俺は、人が嫌いだった。
そう思い始めたのがいつだったかは覚えてない。
どんな理由でそう思ったかも覚えてない。
そもそも記憶がほとんど無い。
だが、俺が『死んだ』ということは覚えている。
死んだ時の痛みも覚えている。
だが、
自分が死んだ原因も覚えてない。
ただ、自分が死んだという事実だけは覚えていた。
今思うのは、
次の生では人間を好きになろうと思った。
もう、人を嫌い続けながら生きるのはこりごりだった。
パチリ
俺は目を開けた。
「?」
目を開けた時に、俺は疑問に思った。ここはどこなのか、なぜ俺が生きてるのかを。
そう思った瞬間だった。
「っ!」
直後、頭に鈍器で殴られたような衝撃が走った。
衝撃が走った時、数多の記憶が頭の中に流れてきた。まるで、さっきの疑問に答えるかのように。
そして、俺は理解する。この体が俺の体じゃないことに。そして、ここが俺がいた世界じゃないってことを。
それを知った時俺はつい、笑ってしまった。
「くくっ、これが転生ってやつなのか?いや、この場合は憑依って言った方がいいのかもしれないな。まあどっちでもいいや、そんなことよりも、ここが、『僕のヒーローアカデミア』の世界ってことの方がずっと大事だ」
そう、俺はきてしまった。『僕のヒーローアカデミア』の世界へ。
俺の今の名前は、如月葵(きさらぎ あおい)今は4歳だ。
容姿は、サラサラの銀髪のロングに、眠たそうな透き通るような青い目。まあ、美少女だ。と言うか、美少女に転生とか嬉しい限りだよ、全く。
まあ、俺の個性を使えば、あまり美少女とか関係ない気がするけど。
個性は俺がこの子にならなければ圧縮する個性だったらしい。何を圧縮するのか?と問われれば、空気だったり、物だったり、色々だ。と言うか、圧縮する個性ってめっちゃ強いと俺は思う。まあ、まだ発現してなかったらしいけど。と言うか、なんで発現しなかったのか知らないけど。まあ、なんで発現しなかったのかは置いといて、
なぜ俺がこの子の個性を知っているかと言うと、
正直俺もよく分かっていない。
なぜか今までの記憶と共に、この子の未来まで見えた。
まあ未来は所々見えなかったところがあったが、あまり関係ないだろう。だって俺が憑依したってことは未来が絶対に変わるのだから。同じ未来なんて絶対にやってこないのだから。
まあ、そんなことは置いとくとして、次に、俺の個性についてだが、俺の個性は最強だ。
そう、俺の個性は、『身体変化』だ。
この個性は、普通に考えたら身体を変化させるって言うことだから体を強化したりする個性じゃないのかと思うが、この個性は、体を強化するだけじゃなく、相手の体と同じにすることも可能。つまり、あいての個性も使えるようになるってことだ。
だいぶ調整は必要になると思うが。
まあ、意味が分からないかもしれないが、個性のコピーや、身体強化ができると思ってくれれば良い。
いや、それ以外にも、この個性のすごいところがあった。
この個性、相手にも使うことが可能ってことだ。
つまり、相手の力を弱くしたり、相手の個性を無くしたりすることが可能ってことだ。
まあ、個性の話はこれぐらいにして、
とりあえず、お腹が空いたからご飯を食べよう。
俺はそう思い、自室を出てリビングに向かう。
俺の部屋は二階、リビングは一階にある、ごく普通の一軒家だ。
さあて、ご飯だご飯だ。今日のご飯は何かな?
そんなことを思いながらリビングのドアを開けると、菓子パンが一つ置いてあった。
そう言えば両親二人共朝から晩まで働いてたっけ?
それと今日は休日だったな。
と言うか、この体って女子…なんだよな。
うん、本当に四歳児で良かった。もし、高校生とかだと、色々とやばかった。色々と…
まあ、そんなことはどうでも良い。と言うか、俺の個性で男の体になったりできるから女子か男子かなんて些細な問題だ。
そんなことよりも、
四歳児って何するんだ?
確かに記憶を見たけど、こいつ全くって言って良いほど喋らないし、本読んでばっかだし、外で遊ぶ時もいつも日陰でみんなが遊んでるのをボーっと見てるだけだし。誘われても断るし…
何がしたいかマジで分からねえ。
まあ、俺が男だから分からないって言うのもあるだろうけど、でもこいつは、家族ともあまり喋らないし、本当にもうどうしよう?
どうしよう?と言うのは例えば、過去のこいつみたいに過ごせば良いのか?あるいは、もっと喋れるようになれば良いのか?とか、色々だ。
まあ良いや、今日は休日だしゆっくり考えよう。
俺は朝食を食べた後、まずは個性の把握をしないと。と思い、自分の体を強化したり、他の生物の体になってみたり、色々調べた。
そして、分かったことは、
「この個性、まじで最強だ」
若干、自分の個性にひいたぐらい最強だった。
確かに、転生やら憑依やらした主人公が最強の能力を手に入れて無双する話とかあるけれど、まさか、自分がなるとは思わなかった。
この個性で分かったことがあった。
最初に言った、身体強化や、コピーは出来た。
が、それだけじゃなかった。
ただ、自分がなりたいものを想像するだけで、そのなりたいものになれたり、強くなりたいとか、そんなあやふやなものでも、どんな強さなのか、どの程度の強さなのかを察知して、その強さにしてくれたりとか…というか、調整しなくても創りたい個性を思うだけで、俺がしなくてもあとは個性がどうにかしてくれるからめちゃくちゃ楽だった。
まあ、色々なことができる個性ってことは分かったけど、
これからのこと考えないとな…
・・・・・・はっ!思い出した。
そう言えば、俺、ほぼコミュ症だった。
うん、ってことは過去のこいつみたいに過ごせば良いってことだね。
と言うか俺も保育所の時、こんな感じだったな…
なんで忘れてたんだろう?
まあ、そんなことはどうでも良いか。
それよりも、出久君を探そうかな…
物語の世界に来たんならやっぱり主人公にあって見たいしね。
そうと決まれば、外に行くか。
と言うか、内心すごい楽しみだ!
さあてと、行くか。
俺はそう思い、自室に戻り、パジャマを脱いだ後、
代わりに青のワンピースと、麦わら帽子をかぶり、玄関に行く。もちろん、顔と歯を洗った後。
俺は下駄箱の上の籠の中の鍵を取る。
戸締り…は良いだろう。兄が家にいるんだし。
というか、俺、兄って欲しかったんだよな。よし、帰って来たらお兄ちゃんって呼んでみるか。どうやら兄はシスコンらしいけど。
まあ、そんなことは置いといて、
俺は下駄箱の上にある、両面白い紙に、遊びに行って来ます、5時には帰ってくるので安心して下さい。
そう書いて、鍵を持ち、家を出た。
さあてと、探しに行くか。
うん、なんていうか、すぐに見つかった。と言うか、これ、あのシーンじゃないか。
そう、俺の目の前には、泣いている少年と、それをかばうようにファイティングポーズをしている緑髮のそばかすの少年と、それに対するように近づいてくる金髪の目つきの悪い少年と、他モブ二人。
「ひどいよかっちゃん…!」
俺が今いるのはとある公園だ。まあ、公園の名前は言わなくても良いだろう。
それよりも、まさか出久君を探しに行って、1巻の1ページ目の瞬間に立ち会えるなんてすごく嬉しいな。
「泣いてるだろ…⁉︎これ以上は」
ガクガク ガクガク
「僕が許さゃなへぞ」
おっと、そんなこと思ってる暇は無かった。
早く助けないと。
やっぱり、助ける時の言葉はあれだよね。
「“無個性”のくせにヒーロー気取りかデク‼︎」
ニョキッ、バサッという音とともに、モブ二人の個性が発動して、ボムッという音とともに、爆豪の個性が発動する。
俺はそれを見て、飛び出した。
爆豪が殴りかかるのとほぼ同時に俺は後ろのモブ二人を殴り飛ばした。もちろん個性を使って強化した拳で。
「グヘッ」
「ゴフッ」
俺がモブ2人を殴り飛ばしたので、爆豪がこちらを向いた。
「誰だ!」
俺は、その言葉を聞いた後、言った。
「もう大丈夫。何故って?私が来た!」
俺はできるだけオールマイトの顔になり、言った。もちろん個性を使って顔は変えた。
うん、これで顔は分からないだろう。もし、道端でたまたま出会って殴り飛ばされたりしたら嫌だからね。
それを聞いた出久は衝撃的な顔になり、爆豪はイラついた顔になる。
「誰って聞いたんだよ!オールマイトごっこなら他所でやりやがれ!」
そう言って、爆豪は殴りかかって来た。
俺はモブ二人を殴る時に個性を使って、身体を高校生ぐらいまで強くして、五感をだいぶ上げていたので爆豪の拳はスローモーションに見えた。
俺は爆豪の拳を受け止める。
くっ、爆豪が個性を使ったせいで手のひらが熱いし痛い。
「なっ!」
爆豪が驚いたような声を上げる。
ここで一つ言っておくと、腕は強化してあるが、腕の見た目は4歳の女の子そのものだ。まあ、つまり何が言いたいかというと、見た目4歳の女の子が同じ4歳児を殴り飛ばすのって側から見たらホラーだよねってこと。
話は戻すが、
俺は爆豪の声を聞いた後、拳をオールマイト並みの強さにまで高め叫ぶ。勿論、腕の見た目は華奢な女の子のままだ。
「デトロイト スマッシュ!」
もちろん、爆豪に当たらないように爆豪の横に向かって。
もし当たったら、大怪我どころじゃ済まないからね。
「っ…!」
爆豪が驚いて横を見ているすきに、俺は力を弱くして鳩尾を殴る。
「ゴフッ!」
その声とともに爆豪は気絶してしまった。
少し不意打ち気味だった気がするが気にしない。気にしない。
「大丈夫だったかい、出久君」
俺は出久君にそう聞く。
「えっと…色々と聞きたいことがあるんですが、一つだけ聞かせて下さい。」
同い年に敬語って…
まあ、あれだけやったら敬語も仕方無い…のか?
…まあ良いや、それよりも今は出久君の言葉を聞こう。
「何かな?」
「あなたは…オールマイトの親族ですか?」
なるほど、そうくるか。
俺はてっきりなんで僕の名前を知ってるんですか?とか聞くのかと思ってた。
「私の名前は如月葵、別にオールマイトの親族じゃ無いよ」
「そうですか」
そう言ったっきりデク君は何も話してこない。
なんだかきまずいな。
うーん、何か話さないといけないのかな?でもな…俺ほぼコミュ症なんだよな…今やったことのせいで、だいぶ説得力がない気がするが…いや、今気づいたが、俺コミュ症っていうよりも単に人と接することが苦手なだけだ。
まあ、それはおいておくとして、本当に困ったな…
あ、そう言えば顔オールマイトのままだった。
俺は個性で元の顔にする。
俺の個性って、使ったら元に戻すことが出来ないんだよな。上書きは出来るけど。
そんなことをおもっていると
「へ?顔が変わっ…それって個性ですか?」
最初は顔が変わったことに驚いた出久君だったが、すぐに個性だと判断し、そう聞いてくる。
「うん、そうだよ」
「じゃあさっきのオールマイト並みのパンチは何ですか?」
「それも個性だよ。まあ、個性の詳しい話は…うーん、そうだな…よし、雄英高校に出久くんが入学したら教えるよ。それまでに、まあ色々あると思うけど頑張って」
「は、はい」
うーん、同い年なのに、なんで敬礼してるんだろう出久君。
まあ良いや。
あ!それともう一つ言いたいことがあった。
「それと出久君」
「な、なんでしょう?」
「無個性でもヒーローは出来る!」
俺は力強くその言葉を言った後、全速力で走って帰った。
くー、なんか恥ずい。
「ただいま」
俺はそう言って玄関の鍵を開けて家に入る。
俺は玄関で倒れている人を発見した。
あ、これお兄ちゃんだ。
「どうかしたの?お兄ちゃん」
そう言うと兄は驚いたような声を上げる。
「な!葵が俺に話しかけてくれただと!馬鹿な、そんなことが現実で起こるのか?否、そんなこと、あるはずが…」
「お兄ちゃん、うるさい」
うん、マジでシスコンだ。いや、まだシスコンって決めつけてはいけない。
「ま、また、喋ってくれただと!」
俺は、兄を無視し、靴を脱ぎ、脱衣所へ行く。シスコンじゃ無かったとしても、うるさいから今度から話しかけないでおこう。
というか、一瞬で俺のお兄ちゃん像が崩れ去ったよ。
はー、それに、俺前世でもあまり喋ってなかったし、家族だろうと話しかけるのは無理だな。
そう考えると、この子になれたのは運が良いと言えるのか?
「今からお風呂か?」
俺は一旦考えることをやめて兄の方を見てコクリと頷く。
ああ、いつもの妹に戻ってしまった…いや、まて、妹にツンデレ属性があるんじゃ…とか言ってる兄はほっといて早くお風呂はいって汗流して、これからのこと考えよう。
「なあ葵」
「なあに?」
俺は少し不機嫌そうに言う。
と言うか、妹が喋るだけで嬉しそうにする兄とか色々終わってる気がする。
って言うか、小学生でこれはやばい気がする。今はあまり関係ない話かもしれないが俺の兄弟、俺も合わせて6人いるんだよな。はー、なんて多いんだろう。喋るのが面倒くさい。
まあ、それは良いとして、兄は何が言いたいんだろう。
「い、一緒に入らないか?」
・・・・・・
うん、こいつ殴っても良いかな?まだ、この言葉だけだったら俺も我慢出来た。が、こいつ、ハアハア言いながら言いやがる。まじで変態じゃん。なんでこんな変態が生まれてきてしまったんだ!
はー、これでシスコン確定だ。
「良い加減にしないと私の個性で殴り飛ばすよ」
俺は殺気を放って言った。
流石に殺気を受けたのでビビるかな?と思っていたが、
「そうか、もう4歳だから個性が発現したのか」
そう言って、うんうんと頷いていただけでビビリはしてなかった。
そういえば兄の個性って気を操る個性だったっけ?
と言うか、気を操るってどんな個性だ?記憶の中には無かったが…
まあ良いや、早くお風呂に入ろ。
「そ、それで、どうなんだ?お兄ちゃんと一緒に入ってくれるか?」
はー、
「だから、入らないって!」
「えー、良いじゃん、兄妹同士だろ?」
「兄妹同士でも駄目」
「良いじゃん、良いじゃん、な、一緒に入ろうぜ!」
どれだけ一緒に入りたいんだこいつは!
もう殴って良いかな?
「無言ってことは肯定として受け取るけど良いよな?」
俺は個性で自分の力を上げて、兄の鳩尾を右手で殴る。
あ、やべ、あまりにうざくて殴っちゃった。まあでもこれぐらいの威力だったら…
「グフッ!い、良いパンチだ。けど、俺にはきかん」
やっぱり倒れないか。
でも、グフッ!って言ってるしもうちょっと威力上げれば倒れるか?
「妹と一緒にお風呂に入ることが出来るのならこれぐらいの攻撃、屁でもない!」
そのやる気を他のことに注いでくれたらな…
俺はそう思いながら再度右手で兄の鳩尾を殴る。
今度はさっきよりも力を上げて。
「ゴフッ!」
兄はようやく気絶してくれた。
よし、これでお風呂に入れるぞ。
俺はそう思いながらお風呂に向かった。
「ふー」
俺は頭と体を洗って汚れを落とした後、湯船に浸かっていた。
勿論湯は沸かしてある。
あー、お風呂は落ち着くな。
そう思った直後だった。
「っ!」
急にものすごい頭痛がした。
頭が割れるような頭痛がした。
いや、鈍器のようなもので殴られたような痛みかもしれない。
もしかしたらどちらでも無いのかもしれない。が、
一つだけ言えることは、死んだ時以上の痛みがするということだけ。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
「うっ、あがぁ…」
耐えられない耐えられない耐えられない耐えられない。
こんな痛み耐えられない。
俺はとうとう泣いてしまった。
「うっ、うあ…ああ…」
「ゲホッ、ゲホッ、カハッ!」
そして、泣きながら血を吐いてしまった。
理由は、個性によるものか、もしくは、ストレスによるものか分からない。
ただ、血を吐いたという事実があるだけだ。
なんだこの痛みは何なんだこの痛みは!
その時、思い出したかのように俺の頭の中に、俺のデメリットが流れてきた。
それは、自分の個性を使えば、死にも勝る痛みが襲いかかるというものだった。
俺の個性は最強だった。だが、デメリットも最凶だったようだ。
俺はあれから5分ほど痛みに耐えていた。
いや、正確に言えば、あれから徐々に増す痛みを耐えていた。
最初は頭痛だけだった。が、その痛みは1分も経つと、全身にまで広がっていった。
その間俺はずっと歯を食いしばって我慢していた。
俺は思う。
きっと、個性を使い続ければ俺はいつか死んでしまうだろう。
そう思うほどの痛みだった。
俺はそう思った後、浴槽を出て、体をタオルで拭き、着替える。
着替え終わった後、おれは自室に行き、ベットに倒れ込み、死んだように眠った。