太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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匿名投稿してる作品を書くのが楽しくてこっちが疎かになってました。


102話:容赦無用

「ここが指定された場所です……」

 

 駒王町にある地下鉄の道を見ながらソーナが重たい息を吐く。

 

「まさか、こんな場所に隠れていたなんて……これは本当に裏切り者の可能性を考える必要がありますね」

 

 ぶつぶつと思考を張り巡らせるソーナに、一樹が眉間にしわを寄せて発言する。

 

「支取会長。そういうのは今、後回しにしてもらって良いですか? 裏切り者云々は敵を捕まえて聞き出せばいいし。それより連れ去られた白音たちを早く」

 

 苛立たしげに意見する一樹にソーナはそうですね、と返した。

 ここでモタモタしてると一樹が勝手な行動をしそうだと思って。

 続いてゼノヴィアが発言する。

 

「グレモリー眷属の指揮は誰が取る?」

 

「そちらも私が。リアスやアザゼル先生からも許可を得てます。故に、オカルト研究部の皆さんも、私の指揮下に入って貰います。良いですね?」

 

 ソーナに確認されてオカルト研究部の面々は肯定する。

 そこで一誠が見慣れない男2人に目を向けた。

 

「あの、会長……そこの2人は?」

 

 1人はソーナより年上に見える筋肉質な体型の銀髪の男性と、反対に中学生程で中性的な見た目の青みのある黒髪と桃色の瞳を持った少年。

 

「彼らは私の新しい眷属で、今回の事件に協力してくれる、駒王大学部のルガールさんと、来年中等部に編入予定のディール君くんです」

 

 ソーナが紹介するとルガールと呼ばれた男が手短に自己紹介する。

 

「ルー・ガルーという」

 

 名前だけ言うと下がり、続いて桃色の瞳の少年が自己紹介をし始めた。

 

「ディール・ゼパルと申します。今回の事件のバックアップを担当させていただきます」

 

 やや緊張した様子で話す様子に一誠があ! と口を開く。

 

「もしかして会長の婚約者っていうのは……」

 

 一誠の言葉にソーナは僅かに目尻を上げた。

 

「えぇ、そうです。今まで紹介するのが遅れてしまいましたが。ルガールさんには外で警戒。ディールくんには一般人が巻き込まれないように動いて貰います。まだ2人は眷属入りして日が浅いですし、特にディールくんの人工神器にはまだ不具合を抱えていますから」

 

 不具合、に関しては口にせず、話を進める。

 

「なら、ベンニーアはどうします? こいつもまだ、グレモリー眷属に入ったばかりですけど」

 

 一誠がベンニーアの頭に手を置く。ソーナは顎に指を添えて少し考える。そしてベンニーアに幾つかの質問をすると、中へ動向することを決めた。

 

「今回の戦いは室内戦です。兵藤くんたちより、動かし易いと思いますので。それと万が一を考えて、出来る限り禁手や広範囲の強力な攻撃は行わないように。下手に壊せば、町が崩落することになりますから」

 

 パワー自慢のグレモリー眷属が本気で力を振るえば、本当にこの街が崩落しかねないと危惧して念を押す。

 そこから簡単な打ち合わせをして、敵が図々しくも陣取っている地下へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 駒王の地下へと進む。

 歩いている最中に一誠が一樹に声をかけた。

 

「おい、日ノ宮。ちょっと殺気は抑えろよ。周りが怖がってるだろ」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 生返事はするが殺気が抑えられていない一樹に一誠は嘆息した。

 白音が連れ去られたことに苛立っているのだ。

 これじゃあ、本当に何を仕出かすかわからないと一誠は気を引き締める。

 そんな一樹の様子にシトリー眷属たちは居心地が悪そうにしていた。

 

「日ノ宮先輩ってあんなにいつもピリピリしてましたっけ?」

 

「そんな事はないぞ。白音が拐われて気が立ってるだけだ」

 

 留流子の疑問にゼノヴィアが簡単に答える。

 録に会話もないまま、進むと、そこには広く用意された場所に出る。そして大勢のローブを着た魔法使い達が待ち構えていた。

 そこにはそれぞれローブを被った魔法使いと召喚したであろう魔物などが合計百を越えていた。

 

「ようこそ、若手四王(ルーキーズ・フォー)と呼ばれるグレモリー、シトリーの皆さんが俺たちのために集まってくれるなんて光栄の極みだ」

 

 ふざけた調子でこの場の指揮官らしき男が芝居かかった動作で頭を下げた。

 それにソーナが1歩前に出て質問する。

 

「貴方たちの目的はなんでしょうか? フェニックス? それとも私たち?」

 

「両方、ですね。フェニックスのお嬢さんは大事に扱えとリーダーからの命令なので」

 

 どうやら、目の前の魔法使いが今回の首謀者ではないらしい。

 その男が態とらしく息を吐く。

 

「フェニックスの件は既に終えていますが、次は貴方たちだ。メフィストのクソ理事とクソ協会が認めた貴方たちの力。とても興味が湧きます。強い若手悪魔が現れたらとりあえず腕試しがしたくなるでしょう? 特に俺らみたいな乱暴な魔法使いならね!」

 

 その言葉が合図だったのか、後ろにいた魔法使いたちがそれぞれ魔法陣を展開して攻撃を開始する。

 異なる属性の魔法陣が展開されて、ソーナたちに襲いかかろうとしていた。

 相手から仕掛けてくるとソーナが低い声で仲間に告げる。

 

「それでは、存分にお見せすることにしましょう。若手悪魔の力を。駒王学園の者に手を出せばどうなるのか。たっぷりと後悔させてあげます」

 

 最初に飛び出したゼノヴィアのデュランダルとロスヴァイセの魔法で相殺して撃ち落としていく。

 撃ち漏らしをソーナの戦車である由良翼沙が人工神器を展開した。

 

「広がれ、我が盾────【精霊と栄光の盾(トゥインクル。イージス)】!」

 

 展開された光の盾が広範囲に広がり撃ち漏らした敵の攻撃を全て受け止める。

 ここ最近、禍の団のテロ行為の活発化や駒王町でのトラブルの多発。

 それらを踏まえてアザゼルは無能力者の多いシトリー眷属に戦力向上と実験データの採取も兼ねて人工神器を与えていた。

 

「それでは、オフェンスに入ります。

 

 由良が敵の初撃を受け止めるとソーナから指示が出る。

 

「兵藤くんは予定通り騎士の禁手化で戦場を掻き回してください。そして指示が出したらお願いします」

 

「はい!」

 

 龍星の騎士の鎧を纏った一誠が戦場を駆け回る。

 それぞれ散開し、個別に魔法使いを討ち取っていく。

 ゼノヴィアがデュランダルのパワーを活かして敵を薙ぎ倒していく中、シトリー眷属たちはそれぞれ人工神器を活用して魔法使いたちを次々と各個撃破していく。

 別方向ではロスヴァイセが敵の魔法を相殺して抑えるなかで一樹、イリナ、ベンニーアが手にしている得物で殺さないように無力化していた。

 

(おせ)ぇよ」

 

 魔法使いたちの手足を槍で突いて無力化し、イリナはエクスカリバーにある6つの特性を利用して敵を斬り、ベンニーアも後ろから迫ってきた敵を大鎌の柄で突いて怯んだ隙に両手を斬り落とした。

 

「やるじゃない! ベンニーアちゃん!」

 

「新人なもんで。これくらいはやらせてもらいまさぁ」

 

 その速度で次々と敵を倒していくベンニーア。

 速度だけなら祐斗並みと言ったリアスの言葉は嘘ではなかったらしい。

 匙が以前神の子を見張る者(グリゴリ)に埋め込まれたヴリドラ系統の神器を使用して敵の動きを封じると、【黒い龍脈(アブソーブション。ライン)】で敵の魔法力を奪っていく。

 そこにソーナの指示で一誠の譲渡の効果も加わってほぼ一瞬で敵を無力化させた。

 

「すっげ……」

 

 その圧倒的な吸引力に匙が驚いているとソーナkら説明が入る。

 元々一誠と匙の能力は相性がよく、奪った魔法力をロスヴァイセ。もしくは魔法力の代わりに血を奪ってギャスパーに与えることもできると。

 自身の眷属とオカルト研究部の連携を考えているソーナ。

 しかしそこで召喚した合成獣がゼノヴィアに襲いかかってきた。

 

 迎え撃とうとするゼノヴィアに一樹が高速で近づく。

 

「ゼノヴィア! 後ろの魔法使いはこっちで殺る! 俺を投げ飛ばせっ!」

 

「今発言が物騒ではなかったか!?」

 

 デュランダルの腹に載った一樹。

 

「でぇえええええいっ!!」

 

 そのまま力任せにデュランダルを振るったゼノヴィアが一樹を合成獣の隙間を通して魔法使いの元へと真っ直ぐに投げ飛ばした。

 

「え? ウソッ!?」

 

 予想以上の力押しに後ろに居た女魔法使いが驚く間のなく殴り飛ばされた。

 一樹が着地すると一誠の洋服破壊を怖れて後ろから援護していた女魔法使いたちが固まっている。

 彼女らを見ながら一樹がボキボキと指を鳴らして告げた。

 

「アンタら、相手が兵藤じゃなくて災難だったな」

 

「何を……」

 

 ゆっくりと近づいてくる一樹に合わせるように後退る女魔法使いたち。

 冷めた視線とは逆に握った拳に炎を纏わせる一樹。

 

「別に。アイツが相手なら、服を破られるだけで済んだろうになって話だよっ!」

 

 顔面を容赦なく殴り付けると前歯がへし折れて飛ぶ。

 攻撃魔法を放っても鎧の一部を具現化して防ぎ、次々と殴り倒していく。

 

「あらあら。あまり1人で活躍しないでくださいね? 私の取り分が無くなってしまいます。うふふ。えぇ。ここまでオイタをした方々には容赦なく制裁させていただきますわ」

 

 一樹の後ろに続いていた朱乃が広範囲で雷光を放ち、女魔法使いたちを黒焦げにしていった。

 その後も、一誠の譲渡で強化された面々が魔法使いたちの攻撃を防ぎ、反射し、逆にこちらの攻撃に成す術もなく撃沈されていく。

 多少の負傷はアーシアが神器の力を飛ばしてすぐに治療されていく。

 すでにこの場は一方的な戦いへと変わっていた。

 

「これで、ラストォ!!」

 

 一樹が最後の魔法使いに顔を炎を纏った手で掴んで焼きつつ地面に叩きつける。

 その光景を見ていたシトリー眷属が身震いしていた。

 

「私、日ノ宮くんがグレモリー先輩の眷属じゃなくてホント良かったって思った……」

 

 ただでさえパワーが並外れているグレモリーに加わって一樹が加わるともう手に負える気がしない。

 一樹にやられた魔法使いたちを見てシトリー眷属たちは身がすくむ想いだった。

 ある者は顔を火傷し。ある者は歯を折られ。ある者は顔の一部を削がれている。

 見ていた敵味方の士気を下げるには充分な残虐性だった。

 

 倒れていた魔法使いの者が起き上がると降参とばかりに手を挙げる。

 

「リーダーが奥に通せってよ。但し、奥に行けるのはグレモリー眷属とミカエルのAとヴァルキリー。そしてそっちのグリゴリの協力者とヴリドラの使い手だけだって」

 

 つまりはオカルト研究部の面々と匙だけ、ということだ。

 向こうにレイヴェルたちがいることからも、仕方ないとソーナが息を吐く。

 

「分かりました。ではあなたたち全員、ここで捕縛させていただきます」

 

 ソーナの言葉が以外だったのか、げっ、と声を漏らす。

 

「俺たちまで捕まえんのかよ! 別に禍の団の術者連中だけで良いだろ! ただの冗談じゃねぇか」

 

 ただの冗談。それに真っ先に喰ってかかったのは匙だった。

 

「ふざけんなっ! うちの生徒を襲っておいて────」

 

 胸ぐらを掴んで睨み付ける匙。

 生徒会の役員として学校に従事している匙だ。今回、敵の侵入を許して生徒を危険に晒した悔いは強い。

 もちろん他の面々も今の魔法使いの発言に怒りを募らせている。

 そこで一樹が前に出て人差し指の先端に火を点すとその額に擦り付けた。

 

「あっつ!? なにすんだよ!!」

 

「さっき、フェニックスは丁重に扱ってるって言ったな。他にも2人拉致っただろ。余計なことしてねぇだろうな」

 

 白音の心配している一樹の質問に魔法使いは焦った様子で答える。

 

「し、知らねぇよ! フェニックスのガキのことだけで他のことは────ってぎゃぁああああっ!? 額が熱い熱いっ!!」

 

 額に火傷が広がっていく。それに慌てて訂正した。

 

「してない! そっちから変な行動しない限り、無下には扱わない筈だ!」

 

「本当だろうな?」

 

 人差し指だけだって火が中指にも点されて魔法使いが掠れた悲鳴を上げる。

 

「おい。知ってるぞ。お前も俺たちと同じ人間だろ? 同族同士、仲良くしようぜ。な? な?」

 

 魔法使いの命乞いに一樹はくつくつと鼻で笑って見せる。

 

「その同族。それも一般人相手に魔法とやらを使った連中がよくそんな台詞が言えたもんだ。人の大事なもんに手を出しといて、同じ人間だからって温情が出ると本気で思ってるのか?」

 

 こちらを煩わしい虫を潰すような瞳をする一樹に魔法使いが後ろに体を震わせた。

 

「日ノ宮くん」

 

 これ以上は、とソーナからストップがかかり、一樹は舌打ちして指を離した。

 最後に脅迫として言葉を残す。

 

「次こんなふざけた喧嘩売ってきやがったら、問答無用で達磨にしてやるからな?」

 

 一樹の言葉に魔法使いはコクコクと首を上下に動かす。

 

「それでは匙。私たちは彼らを拘束して一度上に戻ります。ディールくんにも色々と手配してもらいますので。捕らわれた彼女たちを頼みます」

 

「は、はい! 分かりました! 任せてください!」

 

 仕切り直すような告げるソーナに匙が礼儀正しく答える。

 それを見て一誠は、後で匙にソーナの婚約者である少年をどう思っているのか聞いて置こうと思った。

 

「それでは皆さんも、どうか無事で」

 

 ソーナの激励に先に進む面々は緊張感のある表情で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白音さんっ!?」

 

「っ!」

 

 膝をついている白音を見下ろしてローブを羽織り、フードで顔を隠した男が疲れた様子で息を吐く。

 

「大人しくしてもらえませんか? 私は、フェニックスである彼女の魔力を調べたいだけで手荒なことをするつもりはないのですよ。あなたたちにも危害を加える気は────」

 

 言い終える前に白音が動き、男の上空を取って作った螺旋丸をぶつけようとする。

 しかし、男が腕を振るうと、魔力で作られた刃が腹部に刺さり、地面へと倒れ落ち、レイヴェルの悲鳴が上がった。

 

「そこの吸血鬼の少年といい、無駄な抵抗は控えてください。これ以上の時間はかけられませんので」

 

 白音同様にレイヴェルを守ろうとしたギャスパーは床に倒れて意識を失っている。

 どろどろと流れる血を押さえながら白音は目の前の男を睨み付けた。

 

 


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