地球防衛軍 〜地球の守護戦士達〜   作:きぬたにすけ

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関東ばかり描写していたので、一新して四国は香川県(エリアJ-37)と瀬戸大橋に舞台を移しました。(移したと言ってもとりあえず当話のみですが)
関東だけが戦場じゃない!
そして自衛隊視点を少し濃くしてみました。


12話 魔の降る日

アナウンス《フォーリナーの輸送船団が日本本土に向けて移動中です。それに伴い避難警報が発令されました。市民の皆様は速やかに避難を開始してください》

 

街には数台のパトカーなどのパトランプが光り鳴り響き、モノレール線路の柱に取り付けられた拡声器からアナウンスが繰り返し鳴っていた。道路は多数の避難民で埋め尽くされ、避難誘導の警官はパトカーのボンネットに立った状態で声掛けなどを行っている。

人混みの中で空を見上げると、UH-1J 多用途ヘリコプターが数機飛んでいた。中でも低空を飛行している機体はドアが開かれ隊員が89式5.56mm小銃を地上に向けていた。巨大生物対策なのだろう。こちらに向けて銃口を向けてるのは印象が悪く感じたが、避難に気を集中した。

 

 

【瀬戸大橋、自衛隊】

 

瀬戸中央自動車道では香川県善通寺駐屯地、第15普通科連隊の中から4分隊が事態にあたっていた。側面を向くように12.7mm重機関銃M2を備え付けた軽装甲機動車を停め、襲撃に備えていたが、空は青空にちょうど良く雲がかかる晴れで、夏の日差しがその場にある全ての人や物を照らす。

隊員(自)「良い天気ですねー。日差しが眩しい」

隊員(自)「暑い...こんな日に出動とは.....」

空を見上げながらボーッとする隊員達に叱責する。

北村(きたむら)(自)「だらけるな!三田(みた)班を手伝え!」

自分達がいるガードやパイロンが置かれている地点より前方では避難民の対応にあたる三田班の面々が苦い顔をしていた。

 

電車が止まり、瀬戸中央自動車道は一向に動かない渋滞が起きていた。耐えきれなくなったのかある者は車を降り、ある者は逃げれない恐怖を発散するように隊員に罵声を浴びせる。そんな光景が広がる場所に、影が落ちた。その正体を見た避難民は空を見上げたまま立ちすくむ者、少しでも早くこの場を離れようとする者様々だ。空には晴れ空や日の光を遮らんとするフォーリナーの輸送船団が飛んでいた。

日本近海にいると報告は聞いてたものの、突如雲の中から現れた輸送船団に時間が止まったかの如く固まっていた隊員達が我に返り89式5.56mm小銃や110mm個人携帯対戦車弾を構える。

隊員(自)「分隊長!」

横から呼ぶ声が聞こえ、頭の整理をつけると指示を出す。

北村(自)「警戒態勢!撃つな!それ以上は本部に指示をあおごう」

 

 

【善通寺駐屯地】

 

隊員(自)「瀬戸中央自動車道に展開中の分隊より通信。繋ぎます」

 

北村(自)《フォーリナーの輸送船団を確認。現在警戒中》

風間(かざま)一佐(自)《了解した。警戒態勢を維持せよ。アクションを起こし次第迎撃を許可する。以上》

 

風間一佐(自)「EDFへは?」

隊員(自)「すでに関西基地、関東基地から部隊を要請しました」

風間一佐(自)「よし」

隊員(自)「!?......報告します。敵輸送船に対しF-2戦闘機による攻撃が行われましたが、敵の装甲は厚くASM-2などでの損傷は見られなかったとのことです。輸送船はその後低空を飛行し、こちらの兵器による地上への被害が予想されるため攻撃はそこで断念されました。現在、輸送船団は市街地上空に到達、アクションはありません」

風間一佐(自)「そうか......よし、1個対戦車小隊を送る。地上からの撃破を狙う!」

 

 

【EDF部隊】

 

EDFは駅のある街に到着し、敵を迎え撃つ準備をしていた。

隼人(はやと)「ここで迎え撃とう。敵到着まで補給等済ませておくんだ。」

1-2隊長(w)「了解!」

9-1隊長(R)「分かった」

9-3隊長(R)「了解した」

ウイングダイバー1-2とレンジャー9-1はそのまま駅方面へ向かい、駅前広場で簡易補給地点を組んでいた。

レンジャー9-3は後退し小坂の道路上で軽食を食べ始め、ストーム4鷲崎 隼人は後方の階段を登り偵察を務めていた。

双眼鏡で周囲を見渡しながらサンドイッチを頬張る。

隼人「なんでまた関東基地まで応援が...」

9-3隊員「隼人、そう言えばお前所属ストームチームになったのか。すげえじゃん」

雑談が始まる。

隼人「ああ、有難う」

9-3隊員「それにしても俺、実は輸送船なんて見るの初めてなんだぜ......」

9-3隊員「まじかよ」

9-3隊員「前大戦で家が崩壊した。幸い家族に死亡者は出なかったが家を失ったんだ。......でも悲しむ暇も無いままその時の社会の波に流されて気づいた頃にはシェルターに押し込まれてた」

隼人「俺も直接見るのは初めてだな」

思い出したように隼人も口にした。

9-3隊長「お前ら、実戦は甘くない。気を引き締めろ。いつ自分が、隣のやつが死ぬか分からんのだからな。俺は前大戦で隣で仲間が死ぬのを何度も見てきた。目の前で隊長が殺されたりもした。今度は俺は仲間を、しかも部下を死なせたくはない」

9-3隊員「......なんかすいません。それなら隊長のその言葉に応えてやらねばいけませんね。この戦争が終わるまで皆生き残るぞ!」

 

数分後、

戦術士官《フォーリナーの輸送船が作戦エリアに侵入しました》

 

9-3隊員「あれがフォーリナーの輸送船か!」

9-3隊員「あいつが巨大生物を運んできやがったんだ。絶対に許さねえ!」

 

田中司令《こちら作戦司令本部、各エリアに展開中の部隊に通達だ。輸送船はその上空を通過する。輸送船の撃破は自衛隊に委ねた。我々は輸送船の投下する巨大生物の掃除だ!》

隼人《了解!》

 

各エリアという事は、他のエリアでも同様の作戦が展開されているという事だろう。向かう途中で他の部隊や自衛隊の部隊と度々すれ違ったのはそのためか。

本部からの通信をよそに、隼人は空を眺めていた。

目の前には、報告による言葉より大きな存在に感じられる程の輸送船団が展開していた。その内の1隻が低空に降下してくる。輸送船はウイングダイバー1-2とレンジャー9-1がいる駅前広場の上空で下部ハッチを開く。赤い光を纏う内部があらわとなり、内部の真ん中の真っ暗で全貌が見えない穴から巨大生物が顔を出した。

 

そして、巨大生物の投下を開始した。

9-3隊員「やつら、また巨大生物を投下してやがる......」

9-3隊員「地球を巨大生物だらけにしやがったくせに、まだ足りないのかよ!?」

 

戦術士官《各エリアの輸送船団、アクションを開始》

田中司令《敵輸送船を撃破する必要は無い!地上の敵を倒すことを優先しろ!》

 

隼人「(このままでは......)」

輸送船は投下をしながらこちら側に向かって進んでいる。このままではウイングダイバー1-2とレンジャー9-1の頭上を通ることだろう。

 

隼人《ウイングダイバー1-2、レンジャー9-1。下がれ!そこは輸送船の進路上だ!》

ウイングダイバー1-2隊長《了解! 総員後退!》

レンジャー9-1隊長《何!? 分かった! 後退しろ!》

 

案の定、後退するレンジャー隊の最後尾の隊員に巨大生物が投下され、その巨体で胸をアーマーごと押しつぶされる。そのアーマーの胸部がひしゃげた隊員は辺りに血の水溜まりを作り絶命した。

部隊の後退を助けるべく9-3隊員がバッファローショットガンで敵の足を止めさせ、隼人がスティングレイM2ランチャーで数匹を纏めて吹き飛ばす。

手を止めることなく、駅前広場の中央で合流を果たし、腕のレーダーを見ると半円を描くように投下された赤い点が弧を描くように展開し徐々にその円弧を縮めていく。隊員達もその赤い点全てに一斉射撃できるように陣取る。

だが物量の差は痛く、直ぐに乱戦になってしまった。至近距離で360°から酸が飛んでくる。

 

間もなく残り数匹にすると、地に手をつく隊員が見られた。隊長に一喝され直ぐにバッファローショットガンを構え直す。幸い死亡者は出なかったがズタズタになり破損したアーマーが数人に見られた。ウイングダイバーの中には、飛行ユニットの一部に酸を浴びて煙をあげる部品があり、一応飛べるものの何かあったら間違いなく生存率が低いということで装備は外させ遮蔽物に待機させた。

 

隼人「よし、乗り切ったな......総員次の戦闘に」

 

オペレーター《敵輸送船、作戦エリアに侵入!》

 

隼人「備え....なに!?総員戦闘準備!」

このエリアの担当であるオペレーターの口から唐突に敵の襲来が告げられる。すぐに残りの敵を殲滅し、リロードを済ませる。

第2波の輸送船もEDFに肉薄、巨大生物を投下し始める。

流石に敵との距離が近すぎるので、スパローショットガンM2に持ち替え、うち尽くしたらAF-15を構えたレンジャー9-1の後ろにさがりリロードを済ませる。

 

イズマッシュス・サイガ12 ショットガンのような印象を受けるマガジン式のスパローショットガンはすぐ撃ち尽くしてしまい、なおかつリロードも重い。なのでこのような戦術が実戦での最良の立ち回りである。隼人は立ち回りを良く心得ていると評価され、部隊行動よりも独り身で動き回るのが本人の理想でもあった為ストームチームへの配属を許された。

 

 

【瀬戸大橋、自衛隊】

 

アナウンサー《戦局報道です。大型円盤の大編隊が世界中で確認されています。大型円盤は巨大生物を投下。フォーリナーは巨大生物で地球を埋め尽くそうとしているようです!EDFは各地に部隊を派遣。巨大生物駆逐作戦を展開しています》

 

隊員(自)「輸送船が巨大生物を投下してるぞ!」

北村(自)「なに!?」

隊員の見ている方向を見ると、瀬戸大橋記念館上空の輸送船の下部ハッチが開き巨大生物が投下されていた。

 

その光景は混乱を招くには十分すぎた。

車を捨て、車の天井に乗ることも厭(いと)わず逃げ惑う避難民に巨大生物が橋の側面や裏、車をはねのけ越えて襲いかかる。

白の車体の塗装が巨大生物の体当たりで剥がれ、回転しながら飛んだ車は着弾地点で複数の車や避難民を巻き込む。白の車体が鮮血に染まった。軽油車のタンクが真っ二つになり、中身が外に流れる。辺りをガソリン臭で包み、たちまち気化した燃料が炎上し始める。

あちこちで火の手が上がり、黒煙で視界が遮られさらに犠牲者が生まれていく。一瞬で地獄に変わった。

 

三田(自)「くそ!撃て!市民を助けろ!」

89式5.56mm小銃やミニミ軽機関銃が一斉に閃光を放つ。だが、5.56mmの弾ではあまり致命傷を与えられなかった。

北村(自)「くそが!部隊を下げる!牽制しながら後退し......」

隊員(自)「うおぉぉぉ!はっ!?しまっ......」

三田(自)「囲まれた!何故だ!なっ......!」

橋の側面に沿って後退していた三田の右腕が突如巨大生物の顎に消え、橋から引きずり下ろされ、橋の裏側に消える。それを見た三田の部下が救出しようと三田がいた場所に向かうが、足元で地面を挟んで三田が叩きつけられる鈍い音と悲鳴が聞こえた。さらに身を乗り出すと、小銃に噛みつかれ、トリガーに指を掛けたままグッと引っ張られ咄嗟の事で離せなかったのでそのまま身を投げ出される。すぐに「ドボン」と音がしたので、死んだか生きているのかは分からないが、その隊員は海に振り落とされたようだ。

 

巨大生物は既に三田、北村の分隊の後ろに回っていた。後ろに集中しながら後退していた隊員の首から上が無くなった。

北村達は仲間が次々に犠牲になっていくのを目の当たりにしながら足を止めなかった。渋滞によって密接する車の間を走り抜け、飛んできた車が着弾したことで出来た、車3台で出来た大人一人分の隙間をくぐり抜けて後退する。

 

だが逃げ切れることもなく側面に待ち構えていた個体や追いつかれた個体に捕まっていった。

 

 

【瀬戸大橋、上空】

 

風間一佐(自)《全機、攻撃態勢をとれ》

各機パイロット(自)《了解》

 

上空には、AH-1ヘリ2機とUH-1Jヘリ6機が到着していた。

 

パイロットA(自)《南備讃瀬戸大橋(みなみびさんせとおおはし)が騒がしい。あちこちで黒煙が上がっているぞ》

パイロットC(自)《こちらHUNTER-2、橋の側面も裏にもびっしりと巨大生物を確認した。ん!?普通科の部隊を発見!後退を続けていますが、後方に回られています!》

 

見ると、一直線に移動する複数の物体を1個ずつ横から抜きとっていくように側面に回った巨大生物は橋に展開した部隊員達を喰らい、橋から引きずり下ろしていた。

 

風間一佐(自)《HUNTER-1、後退中の部隊を支援せよ》

パイロットA(自)《HUNTER-1、了解》

パイロットA(自)《こちらHUNTER-1、展開中の部隊に告ぐ。橋に集(たか)る巨大生物を掃討する。1箇所に集まってほしい》

北村(自)《了解した。頼む》

 

北村達が近くに停めてあった軽装甲機動車に集まり、110mm個人携帯対戦車弾を取り出す。

補給をすぐに済ませ逃げてきた道を見ると、巨大生物の黒い波が出来ていた。そこに隊員がすかさず110mm個人携帯対戦車弾を撃ち込む。カウンターマスによって後方の車の車窓に強い衝撃がかかり激しく震えていた。

まもなく頭上にAH-1ヘリが止まり、20mmM197ガトリング砲が車もろとも巨大生物を蜂の巣にしていく。さらに後方では別の機体のスタヴウイングのロケット弾ポッドからハイドラ70ロケット弾が発射、車が炎に包まれ、道路を削り取り、巨大生物を粉砕する。

橋の裏側ではひしめき合う巨大生物に対し海面すれすれに降下したUH-1Jから89式小銃を撃ち一体ずつ撃破していく。

絶命し身体を痙攣させた巨大生物は裏側に張り付く力を失い海へ落ちていった。

その頃、瀬戸大橋記念公園球技場に展開した対戦車小隊は中距離多目的誘導弾の発射体制を整えていた。

 

 

【EDF部隊】

 

一方、EDFの面々は巨大生物との戦闘を続けていた。

本部にはオハラ博士が加わり、司令や現場隊員達にフォーリナー再襲来について考察を話していた。

 

オハラ《フォーリナーが再び巨大生物の投下を始めた。どのような意図があるのか......もしかしたら、地球では巨大生物の増殖が思いのほか遅れているのかもしれない。人類が巨大生物の増殖を防いでるのが許せないということか......?》

 

隊員《こちらスカウト。フォーリナーの輸送船団を発見!》

 

隼人「第3波か......」

と言ってマガジンを装填する。

 

オハラ《人類から見れば巨大生物は害虫だ。だがフォーリナーから見れば...逆なのか?》

 

オペレーター《全部隊、第3波が恐らく最後です。頑張ってください》

 

開けた駅前広場ではなく、今度は避難が終わっていない中小ビル街に投下を開始した。

モノレールの下に巨大生物の群が迫り、避難民を襲い始めた。

隼人「撃て!ラストスパートだ!」

3部隊隊長「了解!!」

 

オハラ《フォーリナーにとって、人類こそ巨大生物の増殖を阻む害虫のような存在だとしたら......》

 

ズドンッ!

 

ドサッ

 

隼人《最後の個体の絶命を確認、作戦成功です》

 

最後の一匹の絶命が確認され、作戦は終了した。だがその帰路で隼人達は更なる試練に挑むことになる。

 

 

 


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