normalと違い、ショットガンばりの酸噴射をしてくる巨大生物と戦っている設定でお読みください。
【結城・レンジャー1-2】
先程の戦闘の後、帰路に着く俺達は、ハンヴィーに揺られていた。
車窓から外を見る。空は橙色に染まっていた。夕日が直接目に入り、思わず目をつぶった。
車窓から見る景色は平和でしかなかった。3人家族とすれ違う。まだ幼い子供と若い夫婦が並んで歩いていた。この光景を見ると、先程までの戦闘が嘘のように思えてくる。だが、余韻に浸る俺達は現実に引き戻された。総合作戦指令本部からの通信だ。全部隊共通の通信回線で呼びかけが行われた。
田中司令《エリアJ13に展開中のレンジャー1-3からの救援要請だ。付近に展開中のレンジャーは救援に向え》
俺は葉山さんを見る。葉山さんは無言で頷くと、
葉山《こちらレンジャー1-2、我々が行きます》
田中司令《了解した。レンジャー1-2、現在の戦力は》
葉山《我々レンジャー1-2が4名。レンジャー1-1が2名。ストームチーム1名の計8名で行動中です》
普通なら、参加は望ましくない状態なのかもしれないが、これほどの緊急事態だ。1人でも戦闘可能員が入れば戦闘に参加しなければ守るべき市民が犠牲になる。
司令《了解した。レンジャー1-3、レンジャー1-2を援護に向かわせる。それまで持ちこたえろ!》
レンジャー1-3隊長《了解!はっ!こっちに来るぞ!撃てぇ!撃てぇー!》
俺達は予定していた帰路を変更し、レンジャー1-3の元へ急行した。
【レンジャー1-3】
1-3隊員「クリア!」
1-3隊長「良くやった。レンジャー1-2との合流まで一旦休息をとるぞ。合流後、散った生き残りを叩く」
1-3隊員「Yes,sir!」
1-3隊員「それにしても、酷いですね...」
1-3隊長「ああ...」
今自分達が踏んでいる地面は、血で真っ赤に染まり、レッドカーペットが引かれているようだ。
ビルの壁には飛散した血や壁面が溶け、溶けて折れた鉄骨がむき出しになっている。
鼻をつんざく刺激臭が辺りに漂っていた。
【レンジャー1-2、レンジャー1-3合流】
ハンヴィー及びギガンテスは市街地を進み、公園に展開した。
ハンヴィーから降りると、刺激臭が漂ってきた。
結城「うっ...なんだこの匂い...」
1-3隊長「レンジャー1-2、よく来てくれた」
葉山「ああ、ところで、見たところ救援は要らなかったようだが...」
1-3隊長「ああ、その事だが、数匹街の中で見逃してしまった巨大生物がいる」
1-3隊長「我々だけでは全て殲滅しきれないと判断した」
1-3隊長「それに...」
そうしてレンジャー1-3の隊長は道路に広がる血の池に目をやる。
つられて見ると、そこには、泡をたてて溶ける肉片(?)。人の原型など微塵も留めない肉片が転がっている。
まるで強酸をかけられたかのようにぼそぼそと荒れ、ただれていた。
結城は記憶を辿る。やがて、自分達が戦っていた奴らがしなかった動作が脳内で再生される。
そうだ、こいつらは強酸を体内で生成し、それを尻から噴射してくる。
8年前、当時現れた巨大生物は噛み付くのみである程度距離を取れれば危険度が低いとされていた。だがその説はすぐに瓦解することとなった。酸を吐く個体が現れ、その犠牲者の数は計り知れない。当時のEDFは、最先端の強度を誇っていた次世代ボディアーマーを簡単に溶かされ、酷く苦しめられた。近年、人類は度重なる研究の結果、およそ酸に耐えることの出来る耐久性を実現したアーマーを開発。EDFに採用されている。
だが、前大戦より強固となり、戦術を知った巨大生物が現れたのだ。これからの戦いで被る被害は計り知れないだろう。
そんなことを考えていると、どこからか悲鳴が聞こえた。
声のする方を振り返ると多数の市民が巨大生物に襲われていた。
いきなりの出現に呆気に取られるが、すぐに戦闘態勢を整え、突撃の準備に取り掛かる。
1-2隊員「巨大生物だ!」
1-3隊員「やっぱり隠れていやがったか!」
1-3隊員「襲われてるぞ!」
1-3隊長「撃て!市民を守れ!」
隊員達「「「Yes,sir!」」」
葉山「前進ーっ!」
1-3隊員「おおおぉぉぉぉぉぉ!」
叫び、ギガンテスを先頭に突撃を開始する。馴れ合わず静寂を貫くストームチームもそれに続く。
市民を襲うのに夢中な巨大生物に、ギガンテスの榴弾と小銃掃射が襲いかかる。目の前では阿鼻叫喚の戦場となっていた。
守れなかった悲しみを巨大生物への憎悪に変える。
市民狩りに飽きたのか、今度はこちらに対して酸を飛ばしてくる。
数匹から集中砲火を食らったギガンテスが爆散し、搭乗員の焼け焦げた肌が巨大生物の中に消えていった。
1-3隊員「食らった!酸を食らったー!うわぁぁぁぁぁ!」
1-2隊員「熱いぃ!身体が溶ける!」
1-3隊員「やられた!酸を食らった!衛生兵!」
1-2隊員「銃身が変形した!何でも溶かしやがって!」
あちこちで悲鳴が聞こえる。
ギガンテスも大破し、残るは俺達歩兵部隊だけだ。
不意に、空を仰ぎみる。
すると、結城達から見て後方から、両翼型の爆撃機が姿を現し、置き土産を残していく。無誘導爆弾が巨大生物の群れに殺到し、巨大生物を一網打尽にする。あれは戦術爆撃機カロンだ。
1-3隊員「空軍だ!」
それから2機のカロンが頭上を通過し、巨大生物に空爆を浴びせる。
カロンパイロット《空爆完了。地上部隊、生きてるか?》
突然の飛来に戸惑い、周囲を見回し、飛来を招いたとされるエアレイダー隊員を探すが見つけられず、巨大生物の生き残りに思考を戻す。
少数となった巨大生物に対し、レンジャーは反撃を開始した。
田中司令《状況を報告しろ!》
本部から通信が入り立ち止まり1-3の隊長が応答する。
1-3隊長《新たな巨大生物です!市民が襲われています!》
田中司令《巨大生物を攻撃。市民を救え!》
1-3隊長《了解!》
葉山「行くぞ!生き残った敵を掃討する!」
結城「Yes,sir!」
そして、再度進軍を開始する。
目視できる生き残りは少数。先程の空爆で大半を木っ端微塵にしたようであった。
辺りは空爆によって倒壊したビルの残骸と炎の海。巨大生物だった肉塊がごろごろとそこかしこに転がっている。
進軍中、ある男の声が共通回線で流れる。
そのいかにも研究者の様な話し方と大げさに言うと「嗄声(させい)」を持つ男性の名はオハラ。オハラ博士はフォーリナーテクノロジーの権威であり、今のEDFの組織図と訓練内容の多様化は彼のお陰でもあった。
オハラ博士は語る。
《あーあー、私はフォーリナーの研究者オハラだ。兵士諸君にアドバイスしたい。死んだ巨大生物を調査した結果...》
その内容は、巨大生物の進化を告げるものだった。
そしていよいよ巨大生物の元に到達したレンジャーは、近い個体へ射撃を開始した。耳をつんざく銃声が鳴り交う中、他の場所に展開していた部隊の叫びや奮戦の様子が聞こえてくる。
1-6隊員《こちら、レンジャー1-6!データと違います!巨大生物は7年前より強靭で凶暴です!我々だけでは手に負えません!》
田中司令《レンジャー1-6、巨大生物と戦う訓練を積んできたはずだ。踏みとどまれ!レンジャー2-1を応援に行かせた。戦力を整え、敵を押し返せ!》
1-8隊員《こちらレンジャー1-8、救援部隊はどうなってる!?》
2-1隊員《こちらレンジャー2-1、巨大生物と遭遇!戦闘開始!》
田中司令《レンジャー1-9がそちらに向かっている!それまで持ちこたえろ!》
2-2隊員《レンジャー2-2、このままでは全滅です!はっ!?酸がくる!》
2-3隊員《こちらレンジャー2-3!巨大生物と交戦中!ウイングダイバーの援護を要請します!》
ウイングダイバーとは、フォーリナーテクノロジーを応用して作られた精鋭部隊。適正があるのか女性隊員のみで、飛行ユニットを駆使し戦場を飛ぶ姿は「翼の戦姫」と称され、男性隊員達の中では妙に人気のある兵科だ。
8年前、レンジャーに属していた女性隊員達の殆どがウイングダイバーへ転属となった。のだが、今もレンジャーに残留したWACも少なからず存在する。
2-1隊員《なんて鋭い牙だ!》
他の場所でも、戦況はかんばしくないらしい。
1-6隊員《こちらレンジャー1-6!奴らは人間を軽々と持ち上げて......うわあぁぁぁぁぁぁぁ》
1-7隊員《こちらレンジャー1-7、周囲を確保しました。おい!まだいるぞ!どこから出てきやがった!》
1-8隊員《レンジャー1-8、1-9と合流、戦闘再開!ダダダダダダダダッ!ぐあっ!酸を食らった!助けてぇ!》
6-1隊員《こちらレンジャー6-1、ウイングダイバーの援軍を!》
田中司令《ウイングダイバーの到着には時間がかかる。持ちこたえろ!市民を守らねばならない》
味方の悲鳴が飛び交い、音割れを起こす中、
無線では"ウイングダイバー"という単語が度々口にされていた。
そして、レンジャー達が敵を殲滅し、装備の点検を行っていた頃、オハラ博士から通信が入る。
《ウイングダイバーはまだなのか!どれほど奴らが進化していようと、飛ぶことが出来ない以上、空中からの攻撃で殲滅できる。ウイングダイバーさえ到着すれば、勝負は決する》
どうやらウイングダイバーの戦闘への参加が遅れているらしい。
突如日本中が戦場と化したのだ。遭遇戦になっているに違いない。
周囲の安全を確保し、開始地点に戻ったレンジャー達はハンヴィーに乗り、今度こそ基地を目指し帰路についた。