消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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ある程度違和感の無いように時系列など考えてますが、どうしても妙な所などありましたらお気軽に質問してください。


第10話『プレートアタック』

 

 

 

 前回のあらすじ!

 

 ゴンが竿を振る練習をしている小川の近くの木の上にいた受験者番号384番の人を仕留めてプレートをゲットしたよ!………なんか普通にゴンを狙ってたっぽいから後ろから気配消して近づいて仕留めちゃったけど、いいのかな?

 

 一心不乱に竿を振っていたゴンもゴンだけど、それをじっと監視する為に木の上に留まり身を潜める384番さんも384番さんで意識がゴンの方に向きっぱなしだったしなぁ。なんだか悪い事した気分だけど………。

 

 そう思い、私は自分の掌に乗った384番のプレートを見つめるが、そのままそっとポケットにしまった。

 

「よし!とりあえずターゲット探しに行こうっと!」

 

 気を取り直して、木の上から木の上へと移動を始める。

 ちなみに384番の黒人さんは最初に潜んでいた木の上に放置して置いたよ!とりあえずそれはいいとして、木の上、それも高いところを移動しているのには理由がある。

 

 ポックルさんの情報だと、私のターゲットである80番のスパーさんという女性は、狙撃銃を使う人。つまり、見晴らしのいい所から下を通る人を狙撃するはず。そしてこの島で一番見晴らしがいいのは、木の上。

 気配を消し、木から木へと飛び交い早数十分。

 

(見つけた!)

 

 私のいる木の位置からおよそ50メートル程離れた別の木。そこに片膝を立て、狙撃銃を構えるサングラスをかけた女性の姿があった。間違いなく、受験番号80番、私のターゲット。流石に狙撃銃を武器に持つ受験生がそうポンポンいても困る。

 

 こちらには気づいてないようだし、誰かに狙いを定めている感じ。ゴンも黒人さんもスパーさんも、こう集中してると周りが見えない人って多いなぁ。いや、まあ後者の二人に関しては狙撃手としては一流という事なんだろうけど。

 

 けど狙っているという事は、スパーさんの視線の先には狙われている受験生がいるはず。そう思って狙撃銃の角度から森の中を見下ろしてみると、一人見つけた。それも、かなりインパクトのある人が。

 

「あれって確か………ギタラクルさん?」

 

 顔面に針を突き刺した、くるみ割り人形のようにカタカタと動いていた人。三次試験終了時に会話した限りだと一応きちんと会話の成立する人っていうのは分かったけど、このハンター試験の受験生の中だと数少ない念能力者。

 

 その時、スパーさんが引き金を引き、銃弾が放たれた。数百メートルあろうかという距離を詰め、空気を抉り迫る弾丸を、ギタラクルさんは体を少し後ろに傾ける事で、あっさりとかわして見せた。その様子を照準器(スコープ)越しに見ていたスパーさんは気づかれた事を一瞬で感じ取ったのか、体を動かし木々を蹴ってギタラクルさんと逆の方向へと動く。

 けど、あの感じだとあと数秒で追いつかれる。私はスパーさんが動いたと同時に、同じく木々を蹴って彼女へと歩を進めた。

 

(すごい殺気………来る!)

 

 逃げるスパーさんの背後へと高速で迫る物体を見た瞬間、間へと躍り出た。

 

ヒュパッ!!

 

 飛んできたのは、丸い持ち手のついた、針。8本の針はスパーに向かって彼女を絶命させるべく放たれたが、寸前、指の間に挟むようにして、両手で受け止めた。

 

「まったく危ないなぁ」

 

ガシャン!

 

 と思ったら、背後から金属音。振り向かなくても、スパーさんが狙撃銃をこちらに構えたのはすぐに分かった。

 

「動かないで、お嬢ちゃん。悪いけど、プレートを置いていって―――」

「せいっ」

 

 言葉の途中だけど、前を向いたまま右手を後ろに振るって、先ほど受け止めた針を一本飛ばし、スパーさんの狙撃銃を持つ手に突き刺した。

 

「ぐっ!」

 

 狙撃銃自体そこそこ重さのある銃器だからもあるし、まさか反撃が来るとは思わなかったのか、思わず狙撃銃を眼下の地面へと落としてしまった。一先ずこれで安心、と思ったんだけど、様子がおかしい。

 

「あ…う、あああぁ!」

 

 これってまさか!【凝】をしてスパーさんを見てみれば、先ほど突き刺した針から念が漏れ出している。という事は、あの針はアンテナ、操作系能力者が対象を操作する時に媒介にする針。

 ………普通に掴んで受け止めてよかった。ていうかそうでも無いか!

 

「ぷれえ………と、よこ………せ!」

 

 うん、完璧に操られてる。ギタラクルさんってシャルと同じ操作系なんだ。とりあえず手っ取り早く解除するには針を抜くか、犯人であるギタラクルさんを倒すのが先決だけどそれでも遅い。そんなわけで………。

 

(【消える太陽の光(バニッシュアウト)】!)

 

 一瞬、消滅の念を発動して手に持った残りの針の念を全て消し、新たな念を吹き込み、スパーさんの手、アンテナの刺さっている同じ手に突き刺した。

 

「ぐ!?ああ、ぐぅ!」

 

 一瞬びくりと動いたかと思ったら、ぐらりと体を揺らす。そのまま下に落ちそうになったので受け止め、地面へと着地して寝かせた。もう操られてはいない。一先ずこれで安心かな?

 

「驚いたね、俺の念が効かなかった?それとも最初から操作されてた?それとも除念?どちらにしても、やってくれたね、100番のヒノ」

 

 ざわりと背筋を撫でるような殺気を感じて上を見てみれば、木の枝に立ちこちらを見下ろす人影、ギタラクルさんがいた。相変わらず表情を変わっていないが、頭に疑問符を浮かべて解せない、というような雰囲気を何となく感じた。

 まあ確かに操作一瞬で解除されたらそりゃ不可解だよね。

 とりあえず向こうは今は立ち止まっているけど………どうしよう。

 

「えっと、ギタラクルさんのターゲットって、まさか私だったり………」

「違うよ。俺のターゲットは371番のゴズって男だよ。居場所知らない」

「居場所どころかどんな人なのかも知らないけど」

「あ、そう」

 

 残念だ、という口調だが、相変わらず表情も態度も変わらないのでなんだか本当に等身大の人形のように思えてきた。さっきの雰囲気は気のせいだったのだろうか?

 

「ま、それは今はどうでもいいや」

「あの~、ギタラクルさん?私ターゲットじゃないんだよね?なんで針を構えてるの?」

 

 ギタラクルさんは合理的に、ターゲット以外の人員は基本無視する物だと思っていたんだけど、いやよく考えたら私のターゲットであるスパーさんを反撃した時点でそうでもないのかな?いや反撃ならまだありか。いやしかし。

 

「少しお前に興味が湧いた。ヒソカ風に言うなら、俺と少し戦って(あそんで)よ」

「えっと、私もまだターゲット見つけてないので、ここはお互いターゲットを探して解散という事で………」

「却下」

 

 瞬間、両手に持った針を高速で飛ばして来た。

 けどその行動はあらかた予想していたので、私も両手に持った針を飛ばして針に針をぶつけて空中迎撃した。

 

「へぇ………」

 

 そう呟き、ギタラクルさんは枝を蹴ってこちらに向かってくる。表情は何も変わってないけど、完全に()る人の気配だ!この人旅団やヒソカと同類だ!正確には違うかもしれないけど、大まかに言えばきっと同類だよ!

 

 一先ず近くにスパーさんもいるので、地面を蹴ってその場を離れる。それに続くようにして、ギタラクルさんも先程の針を一瞬で回収して向かってくる。反応の速さに身体能力、それに念の強さ。

 うわー、この人戦うと面倒くさそう………。この人ガチ戦闘も強そうじゃん。あと見た目がなんかあれだから面倒そう。

 

 地面を蹴って木を蹴って、高速で移動するが、ギタラクルさんはそれに追随してくる。本当に仕留めるつもりっぽい。ていうか試験始まってまだ2日なんだから、私より他にやる事あるでしょ!ターゲット探すとかターゲット探すとか!

 ヒソカでもまだこのタイミングじゃおとなしくしてるよ!

 

「すいませーん、やっぱり見逃してくれませんかー?」

「俺に心臓刺されたら見逃してあげるよ」

「それ殺されたらって同義ですよねー」

 

 何この人怖い!?ヒソカとは別の意味で怖い!?まさか三次試験終了の会話でまさかこんな人とは思わなかったよ。それに無表情とほぼ棒読みっぽいから殺戮機械人形みたいだよ!

 このまま逃げ続けても追いかけてくるから、どこかしらでハンゾーの時みたいに姿を隠してから気配を隠したりしないと。でもハンゾーの時みたいにこの人だとそうそううまくいかなさそうだなぁ。

 

 ああ、どうせならスパーさんの狙撃銃とか持ってくるべきだったよ!いや、狙撃銃って連射でき無いみたいだしあんまり意味ないか。あ、80番プレートは取ったけどね♪

 

ヒュン!

 

「うわぁっと!」

 

 気づけば、目の前に来ていたギタラクルさんが、私の首めがけて腕を振るう。が、しゃがみ込んで回避、と思ったら、逆の手に針を構えてそのまま額に向かって突き刺して来た。ちょっと驚いたけど、紙一重で首を傾けて回避!

 

 その瞬間、ギタラクルさんの蹴りが私の左胸に向かって放たれる。

 

「あ―――ぶないっと!」

 

 寸前で、地面が凹む程蹴り、重力を無視したようにバックステップで回避して、距離を開けて対峙した。

 

「………意外としぶといし、いい身のこなししてるね」

「ギタラクルさんはいい狙いしてるね~」

 

 これは別に誉めて無いよ!?最初に首、次に脳、最後に心臓。完全一つでも破壊された死体確定の人体の急所シリーズの最重要事項を網羅してるよ!この人完全に殺し屋だ!ヒソカならもうそっと遊んで戦うけど、この人遊びとか言いつつ全然戦いに遊び無いじゃん!?

 

 どうにかして隙を作って逃げないと。でもこの人瞬きしないでじっとこっち見てるし!

 わずかにじりじりと交代するが、向こうはざくざくと歩いてくる。同時に、手元に針を一本取り出し念を込め始める。完全に()る気だし………。

 

 ………しょうがない、ここは、意表をを着いてみますか。

 

 ここで初めて、私は地面を蹴り、前へと進んだ。

 

「!!」

 

 一瞬だけどギタラクルさんが驚いたような気配を出した気がした、けど、すぐに手元の針に意識を集中させて、こちらに向かって投げてきた。これくらいなら、躱すことも造作も無い。私は紙一重で針を躱し、自分の顔の横を跳ぶ針を見過ごし、再び前と向く。

 

 瞬間、飛んできた針の()()()()()()()()()()()()()を見て、思わず瞳を見開いた。

 

――――――ザシュ

 

「あ」

 

 そんなギタラクルさんの声が聞こえてきた。声色だけだと分からないけど、先程よりも驚いている事だろう。まさか、こうも早くこの結果になるとは思わなかっただろうから。

 

 

 私の服を貫いて、皮膚を貫き――――――――――――針は私の左胸に正確に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 同時刻、ゼビル島の森の一角にて。

 

 

 銀髪の少年、キルアのターゲットは199番。

 この番号は、このハンター試験では珍しい3兄弟の受験生の長男、ウモリのプレートナンバーである。

 

 彼らはキルアを狙いプレートを奪おうと思ったが、末っ子のイモリがあっさりキルアに捕まり人質になり(ナイフより鋭いキルアの爪を首筋に当てられてる)、兄弟間の絆は確かに兄達は、弟の為に自らのプレートを差し出すのだった。

 

「あれ?こっちは197番か。もー、オレってこういう勘はすげー鈍いんだよな。ねーあんたが199番?」

「………ああ」

「頂戴」

 

 キルアにそう言われて、長男のウモリはあっけなくプレートを差し出した。その番号は、確かにキルアのターゲットである199番だった。

 

「サンキュ」

 

 そう言ったキルアは、自分にとって1点にしかならない番号札である198番と197番を、それぞれ別の咆哮へとぶん投げた。

 腕力をt(トン)で表せるほど怪物染みているキルアの腕力によって飛ばされたプレートはぎゅるぎゅると唸り声をあげ、あっけなく島のどこかへと飛んで行ってしまった。

 

 こうしてキルアはあっさりと自分のターゲットプレートを手に入れ6点を獲得し、残った3兄弟達はプレートを全て失ったのだった。

 

 まだ5日あるのでキルアの飛ばしたプレートの行方を追う選択肢もあるが、この広大な森の中、目印の無いプレートが見つかる可能性は、皆無に等しかった。

 

 事実上の、今期ハンター試験脱落である。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

(おかしいな、思ったよりあっさりとしている気がする)

 

 ギタラクルは、己の暗殺術を肯定するのではなく、相手の力量に疑問を持った。ここまで見事に自分の攻撃を躱して来たのはまぐれでも偶然でも無い。彼女には確かにそれだけの力があったし、自分が()()()()()()()()で全力を出せていない事を抜いても、十分目を見張る実力だ。

 本気でやり合っても、仕留める事が出来たかは分からない。

 が、彼女は今、左胸にギタラクルの投げた針を受け、体をぐらりと倒した。

 

(もう少し歯ごたえがあるかと思ったら、結局はこの程度か。ヒソカの目も鈍ってるのかな)

 

 そう思い、彼女のプレートをついでに頂こうかと、特に何か思うわけでもなく一歩踏み出そうとした瞬間、ぞくりと何かが全身を突き抜けた。

 

「これで、逃げさせてもらうね?」

 

 すぐに回避しろ!そう脳の命令が全身を働かせるよりも早く、ギタラクルの前に立つ少女、ヒノは、振り抜いた掌底をギタラクルの腹に撃った。

 

「!?(この威力!強化系!?俺の念の防御を突き抜けてきた!)」

 

 極限まで強化した拳は、己より弱い念を打ち破る事がある。確かにそうだが、ギタラクルには彼女は強化系っぽく見えなかったので、意外だった。

 

 だが、この拳は紛れもない本物。

 ギタラクルは咄嗟の防御も空しく、鈍い打撃と共に吹き飛び、背後にあった大木に背中を打ち付けた。一気に肺の中の空気を吐き出したが、同時に幸運とだと思った。

 おそらく後ろの大木が無ければ、さらに飛ばされていたかもしれない。確かにダメージはかなり大きいが、まだ体は動ける!

 己の体に鞭打って、再びヒノを見据えて飛び出した。目の前には、バックステップですぐにでも離れようとしている彼女の姿が映るが、まだ間に合う、そう思いギタラクルは足に念を込める。

 

 否、込めようとした。

 

 

ガアアァン!

 

 

 瞬間、どこからともなく飛来した小さな物体が、ギタラクルの顔面、特に目の辺りに直撃し、文字通り面食らってしまった。

 

(なんだ?一体何が来た?あれは………………197番?)

 

 思わず閉じかかった目が最後に捉えたのは、白くて丸い、自分もよく知っている受験生の持つナンバープレート。その、197番という自分と縁もゆかりもなさそうな番号のプレートが、直撃した。

 

 つい足を止めてしまったが、頭を振り払って前を見た時には、すでにヒノの姿は無かった。今の邪魔が無ければ追いつけたかもしれないが、今となってはもはや見つけるのは厳しいだろう。

 

 足元のプレートを広い一先ずポケットに仕舞いながら、先ほどまで対峙していた少女の事を思い出した。

 

(受験番号100番、ヒノ………か。確かに、心臓に刺さったはずだけど………)

 

 それでも、まあいいかと思い直した。

 どういう手品かも、念能力だったのかも、鎧でもつけていたのかも、全く持って分からない。自分の操作が効かなかったのも分からない。しかし、己が見逃すと宣言した以上、これ以上追うのも違うと思った。

 

 一人ギタラクルは、再び自分のターゲットを探して、森の中を歩くのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「あー、誰のか知らないけどプレートが飛んできてくれて助かった。おかげで逃げ切れたよ。肉を切らせて骨をって言うけど、あんまりやりたくない戦法だね」

 

 背の高い木の上から、ギタラクルさんが去るのを確認した後、安心するように大木の枝の上で寝そべった。まさかあの人が、こんなにしつこく追い回してくるとは思わなかった。自分以外の念能力者だから興味を持ったのかな?

 だとしたらヒソカを狙ってほしいのだけど、多分ヒソカと叩けば試験を受けるどころの騒ぎで無い事を、ヒソカもギタラクルさんも互いに分かってたんでしょ。だからかとりあえず多少の進行を深めていた。もしくはあの二人ハンター試験前からの知り合いだったか、だね。

 

 ふと空を見上げると、パタパタと数羽の蝶が私の周りを飛んでいた。

 どうしてこんな高いところに?と思ったら、私の左胸の辺りを飛び回っている。

 

「あ、そうか、血の匂いにつられてるんだ」

 

 サバイバル前提のこの島の蝶らしいといえば、らしいけど。

 私は自分の左胸を見てから、()()()()()()()()()()()()()、そのまま針は一応バックに閉まった後、少し服をはだけさせた。

 襟元から見える肌、鎖骨の下の方には、僅かに細い傷から血が少し流れていた。一先ず絆創膏を取り出して、貼って止血をしておけば、とりあえずオッケ。すぐに塞がるけど、血で服が汚れるのは避けたいしね。

 

 

 それにしても………。

 

「あー、やっぱり針とか刺さると痛かった」

 

 そうぼやく私の声は、誰に聞こえるともなく空気に溶け込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




知らない間に一矢報いたキルア

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