今回はコラボの第3弾。視点はシュウヤではなく、マキです。
一応凛音、歳那の方も用意してあるので、気長にお待ちいただけると。
また、今回は『Side_Yui』との2部構成となっております。
↓『Side_Yui』はこちらから
https://syosetu.org/novel/147165/5.html
では、本編をどうぞ!
凪優が———確か最凶技だった「
そしてどういうわけなのか、その闘技場で食事休憩をしていた。
敵のお膝元で何やってるのかなとか思った人いるかもしれないけど、正直私も何やってるのか知らない。とりあえずご飯食べてることしかわからない。
でも、お腹空いたら戦えないもんね。……アレ、
そんなことを考えながら、私は塩焼きにした鱒を口へと運んだ。
この鱒は、さっき凪優がおじさんと話していた時に釣った鱒だ。おじさん……。
そんな感傷に浸っている私に、ユイの考えが聞こえてきた……?
なんか、普段のユイからは想像できないようなこと考えてるみたいだけど……。
不安になった私は、暫くそちらは耳を傾けていた……であってるのかな?
どうやら本気のようだ。私はそっと、ユイの方を向いた。
「「「「「……」」」」」
どうやらユイは、私を含めた全員からの視線を浴びているみたい。
「……何なの、一体」
ユイは戸惑っていた。
「「「「「いや、珍しいこともあるもんだなぁ……と」」」」」
「何言ってんだコイツら」みたいな顔されちゃったよ。でも、それが普通の反応だよね。
私がユイの立場だったとしても、同じ反応すると思うもん。
「何が」
怪訝な顔をしたユイは尋ねてきた。
「「「「「ユイ(ヒメ)(姫神)(結衣ちゃん)(結衣さん)がそんなこと考えるなんて」」」」」
思った事を包み隠さず言ったところ、他の人達も同じことを考えていたらしく、ユイを除いた全員でハモった。
なんかユイの必死の弁明が聞こえて来る気がした。
気のせい……じゃ無いか。
「いや、だってアンタ、そんなこと一度もなかったじゃん」
……なんか凪優が言ってる。それ、火に油を注いで無い?
「ソロでの任務の時はマトモにやってるよ!? 失礼な」
今度はユイが凪優に反論してる。じゃあ、ソロの時以外は?
「あーそうだった、そうだった。メンゴメンゴ」
凪優は笑いながらそう返した。絶対火に油を注いでるよね。ワザとなんだよね、凪優?
そんなにユイのこと恨んでるわけ?
私はため息を一つついて、再び鱒を口へと運んだ。
相変わらずだなぁ、凪優は。でも、なんだかんだでこの2人は仲が良いし———凪優だけなんだけど……話していて楽しそう。
私はそっと、隣に座っているシュウ君へと視線を向けた。
シュウ君は、2挺の
「どうかしたの?」
「ん? ああ。さっきの戦闘で無理な使い方し過ぎたから、何処かおかしくなってないか調べてたんだ」
「色々と凄いことに使ってたもんね」
先の戦闘でのシュウ君を思い浮かべながら、私は言った。
「そういえば、さっきはありがとう」
「何がだ?」
シュウ君は首を傾げた。
「私の事、助けてくれたでしょ? 背後から来た機械人形を倒してくれたじゃん」
「そのことか。それなら別に礼を言われるようなことじゃ無いよ」
それに、とシュウ君は続けた。
「前に言っただろ? 『お前の背中は守る』って」
忘れもしない。ロンドンでの初めての
「そうだったね。それでも、ありがとう」
私は笑ってそう言った。
対するシュウ君は微笑んでくれた気がした。
……でも、なんか何処かから視線を感じるなぁ。なんかこう、嫉しそうな感じなんだよね。誰だろう?
そんな場面を断ち切るかの様に、1人の声が入ってきた。
「……ッ! ねぇ、ミナ」
突然、ユイが凪優を呼んだ。
「ん? どうしたのさ、ヒメ」
「感じるよ」
……感じる? 何を察知したのかな?
「マジか……」
意味が分かるらしい凪優は、険しい顔をした。
「……?」
私と同じく、何のことか分からないらしい歳那は、首を傾げていた。
恐らくだが、それは凪優とユイを除いた全員が思っていることのはず。
「どうかしたの、2人とも」
凛音が私達の内心を代弁するかの様に尋ねた。
「敵襲。しかもいっぱい」
ユイから返ってきた簡潔な答えに、私は驚いた。
「何人くらいなの、結衣」
「んーと、ざっと118人位かな」
凪優の質問にユイが答えた。118人……! 依頼書にあった記載通りだ。まさか一斉に襲ってくるなんて……思っても見なかったな。
「多いな。個々の強さはどれくらいなんだ、姫神」
今度は、私と同じ事を思ったらしいシュウ君がユイに尋ねた。
「まぁ、そんなに強くない。そこそこ強いのが18人。あとは雑魚だね」
「そうか。じゃあ、全員で突破の方が最善策だな……」
ユイの答えに、シュウ君は最善であろう戦術を提案した。
確かにこの数相手なら全員で戦った方が早いね。
「いや、私とシュウヤは先に進んだほうがいいと思う」
「……どうしてだ」
凪優は、シュウ君の案を否定した。対するシュウ君も疑問に思った様で、聞き返していた。
……というか凪優、いつからシュウ君の事呼び捨てにしてるの?
「だって、その奥に居るんだよ」
「『居る』……?」
ユイの言葉にシュウ君が首を傾げた。
「うん。今来る奴等よりもはるかに格上の奴が居る」
「……成程。その手練は私とシュウヤで対処したほうが良さそうね」
ユイの言葉に何かを納得したらしい凪優が、そう言った。
「大丈夫なのか? 相手の人数も多いが」
シュウ君、それは愚問だよ。
「大丈夫だって、シュウ君。私達がそんなに簡単に負けると思う?」
私だって、伊達にSランクじゃない。それに、他の人達だってそう。
「そうだよ。私達なら心配ないから」
私と同様に凛音が。
「シュウヤさん達は先に進んでください」
そして歳那も。みんな同じ気持ちなんだよ。
私達は、この程度には負けない。負けるわけがない。あまり自負し過ぎるのは良くないだろうけど、これは確かなこと。
それはシュウ君が———1番良く解ってくれてることのはず。
だからこそ、私たちを信じて欲しい。
「解った。ここは頼む」
シュウ君は信じてくれたらしく、この場を任せてくれた。
「不様に負けんなよ、結衣」
「誰がそんな負け方するとでも? そっちこそさっさと終わらせて来なよ、凪優」
「もとからそのつもりよ」
一方の凪優とユイも似た様な感じだ。ちょっと私達よりも荒い感じだけど。でも、それが2人らしい。
「凪優」
「ええ。行こう、シュウヤ」
シュウ君に呼ばれた凪優は、シュウ君と共に次の階層へと向かって行った。
ていうか、シュウ君も呼び捨てなのか……。後でじっくりと尋問して、理由を吐か……聞き出さねば。
それはそれとして……気をつけてね、2人とも。
2人の背中を見送り終わった辺りで、この部屋の扉が開いた。
そして幹部と思しき人間を含めた集団が、この階層へと雪崩れ込んできた。
「たった4人でこの数に挑むとか正気か、小娘達」
「お生憎、正気なんだよね。さっさと倒れなさい」
構成員の1人の言葉に、ユイが反論した。
「中々、上物ばっかりだな」
その言葉に私の中で何かが
「……サイテー」
現状自身の中で出てきた簡潔、且つ最大の嫌悪を表す言葉を口走った。
この人達は……私に……私達に対して、言ってはいけない事を言ったのかもしれない。
「なーボス、この娘達生け捕りにしてお持ち帰りにしてもイイっすよね?」
追加で言っちゃった……か。
……これは、
「……好きにしろ」
「よっしゃあ! 痛くしねぇから安心しな。嬢ちゃん達」
私はそっと殺気を高めた。久し振りだな。こんなに殺気を高めたの。
普段は、出すまでもないから仕方ないけどね。
「誰が安心なんてできるか。つか、とっとと消えろ」
凛音があそこまで口悪くなるのも久々に見た気がする。
あの状態に入ったって事は……あの人達はただじゃ済まないみたいだね。
「私達に大人しくお縄につかれなさい。さもなくば———」
歳那もそうなっちゃったか。これは終わりみたいだね。お相手さん。
「死んだ方がマシな状態にさせます」
という事は、精神的にイジメるのかな? いいと思うけど、程々にね。
まあ、私には止める権利はないから、相手がどうなろうと、歳那が相手をどうしようと関係のない事なんだけどね。
そう思っていると、1人の構成員がユイへと迫っていた。
きぃぃん、という音ともに、刃と刃が斬り結ばれた。
ユイが構成員の刃を受け止めた為だ。
そんなユイを尻目に、私は正面から向かってくる構成員3人へと目を向けた。
はぁ……本当、
私はグロックを1挺取り出すと、19発入っている弾のうち、1人に3発ずつ、計9発を発砲し、男達に当てた。
男達は、悶えながらその場に倒れた。やっぱり
私はグロックを仕舞うと、背面から『氷華』と『炎雨』を抜いた。
いつも思うけどこの刀達、私に恐ろしい程よく馴染む。
私は刀の切っ尖を地面の方向へ向け、着く手前ぐらいの位置で構えた。
そして、刀を引きずるような形で私は敵陣へと切り込む。
対する構成員達も、私を迎撃しに来た。
「———『
私は迎撃に来た構成員達を、下から振り上げた刀で斬りつけた。
そして、間髪入れずに刀を横に振って次の構成員へと刀を叩きむ。
これを峰打ちで、ほぼ無限に繰り返す。
摺廻は、私の家———つまり大岡家に伝わる技の1つ。
考案者は、かの有名な南町奉行所の名奉行、大岡越前こと大岡忠相と言われているこの技。
集団を引き摺り回す様にして相手取る技。本来なら一刀流で行われる技なのだが……これは私が二刀流ということでアレンジを加えたもの。
だがこの技、中々実戦で使われることはなかったらしく、明確な技の中身が伝わってはいない。でも、大まかな形は継承されている。
基本的には、低い位置からの斬撃を相手に喰らわせるという事がこの技の形らしい。
故に、今私のやっているものも摺廻になるらしい。
そして摺廻を、1人、また1人と、下段、中段、下段、中段を繰り返しながら切り捨てていく。
そんな中、
私はARから距離を取るために後退した。それを見た構成員達はニヤニヤと笑っていた。
……怖気付いたと勘違いしてるみたい。
ホント、イラつくな。
そんなことを思っていると、丁度ユイと
チラッとユイの方を見ると———結構派手にやってるみたい。
すると、ユイがこちらを向いてきた。
———なるほど、やるのね。それなら丁度いいし、私も付き合うわ。
私は刀を、自身の正面で静止させた。
そんな私と、後方のユイへと弾丸が飛来した。
だけど、私には当たらない。
私へと向かっていたARの弾は、刃に当たり切り裂かれてその数を2つへと増やした。
そして、2本の刀で裂けた2つの弾丸———則ち、4つに分かれた弾丸が、私の前でぶつかり合い、その軌道を変えて私から逸れる。
軽く刀の位置をずらし、次の弾も同様にして弾く。
この単純作業を繰り返し、自身へと飛来する弾丸を逸らしていく。
その間、軽くだけど軌道を弄って、ユイの方の弾を弾いたり、凛音と歳那の方の敵へと弾を流したりした。
今の一連の動作で、私達の周りは火花が散っていた。
シュウ君的に今の動作に名前をつけるなら———『
撃ってきた人達が、唖然としてるよ。
というかユイ、銃弾を見ながら弾くなんて凄いよ。私には到底真似できないね。
私が次弾に備えて構えを取ると、 構成員達のARが撃ち抜かれていった。
どうやら凛音と歳那が援護射撃をしてくれたらしい。
構成員達は、その事で再び唖然としていた。
私はその隙を見逃さず、相手へと急速接近し、再び峰打ちによる摺廻を行った。
相手を1人ずつ、確実に戦闘不能へと陥れていく。
ある程度の所で、私は武器をグロックへと持ち替えた。
途中、凛音と歳那とアイコンタクトを取りながら、斬って、撃ってを繰り返し、構成員を倒していった。
そんな感じで、束になってきた構成員100名を倒した。
で、問題なのが———
「———ほう、確かに言っただけのことはあるな」
ユイに強いって言われてた人達———幹部と思しき者達17名である。
「———漸くお出ましってわけですね」
凛音がそう言いながら、八相の構えをとった。
「まさかあの数を相手取れるとはな。思ってみなかったぜ」
「大分甘く見られてましたね」
幹部の言葉に答えた歳那は、凛音の隣で脇構をとった。
「———多分、知能指数が足りてなかったんだよ」
私は歳那にそう言いながら、グロックを両手に持ち、構えた。
「まあ、その通りかもしれないな」
幹部の1人はそう言った。
「……それって、部下のことを道具だとしか扱ってないってことだよね?」
私は自分の意見を率直に述べた。
「そういうことになるかもな」
悪びれる様子もなくそう言い切った。
「貴方達は、最低最悪だよ。最早、人ですらないよ」
凛音が静かに、そして重みを持った口調で言った。
「なんとでも言え。俺たちは本当のことしか言ってないんだからな」
「もう……」
私はそっと口を開いた。
「「「何も喋らなくていい(喋るな)(喋らないでください)」」」
私達の言葉が重なった。
やっぱり、私達3人の考えることはおんなじみたいだね。だからこそ、私達はチームを組めたのかもしれない。
私の目の前にいる凛音と歳那が飛び出した。
それをみた幹部達のうち、3人が凛音と歳那を迎え撃つ形で向かってきた。
私は空かさず右手のグロックの引き金を引いた。
パンパンパン! という3発の銃声の後、
これにより、その幹部は体勢を崩した。
残った2人を、凛音と歳那がそれぞれ斬り捨てる。
そのまま私達は進んでいく。
「……行かせるかッ!」
私が撃った幹部が通り過ぎようとした時、それを妨害しようと立ち上がった。
「———邪魔」
私はそう言い放ちながら、左手のグロックで追い討ちとしてさらに3発の9mm弾を撃ち込んだ。
幹部はその場に倒れ伏した。
幹部を気に留めることなく突き進む。
すると、目の前の幹部たちが一斉にIMI社製のマシンガン『UZI』を構えていた。
「———一斉放火、開始ッ!」
1人の幹部が叫ぶと同時に、9mm弾による弾丸の雨が私達に浴びせられる。
凛音と歳那は、刀を盾にしてなんとかやり過ごせているが、私はもろに食らってしまう。
「……ッ!」
弾丸を浴びせられ続けている私は、反射的にグロックを発砲した。
私の放ったグロックの弾は、弾幕をすり抜け床へ当たり跳弾した。
跳弾した弾は、幹部の何名かへと直撃した。
これにより僅かだが、掃射が止んだ。
その隙を逃さず、凛音と歳那が敵陣へと切り込んだ。
「天然理心流———『荒波』」
凛音はそう呟きながら、斜めに刀を振った後に、斬り返していた。この行動1回で、2人を同時に斬りつけていた。
「天然理心流———『
対する歳那は、横一文字に振るった刀で、纏めて幹部たちを斬りつけた。
私は体勢を立て直すと、走りながらグロックを相手へと撃ち込む。
残弾は左右ともに15発。1人につき5発ずつ撃ち、計6人を倒した。
「バ、バカな……!?」
私はグロックをレッグホルスターへ仕舞うと、背面の氷華と炎雨を抜き、動揺している最後の幹部へと斬りかかった。
「これで終わり———」
「舐めるなァ!」
幹部は、再装填を終えたUZIの引き金を引いた。
「遅いよ———『時雨』」
そう呟きながら、私は2本の刀の刃の部分を上下でそれぞれ向き合わせ、ちょうどハサミのようにして構え、銃口、幹部の順番に斬りつけた。
「……グフッ?!」
幹部は肩を抑えながらその場に倒れこんだ。
この『時雨』という技は、本来私の家に伝わっていた技『春雨』を私が二刀流用にアレンジしたもの。
そもそも『春雨』は本来一刀の技であり、上段と下段の構えがある技。私は、その上段と下段を二刀流で同時に行えるようにアレンジした。それが『時雨』。
私は刀を鞘に収めた。———終わったのかな。
凛音や歳那の方を見ると、2人も刀を鞘に収めていた。
ここは一件落着みたいだね。———あとは、ユイの方か。
ユイは……派手にやったみたい。
「終わったね……ユイ」
私はユイのそばに向かいながら、ユイに声をかけた。
「あ、マキ、凛音、歳那。そっちも終わったんだ」
「うん。今さっきね」
私はユイの言葉に返答した。
「他愛もなかったけどね」
「ええ。憂さ晴らしにもなりませんでしたが」
凛音と歳那もそういった———2人とも、そんなにあの流派の技が決められたのが嬉しいの? まあ、あれだけやればスッキリするよね。
「あはは……」
私は苦笑した。
本当のことはちょっといえないからね。
そんな時、突然———
「!?」
バンッ……! という音ともに、ユイが地面に膝をついた。
「ユイ!? 大丈夫!?」
私は即座にユイのそばへと駆け寄った。
「来ないで……! 私を置いて今スグここから逃げて」
しかし、ユイはそれを制止してきた。
「何馬鹿なこと言ってんの! 結衣がそんな状況なのに置いて逃げる事なんて出来ない!」
私はユイの制止を振り切った。
ユイの顔色を見ると……苦しそうだ。
何が起こっているの……?
状況を把握しきれていない私の前で、ユイは苦しそうに呟いた。
「顕現……翡翠」
ユイの呟きの後、ユイのそばに何かが実体化した。
一体……これはなんなの?
『それ』が実体化した直後、ユイは炎……いや、
「ォォォォォォォォォォォォォォォ」
そして、その焔が解けた時、ユイは人間とは思えない咆哮を上げ、私へと襲いかかってくる。
「……!」
私は慌てて氷華と炎雨を抜刀し、防御を行なったが、ユイの攻撃の重さは普段とは比べ物にならなく、そのままガードの上から吹き飛ばされた私は、壁に強く激突してしまう。
「カハッ……!」
「マキちゃん!」
「マキさん!」
凛音と歳那が私の下へと駆け寄ってきてくれた。
ダメ……今こっちにきたら!
私の視界には、既に2人の目の前にまで迫ってきているユイの姿が映った。
2人とも……逃げ……て!
その時、結衣が横から、何者かによって殴り飛ばされた。
「大丈夫、二人共?」
その人は、何事もなかったかのような雰囲気で、2人に声をかけた。
「は、はい……」
「貴女は一体……」
「そういう話は後にして。貴女達は茉稀ちゃんにコレを使って」
歳那の疑問を流した彼女は、光るなにかを歳那に渡した。
それを受け取った凛音と歳那は、私の方へと駆け寄ってきた。
一方向こう側では、体勢を立て直したらしいユイが、彼女へと標的を変えていた。
歳那が、その結晶のようなものを私にかざすと、眩い光を放ち、私の傷が治っていった。
「マキちゃん大丈夫!?」
「うん……ありがと……凛音、歳那」
私は、立ち上がり、加勢しようとした。
「マキさん、貴女はここで私と一緒にいてください。傷は癒えましたが危険です」
しかし、歳那に止められた。
「え……でも」
「大丈夫。私が行くから」
私の内心を悟ったのか、凛音はそういってくれた。
そして、覚悟すら感じられる勢いで、腰の日本刀を抜いた。
すると、日本刀の刀身が突如として光で覆われた。
見覚えがある……これは。
「これって……さっき、凪優がやってたのと同じ……」
「うん。何故出来たかは不明なんだけどね。でもこれだったら大丈夫な気がするの」
そういって私に微笑んだ。
「無茶……しないでよ?」
「解ってる」
凛音はそういって、こちらを標的に変えたらしいユイを迎え撃つために、走り出した。
そんな凛音を見送った私の意識は、徐々に遠のいていった。
どうやら、先程の衝撃が脳にダメージとして残ってしまったらしい。
「……?! マキさんッ———」
歳那の呼びかけを最後に、私の意識は途切れてしまった———
……誰?
今、私を呼んでいるのは。
『私だよ』
姿がない『ソレ』は、私の問いかけに応じる。
私になんの用なの? そもそも、あなたは誰なの?
『名乗るつもりはないが———敢えて言うなら、翡翠とやらの眷属を抑えようとしている奴に少し力を貸したもの、だな』
ユイと戦っている……凛音に力を貸したもの?
『そうだ。で、要件か』
そう……あなたの目的。
『伝言だ。手短に言おう。力が必要となれば、瑠璃色金を持つ者の側へ行け』
凪優の……?
『そうだ』
何故、それを。
『私は
じゃあ、なんで……。
『お前達が仮に死んだら、
待っ……て———
「———マキさん! ……マキさん!」
気がついた私の視界には、心配そうにしている歳那が映った。
「歳……那?」
「よかった、気がついたみたいですね」
……そうだ、凛音は。戦いはどうなったの?
「……ユイは?」
「ユイは逃げたよ」
そういったのは、ユイを殴り飛ばした女性。
「貴女は?」
「私は翡翠。ユイの相棒みたいなものさ」
相棒……?
「色金の眷属の?」
「そう。私は瑠璃色金の眷属」
……なるほどね。
「ユイは、なにがあったの?」
「恐らくだが、外部からの力により暴走させられたのだと思う」
暴走……。
「……とまあ、今こんな話をしても仕方がない。少し休もう」
「そうですね……」
私は若干重たい体を起こした。
「大丈夫ですか?」
「うん、もう平気だよ」
心配そうに視線を送ってくる歳那にそう告げ立ち上がった。
「どこに行くの?」
凛音に呼び止められた。
「連絡しなきゃでしょ? ちょっとシュウ君に連絡してくる」
「わかったわ。よろしくね」
「うん」
私は、3人から少し離れたところでインカムを使い、シュウ君へと連絡を入れた———
いやー、めちゃくちゃ遅くなりました。申し訳ない。
あと、凛音と歳那でも視点書かないとなんでなかなか進まないかもしれません……。
ひめさん、申し訳ないのですがまだまだかかりそうです。
こんな感じですが、次回も読んでいただけると幸いです。
では、読んでいただきありがとうございました。
次回もどうぞよろしくお願いします