消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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スシの漢字って【鮨】と【鮓】と【寿司】って意外とあったんだね。



第6話『気になるあの子』

前回までのあらすじ!

 

 

 ハンター試験第二次試験において一つ星(シングル)の称号を持つ美食ハンターメンチさんの課題は、ジャポンでお馴染みの寿司!しかしここはジャポンじゃ無いので、受験生の中で寿司の詳細を知っているのは、私と受験番号294番のジャポン出身の忍びのみ。

 

 いち早く寿司を完成させた私は一先ずメンチさんから合格をもらい、二次試験初の合格者となった!やった!

 

ここまでは良かったんだけど。

 

 

 次に寿司を作って持っていた忍者さんがメンチさんに作り直しを要求されると、寿司の事を御握り感覚のお手軽料理と思っていた忍びの言葉にメンチさん激高。同時に忍者さんの口から全ての受験生に寿司の作り方がばれてしまった。

 

 これでは寿司の形は皆分かって当然。その為メンチさんは後は寿司の味のみで判断をくだすのみに!

 

 しかし、メンチさんは超一流の美食ハンターであると同時に料理人。激高した彼女は味に一切の妥協をせず、その後作られてきた全ての寿司を一刀両断、当然ながら、寿司職人でもない受験生が彼女の舌を唸らせられるわけでもなく、あっという間にメンチさんはお腹いっぱいになってしまった!

 

 ハンター試験では合格者がいない時だってあるが、これはトラブルが重なった事もあり若干理不尽な結果。ハンター協会とのコンタクトをとるメンチさんでもあるが、協会側からの意見をほぼ無視し、合格者1名の純然たる結果を突きつけるのであった。

 

 

 おしまい!

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ふざけるな!!」

 

 ドゴオォン!

 突然の音にいったん思考を中断して音のほうを見てみると受験番号255番の男性が、怒りに表情を歪ませ、目の前にあった調理台を破壊していた。そんなに私のあらすじダメだった?と思ったらメンチさんを睨んでるから関係無かったよ。

 

「納得いかねえな。とてもハイそうですかと帰る気にはなれねえ。オレが目指してるのはコックでもグルメでもねえ!!ハンターだ!!しかも賞金首(ブラックリスト)ハンター志望だぜ!!美食ハンターごときに合否をきめられたくねーな!!」

「今回のテストでは試験官運がなかったってことよ。また来年がんばればー?」

 

 ああメンチさん。そんな煽るような事を言ったらますます………。

 

「ふざけんじゃねー!!」

 

 あーほらみなさい。これはやばいよね。255番の方じゃなくって、座ってるメンチさんのあの目は()る気だよ。ハンターでもあり念も取得してるメンチさんなら、10秒とかからずに相手をミンチにできそう。メンチだけに!

 

 あっ、その前にブハラさんが動いた。ブハラさんのビンタによって255番の人は外まで吹き飛ばされた。あーよく飛んだなー、って呑気に思ってるけど、見た感じ命に別状はないみたいだし怪我も大怪我じゃないから問題無いよね。

 

 けど、この後どうなるのかな。あの255番に限らず、この結果に不満を持ってる人割といるみたいだし。まあさっきのブハラさんとのやり取りを見て仕掛ける

 

「それにしても合格者1名とは、ちと厳しすぎやせんか?」

 

 その声と共に、上空数十メートルに滞空する飛行船から飛び降りてきたのは、ひょうひょうとつかみどころの無い表情をした和装の老人。飛行船にはハンター協会のマークがあったから、さっきのメンチさんと協会との通話が終わってすぐに来たっぽい。

 

 そして、上から降って降りてきた老人こそ、ハンター協会の最高責任者、ネテロ会長。って、メンチさんが言っていた。普通なら死亡事故確実な単身ヒモ無しバンジーだけど、念を修めたネテロ会長的には余裕だったっぽいね。念を知らない受験生は驚いてるけど。

 

 とりあえず会長が仲裁に来てくれたので話をまとめると、メンチさんがもう一回試験官をして受験生も納得できるように自分も参加できる試験をする………ということみたい。

 次の課題は『ゆで卵』らしい。これも一応料理だけど寿司と比べて難易度が下がったような?

 

 まあそんなこんなで皆で会長が乗ってきた飛行船に乗船し、着いた場所はマフタツ山と言われる、中央が崖になっている特徴的な山の頂上。この崖の下は激流になっており、落ちれば数10キロはノンストップで海まで流されるらしいので要注意だって!

 で、さっきも言ったけど今回は試験官参加型、つまりメンチさんが手本を示し受験生に実力を見せつける目的もある。その為メンチさんはさっきの会長同様に崖の上から単身飛び降りヒモ無しバンジーをした。よくやるよね。

 

「マフタツ山に生息するクモワシ。その卵をとりに行ったのじゃよ。クモワシは陸の獣から卵を守るため、谷の間に丈夫な糸を張り卵をつるしておく。その糸にうまくつかまり、卵を1つだけ取り、岩壁をよじ登って戻ってくる」

「よっと、この卵でゆで卵をつくるのよ」

 

 いきなり飛び降りたので、会長が解説をしている間、メンチさんは下から卵を一つあっという間に採って崖をよじ登り戻ってきた。流石、常人の神経じゃとても飛び降りられる物じゃないよね。

 ていうか卵を谷間に入れて崖上ってくるとか、マジか!谷だけに………なんだか悲しくなってきた。

 

「あーよかった」

「こういうのを待ってたんだよ」

「走るのやら民族料理やらよりよっぽどわかりやすいぜ」

 

 ゴンやレオリオを筆頭に、次々に受験者は楽し気に笑い、躊躇いなくほぼ同時に皆で先ほどのメンチさんのごとく崖の底へとダイブしていった。まあ確かに考える必要が無い分寿司の課題よりかは全然楽だよね。脳筋にやさしい課題というか、戦闘能力必須っぽいハンター試験らしいというか。

 

 ちなみに半分くらいは残っているけど、まあ失敗したらしゃれにならないからね。普通崖を飛び降りるとか無理だし。

 

 さて、せっかくなので私も行こうかなと思ってると、メンチさんが来て声を掛けてきた。

 

「ああ100番。あんたは合格したから別に飛び降り無くてもいいわよ」

「じゃあ個人的に行ってくる。食べてみたいし、卵って好きなの」

 

 そう言い残しさっそく谷底へダイブ!!糸が見えたから多少軌道修正して捕まる。

位置を入れ替えて足で糸に捕まりながら卵をゲット!!壁を登ってレッツクッキングだね。

 

 調理自体は巨大な窯に水を注ぎ、沸かしてから採ってきた卵を全て入れて同時に調理したけど、ブハラさんができ頃になって思わず声を上げてしまったので、全員タイミングよく茹で卵を完成させたのだった。あそこで声を上げなければ結構ゆで卵と言えど完成にバラツキがあったかもしれないけどね。

 

 さっそく全員試食して食べてみると………おいしい!普通の卵とは比べ物にならないくらい濃厚。その上茹で加減もあっただろうけど、とろりと蕩ける黄身の触感もたまらない!機械があったら是非ともこれで卵料理を作ってみたいな。

 

「美味しいものを発見した時の喜び! 少しは味わってもらえたかしら。こちとらこれに命かけてんのよね」

 

 誇らしげなメンチさん。勇気が持てずに谷に飛び降りることができなくて不合格になってしまった255番の人も、ゴンから分けてもらったゆで卵を食べると、今度は流石に自分の力不足を認めたみたい。無事終わって良かった。また来年がんばってね。

 

 

 

 第二次試験後半、メンチの料理(メニュー)、合格者43名。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「残った43名の諸君に改めてあいさつしとこうかの。ワシが今回のハンター試験審査委員会代表責任者のネテロである」

 

 現在二次試験を合格した私達43名は、ネテロ会長が乗ってきた飛行船にそのまま搭乗してこのまま三次試験会場に向かうみたい。その間は飛行船の中で休もうが遊んでいようが、自由に過ごしていいみたいだから試験休みって所かな?

 

「本来ならば最終試験に登場する予定であったが、一旦こうして現場に来てみると、なんともいえぬ緊張感が伝わってきていいもんじゃ。せっかくだからこのまま動向させてもらうことにする」

 

 からからと好々爺然として笑いながらそう言うとネテロ会長は去って行き、試験会場に来た時に番号札をくれた緑の人によると、明日の朝8時に三次試験会場に到着するのでその間はやっぱり好きにしていいそうだ。やったー!

 

「ゴン、ヒノ!!飛行船の中探検しようぜ」

「うん」

「いいよ」

 

 そんなわけでキルアとゴンと一緒に飛行船探索!!だって飛行船なんて乗ったこと無いから是非とも探検しないとね!そんなわけで私とゴンとキルアは、今日は休むと言ったクラピカとレオリオを置いて早速飛行船探索へ出かけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 一方、とある部屋にて。

 テーブルに並べられた料理に口を付けつつ、楽し気に談笑を交わしていたのは、一次試験官であるサトツ、そして二次試験官であるメンチとブハラの三人だった。

 

「ねえ、今年は何人くらい残るかな?」

「合格者ってこと?」

「そ、なかなかのツブぞろいだと思うのよね。一度ほとんど落としといてこう言うのもなんだけどね」

「でもそれはこれからの試験内容次第じゃない?(メンチみたいな試験官じゃ一人も残れないだろうし………あ、一人は残ったっけ)」

「そりゃまあそうだけどさー、試験してて気づかなかった?結構いいオーラ出してた奴いたじゃない。サトツさんどお?」

「ふむ、そうですね。新人(ルーキー)がいいですね今年は」

 

 ハンター試験の過酷さはハンターだからよく知っている。これは何度も受ければ何とかなるという物でも無く、臨機応変に対応できる実力が必須となってくる。それを踏まえれば、初めて受験する受験生が合格以前に一次や二次での試験を突破するのも難しいのだが、今年の受験生はその予想を超えて頑張っていた。

 

「あ、やっぱりー!?あたし100番がいいと思うのよね。スシも美味しかったし可愛いし、絶対いい美食ハンターになるわよあの子。そしたら弟子にするわ!」

「いや美食ハンターになるとは限らないじゃ………」

「私としては99番ですな。彼はいい」

「あいつきっとワガママでナマイキよ!絶対B型!一緒に住めないわ!」

(そーゆー問題じゃ………)

 

 論点が微妙にずれたメンチの発言に、ブハラは怒られるので口には出さないが若干呆れ気味であった。

 

「ブハラは?」

「そうだねー。新人じゃないけど気になったのが………やっぱ44番……かな。メンチも気づいてたと思うけど255番の人がキレ出した時、一番殺気放ってたの、実はあの44番なんだよね」

 

 44番、奇術師ヒソカ。圧倒的な戦闘能力と、快楽的な殺人欲。今年の受験生の中でもトップクラスの断トツな危険人物と呼べるだろう。それは受験生とは一線を画す試験官から見てもそうだった。

 

「もちろん知ってたわよ。でもブハラ知ってる?あいつ最初からああだったわよ。あたしらが姿見せたときからずーっと」

「ホントー?」

「彼は要注意人物です。認めたくありませんが彼も我々と同じ穴のムジナです。ただ彼は我々よりずっと暗い場所に好んで棲んでいる」

 

「けど、気になるって言ったらやっぱ100番のあの子やっぱり気になるのよね~。たまに【念】を既に使える奴が試験を受ける事はあるけど、あれくらいの歳の子だと珍しいわよね」

 

「確かに。すでに【纏】を完璧にこなしてましたね。あの歳であそこまでの実力とは。独学とは考えにくいですし、一体誰に師事したのでしょうか」

「44番とどっちが強いと思う?」

「そうですね、身体能力的には44番同様、マラソンでは余力を残してクリアしていましたし、年齢的な所で戦闘経験では44番が勝りそうですね。後は、相性によるところでしょうか」

「もし2人が戦うような事になったらあたし絶対100番応援するわ」

 

 試験官が片方を贔屓するのはあまり好ましくない、とサトツは思ったが、既に試験官としての役割を終えたので、そこまで言う必要も無いか。そんな事を考えながら、再び食事を再開するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 現在私たちは飛行船内のとあるベンチで飛行船から見える町の夜景を見下ろしてる。

 すごくきれいだ!これぞまさに100億ジェニーの夜景(笑)

 

「キルアのさぁー。父さんと母さんは何してる人なの?」

「んー?殺人鬼」

 

 ゴンの質問に、特に何でもないという風にさらりとキルアが答える。

 あ、やっぱり。まさに私の読みどおり。

 

 キルアの年齢で殺し屋なら、状況的に天涯孤独で殺し屋か、家族皆で殺し屋のどちらかだろうからね。後は殺し屋に師事したとか。趣味とかだったらマジ怖い。

 

「両方共?」

「ゴン真顔ですごい事聞くね。私ちょっと吃驚しちゃったよ」

「ヒノに同感。マジ面でそんな事聞き返して来たのゴンが初めてだぜ」

 

 多分初めて私とキルアの息が統合した瞬間じゃないかな。すごいねゴン!

 

「俺ん家暗殺家業なんだよね、家族ぜーんぶ。そん中でもオレすげー期待されてるらしくてさー。でもさ、オレやなんだよね人にレールしかれる人生ってやつ?」

 

 まあそれには同感かな。すすんで殺し屋になる奴なんて少ないだろう。

 将来の夢は殺し屋ですっていう子供というのはなかなかにすごい光景だ。

 

「ねえヒノは?」

「何が?」

「父さんと母さん、なにしてるの?」

「ん?。母さんはいないよ父さんはいるっていっても昔拾ってくれた人だし」

 

 ゴンは申し訳なさそうな表情をした。今度はキルアが続けるように質問をする。

 

「じゃあヒノって両親どこいったんだよ」

「昔、事故で亡くなったんだって。そのころは赤ん坊だったから両親の記憶は知らないから拾ってくれた人がもう父さんも同然だからそこまで悲しく無いけど」

 

 ゴンは少しほっとした表情をしてくれた。まあ、あまり楽しい話題じゃないしもう昔のことだから本当に大丈夫だしね。

 

「ふーん。その拾ってくれた奴って何やってんの?」

「んー?そうだね?。しいていうならハンター………かな?」

「なんで疑問系なんだよ。自分の親父の話だろ」

「あの人結構めちゃくちゃで何やってる人か分からないし………でも確かハンター証を持ってるって聞いたことあるからね。きっとハンターだよ」

「ずいぶんうさんくさいハンターだな………」

 

 いやまあ、正直何の職業か分から無いから、当たり障りの無い可能性を言ってみたのだけれど。………そういえばハンターって職業扱いなのかな?〇〇ハンターって言って初めて職業感出てくるような気がする。ハンターだけだと夢を追ってる系、みたいな感じ?

 

 そんなこんなで雑談を続けてると気配を感じた。この気配は………【絶】を使った念能力者だ。このレベルで飛行船内の人間だと………多分だけどネテロ会長?

 

 そう思ったと同時に左側の通路からさっきよりさらに強い気配を一瞬感じた。おそらくネテロ会長が意図的に出したのだろう。キルアとゴンも感じたのか二人とも同時に通路の方向を向く。けど、その前にどうやら反対側に移動したみたいだ。振り向く前に私達の後ろを移動して反対側の通路に素早く動いたネテロ会長は、悠々と歩いてこちらに近寄ってくる。

 

 移動したのに気づかなかったゴンは普通の表情だが、移動した事に気づいたキルアは若干疑いの目で睨んでいる。

 

「ネテロさん、こっちのほうから誰か近づいてこなかった?」

「いーや」

 

 ゴンがさっきまでネテロ会長の気配があった場所に指を指し尋ねるけどネテロ会長本人は知らんぷり。その態度にキルアは少しむかついたみたい。けど気配を残して反対側から驚かせるって言うのも、いいかもしれないね。今度やってみよう。

 

「いこーぜ。ゴン、ヒノ。時間の無駄だ」

「まあ、待ちんさい。おぬしらわしとゲームせんかね?」

 

 唐突に言われた、ネテロ会長からの意外な提案に、私を含めゴンもキルアも訝しげに次の言葉を待つ。そして、次に言われた言葉は予想外の事だった。

 

「もしそのゲームでわしに勝てたら、ハンターの資格をやろう」

 

 ハンター協会最高責任者公認の試験(ゲーム)

 

 さて、どうしようかな?

 

 

 

 

 

 




次回、VSネテロ会長

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