どうも、小木 琉山です。
今回は前回の予告通りの後日談となっております。
少し物語に展開があるとは思います。
できればお付き合いのほどよろしくお願い致します。
では、本編をどうぞ
「キリト、アスナ、ユウキ、シンヤ。四人共、統一デュエル・トーナメントお疲れ様!乾杯!!」
『乾杯!!』
リズベットさんの音頭に合わせて俺たちも復唱する。
二月中旬のデュエル・トーナメントかの翌日。
俺たちはキリトとアスナさんのホームで、打ち上げをする事になった。
と、いうのも、ユウキやリズベットがいきなり、打ち上げをやろう。と言ったのが始まりだ。そこから驚く程のスピードで日時などを決定して今に至る。
因みに、何故か俺の優勝賞金の半分がこれに使われる事となった。・・・いや、特に金に執着はないから良いんだけどさ。
その金で買ってきたのが今俺たちの前に並んでいる数々の高級食材を使った料理たちだ。
チキン南蛮もどきにラグーラビットのシチュー。トンカツ、串揚げ、ステーキ。
女性陣の要望で前回のバーベキュー大会で作った、巨大ケーキも用意された。
今回はアスナさんとエギルも手伝ってくれたから、俺も参加できるのはありがたい。存分にユウキの笑顔を堪能させて頂きます。
「なぁ、シンヤ。まさかとは思う。まさかとは思うが一応聞いておきたいことがあるんだがよぅ。」
いつのまにか横にいたクラインが、心なしか影の入った顔で話しかけてきた。
「なんだ、クライン。今は凄い機嫌がいいから大体の事は答えるぞ。」
そう、今の俺は最高にハッピーなのだ。
なにせ、前回のバーベキュー大会では、ずっと料理を作っててユウキと楽しみ損ねたからな。今回、ようやくその悲願が果たされたのだ。これで幸せになれない筈がない。
「じゃあ、遠慮なく聞くが。・・・お前、もしかしてユウキちゃんと付き合ってたりしないだろうな。」
・・・は?何を言っているんだこいつは。
付き合ってるんだったら、こうやって、コソコソと盗撮なんかするわけないだろうに。
「それが本当なら、天にも昇る心地なんだろうが。生憎とそのような事実は存在しないぞ。」
そう言った瞬間にクラインの顔が輝いた。比喩的表現ではなく。実際に光輝いた。
「だよな、だよな!すまねぇ、俺とした事が。ダチを疑っちまうなんてよぉ。」
「お、おう?どうしたんだよ、いきなり。はっきり言うが少し気持ち悪いぞ。」
涙ながらに謝罪してくるクラインに戸惑いを隠せない。
こいつ大丈夫か?彼女が出来なさすぎてついに狂ったか?
「いやよ、ここだけの話。俺たちみたいな奴らはやっぱり兄弟みたいなもんだ。俺も昨日会ったやつと意気投合してな。
それで、そういったプレイヤー間で同盟を結ぶ事になったんだ。・・・あ、これが加入書な。それでシンヤ。お前は同盟に参加する権利がある。考えてみてくれ。」
やたら長々と語ってからクラインは一枚の紙を渡してきた。俺が受け取るとすぐ様、クラインは他の人の方に行ってしまった。
なんだったんだ?と訝しみながらも、紙の方に目を落とした。
『ようこそ!非モテ連盟へ!!そこの非モテの貴方!大丈夫、モテないのは貴方だけじゃない!私達は兄弟だ!互いに悲しみを分かち合おう!!
さぁ、下の欄にサインをすれば貴方も私達の兄弟だ!!』
「・・・・・・」
内容から読み取れる悲惨さに思わず絶句してしまった。
・・・なんだよ、非モテ連合って。あいつ、そこまで追い込まれてたのか・・・。
やるせない感情が胸で渦巻いている。ごめんよ、クライン。気付いてやらなくて。ごめんよ・・・!
キラリと零れ落ちる涙。そう、これは苦しんでいる友人を助けられなかった自分への不甲斐なさから出る涙だった。
そんな俺の心情を知って知らずか、輝くような笑顔でこちらにサムズアップするクラインがいた。
うぅ、クライン!!
「あれ、シンヤ。どうしたの?凄い表情してるよ?」
と、これまたいつのまにか側にいたユウキが聞いてきた。
ユウキの声は正にエンジェルボイス。どんな状態異常でも直してしまうほどだ。あぁ尊い。癒される。
先程までのクラインを思っての悲しい感情が浄化されて行くようだ。
ふと、ユウキの後ろ側を見てみると。クラインが驚いた表情をし、そして次の瞬間、憤怒の表情を浮かべた。
そして、なにやら口パクで言っている。
口の動きから察するに
『う・ら・ぎ・り・も・の』
との事らしい。
・・・厄介な者を敵に回してしまった。
「・・・いや、何でもない。ユウキこそどうしたんだよ。アスナさん達と居なくていいのか?」
これぞ現実逃避。今見たものを忘れるべくユウキとの会話を楽しむ事にする。
まぁ、どんな状況だろうとユウキとの会話は楽しいに決まっているが。
「うん、大丈夫。少しシンヤと話しておきたくて。」
なんだろう、いつも以上にユウキが可愛く見える。いや、いつも可愛いんだぞ?だけど、今日はそれをさらに超えるような可愛さというか。
とにかくユウキが可愛い。
「お、おおおう、そ、そうか。話くらいいくらでも付き合うさ。」
ユウキにバレないように今まで手に握って居た、加入書をゴミ箱へ。若干、ユウキの後ろの方からの怒気が膨れ上がった気もするが。気にしなくて良いだろう。
「やっぱり、シンヤは優しいね。昨日も本気で闘ってくれたし。・・・まさか、最後のソードスキルでも倒せないなんて、思ってもみなかったよ。」
少しシュンとした風にそうユウキが言う。
「いや、結構ギリギリだったからな?実際にほんの1%の差での決着だったじゃねーか。」
言った通り、やはりギリギリの勝利だった。ユウキが原作にも無いソードスキルを使うとは夢にも見ていなかった。本当になにがあったのだろうか。
「ありがとう、シンヤ。ボクもシンヤみたいに強くなりたいよ。」
なんだろう、いつになくユウキの元気がない気がする。意外とユウキって負けず嫌いなのか?
それに俺が強いだと?少し剣術を百年神と学んだだけだからな。その辺りをつい昨日思い知らされたばかりだ。
「何言ってんだ。ユウキは俺より強いさ。プレイヤーとしても人間としても。俺なんか、百年間修行してたのに、あっさりユウキに追いつかれたからな。あれは驚いた。」
「ぷっ、あはははは!百年って、シンヤはどう見ても高校生にしか見えないよ!」
転生者あるあるその1
本当のこと言っても信じてもらえない。
ツボにはまったのか、一向に笑い止まないユウキに苦笑しながらそんなことを考える。
「はぁ、はぁ。笑いすぎてお腹いたいよ。どうしてくれるのさ!」
「え、俺のせいか!?」
理不尽な言葉に目を剥いて叫び返す。そして、数回そんなやりとりを繰り返すと、俺たちはどちらかともなく笑い出した。
出会った当初はこんなやりとりができるとは思わなかったな。
そんな感慨に浸りながら笑い合っていると。ユウキが不意に今まで見た中で最高の笑顔で言った。
「ありがとう、シンヤ!」
一瞬で心に焼きついたその笑顔に、顔が真っ赤に染まっているだろう俺は心の中で一言呟いた。
(感情表現を忠実に再現しすぎだろ!)
〜〜〜〜
打ち上げも終わり、ログアウトした俺はアミュスフィアを外し、棚に置くとゆっくりとベットに再び倒れ込んだ。
「あぁぁぁぁ!!ユウキ可愛すぎだろ!完全にその後の記憶飛んでんだけど!!」
ベットで身悶えながらそんなことを延々と叫ぶ。近所迷惑?知らないな。
一通り叫び終わった俺は、明日はユウキとどんな話が出来るだろうと考える。
そんなことを考えているうちに眠くなり俺は瞼を閉じた。
俺は、ユウキの最高の笑顔が見れたことによる幸福感に溢れていた。
こんな幸福な日々がいつまでも続いて欲しい。
だが、現実はそう上手くはいかないのが常である。どんなに楽しい出来事もやがては終わりを迎える。
そう、まるで夢のように。
それを実証するかのように、翌朝に一件のメールが来た。
『倉橋です。木綿季くんの容体が急変しました。』
この度はこの様な駄文を読んで頂き誠にありがとうございました。
・・・これ、少しですかね?いきなり物語のクライマックスに一直線な気がするのは気のせいですかね?
物語の展開の調整の難しさを実感しました。
次回は、少し過去に巻き戻っての物語になります。
誠にありがとうございました。