ギター好きは死んでもまたギターが弾きたい。(仮題)   作:Ruminq

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お 待 た せ 。

夏休みってこんなにも忙しいものでしたっけ?
活動報告で修正をしていくとか言いましたけど人称を変えると全部書き換えなので実質一から書き直さなきゃいけなかったとは…失念していた。

今回も三人称です。
よければ一人称と三人称どちらがいいか感想してくれたら嬉しいです。




第七話 魔術特性x固有魔術xきっかけ

 

 

 

食堂でのカオスな出来事から数か月。

無事(?)にアルザーノ帝国魔術学院に入学できた三人は何の因果か

同じ1学年次1組の所属になった。

 

「さぁ、皆さん講義を始めますので席に着いてください」

 

担任はヒューイ・ルイセンという男性講師だ。

講義がわかりやすく、生徒からの人気も高い。

 

それも含めてヴァイスら三名は学年でも優秀な成績を収め学年順位でも三人が3位以内を取り合いながら独走中だ。

 

――ただし。

 

“筆記の場合”という言葉先の文頭に着くが。

 

実技の場合、学年トップに躍り出ているのはイヴとヴァイスのみだ。

グレンはほとんど最下位にいると言っても過言ではないほどに底辺にいるのだ。

 

原因はすでに判明している。

それは約一ヶ月前の魔術検査が原因だ。

 

「変化の停止・停滞か……」

 

ヴァイスが悲しげに呟く。

 

――そう。グレンの魔術特性は変化の停滞・停止だった。

 

魔術は世界の法則へと介入、そして“改変”させる技術だ。

グレンの魔術特性はそれを停滞させているため、常にブレーキをかけている状態なのだ。

兆候はかなり前からあった。

 

それが判明した時の彼の絶望した顔は忘れられない。

ヴァイスはかなり曲者の特性であったがグレンの様に魔術自体に影響するような物ではなかった。

 

そのせいでヴァイスはグレンに距離を置かれている。

 

「どうしたものかなぁ……うーん!」

 

「うるさいわよ。…他人の事を気にする暇があるなら早くその課題仕上げてくれないかしら」

 

「はいはいはい、わかりましたよお嬢様」

 

「…燃やすわよ?」

 

「はいすいませんでした」

 

課題を仕上げている最中であったことを思い出したヴァイスはイヴの催促を揶揄うことで受け流していると脅迫とは思えない脅迫を受け素直に謝罪する。

机の下でに蹴りをかまされながらヴァイスは課題のレポートをこなすのだった。

 

 

 

†  †  †  †  †

 

 

 

放課後ヴァイスがイヴに急かされている同刻――。

現在のヴァイスの悩みの種の原因であるグレン=レーダスは人気のない貧民街を歩いていた。

 

「確か…この辺りだった筈」

 

グレンは辺りを見渡しながら記憶を呼び起こしてある目的地を目指す。

そしてグレンは見覚えのある道に躍り出た。

 

「お、ここだここだ」

 

貧民街にふさわしいボロボロの孤児院の前に立つ。

グレンはしっかり来れたことに安堵する。

そしてその屋敷の門を思い切り押して開けた。

ギィィィ――…という軋む音を大きく立てながらグレンはその敷地内に躊躇いなく入った。

 

「お~い、来てやったぞー!」

 

と大きな声で屋敷の奥に向かって声を掛けるグレン。

それから少し間を空いてから、孤児院の中から大きな足音が大量に聞こえてきた。

孤児院の玄関の扉が勢いよく開かれた。

 

「あ~! やっぱりグレンだ~っ!」

 

「今日は何して遊ぶの~?」

 

グレンよりさらに年が下だと伺える子供達がグレンに迫る。

 

「今日は遊びに来たんじゃないの! 俺は勉強を教えに来てやったんだからな!」

 

「えぇ~? 勉強ヤダ~」

 

「教えるのはお前らじゃないの!」

 

しがみつく子供たちを引き剥がそうと四苦八苦しながらグレンは言う。

子供たちとしばらく格闘していると、玄関の方から聞き慣れた声がこちらに向けて放たれる。

 

「やぁ、グレン! 来てくれたんだね!」

 

「ニーナ! ちょっとこいつら何とかしてくれないか!?」

 

「まぁそう言わないで少しだけ相手してやってよ。いっつもボクが相手してやってるからたまには他の遊び相手が欲しいんだよ、きっと」

 

「グレン! 鬼ごっこしよ! 鬼ごっこ!」

 

「かくれんぼがいい!」

 

「…だぁぁ! わかった鬼ごっこしてやるから早く逃げやがれ!」

 

グレンは仕方なく鬼ごっこを選択する。

 

「俺が鬼な! 10秒数えてやるから早く逃げろよ~!」

 

グレンがそう言うと、子供たちはきゃっきゃっと賑やかに散らばっていく。

グレンはそんな子供たちを見てニヤリと笑いながらカウントを開始する。

 

「10、9、8、7、6、5、4」

 

グレンはカウントを読みながら、足に力を込めていつでも全速力でスタートできるようにする。

それを見たニーナと呼ばれる少女は苦笑とも呆れとも言える曖昧な笑みを浮かべながらグレンを見ている。

そしてグレンは自身のマナバイオリズムをニュートラルにして即興の呪文改変を行った。

 

「≪我・()秘めたる力を・()解放せん()≫」

 

(――0ッ!!)

 

白魔≪フィジカル・ブースト≫を発動して自身の身体能力を強化する。

 

「悪いが、さっさと終わらせるぞ!!」

 

勝利を確信した笑みを浮かべながらグレンは一気に子供達を捕まえていく。

強化された身体の前では子供達は為す術もなく捕まえられていくのだった――。

 

 

 

†  †  †

 

 

 

子供たちの鬼ごっこを秒で終わらせたグレンは当初の目的であったニーナの家庭教師をしていた。

 

「それにしてもさっきのは大人げないんじゃないかな~?」

 

目の前の算数の問題集を解きながらほがらかに笑いながら言う。

 

「俺は元々お前の勉強を見るために来たってのになんでガキ共と遊ばなきゃなんねぇんだよ」

 

「つれないなぁ~」

 

「つれなくて結構。…そこ、間違ってるぞ」

 

「えぇ!?……あーもう! 難しすぎるよ~!!」

 

グレンは適当にニーナをあしらいながら問題の間違いを指摘しながらどこが間違ってるかを分かりやすく紙に書き記していく。

 

グレンが最近ヴァイスに距離を置いているのは勿論魔術特性(パーソナリティ)の事もある。

それでも前までは冷たいながらもヴァイスとは接していた。

全くと言っていいほど接していない理由はこの孤児院での家庭教師の真似事が原因だ。

 

数週間前、学院で魔術検査があった時グレンは自身の魔術特性(パーソナリティ)に絶望した。

それと同時に憤慨した。

 

(セリカはなんで教えてくれなかったんだ!?)

 

おかしいと思った。

皆と同じ魔力量で自分だけ魔術の威力が低かったりしたのは才能だと思っていたが

そうではなかった。自身の特性が常にブレーキを掛けていたのだ。

 

それを当然第七階梯(セプテンデ)のセリカなら知らない筈がないのだ。

3年間も魔術を教えてもらっていたのだ。そんな筈がない。

グレンは青筋を立てながらセリカの家もとい自宅に殴り込み、激昂した。

 

なぜ自分の魔術特性について教えてくれなかったのかと。

これでは自分の夢なんて叶うわけがないと。

 

そして散々好きなだけ八つ当たりをしたグレンはセリカの悲しげな顔を見た時、

自分が惨めになり、セリカの制止の声も聞かずにそのまま家を飛び出して走り続けた。

 

自分がどこを走ってきたのか分からなくなるほど走り続け、気付けば貧民街に来ていた。

そのままフラフラと歩いている内に前を見ないで俯いていたグレンは柄の悪い三人の不良の一人にぶつかってしまう。

そしてグレンは三人の不良達に取り囲まれてしまう。

 

「痛ってぇなクソガキぃ!」

 

「ッ! ≪幼き雷精よ・汝その紫電の衝撃以て・彼のて――≫」

 

「舐めてんじゃねぇぞこの餓鬼ぁぁぁぁ!!」

 

「意味わかんねぇことブツブツブツブツ、まずは謝罪だってママに教わらなかったんでちゅかぁ~!? あぁ!?」

 

自分の危機に半ば無意識的に魔術を発動しようと詠唱をするが、不良に殴られることで脳が揺らされて詠唱がキャンセルされてしまう。

そしてそのまま殴られ、蹴られ、踏みつけられ、脳震盪により朦朧とした意識の中に衝撃が走る。

 

グレンは自身の無力さを実感する。

先の詠唱(スペリング)でもそうだ。もしもまともな魔術特性(パーソナリティ)であれば一節詠唱で不良を撃退していただろう。

 

(僕の特性が【変化の停滞・停止】なんてものじゃなければ……っ!!)

 

無力感に苛まれる間も不良達のリンチは続いている。

ただでさえ打ちひしがれているグレンにとって今回の魔術を知らない不良に負けたという事実はグレンの心を折るには十二分であった。

 

(もう……いいや……)

 

諦めて意識を手放そうとした瞬間――。

 

「ちょっと待ちなよ」

 

凛とした鈴のような通る声が響く。

 

「弱い者イジメは良くないと思うなぁ~ボク」

 

これがグレンの固有魔術【愚者の世界】のきっかけになった少女との邂逅だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この辺りはヴァイス君はあまり登場しません。
ヴァイス君はもう少ししたら主人公するのでお待ちください。
評価、感想お待ちしてます。

より良い小説にするために協力お願いします。
あとモチベーション維持のため((ボソッ

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