【改正前】海外移住したら人外に好かれる件について 作:宮野花
百合ちゃん視点でないので、会話メインになります。読みにくかったらすいません……。
というより読みにくいですよねすいません…。
「ではユリさん、本日は帰宅していただいて構いません。社のものに車を出させます。預かっているお荷物も車にお持ちします。」
「わかりました。」
「出社なのですが、可能であれば明日からお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です。」
「ありがとうございます。それでは明日9:00に出社をお願いします。制服はこちらで用意いたしますので、私服で来ていただいて構いません。持ち物も筆記用具と昼食のみで大丈夫です。」
「わかりました。えっと……明日は、普通に正面玄関から入ればいいんですか?」
「はい。大丈夫です。あらかじめ受付にユリさんのことを伝えておきますので、フロントに声をかけていただけますか。明日はフロントに迎えを送りますのでご安心ください。」
「わかりました。……あの、気になってたんですけど、Xさんって日本人ですか?」
「え?ああ、母が日本人、父が韓国人のハーフなんだ。ただ生まれと育ちは韓国だよ。」
「あ、そうなんですね。私日本人なので、同じかなって気になってしまって……。」
「あー、そうなんだね。日本には行ったことすらないから全く知らないんだ……。言葉も英語とかはできるんだけど、日本語は全然わからない。……よかったらさ、黒井さん今度日本語教えてよ。」
「あ!はい!もちろん!」
「ユリさん、帰りの道案内に社員を呼びました。廊下で待機しています。どうかお気を付けてお帰りください。」
「はい!明日からよろしくお願いします!」
満面の笑みで別れの言葉を告げた黒井百合に、Xは挨拶を返すことが出来なかった。
初対面の時と明らかに様子の違った彼女にXは不安を覚える。言葉にするならそれはまるで。
「大丈夫ですよ。X。」
「なにが。」
「スーツケースの中身は完璧に元に戻してありました。中身を見たことにユリさんが気付くことはありません。」
「……なぁアンジェラ。お前、黒井さんに何した。」
「なんのことですか?」
「とぼけるな。お前の目を見た途端、黒井さん明らかに変わっただろ。」
「私の説得に心動かされたのでしょう。」
「説得?馬鹿言うな。あんなの、洗脳だろう。」
そう。それはまるで〝洗脳〟であった。
「何を言っているか理解できません。」
「お前は黒井さんが入社するように洗脳したんだろ。おかしいと思った……。なんで外部の人間に会社の事を丁寧にベラベラ話すのかと思ったら……。最初からこうするつもりだったんだな。」
Xは強くアンジェラを睨んだ。
AIである彼女にそれは恐怖にならない。けれど怒りを伝える方法としては十分であった。
アンジェラは自身のパートナーを至極面倒臭いと考えながら人によって作られた知能で、言葉を組み立てていく。
「……そう思うなら、どうしてもっと強く止めなかったのですか?」
「は……。」
Xを黙らせる言葉を。
「X、貴方が言っていることに私は覚えがありません。ただ、何を言いたいのか理解することは出来ます。そう思ったのなら、何故もっとちゃんとユリさんを止めなかったのですか?目の前にいたのなら、ペンを奪うことだって書面を破くことだって出来たでしょう。」
「それ、は……。」
「それは、貴方がこの会社の為を思って。この会社にはユリさんが必要だと思って止めなかったのではありませんか?」
Xはアンジェラの言葉を否定しようとした。
この会社の為なんてことは絶対に有り得ないことだと思ったからである。
彼は働いてはいるものの、利益のために人の命を犠牲にするこの会社を好いていなかった。むしろ嫌悪すら抱いていた。
それなのに、Xはこの会社をやめることが出来ていない。
「Face the Fear, Build the Future.」
「え……。」
「この言葉、貴方にもお伝えしましたよね。あれは確か……貴方がこの研究所に移動になった初日でしたっけ?」
Face the Fear, Build the Future.
その言葉はアンジェラの言う通り、この研究所に移動になった初日に彼女から聞いたものだった。
Xは元々、lobotomy corporationの別の部署で働く一社員であった。
昇格の言葉とともに渡された移動の話。それがこの研究所の管理人という立場だったのである。
それまでこの会社が、何の変哲もない誰もが憧れる大手企業だと思っていた彼は、触れてしまったその異常に酷く困惑した。
そんな彼に寄り添ったのは、パートナーを名乗るAI、アンジェラであった。
アンジェラは言ったのである。Xに、『Face the Fear, Build the Future.』
その言葉はXにとって、魔法の呪文のようであった。想像もしていなかったアブノーマリティという人外と、業務内容。そして恐怖に立ち向かう力をその言葉はくれたのである。
「未来のために……恐怖に立ち向かう……。」
改めて聞いたその言葉は、Xに再び力を与える。初心に戻ったような感覚に、彼は陥っていた。
そんなXを察してアンジェラはめったに変えないその表情に笑顔を咲かせる。
「ユリさんも、Xと同じだったのではないでしょうか。」
「俺と……同じ……?」
「X、私と貴方が初めてあった日。貴方は私に言いました。未来を創るために、誰かが恐怖に立ち向かわなければならないのなら。貴方は、自身が恐怖に立ち向かうと。」
「俺が……そんなこと……。」
「ユリさんも、選んだのです。恐怖に立ち向かうことを。」
Face the Fear, Build the Future.
その言葉の意味をもう一度考え直したところで、あぁそうだと。Xは思い出した。
自身は選んだのだ。未来を創るため、自ら恐怖へ立ち向かうことを。それはとても素晴らしいことであると彼は思っていたから。
だから、Xは会社を辞めない。
黒井百合も自身と同じであることにXはその時気がついたのだ。同じ目的で、同じ選択を彼女はしたのだと。
「アンジェラ、ありがとう。アンジェラのその言葉のおかげで、初心を思い出せたよ。」
この時Xの中に、アンジェラを疑う気持ちはなかった。彼の心の内は晴れ晴れとしていて、この瞬間とても充実しているものであった。
ところで〝Face the Fear, Build the Future.〟という言葉が黒井百合に投げかけられた時、アンジェラの隣にいたXも勿論その言葉を聞いていたのだが。
何故その時、今と同じような気持ちにXの心は動かなかったのか。アンジェラの珍しく開いていた瞳がXに向けられていたこととなにか関係があるのか。それはもう、わからないことである。
「X、ティーカップを片付けていただけますか。映像の私は触れることが出来ないので。」
「わかった。片付けてくるよ。」
Xが盆にティーカップに客をのせて部屋を出たのを確認して、アンジェラは自身の行動履歴の中の【洗脳プログラム:Face the Fear, Build the Future.】を密かに消去した。
「……申し訳ありません。X。」
アンジェラはそっと呟いた。
「〝管理人〟という駒だけでは、私の理想を叶えるのに些か不安があるのです。……けれど、おかげでいい駒が手に入りました。」
アンジェラは自身の手をぎゅっと握った。映像の彼女の手は何も出来ない。盆を持つことも、ティーカップに触れることも。
けれど、彼女は確かな感覚を感じていた。〝黒井百合〟という駒の存在を、その手で確かに掴んでいるのだと。
X and Angela _〝誰かの有能なAI〟
アンジェラ
参考:http://ja.lobotomy-corporation.wikia.com/wiki/Angela_(Legacy)
※この回はレガシーバージョンを強く参考にしていたため、書いた当時に参考にしたページを載せております。
【ユリちゃんのロボトミーコーポレーションメモ】
わーい!働くぞー!!
【ダニーさんのひと言】
この一言は削除されました。
本当は溜めておいて間あけて投稿しようと思っていたのですが、ここはあんまりわけない方がいいかなと思い一気投稿にしました。
アンジェラ、完全に捏造ですすいません。
当作品のアンジェラはこんな感じです。原作のストーリーモードが進んで矛盾が起きたらその時考えます……。すっごい冷や冷やしてます…。
【追記小ネタ】
昨日眠過ぎて書くの忘れたので追記。
ロボトミーの二次創作をニヤニヤして読んでるとエージェントが危険な目にあった時大体「俺達の仕事はFace the Fear, Build the Future.だろ」みたいな発言があり。
それを読む度に洗脳されてる(白目)と思ってこの捏造設定が生まれました。
ちなみにアンジェラは今原作の更新次第で地雷になりかねんのですが。
一つとんでもなく厄介な爆弾アブノーマリティがいることに皆さんお気づきだろうか。
本当はそのアブノーマリティの対処考えてから話進めたかったんですが、ふんわりとしか考えてないです。とってつけ感は避けたいからちゃんと考えんと…。一応は考えたんですけど…。
とあるアブノーマリティにえ、作者こいつどうするんって奴がいましてですね。
私も え、私こいつどうするんって思ってます。
原作を知っている方なら察しがつくでしょう。状態によって強制縛りをもうけてくる対価さんです。あいつまじどうしよう。
このアブノーマリティの観測日記めっちゃ好きなんですけどね…。