消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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一応グリードアイランドに関してはヨークシンが終わった後が本格的なので、少しだけ先行でやるくらいです。



第41話『電源の要らないゲーム機』

 チーチチチ、チュンチュン!

 

 あー、小鳥の囀りが平和だね~。

 窓から差し込む太陽の光の心地良さの中、夢見心地の気分で目を覚ました私は―――もう一度眠りに着いた。

 

 パシーン!!

 

 ぱちくり!………………やっぱり起きる事にした。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 パシーン!!パシパシ!!パシンパシンパシン!!

 

 竹刀と竹刀同士がぶつかり合う特有の高く平べったい様な音が響いて聞こえてくる。音の発生源は、この家に隣接して廊下で繋がる道場の中から。

 

 パシン!!パシンパシン!!パシンパシンパシン!!

 

 太陽が昇り、夏らしい暖かい空気の中、次第にぶつかるスピードと大きさが上がり、中々面白い感じに熱中していく気がする。オーラの感じから、どっちも念は使ってないっぽい。多分、ミヅキと緑陽じいちゃんかな。

 道場の扉を開くと予想通り、ミヅキと緑陽じいちゃんが互いに竹刀を持ち、闘っていた。

 

「でやぁ!」

「ふん!」

 

 目にも止まらぬ素早さで、二人共移動しながらお互いを打ち合っている。正確にはミヅキは縦横無尽に床や天井を駆け巡り、中央にいる緑陽じいちゃんはその攻撃を的確に捌いている。力の乗った攻撃を、柳の様にゆらりと竹刀を揺らし、右へ左へ受け流す様は、私も教わった柔術の動きが剣にも表れている。

 

 元々緑陽じいちゃんの使う『九太刀流』は、剣の流派。柔術はおまけみたいな物でしか無い為、本来ならこっちが本番である。私は剣を使わないで柔だけ教わった。

 ミヅキ素手の戦闘は普通に強いけど、基本的に剣の方がさらに強い。

 

「ふ――――――」

 

 小さな呼気の音を捨て、ミヅキの振るう竹刀が緑陽じいちゃんの背後に迫る。攪乱した後にフェイント、からの背後からの奇襲。通常の剣士であれば延髄への打撃で一瞬で意識が刈り取られるであろう一撃だけど、緑陽じいちゃんは右足を軸に回転扉の様に体を捻り、自分に迫った竹刀を、同じく竹刀で受け止めた。

 そのままミヅキは力で押し切ろうとしたけど、竹刀を滑らせる様にして横に流す緑陽じいちゃんに反応して、床を蹴って一旦距離をとった。

 

「ほぅ?例の闘技場で戦っておったから剣が鈍っておると思いきや、そうでも無いみたいじゃな」

「まだ全然だよ、じいちゃん」

 

 楽し気に笑う緑陽じいちゃんは竹刀を腰に、居合をする様に構え、ミヅキはその正面で竹刀を。

 剣をの中段構えである正眼の構えは、古い流派の中でいくつか構えの場所によって呼び方が異なり、よく知る『正眼』は剣の切っ先を相手の喉に向ける構えであり、『晴眼』ならなら目と目の間、『青眼』なら相手の左目に向けると言うらしい。ミヅキの今の場合は、相手の顔の中央に向ける『星眼の構え』。

 

 互いに一撃必殺でも放つような剣気を発し、一瞬の間と同時に竹刀を振るった。

 

「せぃ!」

「はぁ!」

 

 空いた距離を詰めるように動くミヅキよりも早く、緑陽じいちゃんが居合の要領で、横薙ぎに竹刀を振り抜いた。スローモーションの様に見える視界の中で、ミヅキは緑陽じいちゃんの居合を、体を僅か逸らす様にして一瞬後退した時、その前を剣の切っ先が横に通り過ぎた。

 つまりは――――――空振り。

 

 ギイィイイン!

 

 そう思ったら、刃を切り裂く様な音を響かせてミヅキは背後へと吹き飛ばされた。途中で床に手を着く様にして一回転し、少し後退しながらも床に着地するが、その手に持った物を驚いた様に見る。

 

 ミヅキの手には、中程で綺麗に切り裂かれた、竹刀が握られていた。

 

「………………じいちゃん、念は使わないって言って無かった?」

「おっと、すまんすまん。ついうっかり使ってしもぅた」

 

 謝る緑陽じいちゃんに、じっとりとした目を向けるミヅキ。最初から念を使わない取り決めをしてたみたい。これじゃあ緑陽じいちゃんの方が悪いよね。

 ちらりと道場の壁、ミヅキの背後の壁を見て見れば、一文字の切り傷が見事にできていた。

 

 放出系の緑陽じいちゃんらしい、見事な攻撃だったね。剣にオーラを込めて、振るうと同時に飛ばす遠距離対応のある意味秘技、まあ簡単に言ってしまえば………『飛ぶ斬撃』って事だけどね。あれはつい無意識のうちに使ったみたいだし、威力は通常の1/10も無いけどね。

 

 その時、私の後ろでガラっと言う音が聞こえたと同時に振り向くと、エプロン姿の翡翠委姉さんがいた。

 

「あ、翡翠姉さんおはよう」

「あら、ヒノも来てたの。おはよう。ご飯にしましょう。二人ともー、御飯よー!」

「おお、飯ができたか。ミヅキ、今日はここまでじゃ」

「うん、ありがとうございました」

 

 忘れずにきちんと立礼をして、皆で居間に向かうのだった。

 

 今日も実に、平和な朝を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「天空闘技場だとずっと素手で戦ってたからな。久しぶりに剣の稽古しないとね」

 

 稽古が終わったミヅキと緑陽じいちゃん、それに私と翡翠姉さんはテーブルを囲んで朝食を食べてた。ジェイは仕事があるとかで朝から出かけて、シンリも仕事かどうかは知らないけど、とりあえず朝からいなかったよ。

 

「はっはっは、だが前よりさらに動きが良くなっとるのう。素手ばかりというのも悪くはないぞ」

「ごちそーさまー」

 

 とりあえず、朝食を済ませて、デザートに芋羊羹を食べながら寛ぐ。翡翠姉さんは高校に行ってしまったので既にいない。今この家には、私とミヅキ、それに緑陽じいちゃんだけになった。

 と思ったけど、意外と早くもう一人増える、というか帰ってきた。

 

「ただいまー」

 

 シンリが玄関を開けて帰ってきた。手には、どこかで買い物でもしてきたのか、箱の入ったビニール袋を下げて。

 

「お帰りー、どこ行ってたの?」

「ああ、これを買いに行ってたんだ」

 

 取り出したのは、ジョイステーションと言われるゲームハード。どっかプ〇ステみたいな外見だけど、意外と名作が揃って昔のゲームながらに売られているらしい。これミヅキ情報。私は無論………知らなかった!ゲーム自体そんなにやった事あるわけじゃないし。

 

 シンリが買ってきたのは、ゲームの本体とメモリーカード。後はマルチタップって言う、本来2人分しかセーブできないメモリーカードの差込口に刺して、4人多くセーブできる様にできるみたいこれで合計8人までセーブできるという、なんてお得。無論、ミヅキに教えてもらった。

 

「へぇ、これでグリードアイランドがプレイできるんだ」

「ああ。ゲーム機にディスクをセットして【練】をしたら強制的にゲームフィールドに飛ばされるみたい」

 

 説明書にも【練】をするって書いてある。すっごいご丁寧、ていうかこれ絶対に一般人向けじゃないね。念の用語使ってるから。で、聞いたらハンター専用のゲームだって。それってすごく危険なんじゃないの?

 

 昨日『グリードアイランド』をプレゼントに貰ったけど、この家にはジョイステーションが無かったから、今日朝早くにシンリが買ってきてくれたみたい。ていうかまだ8時過ぎくらいなのに、どこで買ってきたんだろ?こんな早くから空いてるゲーム屋とかあるの?

 

「ねえシンリ、グリードアイランドってどんなゲーム?」

「ん?楽しいゲームだよ」

「いや、そういう事じゃなくて」

 

 まあ楽しいって言うのは分かったけど。

 そう思ってたら、ミヅキは少し不思議そうにシンリに疑問をぶつける。

 

「でもなんでグリードアイランドをシンリが持ってるの?」

「どういうこと?ミヅキ」

「これは11年前に発売されたハンター専用のハンティングゲームで値段は58億ジェニーの現金一括払い。100本しか製造されなかったけど全て売れた幻のゲームだよ」

「詳しいねミヅキ」

「昔見た『世界のゲーム』って本に書いてあった」

「そのとおり、これは念を使えないものには使うことができないゲーム。クリアしたら素晴らしいものが手に入る。まあ準備ができたらやってみるといい。一度入ると中から出るのは、少し難しいけどね」

 

 意味ありげに、しかし楽しそうに呟くシンリは、何が起こるのか楽しみでしょうがない、そんな感じの表情にも見える。上等といえば、上等!まあシンリ昔からこういう感じだしね。何か説明なしでどっかに放り込むなんて事もざらさ!いや、切り抜けられる実力があるの前提で送り込んでいる節はあるけど。

 

「ふふふ、いいじゃない。楽しそうじゃない、ハンター専用のゲームなんて。それにしてもなんで限定100本のゲームなんてシンリが持ってるの?」

「そりゃ、買ったからな」

「いや、そんなことはわかるけど………………」

 

 むしろ買わなかったら盗んだ事になるんじゃない?

 シンリだったら普通にやりそうだから若干怖い。

 

「ほらほら、準備しな。今から行けば9月1日までにはここに戻れるかもしれないぞ」

 

 確かに、9月1日にはヨークシンに行くつもりだからその前には帰れるようにしとかないと。皆に会えないし、オークションにも参加したいし!

 

「じいちゃん。『エディン』は今どこに置いてあるの?」

「ん?持っていくのか?」

「ま、何が起こるか分からないみたいだし」

「わかった。取りに来てくれ」

「あいよ」

 

 そして戻ってきたミヅキの手には桐箱が握られていた。大きさは私の身長より少し低いくらい長くて、幅が30cm程もある桐箱。ミヅキはテーブルの上に乗せると蓋を開ける。桐箱には、所々彫られた【神字】と、お札の様な物がいくつも貼られていた。

 

 中から出てきたのは一本の剣。

 

 念剣エディン。これが、ミヅキの愛剣である剣。

 刃の長さが110cm程もあるロングソード。幅は大剣よりも少し狭い幅広の刃と、柄に金色と銀色の綺麗な装飾のされた両刃の洋剣。鍔元にはあざやかな真紅の石がはめ込まれ、見る者を吸い込み惑わす様な美しさのある剣だった。

 これは天空闘技場は素手だけと決めたミヅキがあえてこの家に置いていったもの。

 しかし手に入れてからは出かける時には持っていく剣で私も見るのは久しぶり。相変わらず綺麗だね~

 

 絶対に触りたくは無いけど。

 

 ミヅキは柄を持ち、感触を確かめるように少しだけ軽い素振りをする。

 

「懐かしい感触、重さ。久しいなエディン」

 

 刃が太陽の光に輝き、ミヅキとの再開にエディンも喜んでいる様に見えた。こちらも装飾のある専用の鞘に差して、背中に装備した。

 

「ボクの準備は完了だよ」

「じゃあ始めよっか!」

 

 ちなみに私の鞄には、一応買い足した携帯食料とかは既に入っている!ていうか昨日の内に準備は済ませたんだけどね。後は、まあハンター試験にも持って行ったサバイバル用品とか。

 

 テレビに専用のコードを繋いでゲーム機にディスクをセット!そしてマルチタップに私とミヅキの二人分メモリーカードをセットしてと。いざ!

 

「あ、これ原動力ディスクのオーラだから別にテレビと電源は繋がなくてもいいんだよ」

「私の苦労!ていうかそれってジョイステである必要なくない?」

 

 むしろディスクが入れば何でもいけるような………。もしかしてディスクだけでも【練】したら遊べるのかな?試そうと思ったらゲームの蓋が開かなくてディスクが取り出せないから諦めた。電源が要らないゲーム機は便利だけど、他のゲームで遊べないなら考える所だよね。

 

「まあ何はともあれ、二人共頑張ってね」

「「うん!」」

 

 【練】!!バシュ!!

 

 私とミヅキは、その場から一瞬の内に消えた。後に残るのはオーラの纏うゲーム機と、それを見ていたシンリと緑陽じいちゃんの二人だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「いいのかシンリ?聞いたところによるとこのゲーム、死ぬかもしれないんじゃろ?少しくらい情報を与えてもよかったじゃないか」

 

 ハンター専用、それはヒノの予想通り、もしくはそれを上回る様な、超高難易度の危険なゲーム。何人もゲームに取り込まれた者がいて、何人もの死者が出たと言う。これだけ聞くと呪いのゲームの様にも聞こえるけど、事実である。

 

「フフフ。リョクヨウ、あの子達なら大丈夫。それにゲームは何も知らないところから始まる。攻略本を片手にプレイなんてつまらないことをあの子達はしないさ」

「どうだか。まああの子らならすぐにクリアでも何でもするじゃろ」

 

 二人に戦いを教えた者の一人として、緑陽は信頼している。圧倒的に異様な実力と、何があっても対応できる出家の適応力を備えた、双子の二人の事を。

 しかし、とうの二人の義父であるシンリは、悪戯をした子供の様に笑う。

 

「ハハハ、それはどうかな。()()()()()()()()()()()だぜ。苦戦してもらわないと困るな」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 不思議な空間。最初の印象がソレだった。

 ゲーム機に【練】をした瞬間、気づいたらこの場所に立っていた。

 壁から光が漏れ機械のような印象を持つ不思議な部屋。行き止まりの部屋に投げ出され、目の前には先へと続く通路があるのみ。そこを通って行けば、同じような造りの少し広い部屋に出た。

 部屋の中央には、不思議な機械に乗った女性がいた。なんかふわふわ空中に浮いてるけど、どういう原理だろ?というか、ここがゲームの中って事で、いいのかな?

 

「グリードアイランドへようこそ」

 

 邂逅一番のその言葉に、改めてここがグリードアイランドの中と認識する。

 

「それではこれよりゲームの説明をいたします。ヒノ様、ゲームの説明を聞きますか?」

「うん!」

「ではまずこちらをどうぞ」

 

 ナビゲーターさんが差し出したのは指輪。全体が金色で装飾が施され青い石のはめ込まれた綺麗な指輪。内側には神字みたいなのが書いてあるって事は、何かしらのアイテム。渡してもらい、すぐに説明をしてくれた。

 

「このゲームではその指輪をはめていれば誰でも使える魔法があります」

「魔法が使えるの?」

「はい。〖ブック〗と〖ゲイン〗です。ヒノ様、指輪をはめてはめた指を前に出して〖ブック〗と唱えてください」

 

 私は指輪を右手の中指にはめて唱えた。

 

「〖ブック〗」

 

 ボン!

 指輪から煙とともに出てきたのは一冊の本。面白い表記の文字に太陽のような絵の表紙の本。個人的な感想としては、結構分厚い!というか面白い!!指輪に本かぁ。ミヅキも気に入りそうだね。

 

「このゲームをクリアするにはあるカードを100枚集めなければなりません。その本は、そのカードを収めるためのバインダーになります」

 

 ゲームといえばエンドレスゲームとかRPGとかあるけど、クリア条件は最初から分かってるんだ。戦いを経験する内に、強大な悪の存在を知って魔王を倒す!ていうような情報が少ないゲームもある中だと、親切と言うか、まあそういうゲーム設定なんだね。

 

「つまりこのゲームの目的はそのバインダーを完成させることです。最初のページを開いてみてください」

 

 表紙をめくって見てみるとカードをはめ込むと思われるくぼみが表紙の裏に一つ、次のページに九つ。表紙の裏に000、次のページから001~009、それ以降も数字がどんどん続いている。なるほど、1ページにつき9枚、それが11ページ分ここにその100枚のカードを入れるということか。説明を聞くとやはりそうでありバインダーの番号に対応するカードしか入れることができないそうだ。そしてこの場所を指定ポケットというみたい。

 

「指定ポケットの後のページには番号のないページがあります。そのポケットにはどんな番号のカードでもいれることができます。それをフリーポケットといいます」

 

 なるほど。フリー、つまり自由にカードが入れられるってことは指定ポケットだろうとなかろうと入れられるのか。

 

「指定ポケットはNo.0からNo.99まで100個あり、それに対してフリーポケットは45個あります。指定ポケットに入るNO.0からNO.99までの100枚のカードをコンプリートすること、それがこのゲームのクリア条件です」

 

 なるほど。100枚のカードを集めるゲーム、面白そうじゃない。

 さて、それではどうやってカードを集めるのか。

 

 その疑問にももちろん答えてくれた。

 

 カードはアイテムを取ると自動的にカード化するみたい。

 そのカードを再びアイテムとして使用する場合には先ほど言った魔法の2つ目である〖ゲイン〗と唱えるとアイテムに戻る。

 

 ただしここで注意するのが〖ゲイン〗と唱えてアイテムにしたカードは再びカードに戻せず、もう一度同じアイテムを手に入れる必要があるみたい。

 

 そしてもう一つ、アイテムをカードにできない方法、それがカード化限度枚数がMAXの時。

 どのアイテムにもカード化するのに何枚までと上限がある。その上限がMAXとなった時、例えアイテムを取ってもカードにはならないそうだ。

 ただそのカードにならなかったアイテムを持っている時に他プレイヤーの持っているカードとなってるそのアイテムがカード化を解除されたとき、カード化しなかったアイテムが手にした順にカードに変化するみたい。

 

 例を挙げるならば、私がカード化限度枚数3枚の剣を3枚手にしているとき、ミヅキが同じ剣を手に入れたけど私が3枚持っているのでカードにならなかった。そんな時私が剣の1枚を〖ゲイン〗でカード化解除した時、全体でカード化された剣は2枚となったので、ミヅキが手に入れた剣はカード化するということだ。

 なるほど………。

 

「最後に最も重要な注意点です」

「うん?」

「もしもプレイヤーが死んでしまった場合、指輪とバインダーは破壊され中のカードは全て消滅しますのでご注意ください」

 

 死んだらそれで終わり、何も残らないと。

 

「ここでの説明は以上です。これはあくまで最低限の情報であり、詳しい情報はゲームを勧めながらご自分で入手してください」

「うん!ありがと!」

 

 ゴゴゴゴ。

 足元が開いて階段が現れた。ここから降りるってことかな。

 

「それではこれよりゲームスタートです。ご検討を祈ります」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 階段を降りてやってきたのは辺り一面の平原。地平線の彼方~、とか言いたくなりそうな感じで遠くに山脈がよく見えるほどに、大平原が広がっていた。ざっと360度見た限り町らしき物は見えなかったから、もっと向こうまで行かないとなさそうだね。

 ………流石に町が無いゲームとか無いよね?

 

「へー、綺麗なところ。これがバッテラの欲しがるゲームの中か」

 

 声が聞こえたと同時に階段を下りてくる影。ミヅキだ!

 

「あっ、ミヅキ。でしょ?綺麗だよね。こんな大平原なんて久しぶりに見たよ。それでバッテラって?」

「バッテラていうのは大富豪の名前でね。このグリードアイランドを大枚叩いて手に入れてクリアデータに500億の懸賞金をかけてる男さ」

「500億!?ドリームジャンボも吃驚だよ!ミそれにしてもヅキ詳しいね」

「新聞に書いてあるからな」

 

 そんなに有名だったんだ。私は新聞を読まないからわからなかったよ。それにしてもこのゲームって昔のゲームで念の使い手しか使えないのにすごい価値があるんだね。よっぽどクリアしたらいい事あるのかな?でも確かに現実に住まう者達がゲームをするって事を考えると、クリアしたらそれは現実に影響のある物が貰える可能性だってあるよね。

 ていうか寧ろ命がけって触れ込みのゲームで結局クリアして何も無かったら暴動が起きるよ、暴動が!ここまでの思い出が君の宝だ!は現代っ子には通じないよ!いや昔の人にもだけど!

 

「それにしても………視線を感じるな」

「あ、やっぱり?そうなんだよね。せっかくの景色を楽しみたいから無視したかどやっぱり無理だ。ヒソカよりはマシな視線だけどなんか観察されてるみたいでやだな~」

「まあとりあえず行ってみるか。視線の強い方に行けば町があるかもしれない。まあ観察者本人に聞くという手もあるがな」

 

 観察者はスタート地点から出てくる者を見張るであろう係。そしてそれを長期に渡って行うには、食料などの物資を補給できる拠点となる町から程よく近い所がベスト。つまり、観察者の方角に行けば町が近いかもしれない!

 

「じゃあ右と左、どっち行く?」

「そうだな、来たばかりじゃ地理もわからないからな。どちらでも構わないんだが………どうしようか」

「じゃあコインで決めよう!表が右で裏が左ね」

「オーケー」

 

 ピン!!クルクルクルパシ。

 

「表だ!じゃあ右行こ!」

「じゃあさっそく行くか」

 

 私達は柔らかな草原の草を踏みしめて、視線の強い右方向へと、歩き出したのだった。

 

 

 

 

 




ヒノ「次回!脅して戦って蹂躙します!」
ミヅキ「人聞きの悪い………」
ヒノ「いや、全部ミヅキでしょ?」
ミヅキ「え?」
ヒノ「え?」

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