太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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24話:もうひとりの僧侶

 公開授業の次の日。旧校舎に集められたオカルト研究部の部員たちは開かずの教室と言われる部屋の前で立っていた。

 集められた理由は以前から居たリアスの僧侶の封印解除のためだそうだ。

 その強大な能力を危険視され、今まで封印処置を受けており、コカビエルやライザーとの戦いでは姿を見せることはなかった。

 しかし上記2つの戦闘。特にライザーとのレーティングゲームの勝利が評価され、封印解除の許可が魔王サーゼクスより知らされた。

 開かずの間の教室はと言えば、【KEEP OUT!!】のテープが幾重にも貼られており。封印用と思われる札が多く張られている。

 

「しっかし、その僧侶ってどんな奴なんですか?」

 

「え、えぇそうね。とにかく一日中ここに篭って出てこようとしないの。一応夜には封印が解けて外に出られるはずなんだけどね。頑なにここから出ようとしないの」

 

 一樹の質問にリアスは少し硬い口調で答える。

 何故かリアスの一樹に対する態度がおかしい。話しかけると僅かに動揺したような態度を取られる。

 一樹自身に思い当たる節がないのだが。

 

「ひ、引きこもりですか?」

 

「ええ。困ったものですわ。でも中にいる子は眷属の中でも一番の稼ぎ頭だったりするのですよ」

 

「え?引きこもりなのに?」

 

「パソコンを介して特殊な契約を結んでいるのです。契約者の中には悪魔(私たち)に会いたくないという方もいらっしゃいますし。そうした方とはパソコンを介して私たちとは別の形で交渉、取引を行い、関係を持つのです。新鋭の悪魔の中では上位に食い込む程の稼ぎ頭なのですよ」

 

「じゃあ、封印を解くわね」

 

 リアスが封印を解いて扉を開ける。すると—————。

 

「イヤァアアアアアアアアアアァアアアアアアアアッ!!?」

 

 鼓膜が壊れんばかりの絶叫が響き渡った。

 特に耳の良い白音などはあからさまに顔を顰める。

 そんな中の僧侶にリアスは溜息を吐いて中へと入って行き、朱乃もそれに続く。

 

 

『ごきげんよう。元気そうで良かったわ』

 

『な、何事ですかぁあああああっ!?』

 

 聞こえてくる声は中性的で男か女かはちょっと判断できない。

 女の子のような声にも聞こえるし、声変わりを終えていない男の子のような声にも聞こえる。

 ただ確かなのは中の人物は酷く狼狽しているということだ。

 

『あらあら。もう封印は解けたのですよ。さ、私たちと一緒に外に出ましょう?』

 

「いやですぅううううううう!?僕はずっとここがいいんですぅううううううう!人に会いたくないぃいいいいいいいいっ!?」

 

「……いちいち煩い」

 

「ダメだこりゃ。封印とか以前の問題じゃねぇか?」

 

 むしろ自分から出てこないんだから封印とかいるのか?とさえ思ったが、念には念を入れてということなのだろう。

 もしくは誰かが入ってこないようにとか。

 ここで待っていてもしょうがないので中に入るとそこにはリアスと朱乃。そして駒王学園の女子用の制服に身を包んだ金髪の女子が居る。しかも内装がやたら女の子趣味のファンシーな部屋だった。

 

「おぉ!女の子!?それも金髪の!!」

 

 女子を認識したとたんに顔をだらしなく緩める一誠。

 しかしその様子に祐斗は困ったように笑みを浮かべてリアスと朱乃は悪戯っぽく笑う。

 

「イッセー、あのね。女の子に見えるけどこの子はれっきとした男の子よ」

 

「へ?」

 

 間抜け面を晒して動きが停止する一誠。

 しかし、表情が止まったのは一誠だけでなく、一樹やアーシアも同様だった。

 目の前の小動物のようにプルプル震えながらなにかのぬいぐるみを抱きしめてる見た目愛らしい存在が男の子?

 

「いやいやいや!冗談やめてくださいよ部長!だって女子の制服着てるじゃないですか!?嘘ですよね!?ちょっと冗談キツイですよ!!?」

 

「……この子、女装趣味があるのよ」

 

「orz……」

 

 リアスの口から紡がれた残酷な真実に一誠は手を床につけ、涙を流した。

 

 後ろでそれを見ていた一樹や白音もうわぁ、と顔を引きつらせる。

 これは酷い。性別詐欺で訴訟されても文句は言えないのではないだろうか?

 

「なんでだよ!パッと見で女の子だから尚のこと質が悪いよ!アーシアと2人でダブル金髪僧侶だって喜んでた俺の期待を返せよぉおおおおおおおおおおっ!?」

 

「ヒ、ヒィイイイイイイイイッ!?ごめんなさぁああああああああいっ!?」

 

 頭を鷲掴みにして相手の体を揺らす一誠だが一樹はそこで違和感を覚えた。

 途中から一誠の動きがピタリと止まり、一樹自身も妙に動きがぎこちなくなってしまう。

 そんな中で目の前の女装少年は一誠から体を離して部屋の隅っこでぶるぶると頭を抱えて震えている。

 

「あれ?」

 

 モニターの停止ボタンから再生ボタンを押したかのように一誠を含めた数人が動き出す。

 

「あ、あれ?」

 

「あの人がいつの間に……」

 

「何かされたのは確かなようだね」

 

 疑問に思っている3人に一樹が声をかける。

 

「いや、今お前ら金縛りにあったみたいに止まってたんだろ?そいつに動きを止められたんじゃないのか?」

 

 一樹が女装少年を指さすと皆がえ?と一樹に顔を向ける。

 

「一樹……貴方、認識できたの?」

 

「できたも何も、急に兵藤が動かなくなって、俺もなんか体の動きが重くなったんですよ。もっとも数秒で解けましたけど。その間にそいつがそこまで移動して……みんな見てただろ?」

 

 首を振って周りに確認するも皆が頭に?を浮かべている。

 そこでリアスが話を切りだした。

 

「その子の神器はね、時間停止の能力を持ってるのよ。でも制御ができなくて興奮するとすぐに視界の時間を止めてしまうの……」

 

 時間停止。極めれば無敵の能力のひとつと言える。

 

「でもそれだとなんで俺には……」

 

「時間停止というより時間遅滞になってたみたいね。理由はちょっとわからないわ。推測を立てるにも材料が足らないし」

 

 リアスの言葉に一樹は納得できないように眉間に皺を寄せた。

 

「話を戻しますが、彼はその能力の強力さに加えて制御不能という現状から大公及び魔王サーゼクスさまの命でここに封じられていたのです」

 

「彼はギャスパー・ヴラディ。私の眷属【僧侶】。一応駒王学園1年生なの。そして、転生前は人間と吸血鬼のハーフよ」

 

 

 

 

 

 

 

「【停止世界の邪眼(フォービトウン・バロール・ビュー)】?」

 

「そう。それがギャスパーの神器の名前。とても強力なの」

 

「しかし時間を止めるなんて。使いこなせれば正に敵なしじゃないですか」

 

「そうね。でも明らかな格上には通じないし、制御も出来ない。無意識のうちに発動してしまう神器を危険視されて今まで封印を解除できなかったのだけれど」

 

 

 開かずの間で自己紹介を終えた後に部室へと移動した部員たちは段ボール箱に隠れるギャスパーを見る。

 その段ボールはカタカタと震えていた。

 

「しかし、よくそんな奴を僧侶の駒ひとつで転生出来ましたね」

 

 一誠の質問にリアスは一冊の本を取り出すと頁をパラパラとめくりその部分を見せてくる。

 それは悪魔の駒に対して説明がなされている頁だった。

 

「【変異の駒(ミューテーション・ピース)】よ」

 

「変異の、駒ですか?」

 

「ええ。悪魔の駒を作った際に出来たイレギュラー。バグの類らしいけど、製作者がそれもまた一興とそのまま残したらしいの。明らかに複数の駒が必要な相手でも駒がひとつで済んでしまうことがある。上級悪魔10人のうち、ひとりひとつは所持しているらしいわ」

 

「いい加減だな……」

 

 その制作者の意図に一樹は呆れたような声を出す。

 道具というのはどれも決まった役割を公平に発揮するからこそ意味がある。

 それが同じ駒でもモノによっては使用する数が少なくて済むとなれば不平を漏らす者も出てくるのではないだろうか?

 

「でも問題はその子の才能よ。ギャスパーは間違いなく近いうちに禁手に至る可能性があるというの」

 

 禁手(バランス・ブレイカー)

 それは神器使いの切り札にして奥義。神器使いの最終到達点。

 しかし時間停止なんて能力の制御も出来ない者が至ればどうなるか。少なくともみんなが幸せになれる方向には向かないだろう。

 

 しかし、最近起こったいくつかの事件などでリアスの評価が高まり、今なら禁手に至る前にギャスパーの能力を制御させられるかもしれないと封印解除の許可が出たらしい。

 

「僕の話なんてしてほしくないのにぃいいい!」

 

 か細い声で抗議するギャスパーに一誠が軽く段ボールを小突く。それにヒィ!と声が上がるが皆が溜息を吐くばかりだ。

 

 ついでに由緒正しい吸血鬼の家柄の出身でその能力も有し、人間の部分での神器を保有。魔術などにも秀でているため才能だけならグレモリー眷属の中でも1・2を争うらしい。

 

「でも吸血鬼なら太陽とか大丈夫なんですか?それに血とかも……」

 

「太陽いやぁああああ!お日様なんて無くなっちゃえばいいんだぁあああ!?それに血も嫌いですぅううう!?生臭いのダメェエエエ!?レバーも嫌いですぅうううううううう!?」

 

「この子、元々日中活動できる吸血鬼のデイウォーカーなの吸血の方も人間の血のおかげか10日に一度くらい輸血用の血液を補給すれば問題ないみたい」

 

「……才能が余りに余ってマイナス要素に転化してるようにしか見えませんが?」

 

 一樹の辛辣な評価にリアスは苦笑する。

 ギャスパーの才能が如何に優れていてもそれを扱う本人の器に収まらなければ毒でしかない。リアス自身もそれはわかっているが、どうすればいいのかわからなかった。

 もちろん彼女とてギャスパーを無意味に閉じ込めていたわけではない。リアスも何とか力になれないかと集められるだけの神器に関する知識を集めたが元々悪魔側は神器に対する知識が不足していることもあって結局のところ似た事象の情報を集め、ギャスパーに教えるしかなかった。

 

「みんなにはギャスパーの神器の制御。それに関連して人見知りを克服させてほしいの。頼めるかしら?」

 

「はい!部長の頼みとあらば!」

 

 勢いよく返事する一誠にリアスは笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ、私と朱乃は会談の準備があるから離れるわ。それから祐斗。お兄さまが聖魔剣について訊きたいことがあるからきてくれって」

 

「仰せのままに」

 

 そうして出て行った3人を見送ると一樹は嘆息する。

 

「で、どうするんだコレ」

 

 段ボールを指さしながら周りに訊く。

 それに答えたのは意外にもゼノヴィアだった。

 

「うん。健全な精神を養うにはまず肉体からという。とりあえずその箱から出すべきだろうな」

 

 そう言ってゼノヴィアが手にしたのはどういうわけか聖剣デュランダルだった。

 

「……一応訊くが、どうすんだよそれで」

 

「問題ない。私は幼少から吸血鬼たちとは相対してきた。それらの扱いは任せてほしい」

 

 するとゼノヴィアはギャスパーを覆っていた段ボールを奪い取る。

 突如開けた視界に大剣を携えた女が立っていてギャスパーは悲鳴を上げた。

 

「ヒィイイイイイイイッ!?そそそそそれでどうするつもりですかぁあああああっ!?」

 

「決まっている。それ走れ!!デュランダルに滅せられたくなかったらな!」

 

「イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」

 

 今日一番の悲鳴が部室に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら走れ!デイウォーカーなら日中でも走れるはずだよ」

 

「聖剣をもって追いかけてこないでぇええええええええええ!?」

 

 必死で走るギャスパーに比べてゼノヴィアは相手の速度に合わせて悠々と追いかけている。

 合宿で彼女の剣速を味わった一樹と一誠はゼノヴィアがかなり加減しているのがわかっていた。

 あくまでも走らせるのが目的であって危害を加える気はないのだろう。

 それでも悪魔相手に聖剣はやりすぎかもしれないが。

 

「ぐすっ。私と同じ僧侶さんにお会いできて光栄でしたのに、目も合わせてくれませんでした」

 

「よしよし」

 

 涙ぐむアーシアを白音が頭を撫でて慰めている。

 

「なぁ白音ちゃん。同い年なんだしちょっとコミュニケーションとか取らないか?」

 

「は?嫌ですよ、あんな面倒そうなの」

 

 一誠に提案をバッサリ切る白音。

 そこで部室の廊下側の窓から匙が現れる。

 

「どうした、匙?」

 

「おう!封印されてたグレモリー先輩の眷属が解禁されたって聞いてな。ちょっと見に来た。お、女の子か!それも金髪!つか、ゼノヴィア嬢に聖剣で追いかけられてるけどあれ、大丈夫なのか?」

 

「残念でした。アレは女装野郎だそうです」

 

 ギャスパーを指さして答える一誠に匙は明らかに落胆した様子で肩を落とす。

 

「マ、マジかよ。詐欺だろ……それも似合ってるから余計質が悪い。てか女装で引きこもりって意味あるのか?」

 

「アイツは自己完結型らしいぞ。それで匙は何してたんだ?」

 

 匙の格好はジャージに軍手。花壇用のシャベルを持っていた。

 

「おう。見ての通り、花壇の手入れだよ。ここ最近行事も多かったし、近々魔王さま方もお見えになるから、学園内を綺麗にしようって一週間前から始めてんだ。流石に会談の時にはある程度清潔感を見せなきゃいけないからな。そういうのも兵士である俺の役目さ」

 

 胸を張る匙に一樹はなるほどと頷く。

 小さいことかもしれないがそうした雑用を任されるのも信頼されている証拠だろう。会談という重要な行事が控えている上で業者ではなく眷属に任せている事からも明らかだ。

 

「よぉ。魔王の眷属が揃ってお遊戯か」

 

 その時、突如現れたその人物に一誠が驚きの声を上げる。

 

「アザゼル!?」

 

「アザゼルさん?どうもっす」

 

「こんにちわ」

 

「えぇっ!?」

 

 一誠がアザゼルの登場に神器を発動させて構えるが一樹と白音が普通に挨拶を始めた。

 

「ど、どういうことだよ!知り合いなのか!?」

 

「知り合いも何もお隣さんだしな。あ、もしかして前に兵藤が言ってたアザゼルってこのアザゼルさん?」

 

「どのアザゼルさんだと思ってたんだよ!?」

 

「いや、外国じゃ珍しくもない名前なのかなって思ってたから」

 

「訊かれませんでしたし……」

 

 バツが悪そうに視線を逸らす一樹にしれっと答える白音。

 そんな2人に苦笑しながらアザゼルは用件を告げる。

 

「それより、聖魔剣使いはいるか?ちょっと聞きたいことがあるんだが……」

 

「祐斗なら部長たちと一緒ですよ」

 

「なんだ入れ違いかよ……まあいい。それより白音に一樹。お前ら、今度の会談は2人とも俺と一緒に出て貰う。黒歌の奴も護衛として呼んでるしな」

 

 アザゼルの発言にこの場に居た全員が驚く。そんな中で一誠は声を上げた。

 

「な、なんで!?」

 

「黒歌の個人的な雇い主のは俺で、その身内が俺の側なのは別段おかしい話じゃねぇだろ?それに白音からすりゃ悪魔側(そっち)側に立つより堕天使(こっち)側の方が気が楽だろ。なぁ?」

 

 こちらに話題を振られて白音は顔を僅かに歪ませる。

 

「俺は留守番する気なんですけど」

 

 三大勢力の会談なんて興味ない。そもそも人外の会談に人間である一樹がいる必要があるのだろうか?

 

「そう言うな。俺としちゃ、グレモリーの協力者っていう肩書があるとはいえお前はこっち側に関わっているだけの人間だ。コカビエルの件もあるし、そういうわけにはいかねぇだろ。いいから出ろな!」

 

「は、はぁ……」

 

 ヘッドロックをかけられながら不承不承で承諾する一樹視線を向けられた白音は溜息を吐いた。

 それが白音の諦めからくる承諾だと受け取った。

 

「んじゃそういうことでな。それとそこの金髪のガキ。お前さんが持ってるのは【停止世界の邪眼】だな。そいつはコントロールできないと厄介極まりない。思うように使えないってんならそっちのガキの神器、【黒い龍脈(アブソーブション・ライン)】持ってんだろ?そいつでそのガキの神器の力を吸い取れば少しはマシになるはずだぜ。そいつを使って訓練してみるんだな」

 

 匙を指さして説明すると当の本人は驚いている。

 

「お、俺の神器は他の神器の力も吸えるのか!?てっきり俺は相手の力を吸い取って弱らせるだけかと」

 

 匙の言葉にアザゼルは思いっきり嘆息する。

 

「まったく。自分の神器の力くらい知ろうとしやがれ。そいつは五大龍王の一匹、【黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)】ヴリトラの力を宿してる。どんな物体にも接続できてその力を散らせるんだよ。短時間なら、持ち主側のラインを引き離して他の者や物に接続することも可能だ」

 

 もっともこれはうちでも最近わかったことだけどな。と続ける。

 

「成長すればライン自体も増えて、吸い取る力も倍々だ」

 

 アザゼルの言葉に匙は黙って自分の神器を見つめる。更にアザゼルの口上は続く。

 

「そこの吸血鬼には赤龍帝の血でも飲ませて器を広げさせてもいいかもな。ま、あとは自分たちでやってみろ。何事も挑戦だ」

 

 そう言って一樹をヘッドロックから外してその場を離れようとしたが、何か思い出したのか再びこちらに振り向く。

 

「そいうやぁ、ヴァーリの奴がいきなり接触して悪かったな。あいつも今の二天龍の決着には興味ねぇだろうし、今直ぐおっぱじめる気はないだろうさ。今回のアドバイスはその謝罪代わりってことにしとけ」

 

「ちょっと待てよ!正体隠して俺に度々会ったことは謝らないのかよ!」

 

「謝らねぇよ。そりゃ俺の趣味だからな。それに対価は不相応に払ってただろ?」

 

 それだけ言い残し、今度は本当にその場から姿を消してしまった。

 残された全員が反応に困っていたが話を切りだしたのは匙からだった。

 

「とりあえず、俺の神器を接続して、新顔くんの練習でもするか。その代りにこの後俺の花壇の手入れに付き合ってもらうけど」

 

「あぁ、良いぞ。どうせ俺たちだけじゃ全然進まなかったしな。頼む」

 

 一樹が匙にそう頼むのを聞きながら一誠はふと思った。

 もし今回の会談が失敗したら一樹と白音はどうなるんだろうか、と。

 少なくともこの学園にはいられなくなることは想像に難くない。

 

(それは、嫌だなぁ)

 

 白音は口調こそきついが可愛いし。一樹とは反りが合わない部分はあるが悪魔の仕事などを一緒に熟してきて気に食わない奴だけど仲間だと思ってる。

 もし今回の会談が失敗して2人が学園に居られなくなったら?

 悶々とした気持ちを抱えながら一誠はギャスパーの訓練を再開した。

 

 

 


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