【改正前】海外移住したら人外に好かれる件について 作:宮野花
wikiが使えなくなったのも原因で投稿遅れました。すみません。
その癖に薄味回です。申し訳ない……。
憎しみの女王が杖を振ると、真っ直ぐとビームが出る。
それを絶望の騎士は切って前に進んでくる。
近距離は彼女の得意分野だ。剣は接近戦でこそ活躍する。
──それを憎しみの女王も分かっている。
「甘いわね。」
「っ!?」
目の前まで来た時、切りかかろうとしたのと同時に、憎しみの女王はその場にしゃがんだ。
そうして真上にくる、剣の空ぶった絶望の騎士の腹に。
「アルカナビートっ!」
「ぐっ……!?」
思い切り、ビームを打つ。
吹き飛ばされる体。憎しみの女王はそれを見下ろして、はぁ、とため息を吐く。
「……あなたの戦い方はね、あまりにも正攻法過ぎるの。動きが簡単にわかる。まるでマニュアルと戦ってるみたいだわ。」
優しく、まるで生徒に教えるかのように憎しみの女王は絶望の騎士へ話す。
そんな憎しみの女王に、絶望の騎士の胸に怒りと悔しさが込み上げてくる。
閉じていた目を、カッと見開いて。強く憎しみの女王を睨みつけた。
絶望の騎士の瞳は青く深く。まるで海のようだと、かつての彼女の主は言った。
しかし今は、その青に確かな火を憎しみの女王は感じる。しかしそれに恐怖を感じることはなく。またため息をつく。面倒くさそうに。
「こんなこと、やめない?」
「やめないわ!!」
「でも……わかるでしょ?貴女は私には勝てない。」
「そんなことない!!」
「随分長いこと休んでたんでしょ?腕が鈍ってるわ。……記憶は曖昧だけど、貴女はもう少し強かったはず。」
「それは……、」
カツカツ、とヒールの音を立てて絶望の騎士に近づく。
そうして、倒れるその背に憎しみの女王は優しく、足を置いた。
「前の貴女ならいい戦いになったかもしれないけど……、今の貴女に、負ける気がしないわ。」
その言葉に、ぶわっと。怒りが沸き上がるを感じた。
渦巻く。何かが。内で成長し、膨張し。溢れてくる。
『きっと笑顔の方が似合うよ。』
あぁ、あの子の言葉が。優しい声が。思い出される。
歯を強く食いしばる。立たなければいけない。
「……そうやって、地を這いつくばってる方が、お似合いよ?騎士様?」
……は、
…………は?
はあぁぁぁぁっ!!許せない許せない許せない!!
こんな、こんな!!
こんなこと許せない!!
こんな……!こんな!!こんな酷いことを言う女が、あの子の傍にいるなんて!!
汚れる!!汚れてしまう!!
あの子の美しい心が!笑顔が!私の正義が!!
「絶対に……お前を……殺す……!!」
「っ、!?」
一気に溢れる絶望の騎士の魔力に、反射的に憎しみの女王は距離をとった。
ゆっくりと立ち上がる絶望の騎士。
憎しみの女王は杖を構える。何か、何かとんでもないものが来るような気がした。本能が、警告を鳴らしている。
白く濁った光が、絶望の騎士を包み込む。
その光は決して美しいものではなく。灰色に辺りを包み込んでは憎しみの女王の目を潰した。
「……殺す、お前は、あの子のそばにいてはいけない……!」
「ちょ、ちょっと……!?正気を保ってよ!!闇に呑まれるなんて、魔女としてあってはいけな、」
「死ね!!」
かつての同僚の異変に憎しみの女王は声を上げるが、絶望の騎士の耳には届かない。
罵声と共に飛んできた何かを咄嗟に避ける。それは絶望の騎士の、細い剣であった。
騎士道を重んじる戦いをする絶望の騎士が、剣を投げてくるなど。
信じられない出来事に憎しみの女王は目を見開く。
いくつもの黒い棘が。絶望の騎士の胸から、腰から、背中から、足から生えのび、服すらもを貫通し飛び出ている。
そうして頭からも、天に向かい伸び生える棘はまるで角で。
悪魔だ。と。憎しみの女王は思った。
そこで憎しみの女王は、絶望の騎士を説得することを諦める。真っ直ぐに杖を向ける。
「あなたも結局飲み込まれたのね……。」
そう呟き、彼女はかつての先輩の姿を思い出していた。
憎しみの女王と、絶望の騎士の先人。誰よりも前を進んでいき、誰よりも先に、己の魔力に溺れてしまった。
闇へと堕ちた、魔法少女のことを。
「これは決して逃れられない運命なの?」
自分たちの持つ巨大な力を、魔法少女達は分かっていた。
だからこそそれは上手く扱わないといけないと。教えたのは先輩で。教えられたのは自身と、彼女、絶望の騎士だ。
かつての先輩と、目の前の絶望の騎士の姿が重なる。
更にそこに、何故か巨大な青い蛇の姿も重なる。
……何故だろう。頭が、痛い。
「……だめね。余計なことを考えては。」
「殺す……!死ね……っ!!」
考えを放棄する。ややこしい事を考えるのはあとだ。そう、それこそ、ユリと一緒にお話でもしながら、昔話をすればいい。
そうすればきっと、いい方向に物事を考えられる。
過去に囚われていてはいけないのだ。
そう。
昔の仲間なんかに、囚われてはいけない。
「……私達の未来のために、私は貴女を倒すわ!」
一方その頃。
「だれか……!いませんか!ねぇ!!閉じ込められてるの!!」
ユリは変わらず収容室の中。必死にドアを叩いて外に助けを求める。
インカムにも何度も声をかけたが無反応。
外で何が起こってるのか、分からない。音も何も、その部屋にはなかった。
まるで自分だけ取り残されてるような──。
その時、場違いにも。
一瞬、嫌な過去が脳裏を過った。
頭を抑える。どうして、こんな時に思い出すんだろう。あまりにもこの部屋が静かだからだろうか。
日本にいた時の……、私だけ留守番だったあの家を。思い出すなんて。
「……だめ、助けを求めるんじゃなくて……、自分から動かないと。 」
皆の背中を見ていたばかりだった。でももうそれじゃあダメだ。
私は弱いけど。
強くならないといけない。
私は床に置いておいた、武器の杖を拾う。
アイと同じ杖。まだ使いこなせてはいないだろう。威力は強いが、どういった攻撃が出来るのか私も分かっていない。
そういえば、ダニーさんに先日言われたことを思い出す。
彼は言った。「立場をわきまえろ」と。弱いことを理解しろということだと、私は受け取った。
「今度こそ、褒めてくださいね。」
両手でしっかり杖を持って。少し扉と距離を置いて。
杖を振り上げる。狙いを、扉に定めて。しっかりと的を見て。
思い切り、振り下ろした。
閃光と、破壊音。
ドォォォンッ!!と、大きな音を立てて。扉に小さな穴が開く。
さすがに一回で壊れる程弱くはないらしい。ならば、何度でも繰り返して。
壊れるまで、繰り返す。そうしてどこかに行かなければいけない。どこにいるか分からないエミの元に。向かわなければ。
何かが手遅れになる前に。
ちょっと更新ペースあげれるよう頑張ります。すみません。