消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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ようやく最終試験までやってきました。
ここまで来たらハンター試験も後少し!


第11話『面接と最終試験開始』

「!?」

 

 太陽が沈み、暗い帳が降りた夜、私は何かの気配を感じて、眠っていた木の上で目が覚めた。ここからそう遠くない場所で、何かが起こった気がする。何かが、と言っているが、十中八九受験生が他の受験生にやられた、という事だと思う。

 

 手探りで肌に触れて、傷は塞がったのを確認した後、木を蹴って移動を始めた。月明りしか無いけど特に問題も無く、動くこと数秒、現場を発見。

 

「――て、ヒソカじゃない。こんな所で何………してるのかは一目瞭然か。受験生狩ってたの?」

 

 げんなりした表情をしているであろう私だが、ヒソカは私の姿を確認すると、にんまりと嬉々として喜びを表現した。その手には、血の滴る、胴体とおさらばした人の頭を持ってはいるけど。

 

「やあ、ヒノじゃないか♥こんなところで出会えるなんて、やはり僕らの間には運命の糸が通っているのかな♠」

「まあそれでもいいや。それよりそれってヒソカのターゲット?」

「う~ん、どうだろうね♣この彼はナンバープレートを失っていたみたいだから、そこは分からないさ♦けど、彼のターゲットは、この子だったみたいだけど」

 

 そう言ってヒソカは空いた手に持っているナンバープレート、44番と405番の二枚を私に見せた。一枚は自分の、二枚目は………ゴンのプレート。

 

「それってゴンのプレート。ヒソカ獲ったの?」

「いいや、違うよ♠あの子は僕が他の受験生を狙った瞬間、釣り針を使って見事に僕からプレートを奪っていったよ♦正直驚嘆したね、やっぱりあの子は美味しくなる♥」

 

 なるほど、何とかヒソカからプレートを獲る事に成功したのか、ゴン。ヒソカもベタ褒めだから、ヒソカ自身も驚く程の手際で手に入れた事なんだろう。それにしては不可解なのが、自分の44番プレートも持っているって事だけど………。

 

「もしかし、ゴンがヒソカのプレートを奪った後、首の人(そのひと)がゴンを倒してプレートを回収し、それをヒソカが倒してプレートを再び回収した、ってことかな?」

「ご名答♥流石ヒノだね♦」

 

 まるで三竦みの関係のようにも聞こえるが、実際にやり合えばヒソカの一人勝ちだね。それはそうと、後はヒソカはそのプレートをどうするか。今ヒソカの手元にある2枚のプレートが戻れば、四次試験でゴンが必要な6点は集まった事になるけど。

 

「ああ、安心しなよ。このプレートは彼に返すさ♦正直今の実力でプレートを取られるとは思ってなかったからね♥まだ近くを、毒の矢を受けて倒れている事だろうし♠あ、ただの筋弛緩薬だから命に別状は無いはずだよ♥」

「ふーん、まあそれなら」

 

 筋弛緩薬って事は、全身が麻痺してる状態って事かな。実際にゴンと一緒にいた事って少ないけど、他の人の話を総合すれば結構な野生児らしく身体能力などは一般的な子供の概念をぶち破っているらしいので、一先ず安心した。ここらへんキルアと一緒に一次試験を突破して来たからなんとなく分かってたけど。

 けどそうすると、ヒソカの点数が足りない事になると思うけど?

 

「所で参考までに、ヒソカのターゲットって何番なの?」

「くっくっく♠安心しなよ、ヒノじゃないからさ♣僕のターゲットは384番だよ♥」

「………あのさ、ヒソカ」

「ん?何だい♦」

「私そのプレート持ってるんだけど、ていうかその人から獲ったんだったよ」

 

 そう言って、ポケットの中に入っていた384番のプレートを見せると、先ほどまでにんまりとしていたヒソカの表情が、さらに狂気的に歪んだ。

 あ、選択間違えたかな?

 

「所でヒノ、会った時から気になってたんだけど、君からわずかに血の匂いが漂っているんだ♠もしかして、誰か()った?」

「(不自然に話が変わった………)人聞きの悪い事言わないでよ。ターゲットは倒したけど、ちょっと別の人に傷もらっただけだから」

「へぇ………♥君が傷をもらうなんて、一体誰にやられたんだい?」

「ギタラクルさんって人。ヒソカも知ってるでしょ?」

「ギタラクル?………ああ、イルミの事か♠まあ確かに、この試験でヒノに傷をつけられるのは僕か彼くらいだよね♣」

 

 あ、本名イルミさんって言うのか。もしくはイルミ=ギタラクルさんなのかだけど、今は特に質問する気も無いしいいや。気になるのは、ヒソカが手に持っていた生首を地面に落として、トランプを片手に構えた事かな。

 わずかに私も、じりっと足元を後退させる。

 

「で、ヒソカ。その構えはどういう」

「いやぁ、僕のターゲット持ってるみたいだし、力づくで奪わせてもらおうかと♠なんせこれは、四次試験(奪い合い)だしね♥」

「あ、闘わないから、欲しかったらあげるよ」

「………イルミとは遊んだのに、連れないなぁ♣」

「いやちょっと戦ったからこそもう十分だし!それよりヒソカ他のプレートは持ってるの?」

「一応1点が3枚持ってるからヒノがくれればそれで6点さ♦ゴンにプレートを渡しても得に問題も無いよ♦」

 

 あ、これでももう6点分集まるんだ。まあターゲットプレートがここにあるんじゃ、1点プレートを集めるよね、そりゃ。

 

「ま、いいや。とりあえずこれはあげるよ特に何も………やっぱりその内言う事一つ聞いてね」

「やっぱりちゃっかりしてる♠でも、いいよ♥」

「ありがと」

 

 そう言って、ヒソカに384番のプレートを投げ渡した。

 普通にキャッチしたヒソカは、そのプレートを自分の胸につけ、44番と405番のプレートを持ってくるりと私に背を向けた。

 

「それじゃ、これはゴンに渡してくるよ♥最終試験で会おうね♥」

 

 その言葉だけを残し、暗い森の中へと入って行く。

 

 ゴンはヒソカに貸しを作るなんてまっぴらごめんと言いそうだけど、今回は普通にヒソカに言い負かされそうだね。自由に動けないみたいだし。

 

 それにヒソカが「命に別状は無い」って言ったなら本当に大丈夫でしょ。あれでヒソカ、いや、ああだからヒソカは、人の生死には特に敏感だからね。

 

「それじゃ、最終日までゆっくりしてよっかな」

 

 ぐいっと、腕を伸ばして軽く体をほぐし、再び気配を消しつつ、誰も見ている者がいない事を確認して、木の上へと上がっていく。下から見つからないはずだし、【絶】で気配を絶てばまず気づかれない。

 

 そのまま私は、暗い闇夜の中で瞳を閉じで、ぐっすりと眠るのだった。

 

 

 

 

 そして数日後、試験終了の合図が島全体に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 試験終了のアナウンスが響くと同時に、眠っていた木の上から飛び降り、スタート地変へと向かった。同じくスタート地点へとやってきた、過酷なサバイバルで6点を集めた受験生達も隠れていた場所からぞろぞろとやってくる。

 

 あ、あそこにいるのキルア。それにあっちはゴン、クラピカ、レオリオもいる。皆各々無事にプレートをゲットして来たみたいだね。よかった。とりあえずこの中ではゴンが特に大きな怪我とかしてないので良かった。流石にあの後ヒソカになんかされたりしないでしょ。

 若干頬が晴れてたのはまさか………て感じだったけどね。

 

 合格者は全部で10名。

 私と、ゴン、キルア、クラピカ、レオリオ、それにヒソカにギタラクル………ああ、本名はイルミさんだったね。後はポックルにハンゾーそれに知らない髭のおじさんの10人だ!

 これで残すは最終試験のみとなった。

 

 かくして、一同は迎えに来た飛行船にのり、最終試験会場へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 飛行船内のハンター達。

 

「10人中8人が新人か。ほっほっほ、豊作豊作」

「たまにあるんですかこんなことって?」

「うむ、たいがい前触れがあってな、10年くらい新人の合格者一人もが出ない時期がある。そして突然わっと有望な若者が集まりよる。わしが会長になってこれで4度目かの」

 

 メンチが「会長っていくつなの?」と、疑問をしていたが、ビーンズからは曖昧な答えしか返ってこなかった。曰く、約20年前から100歳と本人は言っているらしい。

 

「ところで最終試験は一体何をするのでしょう」

「あっそうそう、まだぼくらも聞いてないね」

「新人の豊作の年かどうかはまだ最終試験次第だもんね」

 

 ハンター試験は受験生の実力と試験内容によっては、その年で1人しか受からない場合もあるらしい。最終試験の内容によっては、今いる10人も幾人まで落とされる事やら。

 

「うむそれだが、一風変わった決闘をしてもらうつもりじゃ。そのための準備としてまず10人それぞれと話がしたいのォ」

 

 そう言ったネテロの言葉に、試験官であるハンター達は皆一様に、頭に疑問符を浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 さてと!!無事に四次試験のサバイバルも終わったことだし飛行船の中は意外と快適だからしっかり休憩しておこう。やー、別に野宿とかサバイバルが嫌いなわけじゃないけど、やはり森の中の生活の後で文明の利器を見ると天国のようだね。

 と思ったら、館内放送が流れてきた。

 

『えーこれより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第1応接室までおこしください。受験番号44番、44番の方おこしください』

 

 面談?面接試験をするなら普通は最初じゃ?まさかこれが最終試験!………………ていうのは流石に無いよね。そうだったら多分暴動が起きる。

 最初はヒソカって事は、受験番号通りだったら4番目に呼ばれるかな。

 

 

 

 

 

 以下面接結果をダイジェストでお送りします!

 

 

 

 受験番号44番。

 気まぐれな快楽道化師(ピエロ)、奇術師ヒソカ。

 

 一番注目しているのは?

「99番(キルア)♥405番(ゴン)も捨てがたいけど、一番は彼だね♣いつか手合わせ願いたいなぁ♦」

 

 一番戦いたくないのは?

「それは405番(ゴン)………だね◆99番(キルア)もそうだけど………今はまだ一番戦いたくない、という意味では405番(ゴン)が一番かな◇」

 

 

 

 受験番号53番。

 思っていたよりもやる男!戦略的弓兵、ポックル!

 

 一番注目しているのは?

「注目してるのは404番(クラピカ)だな。見る限り一番バランスがいい。」

 

 一番戦いたくないのは?

「44番(ヒソカ)とは戦いたくないな。正直戦闘ではかなわないだろう」

 

 

 

 受験番号99番。

 絶賛家出中。反抗期な暗殺一家の期待株、キルア。

 

 一番注目しているのは?

「ゴンだね。あ405番(ゴン)の、同い年だし。あと100番(ヒノ)もちょっと気になるかな」

 

 一番戦いたくないのは?

「53番(ポックル)かな。戦ってもあんまし面白そうじゃないじゃん」

 

 

 

 受験番号100番。

 意外とひどいと言われている。最終試験の紅一点、ヒノ。

 

 一番注目しているのは?

「405番(ゴン)と99番(キルア)かな。歳近いし面白いし楽しいし!」

 

 一番戦いたくないのは?

「うーん、44番(ヒソカ)と301番(イルミ)かな。一番面倒そうだし」

 

 

 

 受験番号191番。

 ネテロ会長にキャラカブリと思われた、髭と総髪の武人、ポドロ。

 

 一番注目しているのは?

「44番(ヒソカ)だな。いやでも目に付く」

 

 一番戦いたくないのは?

「405番(ゴン)と99番(キルア)と100番(ヒノ)だ。子供と戦うなど考えられぬ」

 

 

 

 受験番号294番。

 動きも早いが口も早い。全く忍ばない忍者、ハンゾー。

 

 一番注目しているのは?

「44番(ヒソカ)だな。こいつがとにかく一番やばいしな。あ―、あと100番(ヒノ)もちっとだけ気になるな」

 

 一番戦いたくないのは?

「もちろん44番(ヒソカ)だ」

 

 

 

 受験番号301番。

 果たして人か?人形か?針山の謎の物体、ギタラクル。

 

 一番注目しているのは?

「99番(キルア)」

 

 一番戦いたくないのは?

「44番(ヒソカ)、100番(ヒノ)」

 

 

 

 受験番号403番。

 金は天下の周り者。こう見えて格闘センスも医術もある、レオリオ。

 

 一番注目しているのは?

「405番(ゴン)だな。恩もあるし合格して欲しいと思うぜ」

 

 一番戦いたくないのは?

「そんなわけど405番(ゴン)とたたかいたくねーな」

 

 

 

 受験番号404番。

 女ではない!私は男だ!激情型頭脳派、クラピカ。

 

 一番注目しているのは?

「いい意味で405番(ゴン)、悪い意味で44番(ヒソカ)」

 

 一番戦いたくないのは?

「理由があれば誰とでも戦うし、なければ誰とも争わない」

 

 

 

 

 受験番号405番。

 我こそは野生の申し子!息止め9分44秒、ゴン。

 

 一番注目しているのは?

「44番(ヒソカ)のヒソカが一番気になってる、いろいろあって」

 

 一番戦いたくないのは?

「うーん。99番(キルア)、100番(ヒノ)、403番(レオリオ)、404番(クラピカ)。4人は選べないや」

 

 

 

 

 

 

「うーむ、なるほど。思ったよりかたよったのォ。………これでよし!と。おいみんな、見てみィ。組み合わせができたぞぇ」

「………会長………これ本気ですか?」

「大マジじゃ、ひぇっひぇっ。これで勝てば晴れてハンターの仲間入りじゃ」

 

 

 そして3日後、私達は最終試験会場へと到着したのであった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 最終試験会場は、ハンター協会が運営するホテル。飛行船で到着した私達は、かなり広めの一室へと案内された。そこにいたのは、布の掛けられ中が見えないホワイトボードと、その隣に立つネテロ会長。

 そしてこれまでの試験官に、10人の黒服とサングラスを来たこれまた試験官。ちなみにこの人達ゼビル島に一緒にいて受験生を監視していたんだよね。人数分だから、ここまで最終試験に残った受験生にそれぞれ尾いていた人っぽいね。

 

「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。その組み合わせは………こうじゃ」

 

 ネテロ会長のとった布の下にはホワイトボードに書かれたトーナメント表が現れた。

 

 対戦順を分かりやすくまとめると………。

 

 左部分トーナメント。

 第一試合………ハンゾーVSゴン

 第二試合………ポックルVSヒノ

 

 右部分トーナメント。

 第三試合………クラピカVSヒソカ

 

 左部分トーナメントは第一試合と第二試合の敗者同士が戦い、さらにその敗者がキルアと戦い、さらにその敗者がイルミと戦う。

 

 右部分トーナメントは第三試合の敗者がポドロと戦い、さらにその敗者がレオリオと戦う。

 

 最終的に残った右と左のトーナメントの敗者同士が戦い、これでトーナメントは終わりとなる。

 

 説明していて気付いたかもしれないけど、このトーナメントは敗者が昇っていき、最終的な敗者を一人決める。

 

 では、試験合格の条件とは何か?

 

「さて、最終試験のクリア条件だがいたって明確、たった1勝で合格である。つまりこのトーナメントは勝ったものが次々と抜けていき、負けたものが上に登っていくステム。この表の頂点は不合格を意味するわけだもうお分かりかな?」

「要するに不合格はたった1人ってことか」

「さよう。しかも誰でも2回以上の勝つチャンスが与えられている。何か質問は?」

「組み合わせが公平でない理由は?」

「うむ、当然の疑問じゃな。この取り組みは今まで行われた試験の成績を元に決められている。簡単に言えば成績のいいものに多くチャンスが与えられているということ」

 

 なるほど、四次試験の時にいた黒服の人の審査に基づいてるのか。まあそれだけじゃなくて、一次試験から四次試験までの全て、他にもいろいろとあるだろうけどね。

 

 けどキルア的には不満があるようでネテロ会長に質問したところ採点には大きく身体能力値、精神能力値、印象値から成っている。そして身体能力値と精神能力値は参考程度、重要なのは印象値らしく値では測れない〝何か〟、ハンターの資質評価。

 

 ハンターとしての素質ってことは必要なのは………なんだろう?ハンターっぽい人かな?

 キルアの不満もわかるけどキルアの場合受験動機も微妙だしね。あ、人の事言えないかな。もちろん身体能力値はかなりいいと思うけど。

 

 それにしてもレオリオとイルミさんはチャンスが2回か。レオリオはハンターより他の職業が向いてるのかな、イルミさんはきっと必要最低限のことしか言わなかったんだろうな………。

 

 わたしは5回だから一番多かったよ!後はゴン、ハゾー、ポックルも同じ数だね。ほんとにどうやって決めてるんだろうね。キルアとヒソカはヒソカの方が回数が多いというのもびっくりだね。いや、びっくりじゃないかな?

 

「戦い方も単純明快、武器OK反則なし、相手に〝まいった〟と言わせれば勝ち! ただし、相手を死に至らしめてしまった者は即失格! その時点で残りの者が合格、試験は終了じゃ、よいな」

 

 勝負の決着は「まいった」と言わせるだけなのかな。そうだとしたらネテロ会長って意外と曲者だな。皆そう簡単に「まいった」なんてなかなか言わなそうな面子だし。まあそれもやり方次第だけどね。

 

「第一試合、ハンゾー対ゴン」

 

 立会人の人はマスタさんという人とハンゾーの会話を聞く限り、ハンゾーの四次試験の見張り役みたいだね。レオリオとゴンは試験官に気づかなかったみたいだけど。

 それにしてもこの見張役の試験官って一週間自分の担当をずっと見張ってたのかな?

 そうだとしたらこの人たちすごいタフだな。

 担当が死んだらお役御免だし島からは出られないのにどうしてたんだろ………?私はいるのは知ってたけど、ずっと姿を見ていたわけじゃないし。

 

「始め!!」

 

 さて、身体能力じゃハンゾーの方が上だし、ゴンはどうするかな。

 ゴンも中々に頑固そうだから、「まいった」なんてそう簡単に言わなさそうだね。

 

 開始直後、ゴンは横っ面へと飛び出した。まずは様子見か、スピードで攪乱するつもりなのか、しかしハンゾーにとっては、そのスピードは見切れる範囲内。一瞬でゴンの前へと移動したハンゾーは、ゴンの首筋へと思い手刀を放った。それも、相手の意識を絶っても意味ない試験の構造上、ダメージだけ与え動けなくなるような攻撃を。

 後は、どうやって「まいった」って言わせるのか………。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ゴンって頑固だね。いや、意思が強いのか。

 それからハンゾーは拷問まがいにいろいろとしたけどゴンは決して「まいった」と言わなかった。

 

「キルア、この後ゴンどうすると思う?」

「………んなの、「まいった」って言うしかねぇだろ。ここからゴンに反撃の手段なんてねぇよ」

「かもね。けどこの試験なら、反撃する必要も無いかもしれないけど」

 

 ようは相手に言わせるか、相手を諦めさせるか。それは優位も劣勢も、変わらない。

 

 そしてついにハンゾーは、ゴンの腕を折るという。

 ゴンにはチャンスが後4回残されてるけど、目を見た限りゴンは腕を折られたとしても負けを認めないだろう。絶対的な意思、頑固っていうレベルじゃなく、自分の言葉を絶対に曲げない信念のような物を、あの目から感じる。

 

 ゴンが負けを宣言しないと、ハンゾーは左腕を折った。

 

 レオリオとクラピカはもう限界かもね。すぐにでも飛び出していきそうな気配だ。レオリオはともかくクラピカも冷静じゃなくなるとは。

 

 でもあの折り方。もしかしてハンゾー………割と優しい?

 昔聞いた事がある。ジャポンの忍者は拷問するのに情は持たないようにしてるようだけど、ゴンのあの腕の折れる音と、ハンゾーの態勢の折り方からしてかなりきれいに折れてるみたいだ。あそこのオーラも、乱が少ない。後々後遺症が残らないようにしたハンゾーの優しさだね。

 

 まあだから感謝しろって言わないけど。折ったのには変わらないし。でも死ぬわけじゃないし。

 

 その後逆立ちハンゾーレクチャーによる忍びとは何かが始まった。あえて感想を言うとしたら、油断と慢心と圧倒的優位とゴンが痛みで悶えている為のすごい隙だらけだった。

 

「悪いことは言わねェ、素直に負けを認めな」

 

 無駄にキリっとしたその直後、立ち上がったゴンに顔を蹴飛ばされたハンゾーは吹っ飛んだ。今ハンゾー全然防御してなかったから痛そー。しかも今のはかなりかっこわるい。

 

「ってーーくそ!!痛みと長いおしゃべりで頭は少し回復してきたぞ」

 

 回復力早いねゴン。これなら腕もあっという間に治りそう。

 

「へっ、わざと蹴られてやったわけだが………」

「うそつけーー!!!」

 

 鼻血出して涙目になりながらじゃ説得力ないよハンゾー。

 今度は腕に仕込まれた刃物を取り出して、脚を切り落とすと宣言した。

 さすがにこう言えばゴンも負けを認めると思ったのだろうけどゴンは。

 

「それは困る。脚を切られちゃうのは嫌だ!!でも降参するのもいやだ!だからもっと別のやり方で戦おう!!」

「な………てめー!自分の立場わかってんのかー!!」

 

 確かに。レオリオなんかすごい顔してるよ。ヒソカとポドロさんも忍び笑いしてるし。

 本当に、腕を折られた後とは思えない態度だね、ゴン。

 

「んだよ、現状何も変わってないのに、なんでこんなに空気が変わってるんだ?」

「そりゃ、もう分かりきってるからじゃない?腕を折られても負けを認めない子だよ?今更何をしても、ハンゾーはゴンには勝てないってさ」

 

 

「何故だ、たった一言だぞ……? それでまた来年挑戦すればいいじゃねーか」

 

 ハンゾーなら脚を切ったとしても出血しないようにする術を持ってるはず。

 可能ならもっとひどい状態にすることもできるはず。誰もゴンがなぜそんなに頑ななのか理解できてない。

 

「命よりも意地が大切だってのか!! そんなことでくたばって本当に満足か!?」

 

 声を荒げるハンゾーに、ゴンが答えを返す。

 

「親父に会いにいくんだ。親父はハンターをしてる。今はすごく遠いところにいるけど、いつかは会えると信じてる」

 

 シンと静まり返った会場にゴンの言葉だけが静かに響く。

 

「もしここでオレが諦めたら、一生会えない気がする。だから退かない」

 

 ゴンの意思はすごく固い。あの目は絶対に諦めない信念と決意。やっぱり、ハンゾーにはゴンを負かすことができないね。

 

「退かなきゃ………死ぬんだぜ?」

 

 ゴンの目に宿る決意は並大抵の決意じゃない。そしてハンゾーは、自ら負けを宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【最終試験トーナメント】
・ルール①一勝すれば合格
・ルール②「まいった」と言えば負け。それ以外の負けはなし!
・ルール③相手を殺害したら失格。その時点で他全員が合格。

【現在合格者】ゴン





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