「とは言え、手にはいる限りの情報は出揃ったようです。そろそろ動くといたしましょう」

 

 私は休めていた身体を起こしながら、今まで漏れ聞こえていた魔法使いさんたちの会話内容を記憶巣から掘り起こして適当に繋ぎ合わせていきます。

 

 曰く、「この魔法はきわめて特殊で前例がなく、『闇魔法』とでも呼ぶべき新種の魔法であると推測される」

 曰く、「通常、同格の魔法を解除するには、その魔法に呼応して出来た対抗魔法としてのディスペル魔法が用いられてる。つまりは万能薬ではなくて、解毒剤のようなものと規定されている」

 曰く、「同格の魔法をキャンセルするには同格で対応したディスペル魔法を一回使用すれば確実に解ける。格下ならすべての魔法に通用するが、ランク毎に効果の振り幅は上下動する。格上の場合は相性次第」

 曰く、「今度のこれは位階を問わず、ディスペル魔法で効果が出ない。普通なら対応していないにしても何らかの反応くらいはあるはずなのだが、それもない。故にこの魔法は全く新しい新種の魔法であり、今ある既存魔法では解除不可能な可能性が高い」と。

 

 ーー大雑把にまとめてしまえば、こんなモノでしょうかね?

 

 

「ちょ、セレニア殿!? 一流所をそろえた王室魔術師団がどうすることもできない状況を、畑違いのお主がいったいどうやってーー」

「餅は餅屋です。魔法でおきた現象のすべてが同一の魔法で行われているとは限らない以上、こういう発想の仕方もありなのではないかと思いましてね」

 

 私は火縄銃を少しイジって音だけが高く鳴り響くように設定し直してから床に置き、風の谷のナウシカ風に火薬の量を調整してから小規模爆発を起こしてあげました。

 

 

 ズドオオオオオッン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『はわ、はわわわわわわわっ!? い、いったい何が起こったんだーー!?

 ・・・って、あれ?』

 

「お早うございます、皆さん。良い夢はご覧になられましたか?」

 

 眠りこけていた皆さんが飛び起きるのを、一緒になって起きあがりながら私は普通に声をかけ、装備が奪われていないことを確認しながら肩を回して体の異常を確かめました。

 うん、正常ですね。問題なしです。これなら十二分に動いてくれるでしょう。・・・元から大した動きは期待してませんのでね。

 

 

「ふ、ふぇ? あ、あれ? あれれ? ここはドコで御座るか? 拙者は騎士で御座るか? メガミ殿、昼餉はまだで御座ろうか?」

「ボケ老人かよ。普通に記憶喪失になっときなさいよ面倒くさい人ですね。

 魔法で転移されて来た場所に睡眠魔法がかかってて、到着直後には夢の中だったから部屋の中を暗闇の中と勘違いさせられていた。

 認識阻害魔法と催眠暗示の併用で効果を倍増させてたけど、そのぶん催眠効果が解けただけで破綻した。

 高位の僧侶系クラスについてる私の見解では、そんな感じです」

「な、成る程。納得でござる。・・・いや、やっぱり納得できないで御座る!

 ハイプリーストのメガミ殿と違って、セレニア殿はエクストラジョブ! 何故かような魔法理論を読み解けたと言うので御座るか!?」

「さぁ? どうせ、キチガイだからとかの理由じゃないですか?」

「理由にも説明にもなってないで御座るぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!」

 

 寝起きから元気だな~、トモエさんは。若干ですが低血圧気味な所のあった前世の私としては羨ましい限りですよ。

 

「さて、それでは敵地より脱出するための冒険に出発するとしますかねーー」

 

 私が一歩前へと踏み出したとき。

 

「しばし待っていただきたい」

 

 凛とした声音で私を制止したのは、魔術師風のローブを着た大人の美女さん。

 赤茶けた髪とグラマラスな肢体がファンタジーにおけるお約束感を出してはいますが、逆にローブはちょっとだけ普通です。正統派の魔術師らしい魔術師であって、色物では決してない。

 つまり、この異世界においては必ずしも無条件で信じられる相手ではないと言うこと。・・・普通の人間は信じちゃいけない異世界って、何なんでしょうね・・・?

 

「私は宮廷魔術師団の一人で、ネレイドと言います。申し訳ありませんが、私たちにはあなたのことを信用することが出来ません。

 だって、そうでしょう? 私たち国に認められた実力と実績を持つ玄人が思いつかなかった方法で危機を脱し、機転を利かして魔法を見破る魔法使いではない幼い少女。

 あまりにも出来すぎた偶然です。これで信用しろと言われる方がおかしいと、私は思いますが?」

 

 ふむ。尤もすぎる言い分に、返す言葉もありませんね。かと言って、真実ではないことを証明するのもまた難しい。どうするべきなのでしょうか?

 

「ですので私は、あなたが王女誘拐犯の一味であり、闇魔法の使い手であると推察させていただきました。申し訳ありませんが、我々があなたの決定に従うわけには行きませんし、職務上の理由により容疑者である可能性がある人物を放置するわけにも参りません。不自由とは思いますが、ここから先は私が監視役としてあなた方の側にいて見晴らせてもらいます。よろしいですね?」

「構いませんよ? むしろ、願ったり叶ったりです。これで味方から疑われても殺されずに済みそうですので」

 

 相手は一瞬だけ虚を突かれたようにキョトントして黙り込んでから、先ほどより幾分か柔らかくなった表情で私に丁寧な口調で問いかけられます。

 

「では、その様に。・・・ところで、先ほどはああ言いましたが、実は気になってるんですよね。闇魔法の存在を一瞬で見破った理由について。よければ後ほど教えてもらっていいですか?」

 

 口調まで柔らかく砕けた彼女は、思ってたよりずっと幼くて年若いことに今更ながら気がついた私です。どうやら彼女自身が宮廷出仕に慣れようと努力した結果に惑わされてたみたいです。本当にまだまだな私だなぁ~。

 

 二つの意味合いでもって、私は肩をすくめると。

 

「大した理由はありませんよ。闇で敵を拘束するなんて不可能だから、魔法じゃないと判断した。それだけです」

「??? 闇魔法での敵拘束が不可能? なぜですか?」

 

 私は再び肩をすくめると、前世においては当たり前すぎて考える必要すらなかった事実を元に闇魔法を完全否定し尽くします。

 

「闇と言うのは『光がない状態』を指して使う言葉です。光は一応物質ですが、闇は物質でもなんでもない、結果として生じるだけの現象に過ぎません。

 現象相手にディスぺル魔法かけても意味ないでしょうし、果てのない闇の空間に足場となる空間があるのはおかしい。そして皆さんの反応を見るに、新種の魔法とはーー少なくとも効果が大きいのはーーそう簡単に発明できるものではないのでしょう?

 国で一番を集めた宮廷魔術師さんたちが手も足も出ない、単一の敵魔術師が国内にいたというのは、ちょっとだけ無理がある気がしましてね。ただそれだけですよ」

「なるほど。納得しましたわ」

 

 お上品に笑ってみせる彼女ですが、エクボを発見。笑ったら怒られるでしょうから指摘しませんが。

 

「宮廷魔術師殿! 外へと続く扉には鍵がかかっております! 開けられません!」

「わかりましたわ、直ぐ参ります。解錠魔法程度なら素人でも使えますので、問題はありません。ただし・・・」

「なにか別の問題点が?」

 

 私の質問に彼女は難しそうな表情を浮かべて、

 

「呪文が長すぎるのです。あらゆる鍵に適用されて、使い手の実力次第で開けられる難度が変わるために犯罪に用いるのが容易すぎるからと施された処置なのですが・・・。

 我々の世代では干渉できない、古代魔法王国が生み出した古代魔法であることもあって使いやすさとは裏腹に使いどころが極めて限定されてしまう。

 正直この状況下では鍵を魔法で開けるよりも、敵に捕虜として連れて行かれて黒幕の前に引きずり出されてから逆檄して一発逆転する賭けに出た方が勝算は高いかと・・・」

 

 なるほどね。意外とよく考えられてるもんです。

 

「ならば話は簡単です。こうしてしまいましょう」

 

 ズダンっ!

 

「はい、鍵は開けましたよ。ちゃんと鍵穴じゃなくて蝶番の方を撃ち破っときましたから再使用は出来ません。

 さっさと進んで、奇襲してくるつもりだった敵兵を奇襲して捕虜にしてボスの部屋まで案内させて、部屋の近くで気絶させたら別方向からの奇襲で一端退却させて逃げられないよう出口を先に魔法か何かで塞いでおけば詰みです。楽でいい」

『『『・・・・・・・・・・・・』』』

「ほら、なにやってんですか皆さん。お仕事の時間なのですから、シャンとなさい。見敵必殺は奇襲で数の差を埋める際には基本ですよ? 楽に殺せるうちは、楽に殺していった方が絶対に良い。

 正々堂々なんて言葉は、正々堂々挑んでくる相手にだけ用いてあげなさい。卑怯な手で来る相手には、その流儀に合わせて卑怯な手で殺して差し上げるのが正々堂々と言うものですよ。

 戦場には戦場の流儀というものがあります。王宮住まいで危機感のない貴族のバカ息子さんたちが、王女様がらみで行う宮廷闘争を戦場でまで行いたいというのであれば、其れも良し。

 自分たちが闘争と思っている遊びが、如何に高い授業料を必要とする物かという事をみっちり教育して差し上げましょう。ーー彼らの嫌う鞭では叩かない代わりに、鉛弾を撃ち込んであげますから感謝なさい」

 

 それにはまずーー

 

 

 ズダンっ!!

 

「はい、最初の一人は足を撃ち抜きました。次来る人から殺していきます。

 案内役はその人だけで十分ですが、その人だけは絶対に殺さないよう気をつけて戦ってくださいね? 餌は生きていないと旨味がなくて、魚が寄ってこなくなっちゃいますのでね」

 

 

 

 

 

「う、うわー・・・。友釣りてセレニアさん、マジ鬼畜外道。マジ狙撃手スナイパー・・・。

 女神は勇者の行いにマジでドン引きした」

「よっぽど、この前のことが恥ずかしかったので御座ろうなぁ~。八つ当たりで犯罪者を殺すくらいなら、いい加減に水に流して良いと思うので御座るが」

 

 

 

 

「・・・ああ、なんて凛々しいお姿なのでしょう・・・。

 まるで婆爺が寝物語で聞かせてくれた、扇を矢で射り、敗走する敵を背中から追い討って射殺す、お伽噺に登場した伝説の騎士様のようですわ・・・。

 果たしてあの御方は、年下であっても同姓であっても気になさらず、性交していただけるのでしょうか?」

 

「「・・・へ?」」

 

 

 

怪しすぎる爆弾発言とともに新キャラ登場!

次回、セレニアは貞操を守りきれるのか!?

 

 

つづく




セレニアが珍しく殺る気をだしてる理由。
前回の件での恥ずかしさが消えてないから。モヤモヤを発散するために銃を撃つ言霊少女は変な所でトリガーハッピー。



――ところで最近、改名しようと思う時が稀にあります。

新タイトル(仮)「異世界転生のお供に火縄銃を。」

・・・パクリにも程がある・・・辞めときましょう。

追記説明:
判り辛く書いてしまいましたが、最後の台詞はネレイドさんではなく馬車内のお姫様です。

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