プロローグ02 不穏な朝
「ハッ!?」
相当うなされていたようだった。
俺は勢いよく腰を曲げて起きた。額や鼻頭に汗をかき、全身が悪寒を感じていた。顎から大粒の汗が滴る。
「夢...だったのか...?」
あれが現実であれば間違いなく俺はこの世にいなかったであろう。だが現に生きているのだ。
「外の空気でも吸いに行くか。」
気分転換にでもと屋上へ向かうため立ち上がると、悪寒が抜けず足がもたついたが、何とか壁を伝うようにして屋上に上がると、屋上に設置されている椅子に腰掛け景色を眺める。
「平和だなぁ...あの夢が何か悪いことの前触れでなければいいのだけどな..。」
と、フラグにでもなりそうなセリフを吐く頃には悪寒も抜け、落ち着きを取り戻していた。
目の前には小高い山と森が広がっており、山道をレンジャー隊員達が掛け声と共に走っていた。
俺は自然の匂いに鼻孔をくすぐられ、ぼーっと景色を眺めていたが、共にあの夢が気になっていた。
「さて、食堂にでも行くか」
簡単に自己紹介を済ませておこうと思う。
俺は
適当に定食を食べ、お腹を満たすと今日も訓練に身を投じる。この8年でEDFはずいぶんと力を増した。様々な兵科の隊員達がそれぞれの訓練メニューをこなしている。俺は軽く走り込んだ後館内の演習場に入り手続きを済ませると、ランプの光が激しく回転し警告音と共に窓に防火シャッターが降ろされ部屋が薄暗くなった。教官がスタートの合図を下すとクリアブルーのホログラムで巨大な蟻(?)が現れ始め、一瞬で部屋が埋め尽くされる。銃弾を浴びせると撃破判定が成される。ホログラムも負けじと攻撃を行ってくるが、ホログラムで展開された遮蔽物に身を隠し、瞬く間に最後の一匹の撃破判定が成された。
教官が言う。
教官「オールクリア。やはり彼は素晴らしいですね」
傍らにいた男がそれに答えた。
隊長「ええ、彼は8年前の地獄をみて、生き抜いた戦士ですから」
結城「勿体無いお言葉です隊長。...葉山さん」
隊長の名は
そんな時館内アナウンスが流れた。
田中本部長《ベース1全職員に通達。緊急事態発生。繰り返す、緊急事態発生。レンジャー各隊は、出動命令を待て》
田中本部長の声だ。なにやら緊張した面持ちのようである。
田中本部長は前大戦より総合作戦指令本部にて本部長を務め、また有事の際は司令官として今日に至るまでもEDFの舵を執っている。
しかし、出動だと?
訓練所を出て空を仰ぎ見るが、平和そのものの晴天だった。
結城「何かが起こったのでしょうか」
葉山「さあな、食堂のテレビが近い。食堂に向かうぞ。なにか分かるかもしれん」
結城「了解」
そうして、食堂に戻ると、なにやら騒がしく、天井に吊るされたテレビを食堂にいた全員、厨房の方々までもが神妙な顔を見つめていた。俺も葉山さんも同じようにテレビに目を向ける。
すると、そこにはニュースが流れていた。
タイトルは、
『巨大生物出現か!?目撃情報相次ぐ』
俺の頭に、先程の夢がフラッシュバックした。頭を抑え、膝をつく俺を、葉山さんが心配する眼差しで手を貸してくれた。
すると、
戦術士官《レンジャー1、応答願います。直ちに装備を整え、現地へ向かってください。ブリーフィングは車内で行います》
女性の心地よい低音の声で威厳のある声が肩のトランシーバーから聴こえた。前大戦で本部付きオペレーターを務めて以降、戦術士官を務めてる沢見戦術士官の声だった。
葉山「了解……?」
葉山さんを筆頭に、レンジャー1の隊員達はAF-14を解体、点検する。葉山さんはショットガンを持っていくようだ。準備完了と共に素早くハンヴィーに乗り込む。前大戦より都市迷彩への変更や小型化をされたEDFの主力戦車、ギガンテスがハンヴィーを挟む形で展開していた。
隊員全員が各車両に乗り込んだのを確認すると、車内でのブリーフィングが始める。
戦術士官《緊急出動です。詳細は不明。7年前に絶滅したはずの巨大生物を目撃したものがいるとの情報があります。有り得ない話ですが、とにかく現地へ向かってください》
その言葉に、その場にいた誰もが言葉を失った。