異世界に勇者としてTS転生させられたから常識通りに解決していくと、混沌化していくのは何故なのでしょうか?   作:ひきがやもとまち

16 / 36
お笑い展開を考えてたのに「いせスマ」原作を4巻まで購入してしまったせいか、作風に合わない恋愛要素を入れてしまいました・・・反省。

次話からは気を付けるぞ!(ふんす)


第15章

 カイル君(先ほど助けた(?)少年の名前だそうです。偽名かもしれませんが、些細なことでしょう)が訥々と語り出した悪徳領主殿による圧政問題は、元を正せば魔王軍による魔物の被害に端を発していたんだそうです。

 

「「魔王軍? 魔物による被害?」」

 

 私と女神様は思わず異口同音にそう呟いて目と口をポカンと開けてしまい、神妙な顔で話し始めたばかりのカイル君のみならずパーティーメンバーで共に戦う仲間でもあるトモエさんとも全然気持ちを共有できない心境に陥ってしまいました。

 

「そうなんだ・・・あの、人間を遙かに越えた力を持った魔王の部下がこの国を征服するために派遣されてきてから領主様は変わっちまった。アイツ等さえこなければ・・・畜生め! ーーって、なんでアンタらモノすげぇ驚いた顔してるんだい?」

「「いえ、別に・・・」」

「「・・・???」」

 

 面妖そうに疑問符を浮かべて私たち二人を見つめてくるトモエさんとカイル君の視線から逃れるように、顔と目を逸らしまくる顔中冷や汗だらけな私と女神様。

 

 い、言えない・・・。これは流石に言うわけには絶対いきません。

 

 まさか・・・・・・魔王から異世界を救うために転生召喚された転生勇者が三ヶ月近くの長きにわたって魔王の存在自体を忘れかけていただなんて・・・!!!!!

 

 生活するのに忙しくて使命を忘れ果てるだなんて、世知辛いにも程がありすぎます!

 これは異世界転生モノの主人公にあるまじき、酷すぎる展開だぁぁ・・・!!!

 

 内心で密かに猛省している私に気付くこともなく(当たり前ですけどね・・・)彼の話は進んでいきます。まるでプレイヤーの都合などお構いなしで進行していくクリックする必要のないボイスありRPGのイベントシーンのように・・・!!!

 

「元々俺たちの町は貧しい中でもみんなが助け合って暮らしていた良い村だったんだ・・・。でも、アイツが来て「滅ぼされたくなければ一月に一度美しい娘を生け贄に差し出せ」と要求してきて、国に報告したのに王様からは何の返事も帰ってこない。

 俺たちも領主様も困り果ててた中で助けてくれたのが隣の国の王様だった。あの人は領主様の親戚だとかで「お前たちの国の王に代わってワシが兵を派遣して守ってやろう」って言ってくれた。

 派遣されてきた軍隊によって『魔王様の手先』って名乗ってたモンスターは退治されて町は救われたんだけど、その後領主様は人が変わったように残忍な暴君になってしまって俺たちを力づくで支配し始めた。派遣されてきた軍隊も最初は優しかったのに今では横暴そのもので、あちこちから傭兵を集めてきては町が唯一持ってた鉱山の中にあったとかいう『テンネンシゲン』ってのを金に換えて好き放題し始めちまった・・・」

 

 ・・・うん、とりあえずの感想として適切かどうかは分かりかねますが・・・まさかの出落ちで終わっちゃいましたよ『ピサロの手先』ならぬ『魔王の手先』! しかも人間の軍隊に討伐されるというしょうもない形で!

 挙げ句の果てには明らかな海外派兵の口実に使われているだけの魔王軍・・・この世界の人間国家はどうにも魔王軍への対応が冷淡だなぁ~。政治に利用しているだけな気がしてきましたよ。

 あれですか? 天変地異とかの自然災害と同じ扱いなのですか?

 

「・・・今思いだしたんですが、弾道ミサイル対応策も災害対策センターの人がTVで紹介していたような・・・変なところで現代地球世界とリンクしてますよね、この異世界。

 ひょっとして此処、遙か未来で文明崩壊した後の地球世界だったりしませんか?」

「さ、さぁ・・・? 正直な話、そこまでは調べてなかったと言いますか、私好みでファンタジックな異世界だったらどこでも良かったと言いますか・・・ぶっちゃけ世界設定よりも雰囲気重視なプレイスタイルなものですから!」

「死んでしまいなさい、取説読まないでメーカーに苦情の電話かけてきそうな駄女神様」

「酷すぎる!? 分かり易く具体的に指摘してくるから、カズマさんより尚ヒドい!」

 

 ムンクの雄叫びを上げる女神様ですが・・・こちらもよく思い出してみたら彼女の趣味を実現させるために殺されたんですよね、前世の私って。なんか今更になってビミュ~な気分になってきたんですけれど・・・。

 いやまぁ、今がイヤという程でもないですし、嫌がっても帰れるわけではないので別にいいっちゃ良いんですけどね別に・・・。

 

「しかし、思っていたより大事になってきましたね・・・まさか他国が介入してきていようとは・・・王国政府はどのように対応してきているんです?」

「え? 王様かい? アイツだったら数ヶ月に一度『酷使』とかなんとか言う、キラキラの服着た貴族を派遣してくるばっかりで何にもしてくれないけど?」

「『国使』を派遣、ですか・・・」

 

 私はつぶやき、手元に広げた厚紙を見ながらため息をつきました。

 それは、お三方へのオヤツ代わりと言う名目で先ほど購入してきた軽食を包んでいた包み紙です。中にはビッシリと文字が書き記されていて、その内容は隣国による領土内での不当な武力支配の実体を記載したもので、

 

『圧政者の支配から祖国を解放するには君たちの力が必要である。

 騙された上に利用され、愛する家族と人権を踏みにじられた国民たちよ。悲しみを怒りに変えて今こそ立ち上がるのだ! 祖国は、諸君等の力をこそ欲している!

 立てよ、国民! ビバ・レストレーション!』

 

 ーーとの一文で結ばれておりました。王政復古の音がする~♪

 

 この時点で誰もがお気づきでしょうが、この紙は政権側が行っているビラ工作。そのビラが軽食の包み紙に使用されているのは国民の識字率が低すぎるから。

 どんなに尊い思想も輝かしい未来も、人として与えられて当然の権利の保障であろうとも、意味を理解できなければ相手にとっては無価値な文字の羅列に過ぎません。

 死んでも葬式して弔ってもらえる訳でもない牛さんが念仏を聞き流すのは、与えられて当然の権利なのですよ。

 

「しかも、この紙。時代的に考えて羊皮紙を予想してたのに、そこらの雑草から作れる原始的な紙じゃないですか・・・誰が考えついたんでしょうかね、この時代の先いく超技術・・・。

 おまけに書かれてる文字は全部同じサイズで同じ筆跡しているし・・・活版印刷つかって包み紙に使われてしまうビラ工作をばらまき続けるとか、オーバーテクノロジーの使うべき場所をどんだけ間違えたら気がすむんですかこの国は・・・」

 

 富国強兵したいんだったら国民の基礎学力向上させんかい。出来るだろ、こんだけ向いてる技術が有り余っているんですから。王権を維持するために国民を無知な状態においておく政策とるのにも程がある。

 春秋戦国時代の奏より進んだ技術を持ちながらも、王政復古主義的思想の王様が奉ずる『教育を受けさせる者は国が選ぶ』という19世紀のカトリック並に教条的な教育理念が政策として用いられた結果、マキャベリが危惧していた自分の国を自分たちの力で守ろうとしない国民が生まれた・・・。

 

 そして更にーー

 

 

「軽食屋の女将さんから、こんな物を渡される情勢下じゃねぇ・・・」

 

 ポケットから取り出した一枚の魔法紙。記されているのは異世界風の住所のみ。

 店番してたオバチャンに「おや、可愛らしい。見ない顔だけど旅人さんかい?」と聞かれたので「駆け出し冒険者で、安全で実入りの良い仕事はないかとギルド支部のある街を目指している最中です」嘘ではないけど真実でもない答えを返しておきました。

 嘘というのは真実の別解釈ぐらいに留めていた方が、都合良く誤解してくれるから楽なのです。

 

 案の定、オバチャンは。

 

「そうかい。それじゃあ雇われ兵士ばかりが彷徨いてるこの情勢下だと仕事にあぶれて困るだろう? これも何かの縁だし仕事を斡旋してくれそうな奴の事務所を紹介しといてあげるよ。なぁに、四人分も一度にまとめて買ってってくれる客なんて珍しいから、気まぐれを起こしただけさ。気にしないで良いよ」

 

 そう言って大きな体躯を揺すられると、大きな声で快活に笑い出しながら店の奥へと入っていってしまわれました。

 

 そして現在。あらためて紙に書かれた数字と、Cランク以上になって一定の信用を得た冒険者には閲覧が許可される危険人物に関してのデータを見比べてみればドンピシャです。

 密偵ドローザ。革命軍の一員であり、数々の紛争地域で活躍したらしい潜入工作のプロで、暴動が起きそうな土地に先回りして陣取ると周囲にとけ込みながら捨て駒となる冒険者を集めて回り、表向きは革命軍ならぬ『解放軍』の拠点となる場所で訓練を施し施設軍隊を作り上げて政府軍と反政府軍の戦いに第三勢力として介入。

 

 紛争を泥沼化させていきながら両陣営を疲弊させての共倒れを狙うと言う、自分の手を汚そうとはしないやり口のせいで革命軍内部での評判は決してよくはないとのことですが、それと同時に革命と改革の意識は誰よりも強く純粋であり、捨て駒として犠牲になるのが滅ぼすべき邪悪『国家権力にしっぽを振って餌をねだる』冒険者の卵たちに限定されているのもあって能力面での評価は高いようでもありますね。

 

 なんでも王位を巡って勃発した王族同士の内紛で家族を皆殺しにされた経歴の持ち主だとかで、こと権力者同士で行われる詰まらない内輪もめを大規模化して暴動から内紛にまで発展させる手腕においては右に出る者はいないそうです。

 

 完全に本末転倒しているとしか思えませんが、人それぞれですからね~。トチ狂った復讐鬼の相手なんざ火縄銃一丁で事足りるわけがありません。ここは一先ず・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「逃げましょう。国外に。

 泥沼の内戦なんて、勝っても負けても恨み辛みを買うばかり。戦略的に何の価値もありませんから、今は全力逃走こそが一番の良策です」

 

 

 私が決断に至るまでの思考と、その選択肢を選ばせた前提条件となる情報を提示した後で口にしたゴクゴク真っ当な結論に、何故か皆さんからの反応は、

 

 

 

『え、ええええええええええーーーーーーーーっ!?』

 

 

 

 

 

 ーー絶叫による、驚愕の雄叫びでした。

 

 ・・・・・・何故に・・・・・・?

 

 

「ち、ちょちょちょーーーーっと待ってください、セレニアさん! 今のはさすがに聞き捨てなりません!」

 

 女神様が全力で挙手して意見を言いたそうにしてたので、指名して上げました。

 私はその間も、出立準備に励んでます。

 

「なんですか? 今なんておっしゃいましたか? 近く内紛が発生するから逃げるとか、そんな勇者らしからぬことを仰っておられたように聞こえましたが聞き間違いですーー」

「その通りですが、それが何か?」

「否定して欲しいという意味合いの台詞にすら言い終わらせてもらえねぇぇぇぇっ!!」

「待ってくれ!」

 

 叫ばれる女神様を蚊帳の外において準備を進めていく私に制止の声をかけたのは、驚いたことにカイル君でした。いったい何があったというのでしょう?

 

「どうされたのですか? カイル君。別に私たちが何時どこへ行こうとも、一人で生きていくと決めた貴方にはかかわり合いのないことでしょうに」

「そうだよ!そうだけどさ! ・・・でも、だからって生まれ故郷のふるさとが戦争に巻き込まれようとしているって時にジッとなんかしていられねぇんだよ!」

 

 雄々しく男らしさを示したカイル君は、私の前で身体をくの字に折ってお辞儀をし、精一杯の懇願の意を示した後に、

 

「頼む!助けてくれ! 俺にできることは何でもやるし、何でも用意する! 俺の命なんかでよかったら喜んでくれてやる! だからーー」

「無理です。絶対にね。私たちの戦力が加わった程度ではどうにもできませんし、なにより私たちには組織による後ろ盾がない。それらを得るには三つの勢力の内どれかに組みして成り上がる以外に手がありませんが、そうすると必然的な帰結として敵兵の・・・つまりは君の祖国の人たちを大勢殺さなくてはならなくなります。逆に殺されなければ、ですけどね。

 どのみち平和的に解決できる段階は過ぎてしまっていたようですから、今更どうすることも出来はしないでしょう。一先ずは君だけでも逃げ延びて、命を全うできることを喜ぶべきでしょうね」

「ふざけるなっ!!」

 

 せっかくの好意も彼には届かず、怒り顔で私を睨みつけながら、

 

「戦争の元凶になってる悪い奴がいるんだろ!? そいつを倒せば戦争は起きないんだろ!? だったら俺が倒してやる!

 倒すべき悪を倒せば、戦争は起きなくなるから問題はない!」

 

 どこかのアフター・コロニーで聞いたような気がする言葉だなぁー。

 

「では、誰を倒すと言うのですか?」

「悪だ! 戦争を起こす元凶の悪! そいつさえ倒せば戦争を起こさずにすむ悪を、俺は倒す!」

「だから、その悪って言うのが誰なのかを聞いているんですよ。

 祖国の王ですか? 敵国の王ですか? 敵国の現地軍司令官に過ぎない領主さんですか? それとも起きた後で戦争を煽ろうとしている革命軍の工作員さんの事ですか?」

「そ、それは・・・」

 

 途端に勢いを弱めた彼に、私は一歩近づいてから上から目線で相手の眼を、まっすぐ見上げます。・・・身長低いって、こういう時には格好悪すぎる・・・。

 

「仮に、です。もし仮に侵略してくる敵国の王を倒したとしましょう。その後どうなると思います?」

「それは・・・戦争が終わって平和が戻って・・・」

「きません。むしろ今度は攻め込む側に回るでしょうね。侵略された側にとって憎むべき怨敵である敵国の王が倒されたというのに平和外交するバカな政治家など実在しません。

 愛する家族を殺されたのだから、敵国兵士の愛する家族を殺しに行くのは当然の権利。それが戦争で家族と仲間と隣人と、愛する人たちを失わされた人たちの怒りと怨嗟の念は、端から見ているだけでヤジを飛ばしてるだけの無関係な赤の他人たちが思ってるほど軽くはないのです。

 悪を殺せば、殺された悪の遺族たちに憎悪される。憎悪は戦争を生み、悪を倒した貴方への恨みが次なる戦争の篝火となる。それが勧善懲悪の現実ですよ」

「・・・・・・」

 

 黙り込んだ彼を放置し、部屋を出ていこうとした私の背中にーー

 

「・・・いいのか? そんな余裕かましちゃっても」

 

 不気味な声をーー少なくとも彼は“不気味な声”をイメージして表情ともに作ってみせてはいるのでしょうが、無駄なことです。何を言ってくるのかは、あらかた予測がついていますから。

 

「アンタらが俺に協力してくれないなら、俺は領主の館へ密告しにいく。そしたらお前たちは戦争の裏側を知る生き証人として処分されるだろう。死にたくなかったら俺に協力した方が賢明だと思うがな」

「・・・・・・!!!!!」

 

 トモエさんが驚愕の表情を浮かべ、女神様は「あちゃー、やっちゃったよこのバカ様は」って感じの顔を見せ、私は深く深くふか~~~くため息をついてからウンザリした表情で相手の顔を見返して、

 

「・・・アホですか? あなたは・・・」

 

 と、正直に言ってみたところ、相手はうろたえ狼狽して余裕を崩しながらこちらの眼を見つめてきましたので、私も外すことなく見つめ返してあげました。

 

「なぜ私が貴方の前で今の話をしたと思っているのですか? 邪魔な口なら閉じさせるのも手、などと考えていたわけではないのですよ? 貴方にはそうする必要性すらなく、何もできないし何をしても意味がない」

「な、なんでだよ! 俺だって町の一員だ! 余所者のお前らなんかよりも証言を信じてもらえて当然じゃないか!」

「ええ、そうですね。町の一員で、スリの常習犯で衛兵にくってかかった無法者。

 態度が悪くて大人に懐かず、“自分は一人で生きていくんだ、大人なんか信じない”と誰憚ることなく大声で叫ぶ『他人を信じない』子供を、どうして他人が信じてくれると信じ込めたのですか? 貴方は」

「・・・・・・!!!!」

 

 ようやく今まで自分が仕出かしてきた諸々を思い出してきたらしい彼は、青ざめた顔で沈黙し、私はいつもどおりに当たり前の常識について語り出しました。

 

 それは人として守るべきルールについて。人を信じる必要性についてです。

 

「ルールとは本来、守る人たちにとっては守らない人たちを攻撃するための武器に使えるものです。守らない人たちから身を守るための防具となって然るべき物なのです。

 政治家たちの腐敗だなんだとかで“力さえあれば許される”なんて、アホみたいな理屈を並べたてる大バカさんたちには事欠きませんがね。あんな人たちはアホです、無視して宜しい。

 力づくで国を成立させた過程があるのですから、力の論理が上では通じるのはむしろ当然。

 一方で、守られる立場の人間が唱える現体制を否定する言葉など、所詮は予定調和に過ぎません。大人の支配にたいする反逆なんて、豚所に引かれる豚の反乱としか大人たちの眼には映らない。

 大人たちに信じてもらいたいのであれば、まず自分から大人たちを信じられるように努力しておきなさい。歳をとって大人になれば分かるはずだなんて・・・大人になるまで死なずにすんだ幸運な子供たちの言葉なんですよ?」

「ーーー!!!!」

 

 ダッ!!

 

 バタンッ! ドタドタドタ・・・・・・

 

 

 

 遠ざかっていく足音を聞きながら、私は先ほどよりも更に深くて重いため息をついてから疲れ果てた声と口調で無理矢理に声を絞り出し、出発を促すことにします。

 

 

「ーー行きましょうか、お二方。どうやら私にとってこの国は・・・なんだかスゴく疲れるみたいです・・・」

「「・・・・・・」」

 

 何も言わずに承諾してくれた二人には、次の町の宿屋でデザートを御馳走しようと心に誓った私でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガタゴトガタゴト・・・・・・

 

「・・・メガミ殿」

「ん~? なんですかー? 今ちょうどセレニアさんが疲れ果てて眠ってくれたから、膝枕して寝顔愛でてる最中なんで邪魔した理由がしょうもなかったら殺しちゃいますよ~」

 

 月が昇って、日が落ちて。

 夜の街道を河がないから普通の速度で進んでいく馬車の上で。

 泣き疲れて眠りこけたセレニアを、珍しく女神らしい慈愛に満ちた表情で見つめる女神にたいして御者席に座る侍ガールのトモエが前方に顔を向けたまま振り返ることなく決意を述べる。

 

「拙者は強くなるで御座るぞ。心も体も強くなって見せるで御座る。

 ーーもう、子供の拙者は卒業いたす」

「ん。せいぜい頑張りなさい。私たちの勇者様は、強くて弱くて傷つきやすいんだから、ボケッと守られてるままだと辛くなる一方ですからね」

 

「まったく。ぜんぜん勇者らしくないのに、女神様の寵愛を独占できちゃうところだけは勇者らしいなんて反則ですよ? 私のかわいい勇者様」

 

 

 ちゅっ。

 

 

 

・・・はじめてタグにガールズラブついてる作品らしい締め方で続きます。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。