ミヅキ「随分長い前話だね………」
ヒノ「ここまでの簡単なあらすじを説明すると、クロロVSゾルディックも終了してゴン達も無事に家に帰還。クラピカとも連絡取れたらしくその翌日!ついに私が目を覚ました!あとゴン達がラッキースケベ!」
ミヅキ「今言った情報は、最後以外本編だとヒノは目覚めたばかりだから現状全く知らないけどな」
ヒノ「大丈夫、この話で理解してみせるよ!」
ミヅキ「あー、がんばれー(棒)」
前回、着替えを覗かれたので枕でストライクしてやった。
「いや、ホントごめんって。わざとじゃないのは知ってるってば。でも私も女の子だし、しょうがなくない?」
「その割には悲鳴一つあげずに淡々としたお手並みだったけどな」
「ほら、パニックになれば一周回って冷静に、とかあるじゃない。あんな感じ」
「「「………………」」」
いやいや、びっくりしたのはホントだよ?某国民的青い猫が出てくる番組の女の子みたいに「きゃあ~、〇〇さんのえっちぃ~」とか、そういう感じだったのかと言われると別にそういうわけじゃないのは事実だけどね。全くってわけじゃ無いけど。
でも故意じゃなくてもやってしまった事には罰も必要という事で、枕一つで私は許すよ!それに最初に謝ったし!
というわけでそろそろ仕切りなおそうかと思います。
ここに来るまで3人をストライクした後着替えよりシャワーの方が先だよねって気づいたからシャワー浴びて着替えて、そのあとミヅキが朝ご飯作ってくれたから復活したみんなで食べて一息ついて今に至るよ!以上!
「ヒノ!無事みたいでよかったけど、もう体は大丈夫なの?」
「うん、皆心配かけてごめんね。いや~、なんだか1日ちょっとしか寝てないのに、結構長かった様に感じるね」
「具体的には?」
「8話くらいかな」
「なぁキルア。ゴンもヒノも何言ってるんだ?俺にはさっぱりだ」
「俺も知らねぇよ」
過去を蒸し返すのはよくないと思うので、訝し気なキルアとレオリオはスルーして本題に入ろう。
ざっとだけど聞いた話だと、ゴンとキルアは旅団のアジトに入って無事に生還したと。
正確にはノブナガとマチがいたから捕まえる気で尾行。しかし結局捕まってしまってアジトでひと悶着。最終的に死の危機から回避されたっぽく、ついでにミヅキが迎えに来て無事に戻ってきた、という事らしい。
うん、よくわかるようでなんかよくわからないね!
とりあえず問題だったのは、私と旅団がどういう関係だったか、という事らしい。
私が寝込んだ日、大金を手っ取り早く得る為にマフィア主催の賞金首リストを入手したらしいんだけど、その中にフェイタンとシズクの2人がなんと顔写真付きで載っていたらしく、2人とは一度腕相撲の時に私と会話してるのをゴン達は覚えていたので、そこから私と旅団がどういう関係かの話になったらしい。
そんでさっきも説明した通り、旅団を捕まえて賞金を手に入れるのに便乗して私との関係性を聞き出そうとしたらしいね。
つくづく3人の行動力は感心するね。特に誰とは言わないけどゴン!あ、言っちゃった。とりあえず疑問が出たというならお答えしましょう。
果たして、私と旅団が一体どういう関係なのか!
「私は旅団と知り合ったんじゃないよ。知り合った人が旅団だったんだよ」
「それって同じじゃないの?」
「似てるけど非なる物だと私は思うよ」
実際に私が旅団の皆と初めて会ったのは6歳くらい………5歳だったかな?まあどちらにしても子供の頃だったので、全く極悪犯罪者とか知りませんでしたね、はい。
ま、今も子供の範疇ですけど!
それに私が自分から旅団に会いに行ったわけじゃなくて、シンリが出かけるって言うから一緒に連れてってもらったら旅団の所だったんだし。だからきっと悪いのはシンリだね。
結局後から旅団がどういう存在かは色々あって知ったけど、まあ今更感があってどうしようも無いと思うんだよ。
そう、例えるなら―――――
「ゴンだって、小さい頃に会ったきりの父親が実はハンター協会でも問題児って言われて割とやらかしてる風来坊って知ったとしても普通に会いたいでしょ?私もそんな感じで旅団の皆と今更どうしろと」
「何っていうか、実際に旅団とどんな事をしてたのか――――――ちょっとまって、今俺の個人情報ですごい事サラッと言わなかった!?ねぇヒノ!」
「私は基本的に普通に遊ぶ間柄なんだけど。他に説明しろと言われても」
「いや、それも気になるけど今もっと他に―――」
「まあ落ち着けよゴン。お前の親父は今後の展開的にどうせそのうち再開するだろうし今はヒノと旅団の関係の方聞こうぜ。つーわけで、ヒノ。一応確認するが、お前は旅団がどういう集団かは理解してるって事でいいんだな?」
隣でわーきゃー言う親友の肩を抑えつつキルアは吊り目がちの視線を鋭くし、威圧的な眼光でじっと見てくる。
確認と言いつつ返答を期待しているわけではなく、普通に確信している感じ。
確かにキルアの言う通り、旅団の性質はよく知っている。
幻影旅団の活動内容は、主に窃盗と殺人。そして時々慈善活動。あとは個人個人が適度な軽犯罪を犯しているくらいかな。ウボォーが食い逃げするとか(それでいいのかA級賞金首)
基本団長であるクロロの美術品や宝石珍品名品などの物欲を満たす為に命令を出され、団員達が総動員して(参加したい人だけだけど)仕事(?)に励む世間一般から見てもはた迷惑な集団。これだけ言うとクロロ超暴君じゃね?
その思考は冷徹の一言に尽きる。自分達以外の人間を基本道端の石ころ程度にしか認識せず、闇に葬ることに一切の躊躇いを抱かない。窃盗に入り、邪魔をする者達がいるなら惨殺し、好きな物を好きなだけ持ち去る。本能と欲望の赴くまま、野生の獣の様な理不尽な言動だが、それを成すだけの実力があるからこそ厄介。
とまあ、普通に世間一般の評判や情報を並べれば、紛れも無く極悪人であり、実際に事実なのは私も知っている。
でも、確かに冷徹といえばそれまでだけど、それだけで済ませていいとは思わない。
そう思うのも、私が旅団の境遇を含めて、
「それを含めて、返答はイエス。だから、別にゴン達が旅団の皆を捕まえようとしているって聞いても、別に止めないよ?」
「「「え?」」」
私の言葉が以外だったのか、驚いた様な表情をする3人。
そんなに変な事言ったかな?寧ろ旅団捕獲止めないで欲しかったんじゃないの?
「聞いた俺が言うのもなんだが、知り合い捕まる算段してたのにそれでいいのか?」
「そうは言っても、例えば私がイルミさん捕まえに行くって言っても別に止めたりしないでしょ?」
「煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「「………」」
予想通りの答えにゴンもレオリオも思わず「えー」って顔してる。ま、これはイルミさんの自業自得って事で。
つまりはそういう事だよ。
「例え家族だろうと親戚だろうと知り合いだろうと、悪い事をしているなら自業自得って事で捕まろうが報復されようが別に構わないって事だよ!」
「結構辛辣だな!?お前はそれでいいのか!いや、俺が言えた義理じゃねーけどさ!?」
ホントだよねー。
キルアん家ならしょうがないと思うけどねー。
私の言葉にゴンは唖然とし、レオリオも顰めた顔で色々と考えている様子。
「まあ………知り合いだからって犯罪者を簡単に庇うって言わねーのはいいと思うが、あっさりすぎて本当にいいのかって思っちまうんだが………」
「そのまま受け止めればいいと思うよ」
といっても、私と旅団の間に信頼関係や絆があるとしても、価値観も全て同じというわけじゃないよ。
旅団の皆は自分達の行った行動の結果、どういう事態が起こるかを全て覚悟の上でやっている。強盗した組織から刺客を送られたり、賞金首としてハンターに狙われたり、殺した者の縁者に復讐されたり、そうなる事を受け入れて。
まあこの場合受け入れたというよりかは、そうであるとして生きてきた、というべきなのかもしれないけど。
ならば全ての責任は自分達で負うべき。狙われているといっても、軽々に助けに入ったりはしないよ。
ま、今回のウボォーの件みたいに、マグマの海に飛び込もうとしている様な、標的や相手も何もわからない死地に向かう途中で、さらに相手は同じグレーかブラックゾーンに入ってるだろうマフィアだったから、先手を取って数日は目を覚まさないようにウボォーを気絶させたけどね。
ブラック対ブラックなら、知り合いのブラック優先だよ!
あ、よく考えたらブラック旅団が相手ならゴン達に捜索させるのはまずいね。
「あ、待って。やっぱ止める止める。一回捕まったならわかると思うけど、普通に向かって行けば絶対に死ぬだろうし」
「「「………」」」
あっさりと言ってのけるヒノの言葉は、どこか現実から離れて聞こえる。しかしその言葉が冗談では無い事は、つい最近捕まったばかりのゴンとキルアには深く突き刺さった。
今回生き残ったのは、旅団の気まぐれの結果、言ってみれば運が良かったからでしかない。
ミヅキが迎えに来てくれたが、最初に捕まった時点でその気があれば、ノブナガ達はその場で2人を始末する事が出来た。そうしなかったのは旅団が情報を集めていたからであり、2人がまだ子供であり、旅団から見て弱者であり、無抵抗のまま投降したからに他ならない。
一縷の望みに掛けて抗おうなどと考えたのなら、今頃この場に2人の姿は無かった事であろう。
既に過ぎ去った事だが、その最悪の事態を脳裏に浮かべぞっとする3人に、ミヅキはやれやれといった風に溜息を吐いた。
「3人共旅団をもう一度捕まえる様な話してるが、先にクラピカって奴と話に行くんだろ?それで念能力と実力の向上。旅団を捕まえるやめるはその後で話すべきだろう」
最も、旅団がヨークシンにいる間で彼らに匹敵する程の実力向上はほぼ不可能だろうが、という様な言葉をミヅキは心の中で呟く。
もとより旅団がこのヨークシンに滞在しているのは、オークションがあるからだ。つまりはタイムリミットが存在する。それが終われば、旅団はすぐに姿を消すだろう。流石にゴン達も、世界中に消えた旅団を追いかけてまで捕まえようとはしないはず。
もしもクラピカと話した結果修行を始め、修行中に旅団滞在のタイムリミットが過ぎてくれれば御の字。実力を理解して素直に諦めるのが一番だとミヅキは考えているが、ゴンを見ているとそうそう諦めはしなさそうだと思うのだった。
(ま、そのクラピカって奴がうまい具合に説得してゴン達を諫めてくれれば助かるんだが。………最悪力づくで気絶させればいいか。1週間くらい寝かせとけばオークションも終わって旅団もいなくなるだろうし)
などと割と物騒でひどい事を考える辺り、ヒノの兄らしい。
そしてその作戦を実行したらゴンがグリードアイランドを手に入れる確率も皆無になるので、あくまで最終手段ではあるが。
そんな事を考えていると、ミヅキの発言に、ゴン達よりもヒノが真っ先に反応した。
「あれ?クラピカってもうヨークシンに来てるの?」
今の今まで寝ていたからしょうがないかもしれないが、ヒノはいくらか情報が後れている。
現時点で誰も話題にしていない旅団死亡事件(情報提供現場のクラピカ)に、クラピカ=鎖野郎、そしてクラピカがノストラードファミリーの護衛をしているという事。
クラピカに関連する事を知る前に寝込んでしまい、その間に旅団の襲撃は終わりゴンとクラピカの連絡が取れたので、しょうがないと言えばしょうがない、
最も旅団死亡の話題を出さなかったのは、この場のヒノ以外の4人が意図してそうしたのではあるが。
親しい友人が死んだ、という様な情報をどう伝えた者かと悩みぬいた末である。いくら相手が犯罪者だろうと、ヒノにとっては数年にわたり交流を続けた相手。流石にゴン達には、それをサラッと伝える術と度胸が少しばかり足りなかった。
ミヅキの場合はもう少し別の理由も入っているが。
そうでなくとも、この後の予定を考えれば、今この場で言おうが言わないが変わらないという事は、ゴン達にもわかりきった事だった。
「あ、そうだ。昼頃にクラピカと会う約束してるんだ。ヒノも行かない?きっとクラピカも喜ぶよ!」
純粋に友人との再会を待ち望むゴンの言葉には一切の偽りが無い。
それを理解しているからこそヒノも顔を綻ばせる。しかしながら、現状寝込んでしまったのがバレているので旅団の所にも一度顔を出したいという思いもある。
そして今が午前中だという事を鑑みれば、答えは1つ!
「それじゃ後で合流するよ。ちょっと旅団の様子覘いたらそっち行くね。シズクにもらった果物のお礼もしたいしね。あ、シズクってゴンが腕相撲で倒して団員だよ」
「そういえばミヅキが帰りにお見舞い品もらってたね」
「ちなみにシズクって左利きだから腕相撲の時って本気じゃなかったんだよ」
「えぇ!?」
「しかもシズクって旅団の中で腕相撲下から数えた方が早いし戦闘タイプじゃないし」
「うそぉ!?」
まさかここで知るとは思わなかった衝撃的な事実。
確かに自分と旅団にはかけ離れた実力がある事は分かってはいたが、自分がほぼ全力でギリギリ勝利した相手が旅団でも戦闘という面では低く、さらに利き腕じゃないとは。
項垂れるゴンに、驚くレオリオ。そしてキルアは、もうそれくらいじゃ驚かねーぜとばかりに無表情を貫くのだった。決して動揺を隠しているわけでは無い。
そして割とポロポロ旅団の情報を零すヒノに「うちの妹大丈夫か?」とでも言いたげにじっとりとした視線を送るミヅキ。一応大して重要じゃない情報だと思うので問題無いはず。多分。
(それにしても、頭と部下数名の死んだ幻影旅団、か。今頃何をしているのか………)
この場において何気に最も多くの事情を把握しているであろうミヅキは、廃ビルに住まう賞金首の事を考えるのだった。
***
そして現在、死体の偽物を使い死を偽装して、無事にアジトに帰還し夜通し宴会をした後の旅団のメンバー(ウボォーを除く)達は何をしているかと言えば。
「よし、今日でこの街ともおさらばだ。今夜のオークションの宝を奪って終い。
クロロの団長としての方針。
それは、盗み終了の予定。地下競売のお宝を全て奪えば、後は長居する理由など無い。幻影旅団という組織としてみれば最も最善かつスピーディーな方針だが、それに異議を唱える者はいた。
「どういう事だ、クロロ。まだ、鎖野郎を探し出してねぇ」
ノブナガ=ハザマ。
そして彼だけではなく、幾人かも口には出さないが心残りはある事だろう。
ノブナガも言葉にした、ウボォーギンを仕留めたとされる、鎖野郎と呼ぶマフィアの存在。
やられたのがヒソカ辺りならこうまで執着しないが、旅団結成時のメンバーでもあるウボォーギンがやられたとあらば、仲間思いの者達は奮い立たないわけがない。しかし、それは私情を優先し、蜘蛛という組織を危険にさらす行為に他ならない。
それでもノブナガが異議を唱えるのが、クロロの方針が果たして本当に団長としての物なのか、はたまた個人的な理由による撤退なのか、そこが問題だった。
客観的に視れば団長として組織を思っての方針。
しかし視方を変えれば、鎖野郎と言う1人の存在に怯えて逃げる為とも取れる。
ノブナガにはそれが許せなかった。
最悪、1人だけ残ろうとも地の果てまででも鎖野郎を切り捨てる覚悟をノブナガは持っている。
ノブナガの内に秘められた、煮えたぎるマグマの様な怒り。
それを理解しているからこそ、クロロは言葉を選ぶ。
(このままいけば、来週には予言の通りに団員が半分以下になる可能性が高い。それは避けたい。今のノブナガに最も手っ取り早くその事を説明するには、実際に見せた方が早いな)
数舜の思考の後、クロロは手元に己の念能力である【
いきなり自身の能力を発動したクロロに、少し驚きはしたものの戦闘態勢を取らず、ノブナガはわずかに目を細める。クロロという人物を知っているだけに、激情に任して一直線に突っ走る様な行動はとらないだろうという信頼。しかし不可解だと思うのも確かであり、眉を潜めるノブナガに向かって、クロロは言葉を紡いだ。
「ノブナガ、お前の生年月日はいつだ?」
それは、ノブナガの予想していなかった言葉だった。