地球防衛軍 〜地球の守護戦士達〜   作:きぬたにすけ

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今回は本編よりオリジナル展開が長ーーくなってしまった...
まあ後に関わる部分なので大目に見て下さい。
m(_ _)m


17話 谷に潜む影『上津川救出共同作戦 前編』

暗雲に包まれ、カラスが騒ぎ立てる市街地。数時間前までのどかだったその地域の屋外には既に人の気配は無く、我が物顔で出歩くのは妖しい姿の侵略者のみである。

 

町から離れた臨時司令所では陸上自衛隊のトラックが並び、仮設施設、テントが築かれ食料班による調理が行われている。

兵士達の中には自衛隊の戦闘服以外の面子があった。

臨時司令所及び避難場所となったその場所を警護するのはEDF JAPAN。第1師団第1特戦歩兵連隊の第3特戦歩兵中隊、レンジャー5、フェンサー1の隊員達である。

彼らは2024年に起こった地震災害でEDF JAPANの部隊として被災地に初めて派遣された部隊で、それ以降この中隊の主任務は災害派遣とされている。

 

ラジオ音声(緊急報道です。本日午前11時頃、砂津谷市上津川区上空にフォーリナーの輸送船団が飛来。輸送船団は蜘蛛型巨大生物を投下し、陥落までものの数分だったとのことです。なお、町内には未だ市民が取り残されているとの情報もあり、陸上自衛隊とEDF JAPANは共同で救出作戦を計画中とのことです。繰り返しますー...)

 

車内ラジオを切り、ハンヴィーからEDFの戦闘服に身を包んだ集団が降り立つ。

本原隊長!と1人の隊員が呼んだ。

本原と呼ばれたその男は、隊員に返事を返すとハンヴィーのドアに上津谷区の地図を広げ、ブリーフィングを始める。

紙面上に点在する赤く囲まれた建物を指でなぞった。

本原「南東のトンネルからハンヴィーで市街地に進入する。そこからはポイントAへ5-2と共に前進。ポイントAに着いたら市民の護衛を5-2に任せ、我々はポイントBへ向かう」

本原「これらのポイントには市民がいる。無駄に戦闘を開始して作戦エリアを掻き乱すことは避けねばならない。巨大生物は音に敏感。近くを通る時は装備の音に気をつけろ。射撃音なんてもってのほかだ」

本原「よし、そろそろ開始時刻になる。いいな?」

 

そう言うと現場は慌ただしくなり、レンジャー隊員はハンヴィーへ急ぐ。エンジンが唸り出すハンヴィーに続くように自衛隊のトラックの車列が形成されていった。

 

 

【山岳地帯、自動車道】

 

田中司令《総員戦闘開始、フォーリナーの輸送船を撃墜せよ。なお、さらに輸送船が2隻確認されている。午前に市街地を陥落させた輸送船だ。万一に備え、撃墜の準備をしておけ》

 

隊員「フォーリナーの輸送船団だ!」

梶原「あの橋を、確保しろ!」

山岳地帯に展開した梶原隊レンジャー4-1とストーム4、精鋭レンジャーの隼人の目の前には悠々と浮かぶ輸送船があった。

兵士たちの頭上に1隻、大きな鉄橋を介して対岸の上空に1隻。

2隻同時に下部ハッチが開く。

内部の転送装置は禍々しく光っていた。

転送装置から蜘蛛型巨大生物が姿を現す。

 

隼人は頭上から降ってくる蜘蛛型巨大生物を処理し、対岸から迫る個体にはライサンダースナイパーライフルで敵の射程外から攻撃した。

 

投下された個体を殲滅した頃、無線に動きが起こる。

 

スカウト1-4《こちらスカウト1-4。フォーリナーの輸送船団を発見!》

スカウト1-4《低空を飛行している。このままでは下から攻撃できない!...輸送船の進路を確認、谷間の上空を通過するはずだ!》

 

隼人「墜ちろ!」

転送装置に向けてスティングレイランチャーを撃ち込み、1隻が空中で大爆発を起こした。

2隻目の輸送船は健在。蜘蛛型巨大生物を投下する。

だがハッチが投下を止め閉じようとする瞬間、僅かな隙間を抜けてライサンダースナイパーライフルの弾丸が転送装置に穴を空けた。

煙がもうもうとし始めた輸送船は最後の抵抗とばかりに蜘蛛型巨大生物をさらに追加する。だが地に降り立った個体はまもなく梶原隊の小銃掃射に為す術もなく息絶えていくのだった。

 

【市街地】

 

本原「こちら救出チーム、市街地に入った」

臨時司令所《ドローンカメラに捉えた。作戦を開始せよ》

本原「了解」

本原たちはAF-14を構え直し、進軍を開始する。だが通信を終了したばかりの臨時司令所から再度通信が入ってきた。

臨時司令所《両チーム、進軍を中止されたし。...進路上に蜘蛛型巨大生物多数。進路を変更せよ》

民家の影に隠れ様子を伺うと、進路上にあった交差点を蜘蛛型巨大生物数体が横断した。その内の一体が本原たちの隠れる民家を横切り、本原は平静を保とうと口を手で覆った。

それから蜘蛛型巨大生物の横断を見送り、進軍を再開する。だが当初の進路が塞がれてしまったため、家々の合間をぬってポイントAへ向かう旨を地図を小さく広げて隊員に伝えた。

 

慎重に壁を背にしながら進み、市街地の中心部にある『JATY』という中規模ショッピングセンター、本作戦でのポイントAにたどり着く。更に周囲に気を配りながら正面入口に進むと、自動ドアが作動した。

 

本原「こちら救出チーム、市民を確認した」

中へ進み、1階の食品販売のテナントに近づくと、市民が顔を出した。レジカウンターの店員のようだ。

店員「ああ、良かった!助けに来てくれたんですね!」

と言いながら近づいてくる。それを見た隊員の一人が迷惑そうな顔をしながら外に目を向けた。蜘蛛型巨大生物は反応してないようだった。

 

店員の声が聞こえたらしく、続々と様々なテナントから避難していた市民が近づいてくる。

数十名の塊ができ、それぞれから安心したような声がでてくる。

隊員「ちょ...皆さん静かに」

と言いかけた隊員を止め、本原は状況を探る。

本原「他に避難してきた者は?」

店員「これで全員です」

本原「ふぅむ...これだけの人数で移動するとなると...いや、やはり我々からも人員を割くか」

中島「本原、当初の予定どおり、ここの市民の誘導は我々5-2任せてくれ。大丈夫さ」

本原「そうだな。よし、我々は先を急ぐぞ」

隊員「了解」

隊員「了解です」

隊員「はい」

本原《こちらチームA、ポイントBに向かいます!》

臨時司令所《了解した》

 

少しの情報交換を終え、5-1の面々はポイントBへ向かうために自動ドアをくぐろうとした。

その時である。

本原「なっ!」

咄嗟に口を手で抑えた。

自動ドアが本原達を検知する距離に入る前に見ることとなった目の前の光景に足を止め、本原は途端に動悸が激しくなる。

正面入口の前に広がる大きな交差点に、蜘蛛型巨大生物が移動してきたのだ。

蜘蛛型巨大生物は本原たちに背を向けている。

本原「正面からはだめだ...裏口から出よう」

隊員「ですが、この建物の一般の出入り口はここだけです」

本原「そうか...ん?」

本原「そういえば、市民の中にここのスタッフは何人くらいだった?」

隊員「制服を見た限り6名ほどでしたね」

本原「その中に非常階段への扉の鍵を持ってる人が居るかもしれない。戻ってみよう」

蜘蛛型巨大生物の視界に入らない内にと後ずさり、5-2と市民の下へ戻る。状況を説明すると、管理者と名乗る男性が裏口の鍵を渡してくれた。

中島「裏口からか...なおさら一度にこの人数をってわけにもいかんな」

本原「先程確認したところ、よほどの事態が起こらぬ限り自衛隊の便は待ち続けるそうだ」

男性「ありましたー。どうぞ」

本原「有難うございます」

男性「非常階段への扉は2階のスイングドアの向こうにあります。とりあえずそこまでご案内します」

隊員「懐かしいなぁ...昔落し物を受け取りにいった時以来だ」

2階のスイングドアを開き、裏口の扉に差し掛かるとドアノブに鍵を差し込む。扉に窓はついておらず、目の前で出くわす可能性もあるためAF-14を二名の隊員に構えさせスタンバイさせる。

そして、静かな空間に「カチャリ」と音が響いた。同行していた管理者の男性の手のひらに鍵を乗せると礼を述べ、本原はドアノブに手をかけた。

本原「準備はいいな?いくぞ...」

下唇を弱く噛みながら、静かに開けると、曇り空が本原たちを迎えた。幸い蜘蛛型巨大生物の姿はなかった。

ほっと安堵のため息をつくと外へと歩みを進める。階段を降り部下達に振り向くと、次の目標への確認を行った。

本原「よし、レーダーには進路上に蜘蛛型巨大生物の姿はない。今の内に行くぞ」

隊員「「はい」」

隊員達からの小さい返事に頷き返すと、深呼吸を行いトリガーに指をかけ直した。

 

数分後、順調に建物の壁へ壁へと渡った本原達はポイントBである上津川マンションにたどり着いた。上津川マンションは中規模のマンションが4棟、四角形に連なるマンション。本原達は手分けしてまだ部屋に残っている市民の元へ向かうことに方針を決め、2人ずつのペアを編成した。本原は第3号棟へ向かうことになり、最上階の部屋から順にインターホンを押していく。それから3階に下るまでの住民の反応は救出部隊に感謝を述べる者、事件発生当時は横になっていて本原の説明によって状況を把握する者など様々だった。本原は時間を指定し、脱出の準備を見届けることなく次の部屋へと急ぐ。

 

3階の301号室。本原は3階で最後の部屋に着いた。インターホンを押すと、若い夫婦と幼児が出迎えてくれた。玄関へ上がり状況を説明する。その時だった。

 

 

パンッ!...キシャァァァァ!

 

突如銃声と甲高い悲鳴が響いた。

突然の出来事と曇天をつんざく音に女性が耳を塞いでしゃがみ込む。

本原「何があった!」

その後すぐに階段を駆け上がる音が聞こえ、外を確認する。

すると4階に上がる階段に足をかけていた部下が振り返り、必死の形相で聞いてきた。彼も状況が掴めてないようだった。

隊員「隊長!何が起こったんですか!?」

本原「分からん!」

本原《こちら本原。皆無事か!》

隊員《はい!》

隊員《こちらも無事です!》

隊員《無事です!》

隊員《無事です!今の銃声はどこから!》

本原《遠くからだ...中島達が接敵したのだろう》

 

中島《こちら中島!すまない、敵に見つかった!気が動転し……押さないでくれ! お前ら、ここを通すんじゃ―》

中島《こちらチームB!現在市民を守りながら回収地点まで後退中!》

 

臨時司令所《こちら臨時司令所。作戦をプランBに変更、蜘蛛型巨大生物を掃討する。現地の部隊は現状の戦力で応戦せよ。市民を守れ!》

中島《了解!》

本原《了解!》

臨時司令所《増援の到着まで、敵を足止めせよ》

隊員(自)《こちら輸送班。救出チームの到着まで待つ!》

本原《我々はそちらに迎えない位置にいる!幸い身を隠すための建物は確保した。チームBが到着したら連れてきた市民を乗せてすぐに離脱するんだ!》

隊員(自)《分かった。死ぬなよ!》

 

本原《こちら本原、各員部屋の中に匿ってもらえ。我々は増援の到着を待つ》

隊員「了解!」

隊員《了解》

隊員《了解》

隊員《了解》

隊員《了解!》

 

 

【数分後、回収地点】

 

隊員(自)「乗せろ、急げ!」

中島「やつらに攻撃の隙を与えるな!撃ち続けろ!」

隊員「おら!怪物どもこっちだ!」

とハンヴィーの銃座に乗った隊員が制圧射撃を行い自らにヘイトを向けさせようとする。

隊員「発進してくれ!引き連れられるだけ引き連れていく!」

隊員「分かったよ!」

運転席の隊員も自暴自棄になりアクセルを力強く踏み込んだ。

走り去る捕食対象を追いかけるため、蜘蛛型巨大生物は中島たちに背を向ける。

隊員(自)「収容完了!離脱する!」

中島「よし!これからは攻守交替、我々のターンだ!」

隊員《うわああああああああ》

その悲鳴は、ハンヴィーに乗った隊員のものだった。

中島《なにがあった!》

隊員《蜘蛛型巨大生物の糸がタイヤに絡んで横転!私は飛ばされる前に脱出したものの、運転席のあいつの安否は不明!ああ!ハンヴィーから煙がぁ!この野郎!》

隊員《助けてください!糸が武装を溶かして...あああああああああ!》

中島《応答しろ!おい!...クソッ》

部下の断末魔の後、爆炎と轟音が辺りに響き渡った。

勇敢にも蜘蛛型巨大生物の脅威から市民を守った隊員たちは爆発に焼かれ、奴らに捕食され、この世を去っただろう。

 

数分後、中島隊後方のトンネルから走行音が徐々に聞こえ出す。暗い空間からヘッドライトの明かりが明瞭になり、急ブレーキが踏まれた。

トラックから増援部隊が続々と降りていく。

レンジャー 5-3隊長《作戦エリアに到着。戦闘を開始します!》

フェンサー1-1隊長《こちらフェンサー。我々も到着した》

地面に降り立つと同時にレンジャーは射撃を開始し、フェンサーはパワーフレームが携帯を可能にしたブラストホールスピアと呼ばれる射出型の槍とシールドを構えて蜘蛛型巨大生物の懐に入っていく。

?《こちらストーム5。戦闘に参加する》

中島は肉声のした方向を向く。灰色の装甲は光沢を得ており周囲の景色が映り込んでいた。

 

そこには、フェンサー1の隊員ではない1人のフェンサーが構えていた。

 

中島「ストームチーム!」

臨時司令所《ストームチームが到着した。彼に続け!》

本原《よし!こちら救出チームA、脱出の準備を進める!》

ストーム5と名乗ったフェンサーは蜘蛛型巨大生物の群に突撃を敢行した。

 

【山岳地帯 隼人、梶原隊】

 

田中司令《敵輸送船は谷間の上空を通過する。谷間に潜み、輸送船を待ち構えろ。上空を通過する時がチャンスだ。下からの攻撃で、輸送船を破壊するんだ!》

 

隼人《了解!》

梶原《了解!》

 

橋の上で休息をとっていた隼人達は姿を現しゆっくりとこちらに向かって進む輸送船を見ていた。

梶原「ストームチーム、輸送船は任せた。代わりに身の安全は保証しよう」

と言って梶原は弾倉を装填する。

隼人「分かった。任せておけ!」

隼人「そこの坂から谷底に降りられそうだ」

梶原「よし、ストームチームに続け!」

 

数分後、谷底の川に足を浸らせながらも先手をとった隼人達は迅速な処理に追われていた。

下部ハッチが開ききる前に転送装置を疲弊させ、スティングレイランチャーによって完全に破壊する。

 

だが1隻を相手取る間にもう1隻が蜘蛛型巨大生物を投下。

攻撃を加える前にハッチを閉じられてしまう。

しかし隼人達はそれに臆することなく隼人を囲むように梶原達が展開、蜘蛛型巨大生物の攻撃を許さない。

隼人は蜘蛛型巨大生物には手を加えず、照準は輸送船へと向いていた。

 

再度ハッチが開くと同時に隼人は人差し指に力を込め、トリガーを引く。次の瞬間、輸送船は爆散した。

爆風が向かい風となって隼人達に襲いかかる。巻き上げられた川の水に呑み込まれ、攻撃の手が止んでしまうが腰のホルスターに手をかけていた梶原はすぐにハンドガンを抜く。1マガジン丸ごとを正面から受け最後の蜘蛛型巨大生物が絶命した。

 

田中司令《作戦成功だ。よくやった》

沢見戦術士官《司令、ポスト1司令部から報告です》

田中司令《例の件か》

沢見戦術士官《はい。ヘクトルの進路上に機甲部隊が展開。まもなく迎撃作戦が始まります》

田中司令《30機以上のベガルタM2が出ているはずだ。凄まじい戦いになるぞ!》

鷺本オペレーター《ストームチーム、任務お疲れ様でした。...!》

鷺本オペレーター《司令、空軍も既に発進態勢を整えたとのことです。空爆も始まります!》

 

 

【海岸近くの平原】

 

桐島司令《ポスト1司令部よりζリーダー。配備状況を報告せよ》

ζ1《こちらゼータリーダー。ζ(ゼータ)η(エータ)共に戦闘態勢が整いました。あとはθ(シータ)隊を待つのみです》

桐島司令《了解した。...!》

桐島司令《ポスト1よりベガルタ隊。海岸で停止していたヘクトルの編隊が侵攻を開始した。到達予想時刻はー...》


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