【改正前】海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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説明回です。
今回は公式とウィキの情報を元にした説明回なので、会社概要に捏造はありません。ただその表現は完全に私個人のオリジナルです。
原作知らない方はあー、こんな会社で働いてるってことねって思っていただければ。
ただ、会社概要以外は捏造です。










誰かの優秀なAI_2

混乱する頭。人じゃない何かとか、AIとかもうてんこ盛り過ぎてよくわからなくなってくる。

思わず頭を抑えるも、そんなことお構い無しにアンジェラさんは話をやめない。

 

「さて、ユリさん。ここまで巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。そして罰鳥と静かなオーケストラ……、研究対象の収容と鎮圧のご協力ありがとうございました。」

「あ……はい。鳥と、人形のことですよね。どういたしまして。」

「ユリさんは、こういう不思議な出来事に慣れているのですか?あまり驚かれていないようですが。」

「いや、充分驚きましたし慣れてませんよ。鳥の方は正直恐かったですし。人形は……なんか直感で大丈夫かなーってその時は思ってたんですけど、多分人形が何か力を使ってたのかな……?普通の状態じゃなかったというか。今同じ状況になったら私きっと発狂してますよ。」

「そうですか……。けれど、研究対象の部屋の前を貴方が通るとその研究対象に好反応を感知することができました。なにか心当たりなどございませんか?」

 

〝好反応〟。それを聞いて思い浮かんだのは自身に流れる陰陽師の血。

なんて、言葉にするとかっこいいのだけれど、残念ながら私にはその力の一切がない。そのくせに悪霊とかには嫌われる体質なのだから、その〝好反応〟に思い当たることなんてさっぱりだった。

私が前を通ったら、好反応がでた?逆ならまだわかるのだけど……。あれ?

そこまで考えて、一つ気が付く。私が前を通った瞬間を、この人たちはわかっている?

 

「……私のこと、見てたってことですか?」

「あぁ……。申し訳ありません。我々は研究対象をモニターを通して監視することが仕事でして。研究所には監視カメラがつけられております。」

「えっ……?!じゃあ、ずっと見られてたってことですか?!」

 

それは、普通に嫌だ。

自分の今までの行動を思い返す。ここに来るまでずっと見られていたなんて。つまり私がダニーさんと言い合っていたのも、人形の変な高音で頭痛に苦しんでいたのも全て見られていたということになる。

いや、まだそれはいいとして。自分の無意識の行動はどうだろうか。見られてるなんて思わなかったから、自分でも意識しないで変な表情とかしてたかもしれない。

 

「うん。ごめんね。監視することでの〝管理〟が俺達の仕事だから。黒井さんが協力してくれたの見てたよ。でも安心して。監視カメラにはあるフィルターがかかってるから、プライバシーの完全な侵害にはならないよ。」

「フィルター?」

「そう。〝Cognition Filter〟。監視カメラを通して人を認識し、その姿をアニメーションに変換してくれるんだ。詳しい仕組みは俺もわからないんだけどね。黒井さんのこともアニメーションのキャラクターが鳥かごを持って歩いてる位にしか見えてなかったよ。」

「そ、そうなんですか……。それなら、安心していいのかな…?」

 

監視されていることに変わりはないけれど、私がそのまま映っていてずっと見られているよりはマシなのかもしれない。

それに何を言っても、今回はたまたまこの人たちが仕事で使っているカメラに私が映ってしまっただけだ。私がいるから仕事である管理を止める、なんてことは難しかったのだろう。

それが普通の研究対象ならまだしも、あんな危険性のあるものなら尚更。

 

「巻き込んでしまったからには、この研究施設でなにが行われているかご説明する義務が私たちにはあります。ただ、これからお話する内容を、どうか外部へもらさないでほしいのです。」

 

アンジェラさんにそう言われて、戸惑う。

今から話されようとしていることは、本来一般人が知ってはいけないことだ。

世の中には知らない方がいいこともある。それを私は知っている。きっとそれが正解だ。

でも?

でも。このまま何も知らないで帰ったら?永遠にここが何なのかわからないままだ。

今日のことを私は忘れることなんてできないだろう。新しい記憶に埋もれては、時折ふと思い出す。そしてその度に『あれはなんだったのか』と奥歯にものが挟まったような感覚に陥るのだろう。

私は知りたい。知る意味なんてきっとない。けれど好奇心が、私を駆り立てる。

 

「お約束いただけますか。」

「―――はい。」

 

そうして好奇心は勝ったのであった。

 

「ありがとうございます。……我がlobotomy corporationでは現在新たなエネルギーの生成と供給の研究を行っています。

それはアブノーマリティと呼ばれる未知の生物からエネルギーを得るというものです。ユリさんが際ほどメインルームでお目にした人形はその〝アブノーマリティ〟というものです。

アブノーマリティには気分があり、それは高揚と低迷を繰り返します。

気分によってアブノーマリティはエネルギーを生成させたり、逆にエネルギーの吸収と消費を行ったりします。

その気分をエージェントと呼ばれる社員の行動によってコントロールし、効率よくエネルギーを生成する。それが私達の研究内容であり、仕事です。」

 

先程の鳥や人形は、〝アブノーマリティ〟と呼ばれるエネルギーの元ということだろうか。

 

「アブノーマリティは特殊な能力を持っており、時としてエージェントに危害を加えることがあります。その為扱いには最大の注意をはらわなければなりません。

先程収容していただいた鳥型のアブノーマリティ、〝罰鳥〟も、人形の形をしていたアブノーマリティ〝静かなオーケストラ〟も人を殺したことがあります。

今回も貴女の力がなければ多くの犠牲がでたことでしょう。なので、とてもたすかったのです。本当にありがとうございました。」

 

つまり、未知の存在からエネルギーを抽出する。けれどその存在はとても危険で人が死ぬこともある。ということか。

自分なりにまとめてみたけれど、全く現実味のない話だ。このあらすじで1本のCGアニメーションが作れそうである。

 

「あそこまでアブノーマリティが大人しく収容されたのは初めてです。すごいことなのですよ。」

 

なんだか褒め称えられているけれど、何か特殊な力を使ったでもない私からしたら喜んでいいのかわからない。

どう反応していいかわからず、乾いた笑いが溢れた。

アンジェラさんはその笑いにどう反応もせず、ただ真っ直ぐと私を見て、こう言った。

 

「ユリさん。どうか我がlobotomy corporation 研究所のエージェントになって頂けませんか。」

「え……。」

「私達ができる力全てを使って貴女を、貴女達エージェントを全力で守ります。」

「お断りします。」

 

考えるより先に言葉が出た。

 

「お願いします。私の目を、見てください。私は嘘をつきません。」

 

何を言われても、ここで働く気にはならない。

住み慣れた土地を離れたのは何のためか。死なないために、危険を避けるために私は移住までして逃げてきたのだ。

それなのにわざわざ自分から危険な仕事に就くなんて考えられない。

 

「私の目を、見てください。ユリさん。」

「なんと言われても私は―――。」

 

断ろうと、顔を上げた時だった。

出かけた私の声は喉で立ち止まる。私はアンジェラさんから目を離せなくなる。

ピタリと閉じられていた瞳が、開いているのだ。アリスブルーの髪とは比例して、炎のような暖色の瞳。

何故だか私は目をそらすことが出来ない。まるで吸い込まれるように、その瞳に魅入った。

アンジェラさんは瞬きをせずに、また口を動かしはじめる。

 

「Face the Fear, Build the Future.」

「……え?」

 

Face the Fear, ―――恐怖に直面し

 

「我社の社訓です。ユリさん。大きな成果を成し遂げた偉人は、様々な恐ろしい困難に自ら立ち向かっていきました。その人たちの活躍があって、私達のいる今は在るのです。」

 

Build the Future.―――未来を作る。

 

「誰かが困難に、恐怖に立ち向かわなければ未来は作られない。その誰かが、私達だったということです。それって、素晴らしい事だと思いませんか?」

「それは……。」

 

頭が真っ白になる。ぐるぐるとアンジェラさんの言葉が頭の中で踊っていて、もうそれしか考えられなくなる。

 

Face the Fear, Build the Future.

 

その言葉の意味を考えて、私の心臓はドキドキとその興奮をおさえられない。

 

Face the Fear, Build the Future.

 

死をリスクに未来を作る。私が危険を犯すことで、世界が変わるかもしれない。新たな時代の対価は、私の人生。なんだか、それは。

 

「とても、素晴らしいですね……!」

 

そう、素晴らしいことのように思えた。

 

「私が、未来を作る。」

「そうです。ユリさん、協力して頂けませんか?未来を作る協力を!」

「私が、未来を……!」

 

あぁ、まるでいつかの革命家のように。歴史のリーダーのように。漫画のヒーローのように、小説の主人公のように!

想像してうっとりする。誰もが称賛するその素晴らしい存在になれるチャンスが目の前にあるのだ。

そんな私を見てアンジェラさんはニッコリと笑い、1枚の紙を私の前に差し出した。

 

「これは雇用契約書面です。ここにサインをいただければ、ユリさんは晴れてlobotomy corporation の一員です。」

 

その言葉を聞いて私は用意されたペンを手に取る。上から下まで確認事項をざっと読んで、同意の氏名を書こうとした時だった。

 

「黒井さん、待って。」

「?」

「本当にいいの。」

 

Xさんが、私に問いかけてくる。何をそんなに難しい表情で。

こんなに素晴らしい仕事、誰だって就職したいに決まってるのに。もしかして私が無理をしようとしてると心配しているのだろうか。だとしたら彼はなんて優しいのだろう。

Xさんを安心させる為、私は書面に氏名を記入して、Xさんとアンジェラさんに見せつける。

「これからlobotomy corporationの一員として、よろしくお願いします!」

 

そして心の底からの笑顔で、二人にそう応えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




すっごい書きにくかったです。
あと少しで人外を好き勝手かけるというのを励みに仕上げました。
矛盾してる所あったら指摘いただければ幸いです。あと原作知らない方で、説明わっかりにくいよバーロー!となりましたらどこがわかりにくいか指摘いただけるとすっごい助かります。
いやもう自分で書いてるよよくわかんなくなって……。

※ちなみにCognition Filterはウィキを参考に書きました。ストーリーモードあまり知らなくて、この設定もウィキで知りました。ロボトミーの世界って深い!!!よけい好きなりました。

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