僕にヒーローマカデミア   作:Athlon

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プロローグ

マカデミアナッツ、うめえ。

 

ボリボリ牧場にいる草を食む牛の如く口を動かしながら、俺は自分の家でテレビを見ていた。

 

テレビの内容はアニメ。最近ハマり気味の、僕のヒーローアカデミアというヒーロー物のアニメだ。

 

ヒーロー。憧れる単語だ。ヒーロー物だけに限らず、そういう勧善懲悪な物語は心が踊る。

 

中学、高校と公立学校を進んでいき、何をしたいわけでもないのに進路などという難解な選択を迫られる俺の人生に比べれば、ヒーローの在り方のなんと単純明快な事だろう。

 

悪がいて、正義が勝つと賞賛と金を貰える。うん、明快すぎて何というか不安になって来るレベルである。しかしヒロアカの世界では既に悪とは切っても切れない関係、恐らく一度でもヒーローになれれば安定して稼げるだろう。

 

「あー、ヒーローになりてー」

 

俺はマカデミアナッツを噛み砕きながらソファに崩れ倒れた。

 

無論今の発言は、ヒーローになる過程やらヴィランに対する脅威やらを完全に度外視した発言である。そもそも喧嘩とかした事ないこの人生、ヒーローなんて身体を張った仕事、多分現実にあったとしてもなれないんだろうけど。

 

まあそこはさ?個性やら何やらでフォローすれば微レ存行ける可能性がなきにしもあらず…。

 

「はあ…やめよう…虚しい…」

 

時計をチラッと見てみる。昼下がり、ぽかぽかとした日差しが心地いい。ゆったりとした時間の中横たわり、呆然と眠気に身を任すこの時間は嫌いじゃない。

 

「…んあ…?」

 

ふと、途絶えかけた意識の隙間の中、視界の端で、空中にヒビが割れて行くのを目にした。

 

んなところにガラスとかあったっけ…なんて見当外れな事を思いながら、俺はそのまま眠りについた。

 

まさかそれが、人生最後の睡眠になるとはつゆとも知らずに。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『…ーーぁ』

 

ふと耳を掠った、微かな声に俺は目を覚ました。

 

無意識のうちに耳をすませる。声は次第に明瞭になっていき、最後には1人の男の声が俺の耳に届いた。

 

『っべー、まじっべー。人殺しちゃったよー。っべー、っべーわこれまじっべー』

 

とても恐ろしい内容だった。人殺したのになんだそのふざけた態度。

 

『まさかインク落とした時の衝撃が偶然にも天文学的確率で世界に歪みを形成して多重次元屈折現象おこしてそれに偶然人間が巻き込まれるなんて予想だにしてなかったっべー』

 

たじゅ…何?今までおおよそ頭ん中空っぽだろとしか思えない口調だったのに、いきなり早口で難しい言葉をペラペラ喋り出した声の主にさしもの俺も反応せざるを得なかった。

 

というか俺は俺の部屋で寝ていたはずだ。声的に俺の知り合いじゃ無さそうだし、まさか泥棒の類か?と思い身体を動かすーーー

 

ーーー事が出来なかった。

 

まるで身体中を凍らせたみたいに動かない。っていうか指先の感覚もないし、ここで気がついたんだが俺は今現在息をしていないまであった。まぶた一つ動かせないのに、驚愕の極致とはまさにこの事だった。

 

『っべー、まじっべー。やっぱヒロアカ見ながら業務してたんが悪かったんかなー?いやー、でも、人間がインク落としたぐらいで死んじゃう脆弱な生き物とは流石に思えないじゃん?つまりこれって、わしは悪くないのでは…?』

 

いやその理屈はおかしい、と声を大にして言いたかった。

 

っていうか殺したのってもしかしなくても俺のことだよなこれ?話が見えないけど、このままだと不味いんじゃねこれ。

 

『ん?なんだこの人間、いっちょまえにわしと同じヒロアカ見とるじゃないか…むぅ、同好の士を殺してそのまんまというのもなぁ…っていうかこの事露見しちゃったら人間界不干渉の誓い破ることになっちまうし…人間一匹程度で5000柱は動き出すからなあいつら。わしの事どんくらい嫌いなんじゃっつーの』

 

こいつ今人間一匹って言ったか?

 

声の主のあまりのゲスさにドン引きしつつなんとか動こうとしていると、『んっ?』と声の主がこちらに意識を向けた気がした。

 

『なんじゃ!まだ魂がほんの少し残っとるじゃないか!おい、聞こえておるか?聞こえておったらわしの声に返事をするんじゃ』

 

話しかけられたので、返事をする…が、どうやら声は届いていないらしい。

 

『むーぅ、流石に弱りすぎとるな…これじゃ生き返らせるのも難しいかの。まあ良い、聞こえておる事を前提に話をするぞ』

 

『むおっふぉん!』とわざとらしく咳をして、そいつは切り出した。

 

『わしは主の世界を管理する者、まあ主らの言うところの神とかそもへんの存在かの。それでー、あー、なんじゃ…なんと言うか、不慮の事故というか、主は死んでしまったのじゃ』

 

な、なんだってー!?

 

俺は断固抗議した。フザケンナ、まだ学生だったんだぞ俺は!道程も捨ててないのに死ねるかよ!

 

しかし、俺の声は当然そいつに聞こえてはいない。

 

『そう、時はXX年、天界は核の炎に包まれた!血で血を洗うわしら神と悪魔共の戦いは苛烈を極め、その影響は主の生きる世界、下界にも影響を与えた…そう、何を隠そうーーーー主のことなのじゃよ』

 

更には死んだ原因を抹消しようとするまであった。っていうか馬鹿待てこら。お前さっきインク落とした衝撃でとか言ってなかった?何が神と悪魔の大戦争だよ。話捏造してんじゃねえよ。

 

『まあそういうわけでじゃ。お詫びも兼ねて主を生き返らせたいわけじゃが、まあなんだ、主を元いた世界に戻すのはな…ぁー、まあ、色々と問題があるので不可能っていうか、戻したらわしの首がとb…まあそう言う色々なサムシングが理由で生き返らせれんので、他の世界に転生してもらうこととした』

 

クビにされるのが嫌だからどこか遠い世界に隠すよ、だから許してね!…要はこういうことである。死ねッ!

 

『で、お主、ヒロアカ好きじゃったろう?』

 

はい?

 

『というわけで今からヒロアカの世界に転生してもらう。なあに、個性はわしがちゃんと良いのを見繕うから、安心して生まれ変わってこい』

 

いやちょお前待てこら…待って、ねえ待って!?

 

『というわけでいってらっさーい』

 

ーーーーこの神いつかぶん殴る。

 

俺の意識はその一言を最後に残して、またも消え去ったのだった。

 




主人公の個性いいのないっすかね(脳死)

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