双主革新奇聞ディストリズム   作:マッキー&仮面兵

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オリ主概要
左近衛祈願――愛隷の章視点主。眠目さとり大好き。読みはサコンノエ・イノリ、キガン君と呼んではいけない。

貫井川蓮―――変態の章視点主。因幡月夜と共にいるロリコン。読みはヌクイガワ・レン、話は変わるが小学生は最高だぜ。



『愛隷及び間章担当の仮面兵です。相棒のマッキー共々よろしくお願いします。推しはさとりちゃんです』
――仮面兵


第一節:二人の逢瀬。またの名を「説明回」
愛隷の章


フワフワと、体が浮き上がる感覚に、意識が目覚め身をよじる。

本当に浮き上がっているわけじゃない、これは、寝起きの予兆。

体が揺さぶられる。聞きなれた、間延びした声が耳に触れてくる。

 

「――ぇ――ね~~ぇ?」

「……ぁっ……?」

「も~~ぅ、ねぼすけさ~~ん。さとりが~~起こしにきたよ~~?」

 

目はぼんやりしているけど、頭ははっきりと動き始めてる。

どれくらい寝てたかな?

そう彼女――眠目(たまば)さとりちゃんに向かって紡ぎたい口も、未だ夢の中なのか動いてくれない。

か細い声が自分の喉から漏れるのがはっきりとわかる。

がさり、と衣擦れの音が聞こえた。

あぁ、これはきっといつものパターン。

そう思ったのもつかの間、仰向けな僕の体にさとりちゃんの柔らかな体がのしかかる。

 

「起きない子には~~こうしちゃうよ~~……んむっ」

 

彼女のキスに合わせてはっきりと目が覚めるなんて、僕は眠り姫だな――なんて感想もつかの間。

直後、いつもだったらわかっていたはずのことを、今回は失念していた。ということを思い出した。

 

「んむむむむぅ!!?」

ふぁ~~ふぇ(だ~~め)おふぃおふぃ(お仕置き)~~ジュルルル」

「んぐ、むっ、ふーふー!」

 

息が詰まる。

理由は簡単だ、彼女が思い切り舌を絡まし、空気の入りを妨げているから。

僕の唾液どころか、肺の空気までをすべて吸い取る勢いでされる感覚は未だに慣れないものだ。

だけど感覚はともかく、何度もされるとさすがにどうすれば苦しくないかは慣れるので、最初のころと比べると息を存外保てるようにもなった。

実は剣術を修めているさとりちゃんも、当然僕より息がもつ。

 

――たっぷり数分、彼女がキスを楽しんだところでようやく口が離された。

 

「――おはよう、さとりちゃん」

「ふふふ~~祈願(いのり)ちゃ~~ん、おそようだよ~~?」

 

互いの唾液がべっとりと塗りたくられた口元を制服の袖で乱雑にぬぐい、思い切り消費させられた酸素を、深呼吸で肺に注ぎなおす。

呼吸を整え、刺激的な目覚めを毎度提供してくれるさとりちゃんに軽いげんこつを落とし、自分の袖で彼女の口元もぬぐう。

 

「いふぁ()~~い! 祈願ちゃんひど~~い!」

「毎回言ってるでしょ! 起こすためにキスをしないでって! 寝起きの唾液は汚いでしょ!」

「ええ~~……唾液はいつでも汚いから関係ないよ~~? それに~~、祈願ちゃんのなら好きだからそれも関係ないしね~~」

「関係あるよ……おなか壊したらどうするんだ全く。それと! 外でキスするだなんて誰か来たらどうするの!」

「えぇ~~……ボクは別に見つかってもいいんだけどな~~……それに~~、祈願ちゃんがサボりで寝るところだったら~~ボク以外には見つかりづらいところだもんね~~」

 

――そう、僕は授業をサボって寝ていた。

サボって寝ているので、あまり見つからないように隠れる必要もある。

まぁ、彼女は僕のことを大体見つけてくるんだけどね。

 

「はぁ……で、朝に花酒(はなさか)センパイに呼び出されていたけど、例の転校生の件は結局どうなったの?」

「ん~~、転校生ちゃんについては明日の五剣会議ではなすんだって~~。蕨ちゃんが『さとり姫も必ず参加するのじゃ。左近衛(さこんのえ)を連れてくることも特別に許可してやるぞよ』って言ってたけど~~……祈願ちゃんはくる~~?」

「うん、お断りしたいな。どうせ転校生の話の後に僕らのことについて言及されるのが落ちだし」

「だよね~~。ボク的には別に構わないんだけど~~……見せつければいいのに~~」

「僕が構うよ。僕のせいでさとりちゃんの立場が危うくなるのはうれしくない」

 

――僕ら二人が在籍している、私立愛地共生学園では、さとりちゃんを含めた五人の精鋭のことを天下五剣と称し、数々の権限を与えている。

その権限を用いて活動するうえでの、天下五剣による話し合いが五剣会議。

さとりちゃん曰く、普段の会議は全員揃わないのが普通らしいのだが、転校生という『外敵』の到来に関してだけは必ず全員揃わなければならないらしい。

天下五剣は、そういった取り決めを行う分大きな責任を背負う。

さとりちゃんと僕が人に言えないようなことをしてるなんて、たとえ気づかれていたとしても、わざわざそれを追及される場所にはいたくない。

 

「――そういえば、前回の転校生って誰だったっけ」

「ん~~、斬々(きるきる)ちゃんだね~~」

「あー……女帝さんかぁ。あの時はすごかったねぇ」

 

天羽(あもう)斬々、現在の二つ名は『女帝』。

転校早々、五剣二人がかりで矯正に挑まれたにもかかわらず、あっさり返り討ちにしてしまった強者。

この学園に来るのは、かなり大事をやらかした問題児か、かなり強い腕を持った女帝さんのような人か、そして――権力者によって濡れ衣を着せられた僕みたいな哀れな羊。

大半が五剣によって矯正される結果に終わる中、矯正を退けただけではなく、勝利を遂げた人はほぼいないに等しい。

 

「その前に来たのが~~……ロリコンちゃんだね~~」

「あー、貫井川(ぬくいがわ)センパイか……」

「ボクまだぴちぴちのJKなのに~~BBAって失礼だよね~~」

 

貫井川(れん)、愛地共生学園二年のセンパイ。

さとりちゃんが言うようにロリコン――それも重度のものであり、それが原因でこの学園までやってきた大問題児。

さとりちゃんが聞いた話によると、学園に入学するまで数々の小学生をストーカーしてきたらしく、更生を求めた前学校によりここに送られたのだとか。

入学早々五剣のうち、さとりちゃん含む四名に向かって――

 

『すまないッッ! 俺はBBAに興味はないんだッッッ!! 小学生から出直してきやがれッッッッ!!!』

 

――と、逆ギレをかましてくれやがった。

当然のことながら彼女たちはキレた。

だが貫井川センパイは、キレた四名の猛攻をほとんどよけ切り、なおかつ攻撃もしないというとんでもない結果を残した。

戦績とその過去どちらにおいても、男子学生の中でも特に伝説の人である。

もちろん、さとりちゃんのことをBBAと言った罪は重いので、初めて会った時に一発殴っておいた。

 

一発殴った後は仲良くなったのだけど、ことあるごとに中等部に潜入しようとして僕を巻き込むのだけはやめてほしい。

普段は面倒見のいい、気前もいい、カッコいいセンパイなんだけどね……

 

「あはは……貫井川センパイって今誰が矯正してるんだっけ?」

「ん~~と、月夜(つくよ)ちゃんだね~~。月夜ちゃんって中等部だけど飛び級さんだから~~」

「あー、因幡(いなば)さんは貫井川センパイのストライクゾーンど真ん中ってことか……」

 

五剣の一人であり、貫井川センパイのBBA発言から唯一逃れたのが、唯一の中等部生徒である因幡月夜。

盲目だけどその分耳はいいらしく、それにより学園中の音がほぼ拾えるらしいので――色々と申しわけなくて、僕が全く頭が上がらない子だ。

さとりちゃんが言ったように、彼女は飛び級のため実年齢は小学生ほど。

見た目が合法ロリな花酒(わらび)センパイに一切揺らぐことの無い真性ロリコンな貫井川センパイに、対抗する手段としてはこれ以上に無いくらいベストな人材。

 

「……でも、なんだかんだで因幡さん結構チョロイ子だから、貫井川センパイのこと未だに矯正できてないんだよね」

「月夜ちゃんは~~、お友達が欲しいものね~~」

 

飛び級だし、天下五剣の中ではトップクラスの実力だし、耳年増な面も結構あるけど。

それでも因幡さんは年相応な女の子なんだということをこういう時思い知る。

 

「さとりちゃん、友達で思い出したんだけど、お昼はクラスメイトと食べないの?」

「え~~……祈願ちゃんのいじわるぅ~~……」

「……はいはい、大丈夫だよ、さとりちゃんのお弁当はあるから」

 

そんな寂しがりやな因幡さんとは全く逆で、さとりちゃんにとって友達は不要。

僕さえいればいいとか普段から言ってるだけあって、僕以外と一緒に行動するのは、姉のミソギちゃんだけ。

それなりにコミュニケーション取れるんだからさぁ……と、呆れながら僕は大きめのお弁当箱を一つだけ取り出す。

 

「さすが祈願ちゃんだ~~わかってるね~~!」

「前に二人だからって二つ用意したら、さとりちゃんが一つさっさと食べきって、その上もう一つで『あーん』を強要してきたことはまだ覚えてるよ?」

「ふふ~~そのまま忘れないでくれたらボクはうれしいな~~」

「まったく……ほら、あーん」

「あ~~!」

 

さとりちゃんの口に弁当の中身を放りこみながら、新しく来る転校生のことを考える。

愛地共生学園は元女子校だが、今は超問題児の受け皿としての役割を果たしているため、転校生の大半は男子だ。ゆえに恐らく次来る生徒も男子だろう。女帝は例外だと信じたい。

 

これまでの男子は、偶然にもあらゆる矯正をタイミングよくバックレられた僕や、躱すことなら一流と言える貫井川センパイを除いて、全員が漏れなく矯正推進派によって矯正され、新宿二丁目のような存在と化している。

が、必ずしも推進派が常勝するとも限らない。もしかすると、次来るであろう男子だと思う人物が、推進派の五剣に勝利してしまうかもしれない。

ぶっちゃけた話、推進派の核となる鬼瓦(おにがわら)(りん)センパイと亀鶴城(きかくじょう)メアリセンパイは、天下五剣の中でも序列は弱いほうだ。

方向性の違いで喧嘩するような2人は手を組むことも下手なのでよく自滅してるし。

 

だが、彼女たちが負けてしまうとするなら。

その場合――勝った人は花酒センパイ、さとりちゃんの二人に挑むこととなる。

さとりちゃんを狙う場合、その実力差に真正面からの勝負を諦めてしまうかもしれない。

もしかすると、彼女の弱みを握ろうとして、僕を利用する可能性もある。

もし――もし、僕が原因でさとりちゃんが敗北してしまうことになるのならば……

 

「え~~い!」

「グフゥ!?」

 

突如、何かを思い切り口に突っ込まれたことで、意識がふっと戻る。

舌が痛い、痛い、辛い、なんかひりひりする。この味、生煮えの玉ねぎだ!?

しまった、熱通りきってないものがあったのか!

 

「あ~~、べ~~ってしよっか~~」

 

察してくれたさとりちゃんからティッシュを受け取り、生煮えの玉ねぎを吐き出し、くるんでエチケット袋にしまっておく。

彼女はそれを確認すると、突如お茶を口に含み、口移しで流し込んできた。

 

「むーーー!!」

「んじゅる……レロォ~~」

 

……非力な僕では力いっぱいの抗議も役に立たず、またしても、しっぽり舌を絡めるキスを堪能することとなった。

うれしいんだけど、こうもキスされてばかりだとちょっと男のプライドがどうとかね……情けなくなってくる。

 

そして、一度口を離したあとまたついばむようなキスをして、さとりちゃんは薄く微笑む。

――めっちゃドキッてした。

 

「大丈夫だよ~~」

「……え?」

「さとりは強いからね~~?」

 

――ああ、そうか。

僕はまた要らない心配をしてしまったのだ。

大丈夫だ、彼女は負けない。

なぜならさとりちゃんは――

 

天下五剣の一人として、眠目さとりは君臨しているのだから。

 

 

「ごちそうさまでした~~!」

「お粗末様。じゃあ」

「おなか一杯になったら運動だよね~~?」

「ちょっと待って、なんでまたのしかかってるの? なんで僕の手を――いつの間にか木に括り付けてるし!? あれ!? いつズボン剥いだの返して!? さすがにこれ以上は――」

「静かに~~! 人が来たら祈願ちゃんが困っちゃうんでしょ~~? ほら~~さとりのパンツで口ふさいであげるからじっとして~~!」

「んーー!! むぐー! んぐー!!」

 

……それはそうと、こういう時抵抗できるように、体を鍛えるのは継続しなきゃなぁ……




左近衛祈願転校(原作一年前春、当時祈願中学三年)

貫井川蓮転校(同年秋頭、当時蓮高校一年)

天羽斬々転校(原作春頃)

納村不道転校(初夏頃)

現在学年は上から順に
高1、以下三名高2である。

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