幻想郷でまったり過ごす話。   作:夢見 双月

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ちょっと短めのデート終盤と、少し過去に触れるお話。
シリアスなところもこれからちょくちょく入ると思いますので、ご了承を。
みなさんに愛される主人公を目指しております(*´Д`*)


霊夢と今までの話。

 波の音が大きくなり、小さくなり、それを繰り返す。砂は攫われ、押し付けられ。太陽は既に水平線に浸かって穏やかな光を放射していた。

 

「ここって……」

 

 霊魔が連れて来た場所。それは海だった。

 

「綺麗だよな。ここ。この景色だけで俺はこの世界が好きになった。初めて見た時は……なんだろうな。上手く言い表せないけど、凄かったと思った。霊夢はどう思う?」

 

「ええ、とてもキレイ……。幻想郷に海はないから、余計かもね」

 

 引き寄せられ、離れていく。どんな模様かも分からず、上から見ても決して模様見えることはない。そう思う内に絵は変わっていく。未知の美しさがそこにあった。

 

「俺はそれだけじゃない、って思う」

 

 そう、彼は呟いた。

 

「何よりも美しく思うのは、この光景を見たということなんだ。『海を見る事』を教えてくれる、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ダイヤモンドだって、綺麗だと思う前に、そもそも見る事が出来なければ価値のない石ころと一緒だよ」

 

 なんてね、と言いつつも霊魔は真っ直ぐ、落ちていく夕陽を見つめている。

 

「だから、霊夢と一緒にここに来れてよかった。うん見れてよかった。」

 

「さっきの、あなたの言葉?」

 

「いや違う。恩人の受け売りさ」

 

「そう。ホントに会いたくなるわね、その人に。とても共感出来るもの」

 

「いつか教えてやるさ。また今度な」

 

 さざ波が近づき、遠ざかっていく。それらの音には耳触りの良いものがあった。

 

「いつになったら、教えてくれるのかしらね?」

 

 霊魔は一拍置いて応えた。

 

 

「今度は、今度さ」

 

 

 今はその時じゃない。語ることがなくとも、そう言ったようだった。

 

「霊魔」

 

 霊夢の方を向き、目と目が合う。真剣な眼差しがそこにあった。

 

 彼は霊夢の透き通った眼に吸い込まれたかのように見惚れ、少し上の空になっていた。

 

「これでも私、心配してるのよ。あなたの過去を知らないし、あなたも多くは語らない。あなた、たまに私でもない遠くを見るのは何故?」

 

「……ごめんな。まだ言うことは出来ない」

 

 絞り出したように答えられたそれは、とても苦しそうで、つらそうで、決して掴むことは出来ないような。

 

 そんな悲しさが彼の言葉にはあった。

 

「大丈夫だよ。今は事情があって話せない。話してはいけないだけ。でも、いつか必ず言える時が来る。必ず」

 

 霊夢は目を伏せてしまった。

 

 俺はまだいい。彼女を悲しませる訳にはいかない。でも俺の事は話せない。

 

「霊夢」

 

「……何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだ」

 

「俺を拾ってくれたあの時から」

 

「霊夢が助けてくれたあの時から」

 

「この一年間。ずっと」

 

 

「好きだった」

 

 

 せめて。

 

 

 壊さぬように抱きしめる。

 

 今は。

 

 ありがとう、だけでも。

 

 言わせて欲しい。

 

 いつかは報いなければならないとしても。

 

 

 

 

 

 

 いつかのあの夜。

 

 雨がシトシトと降っていたあの夜。

 

 博麗神社の扉をどんどん、と叩く音が響く。

 

 

 

 

 扉を開けると、今にも消えてしまいそうな青年がいた。

 

 全身はずぶ濡れになっており、足は泥だらけになっていた。

 

 

 

 

 青年は言った。どうも、名無しの根無し草です。……もしよかったら、ここにおいてもらえませんか。

 

 

 

 

 扉を開けた少女は青年を見て少し驚いたが、青年のお願いには即答した。

 

 

 

 

 青年には、少女がなんと言ってくれたのかは聞こえなかった。

 

 

 

 

 玄関に手で招かれ、タオルを渡され、その場で顔を拭き始める。

 

 少女は少し微笑みながら言った。

 

 

 

 

 あなた、寂しかったのね。

 

 ……え?

 

 涙が出ているわよ。

 

 

 

 

 青年はやっと、泣いている事に気がついた。

 

 少女は青年の頭を胸に置き、そのまま抱きしめた。

 

「大丈夫」少女は言った。

 

 ここには、私がいるから。

 

 

 

 

「大丈夫さ。お前がいてくれるから」

 

「……うん」

 

「今日で、俺と霊夢が出会って、やっと。一年だ」

 

「ばか」

 

 

 

 

 

 博麗神社の縁側にて。

 

 霊魔は御猪口を口に運んでいた。

 

「隣、いいかしら?」

 

「ああ、いいぜ」

 

 霊夢がぺたり、と座り込む。

 

 霊魔がくいっ、と飲み干す。

 

 二人はふぅっ、と息を吐いた。

 

「たまには外の世界も悪くはないだろう?」

 

「そうね。やっぱり新鮮ね。物心つくかつかないかの辺りまで外の世界にらいたつもりだけど、変わるものね。ほとんど見たことがなかったわ」

 

「いい経験になったなら、考えた甲斐があったよ」

 

「……ありがとう」

 

「顔、赤いぞ」

 

「知ってる」

 

 静寂。

 

 訂正、霊夢が霊魔の太ももをつねっていた。少し痛い。

 

「何考えてたの?」

 

「一番最初に、お前にあった時のこと」

 

「そう」

 

「今だから言えるが、なんで抱きしめたんだよ。お母さんみたいな事しやがって」

 

「うるさいわね。私だって分からないわよ。気付いたらやってたのよ」

 

「え、素でやってたの!?怖いわー、さすが博麗の巫女怖いわー」

 

「なんならもっかいやってやろうか!」

 

「ちょま、うぷっ」

 

「どう!?」

 

「柔らかいです、凄く」

 

「なぁ!?そうゆうことじゃないわよばか!」

 

「どういう事なnぶへぁ!?」

 

「ヘンタイ!ばーかばーか!死ね!」

 

「くぅ、なんでてめぇがやった事で変態呼ばわりされなきゃならないんだよ!」

 

「霊魔なんか––––」

「霊夢こそ––––」

 

 

 夜は更ける。

 

 

 

 翌朝。

 

「霊魔さーん、幻想郷に来て1周年という事で取材に来ましたー!」

 

「あれ?誰もいない……」

 

「霊魔さーん?霊夢さーん?」

 

「あちゃー、まだ寝てる。って、これは……」

 

「…。パシャりと、1枚ってね。今日も平和です、という事ですかねぇ!」




文「お互い抱きつきながら寝てる写真がこちらに」
霊魔「言い値で買おう」
霊夢「おいこらクソガラス」

〈情報が更新されました〉

本体名 博麗 霊魔(本来の名前は不明)

ステータス

パワー C
スピード B+
テクニック A+
射程距離 D(半径1m)

能力
『ーーーー程度の能力』

博麗神社まで放浪してきた青年で、霊夢に住まわせてもらっている立場である。人付き合いがうまく、殆どの幻想郷の住人と繋がりがある。楽しい事には頭から突っ込むタイプだが、この人格には過去に救ってくれた恩人が大きく影響していると思われる。
弾幕は練習中。出来ない。何故だ。


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