太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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今回から連日投稿ではなく出来たら投稿にします。




99話:新しい仲間

「なぁ、日ノ宮。俺はどうしたら良いと思う?」

 

「うるせぇ。今忙しいんだよ。話しかけんな。燃やすぞ」

 

「いくらなんでも塩対応過ぎだろ! 俺なんかしたぁ!?」

 

 部室で出された宿題を黙々と片付けている一樹に一誠が話しかけるといつも通りの塩対応に一誠がキレた。

 その話を聞いていたリアスがふと疑問を口にする。

 

「そういえば、一樹。イッセーには初めからこういう態度だったわね。この部に入る前に何かあったの?」

 

「ありませんよ! 第一、この部に入る前にはクラスも違うしろくに話したこともないんですから!!」

 

 一誠の弁明にリアスはそうよねぇ、と顎にその整った指を当てる。

 周りが視線が集まる中で一樹は舌打ちしてから答えた。

 

「兵藤っていうか、お前ら変態3人な。今年度の始めに、白音のクラスに覗きかましただろ。それで良い印象なんてもつわけないわな」

 

 一樹の言葉に部員たちが目を細めてあ~、と声を出す。

 しかし、それでも本人は反論した。

 

「でもそれって2人が付き合う前の話だろ!? もう水に流してくれてもいいだろっ!?」

 

「はぁ……?」

 

 反応したのは一樹ではなく白音のほうだった。被害者に睨まれて一誠はその場で綺麗なジャンピング土下座を披露する。

 

「白音さん。どうかその件は水に流してくれないでしょうか?」

 

「イヤです」

 

「即答!?」

 

 先輩としての威厳をかなぐり捨てた土下座はどうやら白猫には通用しないらしい。

 そして一誠の言葉に一樹はふーん、と顎に手を当てた。

 

「つーか、この間お前のクラス女子の着替え覗いてた奴等を見つけて思いっきりキレて掴みかかってたじゃねえか」

 

「えぇっ!?」

 

「あったりまえだぁ!? アーシアやゼノヴイアは将来俺の眷属になるんだぞ! 2人の裸を見て良いのは俺だけなんですぅ!! 未来の主として他の男に覗かれるなんて許せません!」

 

「ここで俺の女って言えないのが兵藤の限界だよな……」

 

 アーシアたちも苦労するなと首を振る。

 それにリアスがクスクスと笑った。

 

「それじゃあ、一樹がイッセーにきつく当たるのも仕方ないわね。イッセー、これが身から出た錆びと言うものよ」

 

「部長、そんな~」

 

 部室内でドッと笑いが起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、宿題を中断してケーキで糖分を補給していると、リアスが今日の本題に入った。

 

「今日みんなに集まってもらったのは新しい眷属を紹介するためよ」

 

「新しい眷属さんですか!?」

 

「部長!? その人は男ですか!! 女の子ですか!!」

 

 一誠の期待にリアスは笑みを深めた。

 

「それじゃあ、来てちょうだい!」

 

 リアスが天井に向けて合図を出す。

 皆が疑問に思ったまま天井を見るとそこには魔法陣が展開され髑髏の面が出現した。

 

「なっ!?」

 

 全員が驚くまもなく天井から現れた髑髏の面をした人物はくるりと回り、鮮やかにオカルト研究部の部室に着地する。

 

 ただし、一樹の頭の上に、だったが。

 見知らぬ誰かに頭に乗られ、そのまま自分が食べていたケーキの上に踏みつけられる一樹。

 

「…………」

 

 誰もが言葉を出せないままに見守る。

 そして髑髏の面をした人物は言葉を発した。

 

「あー、すいやせん。チョイと降りる場所をミスっちまいました」

 

「……謝罪はいいから早く退けよ。いつまで人の頭ぁ、踏んづけてんだテメェ」

 

 失礼、と一樹から退く髑髏の人物。

 足を退けられた後も動こうとしない一樹に祐斗が声をかけた。

 

「一樹くん……?」

 

 するとガバッと起き上がり、ギロリと髑髏の人物を睨む。

 

「これはどうも────」

 

 すいません、と言おうとするより早くに一樹が動いた。

 

「日ノ宮ロイヤルクラーシュッ!!」

 

 相手に思いっきりラリアットを叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして。新しくマスター・リアスの騎士(Knight)となりました。死神(グリムリッパー)のベンニーアと申します」

 

 鼻血が出た鼻穴にティッシュを詰めたままお辞儀をするベンニーア。

 その原因となった男に一誠が抗議する。

 

「お前な……この子はちゃんと謝ってたんだから何もラリアットで壁に叩きつけなくてもいいだろ。相手は女の子なんだし」

 

「謝って大抵のことが水に流れるのは小学校低学年までだ。そして俺は男女の区別はしても差別はしねぇんだよ」

 

「良いこと言ってる風に聞こえてただの危険思想だろ、それ!」

 

「喧しいわっ! 女に頭踏まれて興奮して喜ぶお前と一緒にすんなよ!」

 

「えっ!? そうなんですか!」

 

「しねぇよ!! 勝手に俺にそんな趣向を追加すんじゃねぇええ! ! そしてアーシアも信じないでくれよっ!?」

 

 一誠が一樹の肩を掴んでガクガクと揺さぶる。

 それにリアスがパンパンと手を叩いてじゃれあいを止めさせた。

 

「はいはい! せっかく新しい仲間を迎えたんだから静かにしなさい」

 

「しかし部長。いつの間に新しい眷属なんて」

 

「京都から戻ってきてすぐに、ね。ベンニーアが自分を売り込んできたのよ」

 

 上機嫌にベンニーアに視線を送る。

 売り込んできた、の言葉に一誠が反応する。

 

「売り込んできた? でも、それって大丈夫なんですか? その、色んな意味で」

 

 幾ら三大勢力の和平を皮切りに他勢力への友好を呼びかけているとはいえ、他の勢力の者を内側に引き込んで大丈夫なのだろうか。

 その疑問に答えたのは他ならぬベンニーアだった。

 

「それについてはあっしからお答えします。あっし、ついこの間まで各地を放浪してまして」

 

「ほーろー?」

 

「えぇ。チョイとハーデスさまのやり方と親父の日和っぷりに嫌気がさしたんでさぁ。それで自分探しと見聞を広める名目で各地を歩いてたんでさぁ。それで先日この町に辿り着いて、そのままマスター・リアスに自分を売り込んだんでさぁ」

 

「向こう側とも連絡を取って、かなり心配していたみたい。それで居場所が分かるならとベンニーアを眷属にすることを承諾してくれたの」

 

「その代わり、親父へマメに連絡を入れる約束をしちまいましたがね」

 

 やれやれと言った感じ息を吐くベンニーア。

 上機嫌に話し出すリアス。

 

「彼女の速度は祐斗にも匹敵するわ! 今まで、パワーに傾倒しがちだった私たちもこれで少しは戦術の幅が広がるわね!」

 

「人間の血が濃いんでどこまであっしの力が通用するかわかりやせんが、足手まといにはならないつもりでさぁ」

 

「しかし、よくそれだけで眷属入りを決めましたね」

 

「彼女にはもう1つ信用するに足る要素があったのよ」

 

 リアスがそう言うと、ベンニーアが突然サイン色紙を出して一誠に差し出す。

 

「実はあっし、おっぱいドラゴンの大ファンなんでさぁ。旦那、良かったら、サインの1つでも貰えないでしょうか?」

 

「え? 俺のファン?」

 

 突然の暴露に驚きながらも最近冥界の子供たちにサインを書くのに慣れ始めた一誠は色紙を受け取ってサインを書く。

 どうやらおっぱいドラゴンのファンというのは本当らしく、マントの裏にはおっぱいドラゴンの刺繍が縫われていた。

 

「ソーナも、新しい戦車(ルーク)兵士(ボーン)が加わって焦ってたけど、ゼノヴィア以降、ようやく新しい仲間を迎え入れられたわ!」

 

「あ。支取会長も眷属増えたんだ。どんな奴らなんです?」

 

 一樹の質問にリアスは腕を組んで答えた。

 

「1人は、大学部の狼男の戦車。もう1人は、ソーナ婚約者で────」

 

「ちょっと待ってください! 会長に婚約者? そんなの居たんですか?」

 

「いるのよ。5歳年下の。夏休みのパーティーや学園祭にも顔を出していたのよ。今まで、ちゃんと紹介してなかったけど。で、その子だけど、アーシアの聖母の微笑みを参考に造られた人工神器をアザゼルから与えられたと聞くわ」

 

 アザゼルに視線を向けると彼は尾びれもなく頷いた。

 

「まぁな。データ取りも兼ねて本人の希望もあって渡した。これで、治療はお前らだけの専売特許じゃなくなったわけだ」

 

 次は面白いモノが見れそうだと笑うアザゼル。

 それにアーシアが不安そうにしているとゼノヴィアが声をかける。

 

「大丈夫だ。まだ追加されたばかりの人工神器では治療役としてアーシアの足下にも及ばないだろう。京都で私の体をくっ付けてくれた自分の力を信じろ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 ゼノヴイアの励ましに険しかった表情が元に戻る。

 一誠は別のことを考えていた。

 

(会長に婚約者か~。匙、どう思ってんだろ)

 

 そんな風に話が進んでいるとリアスは別の話題に切り替える。

 

「最後に、新人のベンニーア以外はこれから、魔法使いとの契約に入ってもらうわ」

 

 魔法使いとの契約。その言葉にグレモリー眷属たちから緊張が走る。

 魔法使いたちが悪魔と契約する理由は主に3つ。

 

 1つ目は用心棒。

 強力な悪魔と契約することで荒事を解決したり、交渉で相手を威圧できる。

 2つ目は研究のため。

 魔法使いは悪魔と契約を結ぶことで研究が進むことがある。悪魔の技術や、冥界でしか入手できない材料などを少しでも安く、確実に入手できる。

 3つ目は悪魔との契約自体がその魔法使いへのステータスになる。特に名門だと尚更に。

 そして長く生きる悪魔に相談なども持ちかけられるらしい。

 それを、何らかの理由で契約破棄されない限り、年単位で続けるのだ。その場かぎりの今までの仕事とは責任の重みが違う。

 

「取り敢えず、貴方たちと契約したいと申し込んできた魔法使いの資料よ。しっかりと読んで、出来る限り良い条件の相手を探しなさい。今回で決まらないならまた取り寄せるから」

 

「今回で決めなくていいんですか?」

 

「えぇ。向こうにとっては研究の延長線状でも、私たちにとってはビジネスだもの。良い条件を提示する相手を選ぶのは当然だわ」

 

 決して自分を安売りするなと言うリアス。

 皆が渡された資料に目を通す。

 

 それを見ていた一樹が呟く。

 

「こういう時、俺ら悪魔以外は暇だよな。普段から特にやることねぇけど」

 

「あら? なら、特別に一樹も契約を取ってみる?」

 

 冗談めかして言うリアスに一樹は肩を竦めて苦笑した。

 

「お断りします。魔法使いとパイプを繋げる意味が見いだせませんので」

 

「そう。残念ね」

 

 向こうも本気で言ったわけではないのでそれ以上ほ何も言わなかった。

 

 

 

 

 その後、通信で大悪魔

 メフィスト・フェレスと悪魔契約に関する話やアサゼルとの談笑をする。

 最後に、レイヴェルに忠告を残した。

 

 現在、ほぼ純正に近いフェニックスの涙が裏で流通しており、それに関連して禍の団の一部の動きが活発化しているらしい。

 これから、フェニックス家の者であるレイヴェルも狙われる可能性があると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベンニーアはグレモリー眷属入りしました。おっぱいドラゴンのファンなら駒空いてればそっちに行くんじゃね?と思って。

次回は一気に飛んでエルメンヒルデとの交渉回に入ります。

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