誤字だけで無くすみません!
むむぅ………一、十、百………なんかすごい桁数になっている。通帳が!
まさかの10桁!?もうすぐ11桁に届くのでは!?というような感じでかなりおかしな桁数が書かれた通帳の文字を見ていた………………ミヅキの。
「ヒノ、早く食べないと冷めるぞ。ピザトーストはできたてがうまい」
「あ、うん。頂きます」
ここは200階クラスの闘士が宿泊する、2222号室。中はホテルのスイートルーム並みに広々としており、様々な設備は完備。まさにホテル!あ、二回目か。
割と数人でも余裕で泊まれるくらいの広い設備。普通にテレビも冷蔵庫もベッドもソファもあるという、そんなわけで昨日はミヅキもここに泊ったよ。ていうかもうずっと泊ってるんじゃない?ホテル代節約になるし。
朝起きたら既にルームサービスを頼んでいたらしく、机に朝食のピザトーストとコーンスープを並べていたんだけど、スタッフの人に誰?とか突っ込まれなかったのかな?まあご飯が美味しければいいかな?
意外とこの天空闘技場のルームサービスって美味しいんだよね。このピザトーストの焼き加減に素材とチーズのとろり具合がまさに神!まさか本場の美食ハンターでも雇っているのかな?もしもそうだとしたら………ナイスグッジョブ!
「それで、ヒノは何見てるの?」
「ああ、うん、この通帳どうしたの?いや金額的な意味で。というかこれ絶対天空闘技場のファイトマネーだけじゃ足りないでしょ!」
「そりゃ当然だ。1階から180階までをストレートに勝ち進んでも約3億。3ヶ月最短距離で毎回往復したって、良くて30億が限度だからな」
だったらこの金額はどうやって算出したというのか?
「当然………ギャンブルだ」
「………………」
「ヒノも天空闘技場のギャンブルシステム知ってるだろ?あれだよあれ」
いや、まあ確かに知ってるけど。つまりファイトマネーをギャンブルにつぎ込んでお金を稼いでいたと。なんかこれだけ聞くとダメ亭主みたいに聞こえるね。実際は大勝したからこの金額何だろうけど。
「何、別段難しい事じゃない。天空闘技場は基本〝どっちが勝つか〟を賭ける。そう聞くと、割と簡単なギャンブルだと思うだろ」
「確かに………」
ようは強そうな方に賭ければ、金が儲かる。その〝強そうな方〟がより正確に見極められたのなら、より確実に!
確かにそう聞くと失敗し無さそう。八百長試合でも無い限りはね!
「それに闘技場の中じゃなくて外でも賭場は多いから、稼がせてもらったよ。ありがとヒノ」
「え、なんで私?」
「そりゃ………………ヒノの試合で賭場してる人多かったし。お前ここじゃ目立つしな」
私初耳なんだけど………。いや、そりゃ耳に入るわけ無いだろうけど、闘技場の外での話なら。しかし自分の知らない所でなんかやってるてこう………。
「どうした?賭場の事か?言えば一週間以内に全部潰してくるけど」
「いや、そこまでしなくていいから」
「あ、そう」
まあ私に危害が及ばなければほっておいてもいいかな。別段困らないし。
「そういえば、結局ヒノはなんでここに来たんだ?僕と同じで金稼ぎ?」
「いや、普通にミヅキに用事あったんだけど………ていうかミヅキお金稼ぎに来てたんだ」
「でもなー………190階で勝つのが一番たくさんもらえるのに、そこで勝ったら200階に行かなくちゃいけない。仕方ないから何回も行く羽目になったよ」
「だからといって普通そんなに行き来したら明らかに出場禁止になるんじゃないの」
「そこはぬかりがないから問題ない。戦い方に気を付ければいい」
そりゃ昨日の試合見ていた限り、あれで手加減に手加減を重ねて全く全力じゃなかった、なんて言って信じる人なんかいないでしょ。全身ズタボロで相手と共に満身創痍の姿。
目の前にいる、全く無傷でコーンスープを飲むミヅキの姿を見て、私は少し嘆息するのだった。
「それで結局何しに来たの?」
「ああ、シンリがそろそろ帰っておいでってさ。あと携帯預かってきた。はい」
そう言って、シンリから渡された携帯を鞄からと取り出して、ミヅキに渡した。板状の薄型携帯で、詳しい機種名とかは知らないけど、シンリ曰く、形状の割には結構頑丈みたい。画面も含めて!あ、私も色違いで同じの持ってるよ。
「携帯か、特になくてもいい気がするんだけどな………」カチカチカチカチカチ!
「そう言いながら何を高速で打ち込んでるの?」
「ヒノやシンリやジェイやヒスイやじいちゃんの番号を―――」
「………よく覚えているね」
「―――と思ったらもう登録されていた。大方シンリの仕業だろ」
「どっちも何かおかしくない?」
まあ割と日常茶飯事の出来事なので、あまり気にしないが吉!よくあると思って頂ければ幸い。
さて、朝ご飯も食べたことだし、そろそろ出かける事にしようと思います!
「で、どこに行くって?」
「楽しい楽しい修行見学♪あ、それでミヅキにちょっとお願いあるんだけど」
「………断ってもいいか?」
「そんな事言わないで!ちょっと悪戯するだからさぁ、お兄ちゃん♥」
「………内容次第だ」
「うん!」
***
ウイングから言い渡されてた念禁止令が解けたゴンとキルアが再び修行を初めて次の日!【纏】に続いて【練】を取得し、現在キルアがヒソカの能力を見抜くため、あらかじめ録画されたヒソカとカストロの試合を、【凝】をして見ている時、部屋にノックの音が響いた。
「ズシ、見てきてくれるかい?」
「はい!」
元気よく答えた弟子のズシは扉を開くと同時に、中へと招き入れた。
「ヒノさん!久しぶりっすね!」
「やっほー、久しぶりズシ。ゴンとキルアはいる?」
「はい!師範代!ヒノさんです」
その声に反応したのはウイングだけではなく、ゴンとキルアも扉の方を向けば、確かによく知っている顔がそこにはいた。
太陽の光に反射するような、黄金色の髪を揺らし、紅玉のような瞳はまっすぐに二人を射貫き、楽しそうに笑ってひらひらと手を振った。
「ゴン!キルア!久しぶり~。ゴンも無事に念解禁できて良かったね。怪我もオッケー?」
「ヒノ!久しぶり!もうばっちりだよ!」
どうだ、と言わんばかりにぐるぐると腕を振り回して全快アピールをするゴンに、キルアは若干苦笑している。
師匠の手前事実は伏せるが、実際には1ヶ月前にはとっくに怪我は治っていた事はヒノも知っているはずだが、それでも話題にだすあたり中々演技派だなと、キルアは思った。
手近にあった椅子に座りつつ、ヒノは思考の末ピコンと提案をした。
「じゃあこの調子でヒソカも全壊しちゃえば?」
「それはすごく物騒だからやめておくよ」
「いいじゃない、前みたいにドーンって押す感じで、お腹とか顔とかポーンって」
「可愛い表現してますけどヒノさん!それリアルじゃやばい事になってるっすよね!?」
「いいんじゃない?相手ヒソカだし」
「お前相変わらずたまにひどい事言うな………」
これはヒソカが知り合いな事に同情すべきだったのか、それともヒノが知り合いのヒソカに同情すべきだったのか、残念ながらゴン達には答えが出せないのであった。
コンコン。
その時、二回目のノック。
今度はウイングが頼むよりも早く迅速に、ズシは再び扉に行って客対応。流石に弟子。いや、全ての弟子がこういう真面目なタイプというわけでは無いのだけれど。
そして真面目たタイプ程、咄嗟のアクシデントに思わず狼狽える場合が、割りとある。
「はい!どちらさ………まあぁあ!?」
「ズシ!?」
ウイングですら聞いた事の無い、ズシの妙な叫び声。何かに驚いたというのは明白だが、ここまであのズシが取り乱すのも珍しい。しかし、次の瞬間ウイングを含め、ゴンもキルアも思考を停止した。
例え念能力を修めた心源流の師範代と言えど、どんな状況にでも冷静に対応できるわけでは無い。
例えばそれが――――――〝ヒノが二人いる〟という状況なら尚の事。
「どうしたの皆?そんなに慌てて。あ、ゴンとキルアも久しぶり~。二人共無事に念の修行再会できたみたいでよかったね♪」
ひらひらと手を振って、花のように笑う少女の姿だが、その登場に皆素直に喜べない。
太陽の光に反射するような黄金色の髪と、紅玉色の瞳。寸分たがわぬような先ほどの少女の特徴が全く反映されており、一体何事かと誰もが目を疑う。ただ一人、椅子に座っている
「ヒ、ヒノ!?え!?だって、そこに………」
「何があったの?キルア?」
「………え、えぇ………ウ、ウイングさんパス!」
「投げられた!?」
無茶ぶり、とは言わない。この状況なら仕方ないと言えるだろう。キルアを誰も責められない。
そしてバトンを渡されたウイングは、眼鏡を押し上げつつ、目の前にいる二人の少女を見つめた。
片や一番最初に来て、今は椅子に座ってぶらぶらとしているヒノ。
片や二番目に来て、扉の近くで立っているヒノ。
(ふむ………同じ顔の人間がいるのにお互い無反応。という事はこれはヒノさんが意図的にやった事ですかね。とすると、どこかに見分けるポイントが………あ、なるほど。
ふっと笑い、弟子たちがうんうんと唸っている様子を気づかれないように少し楽し気に見つめる。戦闘中なら隙だらけになりそうな行為だが、今は修行中。それにヒノ二人もおとなしく様子を見守っているという事で、【凝】で確認したオーラの揺らぎなど、ウイング自身の経験則などもあり、危険は無いと判断した。
念能力者同士の闘いは、考えながら行う事も必須。いわゆる戦闘考察力。それに観察力や洞察力。それが相手の能力を見抜く力になる。無論念に限らず、相手の戦い方を見抜く事にも役立つだろう。
(さて、どういう結論になるか………)
「分かった!」
いの一番に声を上げた少年、ゴン=フリークス。
野性的な直観力、危機的状況下でも思考を低下させない冷静な判断力。決して頭が悪いわけでは無くこの状況下においても最も冷静に考えていたと言えるだろう。ウイングからみても、目覚め方は強制だが、一瞬で【纏】を学び、独学で【絶】を扱い、昨日の今日で【練】と【凝】を会得したという、ある種の神童。
もしかしたら、本当に分かったのかもしれない。果して………
「携帯に電話してみればわかるよ。本物だったらヒノの携帯持ってるんだし」
思わずウイングや二人のヒノも含めて、全員盛大にずっこけてしまった。
流石のウイングもこの回答は予想外だったのか、ズレた眼鏡を直しながらゴンへと向く。
「………いいですか、ゴン君。こういう場合は持ち物を目印にするのはあまりよくありません。それはとても簡単に入れ替えたりする事が可能だからです。確かに本人しか持ちえない物などもありますが、今回の場合は互いに携帯を入れ替える、なんて事も可能ですからね」
ヒソカはカストロの【
一秒を争う戦闘の中、神経を使う人間の具現化に、その場の状況において変化のあった事まで組み込む事はほぼ不可能に近い。具現化とは、あらかじめ固定化させたイメージをいつでも念で作り出す事ができるようにする事。そして一度決めたそのイメージは、そう簡単に変える事は出来ない。
だからこそ小さな汚れなどの僅か違いも重要となってくるのだが、今の現状は目の前に二人の同じ人間がやってきた。やろうと思えばこの宿屋に来る前に、あらかじめ物をすり替える、なんて事だって出来てしまう。
まあゴンの素直さと、ある意味核心を突くような観察力は美徳だが、それが正しいかどうか。
「まぁ………やってみるけどな」
キルアが携帯から発信した。一応やっては見る。とりあえず試してはみる。
もしかしたら正解が出てくるかもしれないから。
「「あ、いけない。携帯部屋に忘れてきちゃった」」
が、一瞬で裏切られた。しかも本人にも。
「ウイングさん、こいつら絶対グルだぜ。ていうか最初から鉢合わせしても二人共驚いて無いから事前に打ち合わせとかして来たんだぜ、絶対!」
「まあまあ。一応判断材料は残しておいてくれていますよ」
「師範は分かったんすか?」
「ええ。ヒノさんはここに来てから、妙な事を言いました。さて、それは何でしょうか?」
その言葉に、ゴン、キルア、ズシの三人は、ヒノの言葉はを思い返す。
―――やっほー、久しぶりズシ。ゴンとキルアはいる?
―――ゴン!キルア!久しぶり~。ゴンも無事に念解禁できて良かったね。怪我もオッケー?
―――じゃあこの調子でヒソカも全壊しちゃえば?
―――いいじゃない、前みたいにドーンって押す感じで、お腹とか顔とかポーンって
―――いいんじゃない?相手ヒソカだし
―――何があったの?キルア?
―――あ、いけない。携帯部屋に忘れてきちゃった
この中に一つ、おかしなセリフが存在する。それが一体何なのか?
ウイングの提示した会話文だが、ゴンとズシが首を傾げる中、キルア一人我が意を得たり、とばかりに手を叩いて驚きに表情を染める。
「………あ、ああ!確かに、一つだけおかしいセリフあるぜ」
「え、ホント?」
「ゴンの異名だ!ヒノはゴンが『押し出し』って言われた時を知らないはずなのに、1人目のヒノはその事を知ってる風に言ってやがる!」
知らない人の為に説明しようと思う。
ゴンは1階から200階までくるにあたり、対戦相手は全て張手一つで倒している。
これは最初のキルアの助言であり、ゾルディック家にある試しの門の、計4トンある扉を一人で開ける事できる腕力が付いたため、押すだけで相手を倒せると。
4トン、つまり4000キロの扉を開けられるなら、よくて40分の1以下の体重の人間など、風船でも殴るかのように軽々と跳んでいく。その為ゴンは、200階に行くまで相手を場外まで押し出して勝利をしてきた。
そんなゴンについた異名が、『押し出しのゴン』。
ちなみにキルアには『手刀のキルア』という異名がついたが、これは全ての試合を手刀一発KOにした為である。
さて、問題は時期。
ゴンは確かにその異名で呼ばれていたが、それは過去の話。200階にて数か月過ごしてからは、まるっきり聞かなくなった。原因としては200階に上がった事もあるが、その後最初の戦闘は普通に行っていたから、おそらくその異名は期間限定のものだったのだろう。もしも200階で同じように相手を押し出して勝利したら、再来とか解説の人が嬉々として語りそうだけど。
そして、ヒノが天空闘技場にやってきたのは、数週間前。つまり、ゴンの異名について絶対に知らないはず。
―――いいじゃない、前みたいにドーンって押す感じで、お腹とか顔とかポーンって
本物ならば、上のセリフは
「つまり、そのセリフを言った1番目のヒノは偽物!次に来た方が本物だ!
パチパチパチ!
そうすると、拍手の音。扉側に立っている、2番目に入ってきたヒノが、手を叩いて拍手を送っていた。
「大正解!正直携帯の話出たらどうしようかと思ってた」
「部屋に置いてきたんじゃないの?」
「ううん。普通にマナーモードにしてただけ」
中々に相手もやりおる。
しかしながら、キルアはじっとわずかに屈み、目線を合わせてヒノを見る。
「えっと、何?」
「お前本物………だよな?」
「本物だよ!?まだ疑ってるの!?」
「だって、本物って言われてもどこで判断したらいいのかわからねーし」
「それならば、簡単な話だ」
いきなり、椅子に座っていた1番目に来たヒノが口調を変えて、立ち上がった。
先ほどまでの楽し気な表情は消え、すっとした不思議な雰囲気が辺りに立ち込める。そしてゴン達は気づく。1番目に来たヒノの体を密度の高い念が纏われている事を。そしてその後の光景に、驚いた。
太陽色の黄金の髪はすっと色素を失い、灰色に近い鮮やかな銀色の髪に。さらには結わえていた髪も掻き消えるように無くなり、肩口程の長さの銀髪となる。服装は全体的に、まるで体の内側に吸い込まれていくように消え、その下からは男性用の服装、そして紅玉のような瞳は、深い海を思わせる蒼い瞳に移り変わる。
劇的な変化、しかしその顔には、ヒノの面影が確かに残っている。そんな姿の少年が、宿屋の一室に突如現れた。二人目のヒノとしていたので突如、という言い方もおかしな話だが、目の前の光景にゴンもキルアもズシも開いた口がふさがらない。念能力者として不思議な事にはまだ耐性のあるウイングだったが、それでも今の光景は驚きだろう。
「ふぅ、ヒノ、もうやらないからな」
「うん、ありがと!」
「それじゃあ改めて。ヒノの兄、ミヅキ=アマハラ、13歳。天空闘技場80階闘士だ。よろしく」
***
というわけで、正解は2番目に入ってきた私が本物でした!びっくりした?それとも別にそこまで深く見て無かった?まあ別に気にしないでもいいし、セリフの途中で、「あれ?このセリフおかしくね?」ってちょっと閃いたらすぐにわかるしね。
流石にゴンの着信発言は少しびっくりしたけどね。あらかじめ音とバイブの鳴らないマナー設定にしておいてよかったよ。うっかり携帯で判別される所だった。ていうかもっと質問とかあると思ったんだけどね。
例えば私しか知らないハンター試験の情報とか。ミヅキ基本知らないし。まあグルっていうのは最初からばれてたけど。普通に私とミヅキ一緒にいてじっとしてたし。
ここで本当に私のドッペルゲンガーだったら、私ももっとすごいリアクションしてもいいと思うんだよね。
「あの………ヒノ?」
「ん?どうしたのゴン」
「えっと、この人って、ヒノの………お兄さん?」
「そうだけど。あ、双子なんだ。だから私と同い年」
「いや、そこじゃなくて………あ、それも吃驚したけど。ヒノの姿、になってたよね?」
「ああそこ?全部念能力のおかげだよ!」
「ヒノさん、それだけで全部説明が付くと思ったら大間違いですよ」
でもウイングさん、大体そうだよね?結構「あ、なるほど!」って納得できるくらいには割と万能な返し文句だと思うよ。まあ詳細に関しては何一つ分からないけど。
「でも、ヒノってお兄さんいたんだ。あ、俺ゴン!」
「俺キルア。ミヅキって言ったよな、見たとこすっげー綺麗に【纏】してるように見えるけど、80階ってホント?」
「それが聞いてよ。ミヅキったらファイトマネーがないからって行かないんだよ」
「えっ、そんな理由っすか?」
「あはは、まあ確かにお金が目的なら200階まで行く必要はありませんね。しかしミヅキ君のあの試合のやり方は、さっきの能力の一環ですか?」
「流石、お目が高い。でも三人ともまだ修行中で【発】に達して無いなら、その辺りは後でもいいか?確か、ウイング?」
「ええ、構いませんよ、ミヅキ君」
ミヅキの言葉に、柔らかく笑うウイングさん。
確かに修行段階がまだ【発】に達していないなら、余計に話して修行の集中力を散らすのも良く無いし、質問は後で答えよう。今は【纏】と【練】、そして【凝】!
「それにしてもゴンとキルアも【凝】までできるようになったの?確か修行再スタートしたのって昨日じゃなかったけ?」
「うん。さっきヒソカとカストロの試合見てヒソカの能力研究してたんだ」
ていうかホント、確か一度【纏】をした後、すぐにゴンはギドさんと戦って負けて念の禁止令を言い渡されてから、昨日に至るまでずっと何もしていなかったから、念修行実質3日で【纏】【練】【凝】を体得したと。
ホントすごいね。いや、私が言っても説得力が微妙だけど。
「それで、ヒソカの能力分かった?」
「多分だけどな。粘着性のゴム、って感じが俺の見解。ヒノはどう思う?」
これは普通に、「私ヒソカの能力知ってるよ!」って答えるべきなのか。でもそれしたらそれはそれで面倒に………いやでも、もうヒソカと知り合いだって二人共知ってるし別にいいかな?ヒソカの能力キルアのでほぼ正解だし、教えた事にはならないはず!でも人の念能力だし、まあヒソカがいいよって言ったらにしよう。
「あ、ミヅキはどう?ヒソカの能力見てみたら?ウイングさん、ビデオにまだヒソカ戦入ってる?」
「ええ。私もミヅキ君の実力を少し見たいと思ってましたし、再生しますね」
「はぁ………【凝】」
ウイングさんがビデオを再生すると、テレビ画面からヒソカの試合が始まる。前半はカットして、ウイングさんが確認した限りヒソカが能力をよく使っている場面を抜粋したシーンらしい。天井にスカーフと共にトランプを投げている映像、あ、私ここらへん見てないや。カストロさんが顎を殴られる所からしか見てない。
一瞬で、瞬きでもするようにミヅキの目には念が集まり、次第に最後まで再生される画面の中の、隠されたオーラを見抜いていく。
「それにしても
「その発想斬新!?ミヅキ、そこじゃなくてオーラオーラ。そういうのは皆わかりきってるから」
「ヒノって案外ひどい事言うんだね………」
「言うなゴン、それも分かってた事だろ」
「そうだな、左腕からは13枚のトランプ、右腕からは千切れた右腕の先、スカーフに1本ずつで15本のオーラが伸びてるな。引っ張るだけ細くなる、ああ、ゴムみたいな変化の能力か。それにカストロの顎や体に張り付けているから粘着性もあると」
おおよそキルアと同じ見解。粘着性があり、ゴムのように伸び縮みする能力。
流石に、念能力者が【凝】をすれば、ヒソカの【
けど、ミヅキはそれだけじゃ終わらなかった。
「後、右腕が復活した後から地面のスカーフが無いし、右腕のオーラで繋いでたし、右腕接続時に一緒に引き寄せたみたいだな。それで復活した右腕は無傷、って事は、傷口を塞ぐ、というよりかは、スカーフに肌を再現するような能力で隠してる………って所か?」
「「「!?」」」
ミヅキの言葉に、ゴン、キルア、ズシは驚愕に目を丸くした。その様子を、ウイングさんだけはじっと見ている。しかし、まさか普通にあの試合から【
隣のゴン達の表情も、少し真剣みを帯びてるね。
(俺はオーラは見えてもヒソカの能力に関しては全く分からなかったのに………すごい!)
(レベルが違う………。ビデオ一本分【凝】をするだけで疲れたっていうのに、こいつこんなに涼しい顔で続けてやがる。ヒノもそうだけど、念に関しては、明らかに差がありすぎる………)
ズシから見ればゴンもキルアも、自分を悠々と飛び越える才覚を発揮する光のような存在だった。しかし、その二人から見ても、ヒノとミヅキの壁は厚い。追いつけない、とは言わないが、今この時点では確実に、実力で劣っている。
今のままではこの二人に勝てない。歩く事を覚えた子供が、走り方を知っている大人に勝てないように。
(ですが、それも今後の二人の努力次第。二人とも負けず嫌いの様ですし、ゴン君にもキルア君にも、同年代でこうも実力差を見せつけられたのならば、励まないわけは無いでしょう。いい刺激になります)
ズシがゴンとキルアの背中を見て向上を目指すように、ゴンとキルアもここで止まってほしくない、もっと上を目指して欲しい。そう願い、ウイングは気づかれないように、微笑むのだった。
***
あの後、【凝】を会得したため、二人共ウイングさんから試合をする許可をもらった。昨日の時点ではまだだったらしいけど、成長速度を見せつけて勝ち取ったと。流石!
で、キルアは自分の誕生日だから戦いたいって5月29日指定してたけど………。
「キルアの誕生日って7月じゃなかった?」
「確かにあれは嘘だけど、なんでヒノ知ってるんだ?」
「前にカナリアに聞いた」
「………たく、カナリアの奴」
既にウイングさんとズシの宿を後にして、町中を歩いていた。ゴン、とキルア、それに私とミヅキで。
ちなみにゴンも同様に、キルアの試合の次の日の5月30日に闘う事にしたらしい。
「でもキルアなんでそんなウソついたの?ウイングさんは普通にオッケーしたけど」
「順序が逆だからな」
「ミヅキ?どういう事?」
「今朝、5月30日の『ゴンVSサダソ』『キルアVSサダソ』のチケットが売られていた。てことは、遅くとも昨日の夜の時点で試合登録を申し込んだって事だろ?二人共」
じっと値踏みするように、確かめるようなミヅキの瞳は、ゴンとキルアを射貫く。
確かにおかしい。ウイングさんが許可を出したのはついさっきだ。なのに昨日から登録されている。考えられるとしたら、誰かに脅迫された、とか?
「あはは、二人共すごいね。キルア、話していいよね?」
「ああ、しゃーねーしな。でも、ウイングさんやズシには黙ってろよ?」
それから昨日の夜の出来事を教えてもらった。
200階のの自分の部屋で、ゴンとキルアとズシの3人が修行をして、終えて夜に帰る時、ズシと別れた時を狙われてズシが、あの3人に捕まったらしい。サダソさんを含めた、新人ハンター。
そしてキルアが取引をした。一人ずつ戦って勝ちを譲る。これが最初で最後。ズシを渡せ。
まあ結果はさっきズシが無事で何も知らずにいたのを見る限り、取引は成功したらしい。向こう側にしてみたら。
「でも、それでゴンも戦うって事は、ゴンの所に来たんだ」
「うん、ズシの靴が置いてあってさ。負けるのは別にいいんだけど、次あいつらがズシに同じ事してきたらと思うとさ………」
「ねえ、ゴンにキルア。それ聞いていたら一つ気になった事があるんだけどさ」
「ん?」
一つ、ゴンとキルアはサダソさん達に脅迫されて戦闘日を無理やり指定させられた。既に申請書も出して日にちの変更は不可。
一つ、取引に人質として使われたズシは、申請書を出したら無事に戻って来た。今も元気にウイングさんの所で修行し、その日の事は眠らされていたから覚えていない。
「そのサダソさん達との戦いってさ、絶対負けなくちゃいけないの?」
「は?」「へ?」
いやだってさ、脅迫は人質がいるから成立するわけで、確かにそれで戦闘日を向こうの好きに決められたけどさ、もうズシ取り返したんだし、別に試合で負ける必要無くない? 相手に勝ったって、もうズシはウイングさんと一緒にいるし、なんなら試合の無い人が警護でもすればいいし。
「って、思ったんだけどどう思う?」
「「………………………確かに」」
「でしょ?」
「え、でもそれってなんか卑怯な気が………」
「先に相手が人質取ったんだし関係無いと思うけど」
「で、でもさぁ!もしそれで勝ってから俺達がいない時狙われたら!ズシだって試合に出るし、四六時中誰かそばにってのは無理だと思うよ!」
「いや、逆にするといい、ゴン」
「ミヅキ?逆って言うと」
方法はシンプル!
既に向こうの
人質もいない!
ならば、やる事は一つ!
ミヅキは伏せていた目を開き、びしりと指を一本天に突き立て、提案をした。
「相手が同じ事を考えたく無くなるくらい、完膚なきまでに試合で叩きのめしてやればいい」
実際原作見ていたら、これもう人質いないし普通に試合になったら勝ってもいいんじゃ?と思いました。というわけで次回、大観衆の前で叩きのめします。………まあ脅す方が楽と言えば楽なんですけど。