地球防衛軍 〜地球の守護戦士達〜   作:きぬたにすけ

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原作のミッション数と合わせたい気持ちがあり、閑話の頻度が多い本作です。
あと一部やっつけ感が半端ない件。


27.5話 2つの組織

【市街地】

 高機動車が駆けていく。陸上自衛隊は援軍の無き孤独な撤退戦を強いられていた。

 軽装甲機動車は使い物にならなくなり、装甲の薄い車両での逃走を余儀なくされたが、銃架が辛うじて溶けておらず、味方の死体から借り受けた5.56mm機関銃MINIMIを据え付けて、銃口が橙色に染まるのもお構いなしに射撃し続ける。しかし、弾薬は既に底をついていた。

 

武内「5.56mm機関銃MINIMI(ミニミ)の弾、もうありません! 」

分隊長「89式自動小銃(ハチキュウ)で応戦せよ! よく狙えよトップガン!」

 

 悲鳴を上げる部下を励ます。だが分隊長自身も焦りを隠すことが出来ずにいた。

 焦燥感を煽るように、(ほろ)が酸に溶けていく。

 

分隊長「皆、この大通りを進んだ先に救援部隊が展開しているらしい! それまでの辛抱だ! 残った弾全部くれてやれッ!」

部下たち「「「はい!」」」

 

 励ます分隊長に快活な返事をすると、すぐに視線は追手の巨大生物に戻った。

 残り少ない弾薬を一発ずつ撃ち込み、巨大生物の足止めを狙う。

 運よく前脚関節部にヒットし、一匹がその場に崩れ落ちた。口元がつい綻ぶが、素早く次の獲物を捉える。

 チェイスを繰り広げる最中、運転する藤山が何かを見つけた。

 

藤山「分隊長! 前方に人影あり! 飛翔しています!」

分隊長「あれは……来たか! EDFだ! 射撃中止!」

武内「射撃中止!」

 

 無数の人影が颯爽と舞い上がり、こちらに銃口を、否、こちらの後ろに槍先を向けた。そして頭上を通過すると、武内たちを追う巨大生物へ攻撃を開始する。

 赤色や青色のまばゆい刹那の光の矢が巨大生物を射抜く。

 武内は射撃中止の命令を聞き、89式自動小銃を抱きこんだ。視線はEDFに釘付けだ。

 

高野「ウイングダイバー7、撤退中の自衛隊車両と遭遇した。……了解、掩護す――

武内「光学兵器……か。まるで別世界の――」

 

 言い切る前に二者の距離が離れる。

 高野は走り去る高機動車を後目にレーザーランスのトリガーを引いた。殺到するレーザーが巨大生物を焼いていく。

 巨大生物群は標的を彼女達ウイングダイバーへと変え、武内たちを追う個体はいなくなった。

 酸噴射を華麗に避け、煌びやかな光が巨大生物を蹂躙する。

 その姿に、武内は驚き、そして希望を見たのだった。

 

 直進の先に手を振る救援部隊を見つけると、急に力が抜けたようで、崩れるようにシートに腰かけると脱力感と眠気が襲ってきた。

 

 

 

【同時刻、桐川航空基地>滑走路】

 

 同時刻、桐川航空基地の滑走路では、これから出撃するとある部隊が演説を行っていた。年の近いリーダーと部下のパイロット達がなにやら盛り上がっているようだ。

 

夜須野(やすの)「よし、みんな! 俺たちが今回の作戦の要であり、これから偉業を成し遂げる部隊である! 我々の名は!」

 

パイロット達「「「ミッドナイト!」」」

 

夜須野「そうだ! 宵闇に紛れて敵を屠る空のスナイパー。われらは!」

 

パイロット達「「「ミッドナイト!」」」

 

夜須野「新型貫通弾グラインドバスターを積んだこの機体を乗りこなすのは!」

 

全員「「「「われら、ミッドナイト隊!!!!!」」」」

 

夜須野「イィィヤッホォォォォォ!! よぉし、その意気だ! やつらに目にものみせてやるぞ!」

 

矢吹「夜須野リーダー、いつにもましてテンションたけぇじゃねえか」

 

夜須野「ああ! なんたって大役を任されたんだからな! われ等の働きで戦局は大きく変わる。それを肝に銘じておけ!」

 

 彼らは桐川航空基地所属の新設部隊。コールサインは「ミッドナイト」である。

 今回の大規模な作戦において、飛来した敵輸送船団を迎撃するために設立された部隊なのだ。

 武装は新型貫通弾「グラインドバスター」。以前四足歩行要塞(よつあしほこうようさい)の撃破に投入された試作型がいよいよ実戦配備となり、夜須野らパイロット達は出撃要請を待つ段階で落ち着いていられず、夜須野にいたっては好きなロックを鳴らし気持ちをさらに高めているのだった。

 

 

 

【同時刻、桐川航空基地>射撃場】

 

 慌ただしい桐川航空基地では、もう一つ、今後の趨勢を決める場があった。

 基地内の射撃場。日本国の防衛を司る人材が集められている。

 

 多田防衛大臣をはじめとした幕僚監部を前に、連合地球軍日本支部/戦略情報部長官、大沢 千晴(おおさわ ちはる)。そして特戦歩兵装備開発主任、沢城 亜李(さわしろ あり)が説明を行い、レンジャー8の滝山らが実演を行っている。

 テーブルの上には、AF-14アサルトライフルをはじめとしたEDFの武器が並べられていた。

 

 普段は白衣を着ていたり、タンクトップ姿になっていた沢城は、着慣れないスカートスーツに少々落ち着かない様子である。

 反対に大沢は大人の女性の威儀を感じさせる佇まいでパンツスーツに身を包んでいる。淡々と装備品の説明を行っていた。

 

沢城「コホン……いずれも我々特戦歩兵装備開発班が改修を行い、現在EDF陸戦部隊に配備されている同モデルよりも高いスペックを会得しました」

多田大臣「ふむ……」

沢城「では、実演を。レンジャー8、射撃開始してくだしゃ……さい!」

大沢「プフッ」

 

 沢城は多田防衛大臣らの後ろに隠れて親友の動揺を大いに楽しんでいる大沢に目で「後で覚えてなさいよ」と伝えた。

 幸い多田達はAF-14やAF-17アサルトライフルを構える滝山達に意識を集中していたため、気付いていなかったようである。

 

滝山「分かりました。総員射撃用意。撃て!」

隊員「「了解!」」

 

 滝山の合図の直後に断続的な発砲音。

 射線の先には的が設置されていたが、最初の一発で大部分が欠け、さらに宙に舞う破片を捉えて木っ端微塵にしていく。

 その破壊力に、次々と感嘆の声が漏れた。

 

多田大臣「なんという破壊力だ……」

 

大沢「多田防衛大臣、我々はこちらの自動小銃一つとっても従来の性能を凌駕する闘力を誇っています。今回の制式採用は、我々だけではなく、自衛隊にとっても、とても有意義な場であると確信しています」

 

多田大臣「そのようですな」

 

 興味深そうにEDFの銃火器を見定める多田防衛大臣。

 大沢は手元のバインダーに目を落とす。

 そこには今回自衛隊特殊作戦群に制式採用されることになるEDFの銃火器がまとめられていた。

 以下、銃火器の名称等が記載されている。

 

・AF-14をPA-11

・AF-17をT1ストーク

・MMF42スナイパーライフルをKFF51

・バッファローG1ショットガンをスローターE20

・スティングレイロケットランチャーST2をグラントM32として第1中隊を中心に配備予定。

 

 以上、5種の銃火器を計100丁調達する。

 

 宇宙戦争が始まった日本国において、すでに89式自動小銃の代替品を国産で調達するのは現実的ではない。20式の開発が2017年に頓挫し、終戦後も停滞している間に、連合地球軍(EDF)が国内外の軍需産業を台頭する事になった要因もある。EDFの装備は世界各国が共同開発したものであるため、国産よりは安価で調達可能なのだ。

 

多田大臣「最後に……戦闘服だが……これは素晴らしいな」

沢城「はい。EDFのパワーアシストスーツ技術をそちらの要求スペックに調節した戦闘服になります」

 

 多田防衛大臣と沢城の前には、迷彩柄にデザインが再考され、よりスタイリッシュになった戦闘服*1が飾られていた。

 

大沢「そちらの説明は私から。現在EDFで制式採用されているパワーアシストスーツは、着用者の身体能力を引き上げ、姿勢矯正機能の付与や、歩行・駆け足時の瞬発力をもたらします。また、肩・肘・膝のサポーターによって様々な行動、作業の疲労軽減を実現。また、銃火器の携帯の面でも恩恵をもたらし、射撃中の反動等に臆することなくある程度の迅速な行動を可能にします」

 

多田大臣「ほう……」

 

大沢「素早い巨大生物と対峙したとき、最も兵士の命が危険に晒される場面は白兵戦に突入することです。ましてや射撃中は行動が制限されている中で、敵の攻撃を避ける術はありません。EDFは前大戦よりこの状況の打開に尽力してきました。そしてついに開発されたのが現在のパワーアシストスーツになります」

 

多田大臣「EDFはこのアーマーをはじめとして装備の軽量化がどの国よりも進んでいるように見受けられる。そうか、このアシストスーツの恩恵が……」

 

 多田防衛大臣が肘のサポーターを撫でてみると、スプリングの感触が返ってくる。驚く程に優しい感触で。

 

 多田防衛大臣は元陸上自衛官だった。それ故に、このパワーアシストスーツを巡る問題には人一倍の思い入れがあった。

 前大戦において、巨大生物の酸噴出攻撃を防ぐ、または軽微な損傷に抑える技術は無く、自衛隊は苦戦を強いられた。当時の戦闘服が見るも無残に溶けていき、着用者の耳をつんざく悲鳴が木霊する戦場。

 当時もパワーアシストスーツやパワードスーツを投入する案が議論されたが、フォーリナーの猛攻に孤立していく国々の惨状と投入資金不足が決定的となり頓挫。しまいには民間の作業用パワードスーツを転用したが、戦闘より兵站用として見いだされてしまい、依然として最前線は殉職率の上昇に歯止めが利かない状態だった。

 しかし、そんな絶望的な状況の中、光明が差すことになる。

 「PAギア計画」と呼ばれる、民間のパワードスーツを戦闘用に改造した計画で、敵の機械兵器に貯蓄されていた「エナジージェム」*2をエネルギーとして稼働させたパワードスーツを着用した者は超人的な身体能力を得ることが出来るという代物だった。

 実戦では目覚ましい戦果をあげたが、既に数を用意する余力の無い自衛隊は第1空挺団など精鋭部隊のみに配備し各地に派遣した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――だが、

 

 大戦中期、マザーシップが日本に飛来した際に実施した撃墜作戦で部隊は文字通り全滅。マザーシップの砲撃はパワードスーツの開発に関わった人や建物全てを薙ぎ払い、「PAギア」はロストテクノロジーとなってしまった。投入された過剰な資金等、諸問題を抱えた計画であったことも災いし、計画は再度凍結。その後自衛隊は従来の戦力での続行を余儀なくされたのだ。現在の科学技術であれば再建も不可能ではないが、旧世代となった内蔵システム、装備重量等、見合う価値の無い事が、計画凍結を決定的にしていた。

 殉職した部隊の中に旧知の仲である親友の名が刻まれていたことで、多田は後方職種に志願を決意。しかし退官後、紆余曲折を経て入閣。現防衛大臣として、対攻撃的地球外文明体(フォーリナー)に関しては徹底抗戦の意思を示している。

 

 

 その後も様々な銃火器の実演を経て、多田防衛大臣一行は防衛省への帰途についた。

 射撃場には、胸をなでおろす沢城と笑い半分に謝罪する大沢だけが残っていた。

 

大沢「ねえごめんなさいって。無視しないでよ亜李」

沢城「あぁー早くラボに帰りたいわ。……さわちーが今度奢ってくれるなら許してあげる」

大沢「はいはい、分かったわよ。どうせお食事行くならさわみーも呼びましょうか」

沢城「今は作戦中で指令本部を離れられないんじゃないの? あのお店のパンケーキ持っていって労をねぎらいにいきましょ。最近よくチェックしてたみたいだし」

 

 

 

【作戦指令本部】

 

 作戦指令本部では、来る大規模作戦への布石が行われていた。

 沢見裕子(さわみゆうこ)戦術士官もまた、作戦行動の指揮を執っていたが、

 

沢見戦術士官「!?」

 

 突如寒気を感じ、気丈な振る舞いに綻びが生じる。

 

田中司令「大丈夫か?」

 

沢見戦術士官「ええ、ええ問題ありません。続けてください」

 

田中司令「うむ。では――」

 

沢見戦術士官(この悪寒は何かしら……何か、他人にプライベートを暴かれたような感覚……気のせい? そういえば千晴と亜李、今日は大丈夫だったかしら。まあ二人とも常識はあるし、凛として応対するのには慣れているでしょう……)

 

 5分ほど席を外すと断り、沢見は二人に電話をかけようとスマホの画面に目を移した。途中ネットの検索エンジンを起動したその履歴には、最上部から「アシッドベーカリー 限定パンケーキ 〇〇」が複数にわたって並んでいた。

*1
全身が深緑色に染められ、暗めの迷彩で覆われている。また、肩パッドが甲冑のごとく突き出ており、ビジュアルもよく特殊作戦群の隊員達、そして軍事オタクなどの層に好評である。モデルは「地球防衛軍5」のレンジャー、アサルトライフルNPCの服。カッコいい。(作者談)

*2
恐らく生命維持装置の燃料のようなものであると結論付けられた。EDFでは光学兵器をはじめとした様々な兵器に転用されている。




今回は地球防衛軍5とEDF:IRのネタを少し仕込んでみました。無理やりねじ込んだの間違い

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