太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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この作品の投稿も久しぶりな感じです。でも全然書き溜めが出来てない。

今回からオリ話です。劇場版的な。


90話:雨の中での再会

「真の英雄は眼で殺す!」

 

「だからそれ、反則だっつってんだろうがぁああああっ!!」

 

 放たれた強力な熱線をギリギリで避けて一樹はカルナに向かって叫ぶ。

 カルナと意思の疎通が可能になってから精神世界で模擬戦を行いながら教えを乞いているのだが分かったことがある。

 

 この大英雄殿は何かを教えるのに向いていないということだ。

 基本口下手な上に問題点を指摘するより弱点を模擬戦を徹底的に衝いて気付かせる。

 そもそも一樹が不滅の刃(ブラフマーストラ)が使えたのもカルナが自分の経験と技能を精神世界の模擬戦で少しずつ強制的にトレースさせたかららしい。

 

「なんだよ、眼からビームって!!人間が使う技じゃねぇだろっ!!」

 

「ビームではない。自身の眼力を攻撃力に転化して放っているだけだ。お前も使ってみるといい。今のお前ならば形になる筈だ」

 

「ふっざけんなぁ!俺はスーパーロボットじゃねぇんだよぉおおおおおおおおっ!?」

 

 こうして一樹は夢の中でカルナの眼力に射ぬかれて消し飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ……暇だな……」

 

「気が緩んでるね、一樹くん」

 

「今年に入ってからやたらと危ない目に遭ったからな。でも最近はわりと平和だろ?このまま、ずっとそうなってほしいもんだ」

 

 アクビを噛み殺しながら言う一樹に祐斗は苦笑しながら話題を変えた。

 

「そろそろ三者面談があるけど、一樹くんは進路考えてるのかい?やっぱり、進学?」

 

「だな。別に俺は就職でもいいんだが、周りに大学まで行ける環境なんだから出とけって。まぁせっかく大学部まであるんだしな」

 

「イッセーくんたちも進学するって言ってたし。進路はみんな一緒だね」

 

「……むしろあの3人は進学出来ると思ってるのか?主に内申点で」

 

 一誠の成績は今年に入って伸び初めているがこれまでの行動から退学にならないのが不思議なのである。

 それは祐斗も分かってるのか遠い目をする

 

「……きっと大丈夫だよ。大丈夫だと、いいなぁ」

 

 そんな話をしていると向こうから顔見知りが来る。

 それは、二年のオカルト研究部。そしてオカルト世界を最近知った友人たちだった。

 ちなみにイリナは先に教室に出てアーシアたちと合流した。

 

「あれ?日ノ宮。お前、今日は白音ちゃんの出迎えに行かなくていいのか?」

 

「あぁ。最近そのせいで周りに注目を浴びるようになったってぼやかれてな。白音に手を出しそうな奴等には牽制したし、もういいかなって」

 

「牽制って……」

 

 見も蓋とない言い方をする一樹に一誠が呆れる。

 

 そんな中で元浜が一樹に近づく。

 

「なぁ、日ノ宮。お前、白音ちゃんと恋人同士なんだよな?そんなお前に切実な頼みがあるんだ」

 

「断る」

 

「せめて内容くらい聞けよ!」

 

「喧しい!どうせろくでもない頼みだろうが!!」

 

 めげずに元浜は一樹に近づき、肩をガシッと掴んで頼む。

 

「白音ちゃんのパンツ、是非俺に売ってくれ!」

 

 元浜の頼みを聞いて周りの空気が凍る。

 一樹本人は大きく息を吐くと元浜の首根っこを掴み、窓ガラスを開けた。

 

DIE(だーい)!」

 

「まてぇえええええっ!?」

 

 窓の外に投げ飛ばそうとする一樹を一誠が止めた。

 

「気持ちは分かるが待てよ!ここ二階だぞ!最悪死んじまうだろうが!?」

 

「あ?お前ら3人ギャグキャラだから死なねぇよ。次のシーンでは何事もなくピンピンしてるんだろ、きっと」

 

「いい加減なこと言うじゃねぇよ!?」

 

 一誠が一樹の手を外させると聞こえるように舌打ちした。

 手を外された元浜は体を震わせて呟く。

 

「こいつマジ容赦ねぇ……修学旅行の時は体張って助けてくれたってのに……」

 

「あんときは藍華を助けたんだよ!お前ら2匹だったら見殺しにしてたわ!」

 

「おいちょっと待て!あの時助けてもらった感動を返せよ!っていうか匹ってなんだ匹って!?」

 

 一樹の言い分に松田が割って入る。

 

 そんな風に言い争っていると上の階から1年組が降りてきた。

 

「なにを騒いでますの?上の階まで声が聞こえましたわよ!」

 

「見て判んだろ!元浜が白音のパンツ寄越せってうるせぇからシメてたんだよ!」

 

「ちょ!?お前っ!?」

 

 あっさりばらす一樹に元浜が慌てる。

 白音はそんな元浜をゴミを見るような瞳で嫌悪感を露にする。

 

「クッ!白音ちゃんに軽蔑の眼を向けられて……!だけどそこがまたいい……!?」

 

 逆に興奮しだした元浜に周りはドン引きである。

 

「なぁ、兵藤。お前の親友は上級者過ぎないか?さすがに関わりたくないレベルなんだが」

 

「……まったくフォローできねぇ」

 

 そこで藍華が話題を変えた。

 

「アンタたちはこれから部活よね?頑張んなさい」

 

「あぁ!早く昇格して俺だけのハーレムを作るんだ!」

 

 意気込む一誠に周りの反応はそれぞれだった。

 

「くっ!イッセーは将来合法的にハーレムを作れるなんて!」

 

「呪ってやる……!俺だってロリッ娘ハーレムが作りたいのに……」

 

「ハーレムねぇ……」

 

 怨嗟を吐き出している松田、元浜と違い、一樹は何か含みのある声を出す。

 

「おいなんだよ。言いたいことがあるなら言えよ」

 

「いや、まぁ……別に……なぁ?」

 

「そんな反応されたら気になるだろ!?いいから言えよ!」

 

 促されて一樹は仕方ないという風に思ったことを述べる。

 

「将来、兵藤似の子どもが出来たら苦労するんだろうなぁと思って。中坊になった辺りで覗き、盗撮、洋服破壊(ドレス・ブレイク)とかかまして。母親が何度も学校に呼び出されて心労が溜まっていくのに肝心の兵藤はのらりくらりと向き合わずに他の奥さんと乳繰りあったりして。そんなときに他の男と仲良くなったそいつが新しい恋に生きます!的な感じに離婚を突きつけられたりするんだろうなぁ、と」

 

 ピクピクと頬の筋肉を動かす一誠に一樹は肩に手を乗せた。

 

「将来、子供はみんな奥さん似だといいな。主に性格面で」

 

「ド喧しいわ!!お前、乳龍帝の時といい、そういう妄想どっから持ってくんだよ!」

 

「未来から受信されるんじゃないか?」

 

「そんな未来はねぇ!お前こそ将来DV夫になりそうな癖に!」

 

「誰がだ!確かに俺は女相手でも手が出るけどなぁ!脅威か敵認定してない相手にまで手を上げたことはねぇよ!」

 

「偉そうに言うことじゃねぇだろうがっ!?」

 

 互いに胸蔵を掴んで罵り合う2人。それを見た藍華が呆れて質問した。

 

「あの2人っていつもあんなんなの?」

 

「えーと、まぁ……」

 

「うわー。グレモリー先輩の苦労が偲ばれるわぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて。今日の宿題終わりっと」

 

「ここは勉強部屋ではないのだけれど……」

 

「だって私たちやることないですし……」

 

 一樹、イリナ、白音は今日出された宿題を終えてノートを閉じるとリアスがジト目を向けてきた。

 それにイリナがバツが悪そうに笑って答える。

 基本悪魔業のない3人はここに居てもやることがないのだ。

 最初は一誠たち新人悪魔のフォローにも回っていたが今はその必要はない。

 精々旧校舎の掃除くらいだ。

 そこで一樹は気になって質問する。

 

「そう言えばさっき祐斗と進路の話になったんですけど2人はやっぱり大学部に?」

 

「えぇ。もちろんよ。実家からも大学卒業まで好きにしろと言質は取ってあるし。気ままにキャンパスライフを満喫するつもりよ。貴方たちも大学部に来るのでしょう?」

 

「はい、まぁ。行ける環境なら行っておいて損はないので。まだ1年以上先ですが」

 

 進路のことを話しているとずっと窓を見ている白音にイリナが話しかける。

 

「どうしたの、白音ちゃん?」

 

「雲行きが怪しいです。夜に雨が降るかも……」

 

「マジか?傘持ってきてねぇんだけどなぁ」

 

 困ったように頭を掻く一樹にリアスが笑う。

 

「傘なら旧校舎に何本か置いてあるから、好きに持って行っていいわよ」

 

「あ、どもっす」

 

 なんでもない日常の会話。

 これまでの目まぐるしさが嘘のように穏やかな時間。

 

 その尊い時間にヒビが入れるモノはすぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の悪魔業を終えて戻ってきた一誠たち。

 仕事内容の報告を終えて帰ろうとした矢先に白音の表情が強張った。

 

「どうしました?白音ちゃん」

 

「この学園に何かが入ってきました。少なくとも人間(ひと)じゃありません」

 

 先程の予告通り雨が降り始めた空を見て白音が呟くと部員全員の表情が強張る。

 

「どれくらいの規模か分かる?」

 

「おそらくひとりです。ですがこれは――――」

 

「どうしたの?」

 

「血の匂いがします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園内を白音の案内の元、その匂いを辿っていた。

 なぜか校門から少し中に入ったあとにほとんど動いていないらしい。

 そして、問題の人物を見て一誠たちは驚きの表情をした。

 

 倒れていたのは小さな子供だった。

 

 所々が切られた巫女服に金髪の髪。

 頭に動物の耳が生やされた、尻の部分にはふさふさの尻尾が見える。

 

 知っている。一誠たちは倒れている少女を知っていた。

 

 本来なら後ろに結わえられた髪は下ろされて痛みと寒さに堪えるように身を縮めているその少女を。

 

「九重?」

 

 一誠がその名を呟く。京都への修学旅行で知り合った狐の妖怪。御大将の娘である九重が倒れていた。

 

 

 平穏な時間は終わり、嵐が訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 


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