ギター好きは死んでもまたギターが弾きたい。(仮題) 作:Ruminq
今回は三人称に挑戦してみました。
できれば感想欄に前の一人称と今回の三人称どちらが出来が良いか言って頂けたらいいな…って。
はい。
それではどうぞ。
あらすじ――。
ヴァイスとグレンはアルザーノ帝国魔術学院に入学するために栄えあるその土地に足を踏み入れたのだった。
学院の中はヴァイス達と同期になるであろう入学生とそれを案内する講師たちで溢れかえっていた。
「…すごい人だね、これだけ人がいるのを見るなんて久しぶりだよ」
「まぁ、僕たちはこの三年間セリカの家にほとんど籠ってたからねぇ……」
グレンとヴァイスはその人の多さに圧倒されていた。
「……入学式ってどこでやるんだっけ?」
「確か大きな講義室を使ってやるって書いてあった気が……」
「講義室って…どこ…?」
ヴァイスとグレンは早速迷子になってしまった。
講師がどうやら講義室に案内をしているようなのだが、なにせヴァイスとグレンはまだ11歳。周りの学院生になるであろう者たちは恐らく14歳か15歳前後であろう。
身長も段違いでそれ故二人は他の人たちの足の埋もれて講師の案内の声も届かないのである。
「うーん、どっちに進めばいいかわからないね…」
ヴァイスは眉を八の字に曲げて不安そうな顔になる。
それを見たグレンは
「とりあえず、この人ごみから出ることを考えようよ」
「そうだね」
グレンの提案に乗ったヴァイスは見失わない様に注意しながらグレンと共に人混みの足をかき分けながら前へ進み続けた。
そんな中で、ヴァイスは誰かの足に引っかかってしまい、コケる。
「へぶっ!?」
まともな足場もない人混みの中でヴァイスは地面に顔を叩きつけてしまう。
そしてヴァイスは痛みのあまり顔を手で押さえる。
「痛てて…あれ、グレンは……?」
ヴァイスが気付いた時には既にグレンの姿はなく、あるのは人混みのせわしなく動く足だけだった。
「……まずったなぁ」
自分はまだいい。一応精神年齢は前世含めれば20ウン歳なのだ。
これくらいは別にどうってことはないのだ。
それより心配なのはグレンの方なのだ。多少精神年齢はセリカやヴァイスと過ごしてきたことで同年代の他人よりは上なのだが、それでも11歳の子供なのだ。
「……グーレーン!? どこだー!?」
ヴァイスは大声でグレンに呼びかけるが、周りの喧騒によって11歳の体で出せる声では掻き消されてしまった。
「どうしようかなぁ…。講義館に行けば合流できるかなぁ……」
一度講義館に行こうとしたヴァイスだが、それは一人の人物によって遮られた。
「ちょっといいかしら?」
「…はい?」
ヴァイスは背後から掛けられた声に振り返る。
その人物は燃え盛るような真紅の髪と紫炎色の瞳が特徴的な女性だった。
「講義館の行き方ってわかるかしら?」
「いえ、僕も今探してるところです」
悲しきかな元日本人の習性か初対面の人間には敬語が出てしまい少し焦るヴァイスだが
どうやら相手は気にしないようだ。
「あらそう。…ねぇ、二人で一緒に探さない? 二人で探す方が効率が良いと思うんだけど」
「…そうですね、それが良いと思います」
彼女の提案を別に断る理由もないのでヴァイスは提案を受け入れる。
「なら決まりね。…私の名前はイヴ。イヴ=イグナイトよ。イヴでいいわ。よろしく」
ヴァイスは表は平静を装っていたが、内心は驚いていた。
なにせ、あのイグナイト公爵家である。
ちなみに爵位とは貴族の称号を序列したものである。
下から男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵、大公となる。
つまり、イグナイト公爵家は貴族としては上から二番目の序列にいることになる。
フィーベル家は有爵家ではないが、フェジテでは名の知れた大地主なため、爵位があるとすれば公爵と同等の権力を持っていたりするが、そこまで詳しいことはヴァイスにはわからなかった。
「…まさかあのイグナイト家の出身とは…僕の名前はヴァイス=フィーベルです。ヴァイスで良いですよ」
「そういう貴方も大概ね。フィーベル家の人間なんて。でも変ね。一年前にフィーベル家との会食があったときは女の子しかいなかったけど」
「……事情があって、家には帰っていません」
一瞬ヴァイスは冷水を掛けられた様な感覚に陥った。
それでもヴァイスは必死に動揺を隠し、事情があると説明した。
「……そう、まぁ深くは追及しないわ」
イヴが深くまで聞いてこなかったことに安堵の息が漏れそうになるが堪える。
それと同時にイヴに感謝する。三年経った今でも、家族に会おうとは思えないヴァイス。
自身はそれが我儘だと解っていながらそれを放置して前へ進み続ける。
進みたくても進めない、停滞を強いられる人だって、いるのだから。
「感謝します。イヴさん」
「イヴでいいわよ。ほとんど同年代なんだし…あと敬語もいらないわ。同じ名家の出身なら周りも気にしないでしょ」
「そうです…いや、わかった。イヴ」
敬語を外したヴァイスを見て満足そうに片頬を吊り上げる。
「それで良いわ。…さて、講義館にそろそろ行かないと間に合わなくなるわね」
高そうな懐中時計を取り出して時間を確認しながらそう言うイヴ。
それを聞いたヴァイスは自身が先ほど何をしていたかを思いだした。
「…あっ!? グレンの事探してたんだった!? 早く探さないと!」
慌ててヴァイスは辺りを見渡すが、相も変わらず人混みでグレンを見つけることはできない。それを見たイヴは浅い溜息を吐き出し
「あのねぇ、仮にもここへ入学できるくらいなら大丈夫でしょ。心配しすぎよ…さ、早く講義館へ行くわよ。貴方のせいで間に合わなかったら燃やすから」
「……心配だなぁ…って燃やす!?」
恐ろしすぎる脅迫をしながら歩き出すイヴにヴァイスはその脅迫が嘘だと思えずに冷や汗を掻きながら慌ててイヴを追いかけたのであった。
† † † † †
なんとか講義館に辿りつけたイヴとヴァイスは人混みの熱気に当てられ脂汗を掻きながら
講義館の一番最後方の席に腰を下ろした。
「あぁ~、やっと着いた~…ここは涼しいなぁ~」
ヴァイスは人の熱気によって熱くなった体を冷やすため体を伸ばして少しでも体温を下げようとする。
それを見たイヴは呆れた目でヴァイスを見やりながら
「貴方、≪エア・コンディショニング≫が付与(エンチャント)された服を着てこなかったの?…てっきりフィーベル家のような魔術の名家ならそれくらい持ってるものだと思ったけど」
「……あ、確かに」
イヴに指摘されたことでハッとするヴァイス。
「どちらにせよ、ここに入学したら≪エア・コンディショニング≫が付与(エンチャント)された制服が支給されるけどね」
「ほぇ~すっごい」
イヴの補足にヴァイスは間の抜けた返事で返した。
それを見たイヴはアホを見る目でヴァイスを見ながら貶した。
「貴方…見た目に反して意外とバカなのね」
「なんで!?」
唐突に貶されたヴァイスは驚きで声を荒げた。
イヴと他愛の無い雑談――というより一方的に弄られてる――している内に入学式の式典が始まり、前の教壇には恐らく、この学院の理事長であろう人物が登壇しているのが伺える。
それを見たヴァイスは一向にグレンが来ないことに焦っていた。
(やっぱり探しに行けばよかったんじゃ……)
そう思って今からでも探しにいこうと立ち上がろうとした時――。
ヴァイスの後ろのドアが勢いよく開いた。
「…はぁ、はっぁ…! つ、着いた……間に合ったぁ――!」
息を荒げながら入ってきたのはグレンだった。
それを見たヴァイスは大きく安堵の息を吐いた。
「おーい! グレーン! こっちこっち!」
大きく手を振ってグレンを呼ぶヴァイス。
隣で大声を出されたイヴは少し眉を潜めてヴァイスを睨んでいる。
それに気づかずに未だ大声でグレンを呼ぶヴァイスに苛立ちの肘鉄をヴァイスの横っ腹に入れる。
「痛っ!?…なにすんのさ、イヴ!」
「隣で大声出されたら不愉快だわ」
それだけ言って目線を前に戻すイヴ。
それを見たヴァイスは少し自重したほうが良いだろうかと考えていた時に
グレンがヴァイスの隣の席に座った。
「ヴァイス! 良かったぁ…ちゃんと講義館来れてた……」
「あの人混みに足取られて転んじゃってね…はぐれてごめん」
「いいよいいよ、謝らなくて。僕たちもう付き合い結構長いんだからさ」
グレンはヴァイスが講義館に来れていたことを安堵し、ヴァイスは自身の不注意ではぐれてしまったことを謝罪する。
それを見たグレンは笑いながら許した。
それを見たイヴは自分が話の蚊帳の外なのが貴族のプライド的な琴線に触れたのか
先ほどの比ではないほど眉を吊り上げた。
「二人だけで随分楽しそうな話してるわね」
イヴはヴァイスに向けて皮肉の笑みを浮かべながら言う。
ヴァイスは慌てて
「あっ、ごめん!…グレン、この人はイヴ=イグナイト。イヴ、こいつはグレン=レーダス。僕とは三年間同じ師匠の元で修業した中なんだ」
「ふーん…ご相伴に預かった、イヴ=イグナイトよ。イヴで構わないわ…そちらのフィーベル家の人にはこの辺りでは序列は負けるけどそこそこ名家の出身よ。ま、別によろしくしなくてもいいわ」
「うん! 僕の名前はヴァイスが言ったけどグレン=レーダス! よろしくね!」
イヴはナチュラルにヴァイスに対して皮肉りながらグレンに挨拶をする。
そんな皮肉だらけのイヴとは正反対にグレンは11歳の純真無垢な笑顔で挨拶を交わす。
そんな笑顔に当てられたのか、イヴは不愉快と言わんばかりの顔で鼻を鳴らしてグレンから視線を外した。
「……なんでそんなに僕に刺々しいのかなぁ…?」
「さぁ…なんでかしら」
ヴァイスは先の挨拶での皮肉に困ったような苦笑を浮かべながらイヴに問うが、イヴは適当にあしらい話すことはもうないと言わんばかりに正面を向いて未だ続く理事長の答辞に耳を傾けだした。
「やれやれ……」
イヴを見ながら内心で溜め息を吐いたヴァイスはイヴの行動を不思議そうに見ていたグレンに対して肩をすくめたのだった。
(なんだか大変そうな学院生活になる予感がするなぁ……)
とヴァイスは思いながらこれからどんな学院生活になるのか楽しみにしている自分がいるのを自覚して年甲斐もなくはしゃいでることに苦笑するのであった。
† † † † †
理事長の非常に長い答辞のあとはかの有名第7階梯(セプテンデ)であり、グレンとヴァイスの師匠でもあるセリカ=アルフォネアのありがたい答辞と二人へのウィンクをもらったりしたが
無事に入学式典はした。
次は制服の採寸があるのでヴァイス達はそれぞれ男女別に分けて指定された部屋へと向かった。
あとで合流する約束をしたヴァイスとグレンは次こそ迷わない様に簡易的で手書きだが地図を書いてもらい――セリカから学院の地図をもらえば良いのだが二人は気付いていない――指定された部屋へと向かった。
――迷わず指定部屋まで来れた二人は他愛の無い話をしながら部屋のドアを開けた。
中には採寸係一人しかおらず、他の生徒が見当たらなかった。
そんな不思議な状況を見たヴァイス達は頭の上に?マークが浮かんでいる。
「あれ? 僕たち二人だけ?」
「うーん、部屋間違えたかなぁ…? でも採寸する人はいるしなぁ…」
なんて話していると採寸係がこちらを見て営業用の笑顔を顔に張り付けて
「あぁ、お二人はこの学院の中でも最年少の入学だそうで。当然周りよりも特別小さい制服が必要になるのでお二人だけ別室でという話になりました。ですのでここで部屋はあってますよ」
「あぁ…なるほど」
採寸係の言葉に納得したヴァイスはグレンを引き連れて採寸できるように上の服を脱いで採寸係に向き合う。
「では、採寸していきますね」
とトントン拍子で採寸を済ませたヴァイスはさっさと服を着てしまう。
グレンも同じように採寸を済ませ、制服はエンチャントするために一度違う業者に引き渡すので数週間後に自宅に届けると伝えられた。
採寸を済ませてイヴを待たせている食堂に向かった。
† † † † †
ヴァイス達が指定された教室に向かっていた同刻――。
イヴ=イグナイトは同じく女性専用の採寸部屋に向かっていた。
その道中で考えるのは先ほどの銀髪で翡翠色の瞳を持つフィーベル家の少年のことであった。
イヴ=イグナイトは名前ではイグナイト家の人間となっているが、本当の意味ではイグナイト家の人間ではない。
イヴは私生児だ。前イグナイト公爵家当主がなんてことはない平民に産ませた妾の子供だ。
妾の意味の通り、イヴを生ませる条件として多額の経済的援助を今もなお受けている。
そこに――愛情はない。
だからイヴは本来一般人の家庭に生まれながらイグナイト家の人間になり、その貴族社会の中で肩身の狭い思いをしてきた。
やれ――平民の子だ。
やれ――愛情の無いただの操り人形だ。
散々な物言いを受け続けた。
だからイヴは相手がなにも言えなくなるくらいの実力を身に着けるために自身の心を誤魔化して冷徹な人間としての皮を被った。
そう生きてきて数年が経ったころ、イヴに陰口を叩くものはもういなくなっていた。
それどころか自身がなにかをやれば
やれ――さすが当主様の子だ。
やれ――1を聞いて10を理解する天才だ。
すぐに手のひらを返した。
イヴは反吐が出そうになった。
なにが、貴族だ。
なにが、眷属秘呪(シークレット)だ。
お前たちはイグナイト家の恩恵が欲しいだけではないか。
私は1を聞いて10を理解する天才などではない。
お前たちの知らないところで血反吐を吐くくらい努力をしたのだ。
それ“天才”だの一言で済ませられた。
――ふざけるな。
だから――貴族は嫌いなんだ。
だからイヴは、平民に憧れることは当然だっただろう。
外を出歩いた時に見る平民達の顔。
なんの幸福なことなんてないはずなのに、なぜあんなに笑っていられるのか。
貴族達はあんな嘘で塗り固められた笑顔を振る舞っているのに、平民達の笑顔は嘘偽りがない心からの笑顔に見えた。
イヴにはそれが不思議に思えた。しかしそれと同時に
――酷く…………羨ましかった。そんな風に笑える人達が。
そんなある日、私はイグナイト家当主に引き連れられ、フェジテの大地主――フィーベル家との会食があった。一応のイヴの父である当主からは
「フィーベル家のご息女と仲良くなり、魔導省に新たなパイプを作るのだ」
と言われた。その愛情の欠片も無い言葉にイヴは
あぁ――反吐が出る。
そう心中吐き捨てながら当主の言葉に頷いた。
そしてその夜、フィーベル家にて会食を行った。
イヴは当主の言いつけ通り、フィーベル家の娘――システィーナ=フィーベルと話をしていた。
話を聞く限り、フィーベル嬢は生粋の“メルガリアン”、と呼ばれる人種らしく私が話す暇もなくずっとメルガリウスの天空城の自身の見解を話し続けていた。
フィーベル嬢はその魔導考古学の専門家から見れば年相応の理論とは思えない程のクオリティを誇っていたが魔導考古学には全く興味がないイヴはただ相槌を打つことしかできなかった。
それを見たフィーベル嬢は何故か急に話を止めイヴを見て悲しそうな顔をして
「兄さんと同じ反応をするのね…………」
最も近くにいるイヴにすら聞こえない小さな声でそう呟いた。
イヴは突然悲しげな顔をされて困惑するのみだった。
それから間もなく会食は終了したが、イヴは酷くフィーベル嬢の呟いた何かが気になっていた。
そして部屋に案内されるときにちらりと見えた不可思議な形の楽器が置かれた酷く寂しげな部屋も何故か脳裏にちらついて離れなかった。
そして現在――。
アルザーノ帝国魔術学院で出会ったフィーベルの性を語るヴァイスという少年。
フィーベル嬢と同じく銀色の髪に翡翠色の瞳は見間違う事なくあのフィーベル嬢と血がつながっていることを表していた。
なぜあの会食の時にいなかったかを聞けば帰ってきたのは悲しげな表情と
「事情がある」
の一言だけだった。
イヴはその事情とやらが酷く気になったが敢えて追及することは避けた。
本来貴族の子息は親の手によって何の困難もなく育てられるため
事情という物があるはずがないのだ。
イヴは事情がどのようなものかは分からないが、いつぞやの自身と似たその瞳の奥に隠された悲しげな表情を視た時、放っておけなくなった。
それは冷徹な仮面を被り続けたイヴ=イグナイトが初めて他人に興味を持った瞬間でもあったのだった。
† † † † †
イヴが思考しながら採寸なども全て済ますという地味に器用な真似をやってのけ
食堂へと向かっている頃、ヴァイスとグレンは既にイヴより一足先に食堂へ着いていた。
「はぁぁ……学院の食堂ってでかいなぁ……」
「しかも、こんなに食べ物がたくさん…っ!」
二人は人の多さと目の前に置かれている食べ物の圧巻な光景に目を見開いている。
「これって好きなだけ食べていいんだよね!?」
グレンの問いにヴァイスは思考する。
(そういえばセリカから学院の学食はおいしいから好きなだけ食べて来いってお金をたくさんもらってるんだっけ)
たくさんイルをもらっていることを思い出したヴァイスはグレンの問いに答える。
「セリカからたくさんセルト銅貨もらってるから好きなだけ食べていいよ」
「ホント!? よし、食べるぞぉ~!!」
そう言ってグレンは袋からセルト銅貨をその小さな手でできるだけ掴みさっさと食べ物を取りに行ってしまった。
その後ろ姿を見送ったヴァイスは
(やっぱり、11歳って感じだよなぁ……だからグレンじゃなくて僕にお金を渡したんだろうけど)
自分の手の中にあるセルト銅貨が大量に入っている財布を見下ろしながら苦笑する。
グレンの微笑ましい姿を目で追っていると肩を叩かれた。
後ろに降りむけばイヴが立っていた。
「遅かったね」
「この学院は女子生徒の入学が多いから私が遅くなるのは当然でしょ」
「まぁ、とりあえずご飯、買いに行こうよ。お腹空いてるでしょ?」
「いえ別に……そうね」
ヴァイスの言葉を否定しようとした瞬間イヴのお腹が鳴ってしまい
イヴは素直にヴァイスの提案に乗った。
イヴとヴァイスはグレンがいる場所へ移動した。
二人が着いたころグレンは目の前の食堂のおばちゃんを困らせる程注文していた。
おばちゃんは目に見えて困惑している。
それもそうだろう。ヴァイスの目から見ても…というか11歳児の胃ではとても入りきらない程注文していれば誰だって驚くはずだ。
「…グレン、それは頼み過ぎだよ……」
「なんで!? ヴァイスは好きなだけ食べて良いって言ったじゃん!!」
「11歳児すぎるでしょこの子……」
ヴァイスの呆れにグレンが突っかかり、それを見たイヴがグレンの事を11歳児と称したりとその後の現場はカオスな光景になっていくのだった。
† † †
――某所。
光さえ食らう程の常闇の暗がりの中に窓から伸びる月の光。
それに照らされるのは銀と黒が相混ざった異色の髪色の青年。
青年は月光に照らされる壁にもたれ掛り窓から覗く月を見ている。
「夢…か」
青年は長い時間同じ体勢でいたことで硬くなった筋肉を背伸びして伸ばしながら
青年は思う。
(どんな夢を見ていたか覚えていないが、随分気分の良い夢みたいだったな)
何故だか酷く懐かしい気分に襲われた彼はもう一眠りしようと壁に凭れ掛かる。
――あわよくば、もう一度その夢を見られるように。
青年の意識は微睡みの中に消えていった。
一体最後の青年は誰なんですかね……(すっとぼけ)
トコハナいいゾーこれ。
次回もまた投稿期間開くかもしれませんがそれでもこの小説を読んでくれる方には感謝を。
それにしてもロクアカの二次小説評価高い人多いですね…。
はぁ~ウラヤマ。
イル通貨からセルト銅貨へ変更しました。
通貨のレートがよくわからないので、誰か教えてくらぁさい。