地球防衛軍 〜地球の守護戦士達〜   作:きぬたにすけ

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19話 防御スクリーン突破作戦

【上津川、市街地】

 

間宮「こちらフェンサー。防御スクリーンは目の前だ!」

間宮達フェンサー1-1は市街地を進んでいる。目的は何か。

間宮は目の前の光景に思わず「綺麗だ...」と呟く。

 

町には神々しく煌めく光のドームが点在していた。

田中司令《敵の新型歩行メカを、シールドベアラーと呼称する。防御スクリーンを突破し、シールドベアラーを破壊しろ!》

間宮《了解!》

 

間宮達フェンサー隊は、専用のパワーフレームに身を包んでいる。さらに、パワーフレームを用いないと使用出来ない程の重量を持ったブラストホール・スピアという武器を装備。見るからに近距離戦闘を意識した様相だ。

 

元々フェンサーという兵科及びパワーフレームは市街地戦における超近距離戦闘を想定して設立された兵科で、今回の作戦において防御スクリーン内部から攻撃を加えるという戦術案に最も適した兵科であると情報本部から決定が下る。

かくして間宮達フェンサー隊は防御スクリーンを越えようとしていた。

田中司令《なお、現在世界中でシールドベアラーが確認されているが、世界中誰一人防御スクリーンを越えて撃破した報告はない。我々がその先例となるのだ!》

オハラ《物体が巨大であれば、たとえゆっくり動いていても、その運動エネルギーによって防御スクリーンの影響を受ける。だが人間の大きさなら、歩いて通過することができるはずだ》

 

間宮達は鈍色の雲に覆われた市街地を進む。装備が、パワーフレームの脚がガチャガチャと音を立て、今まで誰も成し遂げえなかったものが目の前にある恐怖に打ち勝とうと決意を固く持って。

やがて手を伸ばすと届く距離まで近づいた。半透明のスクリーンの先には四足の白銀の装置。

間宮「防御スクリーンに突入する!行くぞ!」

隊員達「「うおおおおおおおお」」

隊員達の喚声が重なり、士気が高いのを感じ、胸が熱くなる。

 

そして、フェンサー1-1は防御スクリーンを越えた先例となった。

作戦終了後、間宮は防御スクリーンを超えた瞬間を話す。

まるで壁や膜を感じず、喚声に押されて進んだ時にはすでに越えていたと。

 

間宮「防御スクリーンを越えた人類は俺たちだけだ!快挙だぞ!」

隊員達「「うおおおおおーー!」」

間宮「シールドベアラーを討てー!」

フェンサー1-1は敵の侵入にも関わらず佇み続けるシールドベアラーを囲む。

隊員全員が配置についたことを確認すると、間宮はさらに指示をだす。攻撃開始の合図だ。

その合図を皮切りに、全方位から太い杭が射出。ガラスを割ったかのようにシールドベアラーの装甲が破壊される。

 

やっと危機を察知したのか怠慢さ、否、余裕を解いたシールドベアラーは彼らから逃れようと歩き出す。その動きは鈍く、尚も超近距離専用武器ブラストホールスピアの射程圏内であった。

刹那、間宮の放った一撃は散々荒らされた装甲にトドメをさし、脆くなった接合部などが崩れ、シールドベアラーの身体は部位ごとにバラバラになる。それに合わせて防御スクリーン内部から見る風景が明瞭になった。それは、

沢見戦術士官《防御スクリーン消失!成功です!》

と。人類が、歩兵部隊がいかなる兵器でも打ち破るのが不可能だったフォーリナーの守りをつき崩したことを指していた。

フェンサー1-1、そして作戦指令本部の面々の口に綻びが生まれる。

それは士気をよりあげる結果となる。

間宮「シールドベアラーの破壊に成功!」

田中司令《よし、この戦法は有効だ!人類は防御スクリーンを敗れるぞ!》

隊員「シールドベアラーがいるぞ!」

1人の隊員が次の目標とするシールドベアラーを発見する。

田中司令《フェンサー、シールドベアラーに接近し攻撃しろ!》

間宮《了解ッ!》

間宮「お前ら、行くぞぉ!」

隊員達「「了解!!」」

間宮「EDF!EDF!」

隊員達「「いーでぃーえーふ!」」

オハラ《2017年の戦いでフォーリナーに防御スクリーン技術があることはわかっていた。マザーシップが広範囲に壁を展開したことは予想外だったが、局地戦に投入されるのは想定済みだ。フェンサーの装備はこのときのためにある!》

1人の隊員がハミングする。まるでEDFの優勢を決定付けるBGMを。

間宮「突入!」

フォーリナーの堅牢な守りを続々と通過していく。

間宮「攻撃しろ!」

隊員達「「了解!」」

都合2回目となるシールドベアラーへの攻撃。

2機目のシールドベアラーは蜘蛛の移動を彷彿とさせるようにカサカサと動く。すぐに間宮達の射程外まで逃げおおせる。

さらに足を止めることはなく、間宮達は距離を離されていった。

間宮「早い!」

隊員「シールドベアラーが移動してるぞ」

隊員「逃げ出しやがった!」

隊員「逃がすかよぉ!」

間宮《こちらフェンサー、シールドベアラーが移動を開始。現在追跡中!だがシールドベアラーの移動速度が思いのほか早い!》

田中司令《必ず破壊しろ!》

隊員「しかし、シールドベアラーに武装はないようだ! 楽勝だな!」

隊員「防御スクリーンを歩いて通過するとは、予想外だったろうぜ!」

隊員「俺たちの誤算は、やつの逃げ足の速さだな!」

隊員「シールドベアラーめ、どこに隠れやがった!」

隊員「俺たちを恐れて、とんずらしやがったか?」

 

程なくしてお気にの場所を見つけたのか、

逃したシールドベアラーが立ち止まっているのを確認。直線で10メートルの距離に捉える。

再度シールドベアラーは歩き出した。間宮は「くそぅ...」と漏らす。

だが突如間宮達の目の前を何かが通り過ぎた。

間宮達と色違いのパワーフレーム、スラスターの炎が残像をつくる。ストームチーム所属のフェンサー、宮藤であった。瞬く間にシールドベアラーに肉薄した彼は重い連撃をシールドベアラーに加え、

ものの数秒でシールドベアラーを破壊してしまった。

間宮「ストームチーム!協力感謝する」

宮藤「ああ」

宮藤は次の目標へとスラスターをふかして行った。

間宮「よし!次の目標を探す!」

隊員「上津川小学校の校庭に3機!この内2機はヘクトルです!」

間宮「そうか...よし、行くぞ!」

隊員達「「おおおおぉーー!」」

やがてシールドベアラーを目の前に見据えた。その時である。

沢見戦術士官《緊急警告。空軍が爆撃を開始します。敵から離れてください》

 

数分後、

沢見戦術士官《空爆始まります》

田中司令《防御スクリーンは破れない。空軍は意地になっているようだな。空爆は要請したときだけにしてほしいものだ》

 

程なくして戦術爆撃機カロンが飛来した。

無誘導爆弾を1列に投下していく。辺りの建物を焦土に返しながらシールドベアラーを爆煙に包んだ。

 

 

【上空、戦術爆撃機カロン】

 

ボマー1《This is Bomber one.cleared attack .Cleared attack》

ボマー1パイロットは、先の戦いでシールドベアラーの妨害に遭い、殉職した友人への弔いと、怒りに燃えていたが、管制塔の方には気づかれないよう平然と振舞っていた。

ボマー1「くらいやがれ!」

やがて投下地点に差し掛かり、機体下部が開く。そして、爆弾を投下していった。

 

 

【上津川、フェンサー1-1】

 

沢見戦術士官《空爆完了。シールドベアラー、健在です》

田中司令《空爆は終わった!地上部隊、攻撃を続けろ!シールドベアラーを倒せるのは我々しかいない!》

間宮「聞いたな!我々が道を切り開く!」

隊員達「「うおおおおおおおお!」」

雄叫びを上げながら進むフェンサー1-1。やがてシールドベアラーと待機状態のヘクトルが現れる。

田中司令《フェンサー1-2、その先の河川敷にシールドベアラーがいる。破壊しろ!》

フェンサー1-2隊長《了解しました!》

他の区域でも戦闘が行われている。あちらも善戦しているようだ。

田中司令《防御スクリーンを破ることができなければ、人類に勝ち目はない。この戦いに勝たなければ、いつか人類はフォーリナーに屈することになる。絶対に勝て!》

間宮《了解!》

隊員《ヘクトルの攻撃は防御スクリーンを超えてくるぞ!》

隊員《こっちの弾だけ止めるのかよぉ!》

隊員《攻撃が防がれる! これじゃ手も足も出ないぞ!》

隊員《向こうは撃ってくる! 一方的だ!》

隊長《こちらフェンサー1-3!防御スクリーンの妨害によって部隊の半数以上がやられた!退却する!》

隊長《こちらフェンサー1-4!一方的な砲撃がッ!は!?いかん、避けろぉ!あああああああああ》

状況が芳しくない所もあるようだ。

間宮「奴らを恐れるな!気を引き締めろ」

隊員「了解!」

隊員「りょ...了解ぃ!」

隊員「了解」

隊員「了解!」

間宮「シールド、構えぇぇ!」

起動したヘクトルの砲撃をフェンサー独自の装備の一つであるシールドから発生する斥力フィールドで防ぐ。攻撃をやめたヘクトル。それを見た間宮達はヘクトルを見上げる程に接近する。そして突く。杭はヘクトルの脚部、股に大きな穴を空け、仰向けに倒れたヘクトルはそれ以降起きてこれなくなった。弱点である胴体内部に攻撃が届くようなったのを間宮達は見逃さない。

そしてどこからともなく現れたストームチーム・フェンサーがいとも簡単に2機目を破壊する。

宮藤「同行する」

間宮「心強い!」

間宮達は現在地からすぐの河川敷に目をやる。

シールドベアラーがヘクトル2機を守っていた。ヘクトルは待機状態。

刹那、宮藤が動いた。シールドベアラーに突っ込むや、ヘクトル2機を起動、防御スクリーンの外へとおびき出した。間宮達がシールドベアラーに集中出来るよう誘導したのだ。心中で感謝を述べ、シールドベアラーに突撃を行おうとした時である。

沢見戦術士官《緊急警告。空爆が始まります。シールドベアラーから離れてください》

どうしても面目躍如をはかりたいのか、それとも単に焦りを感じているのか。

田中司令《空軍め......無駄と知りながら空爆を続ける気か!》

間宮《空爆は無駄です! 我々がやります!》

沢見戦術士官《中止を要請しますか?》

田中司令《空軍にもメンツがある。やらせてやれ》

沢見戦術士官《爆撃が始まります》

宮藤の頭上を火の玉がカーテンの如く降り注ぐ。

 

 

【上空、戦術爆撃機カロン3機】

 

片桐司令官《無駄だと分かっている!だがこれでは散っていった若いパイロット達に顔向けできない!我々の面目にも関わることだ!ボマー各機、シールドベアラーを攻撃せよ!》

 

ボマー5《突入!》

ボマー6《こちらボマー6、レーダー上に敵ヘクトル2、どうする?》

ボマー5《せめてもの土産だ!一網打尽にしてやれ!》

ボマー7《GO!》

ボマー1と同じく空軍としてのプライド、そして仲間への弔いに燃えていた。

 

 

【上津川、フェンサー1-1、ストームチーム】

 

沢見戦術士官《シールドベラー、無傷です》

田中司令《総員、攻撃を続行せよ! シールドベアラーを破壊しろ!》

オハラ《驚くべきことに、フォーリナー側の攻撃は防御スクリーンを通過する。防御スクリーンは通過しようとする物体が、自分が発射したものかどうかを検知し動作を変えているのだ。なんという科学力だ......!》

宮藤が間宮の元に戻る。

間宮「大丈夫か!?」

宮藤の居た場所は焦土と化しており、動悸が激しかったが、

宮藤「味方の空爆で死ぬのかと冷や冷やした」

と軽口を叩いていた。

 

フェンサー1-2隊長《こちらフェンサー1-2!現在シールドベアラーを追跡中だ!》

田中司令《了解した。シールドベアラーの進行方向に、フェンサー1-1とストームチームがいる。合流しろ!》

フェンサー1-2隊長「了解!」

間宮「了解しました」

すでに目の前であった。

フェンサー1-2隊長「力を貸してくれ!」

間宮「ああ!」

沢見戦術士官《シールドベアラーの進行方向に、ヘクトルを確認》

間宮《こちらフェンサー!ヘクトルを視認!》

オハラ《いかん。シールドベアラーはヘクトルと合流するつもりだ!》

オハラ《防御スクリーンを超えられるのならシールドベアラー自体は恐るるに足らない。しかしひとたびほかの兵器の護衛役となれば......!》

オハラ《シールドベアラーはヘクトルの護衛役として機能するマシンに違いない》

本部《ヘクトルと合流する前に、シールドベアラーを破壊しろ!》

間宮達は400mほど先の小丘にヘクトル3機を確認する。内2機は砲撃型のようだ。腕を高々と上げ、弧を描く光弾が間宮たちのもとへ殺到。着弾時の風圧をシールドで受ける。

間宮「ストームチームはシールドベアラーを追ってくれ!ヘクトルは我々が相手する」

宮藤「分かった。じゃあな!」

宮藤はスラスターを蒸し、ヘクトルの元へと急ぐシールドベアラーを追う。

その際に発生した弱いバックブラストに足を止められるも、間宮達も行動を再開した。

 

オハラ《単機では無力だが護衛役となったシールドベアラーは恐ろしい!》

確かに、シールドベアラーの存在は他のどの兵器よりも恐ろしい。武装は持たないものの、それを些細な問題にしか感じさせない絶対防御を誇るこの兵器は、犠牲のレート。つまりフォーリナーという攻撃的地球外文明体と人類の文明の差を更に狂わし、脅かす存在である。

 

間宮達は駆け足でヘクトルのもとへ向かう。道中、何発も砲撃が撃ち込まれ、その都度シールドでカバーするも、衝撃に押され、数名が吹き飛ばされる。命に別状はないものの、部隊は散らされてしまう。中には吹き飛び先が悪く、気を失った隊員も見受けられた。

 

二回目の至近距離での着弾。今度は二名の隊員が帰らぬものとなった。吹き飛ばされた遺体は民家の石垣に強く体を打ち付けもたれ掛かり、コンクリートに強く頭を打ち付けたもう片方の遺体はそのコンクリートにベッタリと血痕を付ける。パワーフレームの強度に負け、コンクリートにひびが入る。空いたひび割れに血液が流れ込み、満たされる。

 

こうもあっさり人は死んでしまうのかと思うと人類の小ささが悪寒となって押し寄せてきた。彼らの死はこの戦いに勝利してから手厚くやろう。そう決めた。

間宮「振り返るな!進めぇ!」

隊員「EDF! EDFッ!」

その隊員の言葉は涙混じりだった。だがこの戦いに勝利しなければならないという強い決意がこもっていた。

 

沢見戦術士官《シールドベアラーを破壊!》

 

間宮「攻撃しろ!」

1機、また1機と倒れていく機械兵器。そして最後の1機がその活動を終えた。

 

かくして、『防御スクリーン突破作戦』はEDFの勝利で終わりを告げたのだった。

 

田中司令《フェンサー、よくやった!》

周辺の巨大生物の調査に回っていた本原達も間宮たちが勝利を掴む瞬間を固唾を飲んで見守っていた。口々に勝利を喜ぶ。

本原「本当にやりやがった!」

隊員「あいつらは英雄だ!」

隊員「防御スクリーンは破れる! 人類は勝てるぞ!」

隊員「フォーリナーはもう無敵じゃないんだ!」

続々と歓声が上がる。

田中司令《ついにフォーリナーの守りを突き崩した。人類の反撃を始めようか!》

 

シールドベアラーを破った。という情報はすぐに世界中を駆け巡り、世界中で撃破報告がなされるようになる。

 

 

【数分前、本原隊】

 

本原《こちらレンジャー5-2。巣穴への出入り口と思われるトンネルを発見》

司令所《よくやった。報告をまとめ、すぐに本部に報告する》

 

本原「やはり前の巣穴に新たな巨大生物が住み着いている......由々しき事態だ」

 

 


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