【改正前】海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

105 / 113


wikiが使えなくなったのも原因で投稿遅れました。すみません。
その癖に薄味回です。申し訳ない……。







The Knight of Despair_7

憎しみの女王が杖を振ると、真っ直ぐとビームが出る。

それを絶望の騎士は切って前に進んでくる。

近距離は彼女の得意分野だ。剣は接近戦でこそ活躍する。

──それを憎しみの女王も分かっている。

 

「甘いわね。」

「っ!?」

 

目の前まで来た時、切りかかろうとしたのと同時に、憎しみの女王はその場にしゃがんだ。

そうして真上にくる、剣の空ぶった絶望の騎士の腹に。

 

「アルカナビートっ!」

「ぐっ……!?」

 

思い切り、ビームを打つ。

吹き飛ばされる体。憎しみの女王はそれを見下ろして、はぁ、とため息を吐く。

 

「……あなたの戦い方はね、あまりにも正攻法過ぎるの。動きが簡単にわかる。まるでマニュアルと戦ってるみたいだわ。」

 

優しく、まるで生徒に教えるかのように憎しみの女王は絶望の騎士へ話す。

そんな憎しみの女王に、絶望の騎士の胸に怒りと悔しさが込み上げてくる。

閉じていた目を、カッと見開いて。強く憎しみの女王を睨みつけた。

絶望の騎士の瞳は青く深く。まるで海のようだと、かつての彼女の主は言った。

しかし今は、その青に確かな火を憎しみの女王は感じる。しかしそれに恐怖を感じることはなく。またため息をつく。面倒くさそうに。

 

「こんなこと、やめない?」

「やめないわ!!」

「でも……わかるでしょ?貴女は私には勝てない。」

「そんなことない!!」

「随分長いこと休んでたんでしょ?腕が鈍ってるわ。……記憶は曖昧だけど、貴女はもう少し強かったはず。」

「それは……、」

 

カツカツ、とヒールの音を立てて絶望の騎士に近づく。

そうして、倒れるその背に憎しみの女王は優しく、足を置いた。

 

「前の貴女ならいい戦いになったかもしれないけど……、今の貴女に、負ける気がしないわ。」

 

その言葉に、ぶわっと。怒りが沸き上がるを感じた。

渦巻く。何かが。内で成長し、膨張し。溢れてくる。

 

『きっと笑顔の方が似合うよ。』

 

あぁ、あの子の言葉が。優しい声が。思い出される。

歯を強く食いしばる。立たなければいけない。

 

「……そうやって、地を這いつくばってる方が、お似合いよ?騎士様?」

 

……は、

…………は?

 

はあぁぁぁぁっ!!許せない許せない許せない!!

こんな、こんな!!

こんなこと許せない!!

こんな……!こんな!!こんな酷いことを言う女が、あの子の傍にいるなんて!!

汚れる!!汚れてしまう!!

あの子の美しい心が!笑顔が!私の正義が!!

 

「絶対に……お前を……殺す……!!」

「っ、!?」

 

一気に溢れる絶望の騎士の魔力に、反射的に憎しみの女王は距離をとった。

ゆっくりと立ち上がる絶望の騎士。

憎しみの女王は杖を構える。何か、何かとんでもないものが来るような気がした。本能が、警告を鳴らしている。

白く濁った光が、絶望の騎士を包み込む。

その光は決して美しいものではなく。灰色に辺りを包み込んでは憎しみの女王の目を潰した。

 

「……殺す、お前は、あの子のそばにいてはいけない……!」

「ちょ、ちょっと……!?正気を保ってよ!!闇に呑まれるなんて、魔女としてあってはいけな、」

「死ね!!」

 

かつての同僚の異変に憎しみの女王は声を上げるが、絶望の騎士の耳には届かない。

罵声と共に飛んできた何かを咄嗟に避ける。それは絶望の騎士の、細い剣であった。

騎士道を重んじる戦いをする絶望の騎士が、剣を投げてくるなど。

信じられない出来事に憎しみの女王は目を見開く。

いくつもの黒い棘が。絶望の騎士の胸から、腰から、背中から、足から生えのび、服すらもを貫通し飛び出ている。

そうして頭からも、天に向かい伸び生える棘はまるで角で。

悪魔だ。と。憎しみの女王は思った。

そこで憎しみの女王は、絶望の騎士を説得することを諦める。真っ直ぐに杖を向ける。

 

「あなたも結局飲み込まれたのね……。」

 

そう呟き、彼女はかつての先輩の姿を思い出していた。

憎しみの女王と、絶望の騎士の先人。誰よりも前を進んでいき、誰よりも先に、己の魔力に溺れてしまった。

闇へと堕ちた、魔法少女のことを。

 

「これは決して逃れられない運命なの?」

 

自分たちの持つ巨大な力を、魔法少女達は分かっていた。

だからこそそれは上手く扱わないといけないと。教えたのは先輩で。教えられたのは自身と、彼女、絶望の騎士だ。

 

かつての先輩と、目の前の絶望の騎士の姿が重なる。

更にそこに、何故か巨大な青い蛇の姿も重なる。

……何故だろう。頭が、痛い。

 

「……だめね。余計なことを考えては。」

「殺す……!死ね……っ!!」

 

考えを放棄する。ややこしい事を考えるのはあとだ。そう、それこそ、ユリと一緒にお話でもしながら、昔話をすればいい。

そうすればきっと、いい方向に物事を考えられる。

過去に囚われていてはいけないのだ。

そう。

昔の仲間なんかに、囚われてはいけない。

 

「……私達の未来のために、私は貴女を倒すわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

「だれか……!いませんか!ねぇ!!閉じ込められてるの!!」

 

ユリは変わらず収容室の中。必死にドアを叩いて外に助けを求める。

インカムにも何度も声をかけたが無反応。

外で何が起こってるのか、分からない。音も何も、その部屋にはなかった。

まるで自分だけ取り残されてるような──。

 

その時、場違いにも。

一瞬、嫌な過去が脳裏を過った。

頭を抑える。どうして、こんな時に思い出すんだろう。あまりにもこの部屋が静かだからだろうか。

日本にいた時の……、私だけ留守番だったあの家を。思い出すなんて。

 

「……だめ、助けを求めるんじゃなくて……、自分から動かないと。 」

 

皆の背中を見ていたばかりだった。でももうそれじゃあダメだ。

 

私は弱いけど。

強くならないといけない。

 

私は床に置いておいた、武器の杖を拾う。

アイと同じ杖。まだ使いこなせてはいないだろう。威力は強いが、どういった攻撃が出来るのか私も分かっていない。

そういえば、ダニーさんに先日言われたことを思い出す。

彼は言った。「立場をわきまえろ」と。弱いことを理解しろということだと、私は受け取った。

 

「今度こそ、褒めてくださいね。」

 

両手でしっかり杖を持って。少し扉と距離を置いて。

杖を振り上げる。狙いを、扉に定めて。しっかりと的を見て。

思い切り、振り下ろした。

 

閃光と、破壊音。

 

ドォォォンッ!!と、大きな音を立てて。扉に小さな穴が開く。

さすがに一回で壊れる程弱くはないらしい。ならば、何度でも繰り返して。

壊れるまで、繰り返す。そうしてどこかに行かなければいけない。どこにいるか分からないエミの元に。向かわなければ。

何かが手遅れになる前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








ちょっと更新ペースあげれるよう頑張ります。すみません。




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。