ウェルカム異世界へ!歓迎します転生者!by魔王    作:カイバーマン。

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第2話 引きこもりだった俺が異世界に転生して貴族や魔王をボッコボコWWWWメシウマWWWW 

勇者、ジークリード・ベルダンテは異世界から来た転生者である。

 

元の世界では高校生であるのだが同級生から酷いイジメを受けて不登校となり、それからは引きこもりとして希望も見いだせない暗がりの生活を送っていた。

遂には自ら命を絶とうとか思っていた、しかし突如彼の前にとても美しい女神が現れ彼をこの世界へと誘ったのだ。

 

新たなる生を受けて異世界へと転生した彼は、新たなる名と様々な最強技能を手に入れ

それから十数年後、ジークリードとして魔王と戦う決意をしたのであった。

 

「ふむ、一二三の城もすぐそこか。かの有名な強欲たる王とはいかがな人物であろうか」

 

短い黄金色の髪、金色に光り輝く硬そうな黄金の鎧、そして両手にハメられているのはこれまたとてつもない黄金のグローブ。

彼の姿は勇者というより戦士に近しい。

 

それもその筈、彼は勇者でありながら剣や魔法に頼らず、素手技能をカンスト状態に高めた最強の戦闘士なのだから。

 

黄金の刃も通さない屈強なる鎧、黄金でも簡単に砕く事の出来る拳、そして黄金級のルックスを兼ね備えたまさに勇者に選ばれしる事を宿命づけられた男なのである。

 

当然モテる、半端なくモテる、引くほどモテる。

 

「街の者達は俺がいなくなって随分と寂しがっていたな、達者でやっているだろうか、クリスティーヌ、ピンキー、レサレサ、クラウダ、アカリン、ビビアン……」

 

今彼が上げた人物は無論全員攻略済みの女性である、村にいた男性の事など刹那に忘れている。

 

街を出てからもう軽いホームシックに悩まされている勇者、ジークフリード。

しかしそれに対しあまりよろしくない顔をしている小さなサポーターが彼の目の前に不意に現れる。

 

「もう勇者様~、せっかく私と二人っきりの旅の真っ最中なのに~! 他の娘の事ばかり考えて~!」

「ふむ、すまんすまん、この俺とした事がつい物思いにふけってしまった。悪かったなエレナ」

 

彼の前に現れたのは綺麗な緑髪と羽をなびかせながら空中を浮遊する妖精エレナ、頬を膨らませて焼きもちをやいているところがこれまた可愛らしい。

手の平サイズの小さな体でありながら、勇者の行く先や魔物の情報などを的確に送る事の出来る万能サポーターであり、これから先に幾度もお世話になる大切なパートナーなので、ご機嫌を損なわせたらマズイと勇者ジークフリードも苦笑しつつ謝った。

 

妖精エレナとの出逢いは数刻前、彼が街を出て数秒後に

”偶然にも”町の入り口手前で罠にかかっている彼女を見つけ

”偶然にも”彼女もまた魔王に一族を殺された恨みを抱えてる為に魔王への復讐を狙っていて

”偶然にも”勇者ジークフリードも魔王討伐の度に行く所だったので半ば無理矢理パートナーとなったのだ。

 

「さあ勇者様! 街の事は一旦忘れてお城に行きましょう! こっから先は危険な魔物もわんさか出るし”見た目に比べて結構強い魔物”とか出ますから十分警戒して下さい!」

「ふむ、この俺がこんな序盤に出て来る魔物程度などに遅れを取るとは思わんが?」

「油断してはいけません勇者様ぁ!!!」

 

黄金の鎧、黄金の拳、そして黄金の髪、勇者ジークフリードはもう既に最強装備と呼んでも過言ではない状態。

こんな自分がどうやってそんじょそこらの魔物風情にやられるのかむしろ聞きたいぐらいだと言った感じの彼に対し、何故か妖精エレナは目を剥き出し物凄い気迫で彼に迫った。

 

「いいですか勇者様! 旅に出たこっからがあたなの本当のスタートなんです! ここから先は勇者様が街では知りえなかった過酷でデンジャラスな出来事が起こりまくるんですよ! 下手すれば死にます! マジで死にます! もう一度言いますからね! 絶対に油断しないで下さい!!」

「どうしたエレナ、表情が物凄い事になってるぞ……やれやれわかったよ、ここはエレナの言う通りにしよう」

「ありがとうございます、勇者様♪」

 

先程程までの可愛らしい表情から一変してこちらを睨み付けながら叫んでくるエレナ、勇者ジークフリードはそれを見て身震いするも、諦めたように彼女の意見に賛同すると、すぐに妖精の表情はコロッと元に戻るのであった。

 

(ふむ、ここはやはり一つ俺の実力を彼女に見せてやるとするか、そうすれば余計な心配も起こすまい)

 

っと適当にその辺の魔物を瞬殺してエレナに自分がいかに強いかというのを証明したいと勇者が思ってた矢先。

 

「ん? アレは宝箱か?」

 

ふと自分が歩いている道の真ん中に奇妙な宝箱があるのを見つけた。

 

それは両手でやっと持てるぐらいの大きめの宝箱であった、そしてここからが実に奇妙と思われる部分なのだが。

 

「ふむ、どうして箱は開いているのに中身はちゃんと残っているのだ、しかもこれまた中々使えそうなアイテムが残っているぞ」

 

なんと宝箱は思いきり開かれているのだ、しかも中身は取られておらず、黄金に輝く盾がキラキラと輝きを放って収納されている。

 

しばし勇者が怪訝な表情を浮かべていると、待ってましたと言わんばかりに妖精エレナがバッと両手を広げて彼の顔の前に出る。

 

「いけません勇者様! これは罠です! この箱の正体はなんと魔物! その名も「パンドラ」! 宝箱だと思って開けようとしたら即座に手首を噛み千切るという大変恐ろしい魔物なんです!!」

「ふむ、しかし箱を開けようにも既に開いているが?」

「こ、これは見た目ですぐに罠だとわかるようにと私とパンドラが考え……」

「え?」

「じゃなかった! とにかく近づいてはなりません! 序盤の魔物とはいえこういう宝箱系の魔物はやたらと強いんです! ここは一旦避けてレベルを上げてから挑みましょう! うんそれが一番良いです! それが一番賢いやり方です!」

 

エレナが言い辛そうに口をもごもごさせて変な事を言ってた様に聞こえたが気のせいだったのだろうか。

そんな彼女に念入りにあのパンドラという魔物には近づくなと言われるがまま、勇者はそれを避けようかと一瞬思ったのだが

 

「いや、ここはコイツの中身を頂くとしよう」

「ワッツ!?」

「コイツの中にあるのは黄金の盾だ、黄金は装備の中で最強レベル、ここで手に入れれば後々かなり楽になる」

 

勇者ジークフリードは黄金が大好きだ、装備も黄金だし髪も黄金だ。ゆえに目の前に黄金系の類があれば是が是非にでも欲しくなってしまうのだ。

しかしそれに対しエレナは口をあんぐりと大きく開けて驚愕の表情浮かべている。

 

「いやだからダメなんですってば! 本当にヤバいんですよこの宝箱は!」

「ふむ、それにいい機会だ、エレナにはまだ見せてなかったからな俺の実力を」

「いいです! 後でじっくり拝ませてもらいますから! レベル上がってから! 勇者様が十二分にお強くなられてから見ますから!」

「ふむ、さてさてエレナよ、まるで俺がこのおもちゃ箱みたいな奴に適う訳ないと思っている様だが、残念ながら見当違いもいい所だ」

(この勇者様なんで喋る度によく台詞の頭に「ふむ」って付けるんだろ? クセなのかな? それとも転生者特有の? いや今そんな事気になってる場合じゃなかった! とにかくここは全力で阻止を……!)

「では頂くとしようか」

「ちょ! もう手を伸ばそうとしてる! ダメです勇者様一旦落ち着きましょう! いくら序盤でレア装備をゲットできるチャンスがあるからってさすがにここでパンドラと戦っては……!」

 

エレナがまたもしても切羽詰った表情で止めに入ってきたがジークフリードはやれやれと首を振りながら余裕の笑みを浮かべ

 

「よく見ろエレナ、俺の腕に装備されているコレを、これはわが一族相伝の黄金の小手という奴でな、例え黄金製の剣であろうが槍であろうが貫く事は出来ないのさ、だから」

 

そう言いながら勇者はスッと宝箱の中にへと手を入れてしまった。

 

「ふむ、コイツに噛みつかれて噛み千切られる心配はない、むしろコイツの牙が砕けるだろうさ、ん? どうしたエレナ、そんな青ざめた表情を浮かべて」

「あ、あ……」

「ふむ、そんなに驚く事か? 全く、これから俺のパートナーとして旅に行くのだからこれしきの事で驚かれたら身が持たないぞ、ってあれ?」

 

さっきまで凄い剣幕で叫んでいたのに自分が宝箱に手を突っ込んだ瞬間、エレナの顔からは血の気が失っている様だった。

これっぽっちの事で驚かれてもなぁと勇者は内心思いつつ、ふと宝箱に手を伸ばした右腕に違和感を覚えた。

 

というか

 

右腕そのものの感覚が無かった。

 

「……」

「グゥ~」

 

ざわつく予感と奇妙な泣き声、勇者ジークフリードはゆっくりと宝箱の方に目をやる。

いましがた自分が出した右腕は本来あるべき場所に無く

目の前にある宝箱は満足げに何かを食べる様にクッチャクッチャと音を立てて箱の口にある鋭い歯を剥き出していた。

 

そして歯の隙間から僅かに見えたのは先程あった筈の自分の右手……

 

「な、なんで……?」

「グァァ!」

 

勇者ジークフリードは知らなかった。

モンスタートラップ、パンドラが持つ牙は

先程からしつこい程言っている黄金などという彼が元居た世界の鉱物など

 

豆腐を噛むようなものだと

 

そしてそれに気付く間もなく

 

「なんでぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「グァァァァァァァァァァ!!」

 

パンドラは彼本体に向けて飛び掛かった。

右腕を失い痛みで混乱状態である彼をあっという間に口を大きく開けて覆いかぶさるパンドラ。

そしてすぐにグシャリグシャリと生々しい音を立てながら彼を口の中で細かく千切っていきながら食べ始める。

丸のみだと喉に詰まるのでこうして細かくしないと消化器官を通らないのだ。

食べる時は10回以上噛む、それが食べ物を効率よく胃におさめるコツだとパンドラは街に住むおじいさんから教わっている。

 

こうして勇者は細かく噛み砕かれていった。

彼が決して砕けぬと自慢げに装備していた黄金の装備と共に

 

 

 

 

 

 

 

勇者ジークフリード・ベルダンテ、一二三の城到達直前で、モンスタートラップのパンドラに食われて死亡。

 

最期の言葉 『なんでぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此度は申し訳ありませんでした……」

「グエェ~……」

 

それから少し時間と場所が変わりここは魔王城。

 

現在、妖精エレナとモンスタートラップ、パンドラは魔王の間にて玉座に座る魔王に深々と頭を下げて詫びていた。

 

「私があの時もっと必死に止めていれば……うう……」

「い、いやもう済んだ事だからそんなに泣かなくても……」

 

理由は勿論、みすみす魔王討伐に赴く勇者を死なせてしまった事である。

洪水のように流れる涙をぬぐいながら何度もこちらに頭を下げ続けるエレナに。

さすがに魔王も困った様子で慰めていると。

 

「ギィ~」

「え、どうしたのメダマン?」

 

彼の周りをさっきからずっとパタパタと飛んでいた序盤の雑魚キャラメダマンが、魔王の顔へと近づき

 

「まあコイツはコイツで反省してるからもう許してやれよ、今回は大目に見てやろうや」

「貴様喋れたの!? しかも何故に上から目線!? 貴様も前回勇者殺したよね!?」

「失敗は誰にもである、その事を責め続けるというのも酷というものだ。魔王であるならば器もデカくなれ」

「ふてぶてしい! ふてぶてしいよこの雑魚キャラ! ここまでムカついたのは理不尽な死に方ばっかするゲームやった時以来だよ!!」

 

てっきり「ギー」としか喋れないと思っていたのだが妙に饒舌に喋りまくるメダマン。

部下の意外な所を見てしまった魔王は内心ショックを受けていると、魔王の間の門が勢いよく開かれる。

 

「魔王様大変です!」

「ああ黒騎士? 勇者の事ならもう彼女達に聞いたから大丈夫だよ」

「そうではありません!」

 

門を開きやって来たのは魔王城の兵、黒騎士。

何やら焦っている様子で魔王の下へ駆け寄っていく。

 

「今回の件で女神が! 魔王に直接言いたい事があるとこちらにやってきました! 完全にブチ切れてます!」

「マジで!?」

「マジです!」

「逃げよう!」

「魔王城の周りに結界張られて逃げられません!」

「オーマイゴッド!」

「いや魔王がオーマイゴッドって……」

 

女神がやってきた、それを聞いただけで魔王は黒いシルエットでよくわからないが酷くうろたえている様子。

 

そしてそんな事も束の間、開かれた門から一人の女性が音もなくやってきた。

 

美しいブロンドをなびかせ、純白かつ綺麗な羽衣に身を包ませ、蒼き眼と紅き眼を持ったオッドアイの女性。

 

それが女神、そしてこの世界の創始者

 

「め、女神様……!」

「魔王よ……しかと私の言葉を聞きなさい」

 

女神が目の前に現れた事で思わず声を震わせてしまう魔王。

そんな彼に対し彼女は慈愛に満ちた表情でやんわりと微笑んだ後……

 

 

 

 

 

「てんめぇよくもまた勇者殺しやがったなぁ! 私がたんせい込めて育てた転生者を性懲りもなく殺りやがって!!」

「ひぃぃ~! す、すみませんでした~!」

「今度という今度はマジで許さねぇからな!!」

 

急に目を大きく開いて凄まじい形相を浮かべて魔王を責め立てる女神。

反射的に謝ってしまう魔王に対し完全にお怒りの様子、こうなってはもう時が過ぎるのをただ待つしかない。

しかし荒い息を吐きつつ握り拳を構えながら魔王に近づこうとする彼女の下に、先程魔王に謝っていた妖精エレナが身を乗り出す。

 

「お待ちください女神様! 今回の件は魔王様ではなく私とパンドラに非が!」

「テメェが元凶かコラァ!」

「ひぃ~!」

 

健気にも身を挺して魔王を庇おうとしたエレナを女神は一瞬で右手で鷲掴みにする。

この女神、例え相手が可愛い妖精であろうが一切の慈悲を与えるつもりはない。

 

「どうなんだ、あ? テメェが勇者殺したのか? 私が苦労してこの世界に転生させた勇者をお前が殺したのか?」

「い、いえ直接殺したのはこのパンドラですが……私は勇者様に強く助言出来なかった事もまた原因でした……」

「テメェ勇者が旅立つ前に言ってたよな? 私が勇者のサポート役になって無事に魔王城までお連れしますって? その言葉を信じて魔王はテメェを採用したんだろ?」

「ま、まことに申し訳ありません……」

「謝れば済むと思ってんのかコラァ!!」

「ぎょえ~!!!」

 

エレナを鷲掴みにしたまま上下に手を振り始める女神。

上と下に激しく揺さぶられ、エレナが思わず泣き叫んでいると慌てて魔王が「まあまあ!」と勇気を振り絞って女神のなだめに入る。

 

「その辺にしてあげてくださいよ女神様、妖精もモンスタートラップも採用したのは全て魔王である我なのですから……」

「おうそうだ! テメェが全部悪い! 魔王が全部悪い! 私の苦労を毎度毎度無駄にさせやがって!! 難易度が高すぎるって毎度毎度言ってるのにテメェはどうしてこういつもいつもいつも!!!」

「おっしゃる通りです……でも結構難しいんですよコレって、代わりに女神様がやってくれるというのは?」

「魔物の創造と配置はテメェ担当だろうが! 私はその為にテメェを創造したんだよ! 自分の仕事だけでもキッチリこなせねぇのかテメェは!!」

 

基本、どのような魔物を作り、それをどのような場所に置くかは魔王の役目である。

その為に魔王がいる様なモノであり、そして彼自身を生み出したのは外ならぬ女神だ。

 

「私は私でやる事あるんだよ! 転生者候補をこっちに送る為に色々と苦労してんだよ! 転生者に異世界飛ばす用の雷落としてくれるよう雷神様に必死に頼んだり!」

 

『すみませんどうかまた一つ、我々の世界に送る為に雷落としてくれませんか……?』

『またですか? あなた前に来たばかりじゃないですか? 悪いけどこっちも色んな方から依頼来てるんですよねぇ……もう異世界運営は諦めた方がいいんじゃ……』

『なんとか、なんとかお願いします……どうか私にご慈悲を……」

『いや女神が慈悲をくれって……』

 

「え? アレって女神様本人が落としてる訳じゃないんですか?」

「出来る女神はいるけど私はまだ資格持ってないから出来ないんだよ……しかもいつも頼んでる相手の雷神様は、学生時代の後輩なんだよ私の……」

「うわ頼みづら……女神様も苦労してるんですね」

「うん、すっごく苦労してるんだよ、精神的に」

 

女神は女神で色々と大変らしい、普段はヤンキー口調で常に高圧的な態度で接してくる彼女は、苦労話を語る時は途端に弱々しくなってしまう。

 

「他の女神や神様は異世界で勇者達をブイブイ暴れさせて満足なチート生活を送らせてあげてるのに……私の世界は何時まで経っても攻略者ゼロ、それどころか王様の城にすら到達できないムリゲー……」

「すみません、あれこれ試行錯誤してはいるんですがどうも我々強すぎるみたいで……」

「私だってもっと出来る事が増えれば転生者達を満足させる事ぐらいやれるのよ! 妹にいつも言われてんだから!「お姉ちゃんはやればできる子なんだから」って!」

「駄目だコレ、聞いてねぇや……」

 

遂には床に両手を突いてブツブツと嘆き始める始末、こうなってはもう魔王の声も彼女の耳には届かない。

 

「ああでも雷がダメならトラックで転生者を轢いて異世界に送るって手も……でも私まだ大型持ってないし、それに転生トラックは結構な期間の研修を受けなきゃいけないって聞いたし……この世界の運営しなきゃいけないからそんな暇ないし……」

「よく転生者はトラックに轢かれて異世界に送られるって聞きましたけど、アレって女神様自ら運転して候補を轢くんですか?」

「基本は女神や神様が姿を変えてやるのよ、上位の神様なら手下とかにその役やらせたりするけど、私じゃまだ手下なんか出来るほど出世して無いし……」

「ああ良かった、我の言葉が女神に届いてくれて……」

 

質問にはちゃんと答えてくれるらしい、女神とは転生者の湯水の如く溢れる質問にいちいち答えてあげる事など当たり前、魔王の問いかけに反応したのも条件反射みたいなものであろう。

やっとのこさ床から魔王の方へ顔を上げると、女神は涙声を上げながら

 

「私だって! 私だってねぇ! 転生者にはちゃんと異世界で気ままなチート生活とか送らせたいのよ! ちっぽけな事で周りから賞賛させたり! 以上に嫉妬心だけが高い野郎共をボコボコにさせたり! そして何より赤ん坊から墓の下までのヒロイン達を攻略させてあげたい! そして! そしてぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

「私もヒロインになりたい! あわよくばメインヒロインになって勇者と結ばれたい!!」

「ハハ、無理無理、超無理、仮に我が転生者ならこんな中身がヤンキーみたいな人はまず攻略しない」

「女神パァンチ!」

「おぅふ!!」

 

彼女の悲痛な叫びに非情にも笑いながら手を横に振る魔王。

彼に対してすぐ様飛び掛かり怒りの鉄拳を食らわせる女神。

 

 

この異世界はこの二人の存在によって動いているといっても過言ではない。

 

 

 

 

「閃いた! 女神の私が転生者のお供として旅に出るってどうよ!?」

「またどこぞ聞いた様なアイディアですね……その間誰が異世界の運営やるんですか?」

「あ? 私の代わりならテメェしかいねぇだろ」

「えー自分の仕事ぐらいキッチリこなせ的な事言ってたくせになんたる理不尽、もう我じゃなくて女神様が魔王になったら良い気がする……」

「私が魔王に……魔王がヒロインになるのもよく聞いた事あるからその案はアリかもしれねぇな」

「駄目だこりゃ」

 

 

 


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