僕にヒーローマカデミア   作:Athlon

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少し目を離したすきにお気に入り件数が1000件突破してました。

オイオイオイ死ぬわ俺(白目)


5話

時は少し進み、入学式の日がやってきた。

 

初めての学校、初めての学生生活の幕開けである。緊張?いや、してないけど今日はなんか心不全患ってる気がするわ。後腹痛が痛い。

 

あ、ちなみに合格に関しては問題なく。正直形無しの全科目詰め込み強化型スパルタ式講座の中身に比べればかなり優しい内容だった。実技に関しては言わずもがな。

 

窓から外を見る。太陽はまだ上ってきていないようだ。少し早起きしちゃったかな?

 

早いけど、眠る気分でもない。朝風呂入って早めに用意してニュース見よ…と思って、俺は体温の残るベッドから名残惜しくも身体を引きずりだして、眠気眼こすって自分の部屋から出て、リビングへと向かう。

 

「やあ」

「…」

 

リビングに変質者がいた。

 

否、リビングに、まだ太陽すら出ていないというのにシミ一つない白いスーツをぴしっと着こなした、頭を水玉模様に固めた、家に入れた記憶が一切ない不法侵入者がいた。

 

しかも新聞を手に、机の上にコーヒーを、椅子にもたれかかって足を組んで朝の優雅なひと時を過ごしてまでいた。

 

俺が怪訝な顔で出迎えられたことに気づいたのか、その変質者ーーーフロストエッジはポケットからさっと何かを取り出して俺に見せてきた。

 

合鍵だった。

 

「まあ、一応保護者を仰せつかっているのでね。これくらいは我慢してくれたまえ」

 

そういって鍵をポケットに戻すフロストエッジを、俺は文句も言えず眺めるだけして、諦めてため息をついた。

 

…牛乳飲も。

 

「それにしても、驚くくらい何もない場所だね。最低限の家具は確かに用意したけれど、渡したお金で何か買わなかったのかい?殺風景で生活感が無さ過ぎて、逆に落ち着かないのだがね」

 

「それと」とフロストエッジは続ける。俺は牛乳を冷蔵庫から取り出してコップに注いだ。

 

「キッチンを見せてもらったけれど、君は一体何を考えているんだい。即席食品ばかり、しかもラーメンマシマシと来たもんだ。最低でも女の子のとって良い食事ではない…やれやれ、少し目を離しただけでここまでの惨状…喜びたまえ、君は正真正銘形無し君の子どもだとも」

『それ絶対褒めてない』

「褒めたつもりはないのだがね」

 

フロストエッジは、こうして顔を合わせる度に小言ばかりいうのだ。嫌い。

 

これまでも入学関係やらなにやらで何度か顔を突き合わせたが、その度にこの態度だから何とも言えない。『君は不良の頂点にでも立つつもりかい?』だとか『ゲームばかりやってないで少しは勉強したらどうだい』だとか、ぐちぐちうるさい。お前は俺のおかんか。

 

「んー…」

「おっと、こらこら。玄関に向かって押さないでもらえるかね」

 

邪魔だから追い出そう。そう思って立たせてぐいぐい背中を押していると、ひょいと身体を持ち上げられた。

 

「今日は入学式なのだろう?なので少しは精が付くものをと思って朝食を作りに来たのだが、考えが甘かったことに気づかされたよ。君は放っておくと…うん、ダメだ。色々とね」

「んなー!」

「とりあえずお風呂に入ってきなさい。その内に朝食を作っておいてあげるから」

『うどんがあるから必要ない!』

 

嘘だ。本当は朝飯食べるつもりすらない。

 

しかしフロストエッジはため息を吐いてあきれ顔を作るのみ。どうやら退く気はないらしい。

 

「さっきラーメンディスられたの気にしてるのかい?問題は即席食品の種類じゃないんだけれども」

 

くっそ、即席食品なめてんじゃねえぞ。すぐに食べれて栄養満点、すごいんだぞ!

 

そんな俺の抵抗むなしく、俺はついにお風呂場に押し込まれる運びとなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

フロストエッジの作った朝食は…なんというか普通においしかった。どこぞの洋風レストランの朝食に普通に出てきてそうなラインナップだった。

 

物凄くおいしい男の手料理なんて誰得だよ。

 

「…ふむ、良く似合っているじゃないか」

 

馬子にも衣裳とでも言いそうな顔でフロストエッジは俺の姿を眺めた。

 

俺の今の格好は、普通に制服である。ミニスカートにブレザー。ソックスも履いている。

 

思えば前世も含めてスカートを履くのはこれが初めてだ。正直かなり落ち着かない。スカートがこんなに心もとないとは思わなかった。世の女子たちは冬もこんなものを履いているというのだから、本当に気が知れない。

 

ちなみに、俺の制服、なぜか結構ぶかぶか。袖なんて手が隠れるレベル。

 

普通にぴったしで用意してほしいといったんだけど、フロストエッジがどうせ成長するからと一回り大きな制服を用意しやがったのだ。お前は中学校に入学する娘に、「どうせ大きくなるんだから」とか言いながらぶかぶかな制服を買い与える母親か。

 

身長なんて12歳頃には完全に止まってるよこんちくしょう。

 

「なに、そんな顔をしなくても、数年後にはもっと大きくなっているとも」

『…根拠は?』

「子どもってそういうものじゃないか」

 

お前さては独身だな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そうこうしていると時間が来たので、俺は用意したカバンやらを持って、玄関でフロストエッジに見送られることとなった。

 

『フロストエッジはどうするの?』

「時間があるのでね。少し部屋を掃除していく事にするよ」

 

おかんか。

 

「それじゃ、いってらっしゃい」

『…いってきます』

 

んじゃ、行くか。雄英。

 

俺はまっすぐ家から飛び出したのだった。

 

 

 


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