地球防衛軍 〜地球の守護戦士達〜   作:きぬたにすけ

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09話 海辺の怪

柳谷《こちらレンジャー3-8、作戦エリアに到着。前進します》

 

司令《こちら作戦指令本部。レタリウスを殲滅しろ!》

 

柳谷(やぎたに)「流石に不眠不休で戦場を転々としちゃ、具合が悪くなるな......」

私は首に掛けたロケットペンダントを力を込めて握る。死体になって愛する家族の元に帰る訳には行かない。いや、もしかしたら骨まで残らないかも知れない。だが、妻と娘の為にも、生還してみせる。と誓ったのだ。連日の戦闘に駆り出され、体は重く、足を進める度に足に軽い痛みが走る。だが、戦闘に支障はないと自分に言い聞かせると、再び歩み出した。

隊員「レタリウスを発見!」

柳谷「撃て!巣に捕えられた市民を救え!」

 

レンジャー3-9隊長《こちらレンジャー3-9!レタリウスの罠にハマった!身動きが取れない!》

 

レンジャー3-5隊長《作戦エリアに到着した!仲間の救出に向かう!》

 

ウイングダイバー7-8隊長《我々も到着した!囮は任せて!》

 

 

【レンジャー3-9、港湾エリア、レタリウスの巣】

 

レンジャー3-9隊長「くそ!離れろ!はっ......!」

周りを見る。すると、レタリウスの巣を、いや自分達を囲むように巨大生物がこちらを見ているのに気づいた。巨大生物達は、こちら1点に目を向けたまま舌なめずりをしているように思えた。

 

何か重いものが頭に伸し掛る感覚に囚われ、上を見上げると、レタリウスの唾だと分かった。

........ああ、死ぬのか。救出される希望は薄い。ましてや頭上で今か今かと待てを言われた子供の向ける好奇心の様な目が向けられている。

妻は今何をしているのだろうか。それに明日は妻の誕生日だったのに......。今日の午後からは非番だった。その間に会いに行くつもりで.....!祝いの言葉もかけられず、妻を1人にしてしまうと思うと、涙が頬を伝っていく。すまない......。

そこで彼の視界はブラックアウトし、何も考えることが出来なくなったが、身体から手足が離れていくのを感じた。不思議と痛みは無かった。

 

 

【レンジャー3-8、港湾エリア】

 

柳谷「レンジャー3-9のシグナルが消えた........」

隊員「くっ.......くそ!」

隊員の1人がフェンスに蹴りを入れる。

柳谷「本部に連絡しろ、回収班を寄越させろ」

隊員「了解しました」

柳谷「いいか!あのクソ野郎共から仲間を奪還する!仲間の体を奴らの餌にするつもりは無い!」

隊員「「「おおおおお!」」」

目の前では巨大生物が新しい餌にありつこうと市民を襲っていた。

レタリウスの巣を見ると、ぐったりと頭を垂れて力尽きている死体が残っていた。

柳谷「敵を捕捉したぞ!」

隊員「敵を捕捉!」

柳谷「撃てー!」

仲間を失うことに慣れたくはないが、報復を考えたり、怒りに任せて戦う事が無くなり、心臓の鼓動だけが身体に響いている。

そもそも「報復」が通用する相手なのか。敵はテロリストではなく、異星の侵略者なのだ。1度戦闘になると、勝ち負け=どちらかの全滅なのだ。奴らとの間には生か死しかない。怒りに任せようものなら真っ先に死ぬことになるだろう。

 

冷静を保つのは簡単ではない。手が震えて、銃を取り落としそうになる。

市民の最後の1人が自分達の横を通り過ぎた。それを合図にグリップを強く握る。震えていた足は地面に接着剤を撒いたように固定した。

柳谷「お前ら、まさか逃げないよな。市民を見捨てて仲間も見捨てて、背中を向けるなんてことはしないな!」

隊員A「覚悟は出来ているつもりです!」

隊員B「EDFは仲間を見捨てない!隊長が先日の地下探検で言われた言葉でしたね」

隊員C「良いでしょう。EDFの誇りにかけて!遂行します!」

柳谷「よし!突撃だ!」

 

 

【5分前、ストームチーム到着、港湾エリア】

 

少し時間を遡る......

 

司令《こちら作戦指令本部。レタリウスを殲滅しろ!》

 

ストームチーム《了解。ストームチーム、アタック!》

 

私の名は風舞 早紀(かざまい さき)

私は先日ウイングダイバー4からストームチームに配属になった。

先日レタリウスによって所属していた部隊が壊滅的な打撃を受けた。

事実上ウイングダイバー4所属の隊員は自分含め指の数でおさまるほどになってしまった。存続が難しくなったウイングダイバー4は他の部隊に組み込まれることになったのだった。そして、私はストームチームに。他のメンバーはウイングダイバーの中でも国際的にも有名な日本特有の精鋭部隊「ペイルチーム」に組み込まれることになったらしい。

早紀「エンゲージ!(交戦!)」

ちなみに、ウイングダイバー兵器においての武器開発レベルは12に引き上げられた。他のEDF兵器よりも遅いスピードになっている。フォーリナーの科学力の応用は、特にウイングダイバーに関して言えば開発が難しいと言われている。

 

レーザーランスB(Lv.7)と、サンダースナイパー15を担いできている。

レーザーランスは近距離戦闘用の武器で、ウイングダイバーの基本戦術の1つと言われている。近距離で発射される弾は光弾で、光の槍の異名を持つこの武器は、フェンサーの装備するブラストホールスピアとは同じ開発機関で別々のコンセプトで作成された近距離兵器なのだ。フェンサーはその名から分かる通り槍を打ち込み重い一撃を加え粉砕する。それに対しレーザーランスは高威力の槍を撃ち込み相手を焼き切る武器だ。

さらにサンダースナイパー15(Lv12)を武器開発部から受け取り、狙撃の術を学んだ。今の私は超近距離、ある程度遠距離の2つに戦術を単独で取れる。

早紀「くそっ!あ、危な!」

レーザーランスで1体ずつ確実に葬ろうとするが、処理速度が追いつかず、スレスレで酸を避ける。だが、その内の1発が右腕をかすり、少量だが皮膚にかかってしまった。

酸がかかった部分を見ると、皮膚に赤みが増し、染みるような痛みが神経に伝わってくる。

とりあえず酸が届かない上空へ飛び、作戦エリアを見渡す。

そして、エネルギーの切れない内に降下に入る。そして........ボチャン!

早紀は海面で一度ホバリングした後、海に飛び込んだ。少し泳いで石垣に上がると海水に右腕を肩まで入れ、右腕を水中で振る。そうすると、最初は海水が染みたような痛みが襲ってきたが、段々と緩和されていった。そして、海水をはらうと再び飛行した。いつの間にか巨大生物の群からターゲットが外されていたらしく、向かって来ていたのは3匹程度だった。

 

そしてその3匹をすぐに撃破すると、港湾施設の内の1つ、工場の高くそびえる煙突に飛び、そこから狙撃を開始する。EDF部隊と交戦中の個体を優先して狙う。

 

レンジャー3-8に押し寄せている巨大生物に撃ち込むと数匹の身体を雷撃が焼く。レンジャー3-8の射程距離に入るまでに巨大生物の群はまばらになっていた。

 

柳谷《どこの部隊か知らんが助かった!》

 

 

【総合作戦指令本部、関東基地】

 

連合地球軍の総合作戦指令本部では、士官や分析官達が成り行きを固唾を飲んで見守っていた。

戦術士官「来ます!マザーシップ船団、地球への降下を開始」

司令「いよいよ始まるぞ。地球の運命が決まる時だ」

田中司令の隣ではオハラ博士が衛星軌道兵器のデータのあるPDFファイルを眺めていた。

オハラ「マザーシップの防空システムに阻まれて航空機は接近出来ない。長距離攻撃が最良の方法だ」

オペレーター「レーダー最出力。目標を捕捉しました。各発射シークエンスも完了済みです」

 

彼らの目の前には黒のスクリーンに緑の網線、そして、そこには巨大な赤い点が10個、それを囲うようにして中くらいの赤点が500以上点在していた。おそらく輸送船であろう。とてつもない大軍が再び攻めてきていた。

戦術士官「総司令部から通信。ワイプに出します」

 

巨大なスクリーンの右下に高官服に身を包んだ初老の男性が映し出された。

 

ジョセフ・マクレイヴン最高司令官《This image is transmitted to bases all over the world.(この映像は、世界中の基地に発信されている。)You guys, Finally the time has come to show the power we got in eight years.(諸君、遂に我らが8年間で得た力をやつらに見せつける時がやってきた。)Start attacking from now.(これより攻撃を開始する。)You guys, pray!(諸君、祈っててくれ!)》

瞬時に日本語訳がなされる。

 

戦術士官「リニアキャノン、発射されました」

 

ジョセフ・マクレイヴン最高司令官

《 See our power, the invaders!(我々の力をとくとご覧あれ、侵略者ども!)》

 

連合地球軍関東基地の兵宿舎一階の食堂ではテレビにスクリーンが映されている。

それぞれの部屋でラジオ、テレビを付けて見守る隊員もいた。

戦術士官「着弾。マザーシップ1隻を撃沈」

その言葉と共にスクリーンから赤い点が1つ消える。

食堂では、隊員達が歓声を上げながらガッツポーズをしているのがポツポツと見られた。

ある隊員「EDFはお前達を完封する程の力を手に入れたんだ!ざまぁみやがれ!」

ある隊員「EDFの力を見たかぁ!」

 

司令「やったか!」

オペレーター「よし!」

戦術士官「リニアキャノン、再装填中。テンペスト、第1編隊発射」

戦術士官「テンペスト、目標に向かって飛行中」

戦術士官「テンペスト、着弾。1隻を撃沈、2隻が中破」

オペレーター「やったぁ!」

オハラ「よし!」

スクリーンから赤い点がまた1つ消滅すると同時に、オハラが机に手を打ち付け立ち上がる。

戦術士官「テンペスト第2編隊、発射」

戦術士官「続いてリニアキャノン、再発射されました」

戦術士官「着弾。はっ......敵損害なし」

司令「はずしたか!」

そんなはずはない。現代兵器のロックオン能力は、精度はとても高度なはず。それにマザーシップ船団の移動速度からして外れるなんてもってのほかである。

戦術士官「テンペスト第2編隊、着弾。......敵損害なし」

オハラ「はずれた.......!?」

 

ジョセフ・マクレイヴン最高司令官《What!?(なんだと!?)》

 

隊員「おいどうなってやがる!」

隊員「何故墜ちない!」

隊員「輸送船に阻まれてる可能性は!?」

隊員「分からない!くそ!あと何隻落とせる!?」

 

 

【風舞 早紀、港湾エリア】

 

早紀「そんな.......奴らが戻ってくるの.....?」

オペレーター(男)「敵輸送船、大気圏を突破しました。港湾の作戦エリア上空に降下中です!」

空を見上げると、5隻の輸送船が降下してきた。

自衛隊のアパッチ、戦車が1隻に火力を集中する。だが、焼け跡すらつかず、アパッチは間もなく補給の為に帰還していった。

オペレーター(男)「作戦エリアに展開中の部隊は輸送船の動向に目を離さないでいて下さい。必要に応じて撃墜の用意を」

 

 

【総合作戦指令本部、関東基地】

 

戦術士官「テンペスト着弾。また損害はなし」

オペレーター「そんな......!」

オハラ「まさか....そんな!」

戦術士官「リニアキャノン着弾。敵、無傷です」

司令「どうなっている!?」

オハラ「そこまで出来るとは.......」

司令「どうした。何か心当たりがあるのか」

戦術士官「テンペスト着弾。損害確認出来ず」

オハラ「防御スクリーンだ.....!マザーシップを防御スクリーンで守ってるに違いない!」

戦術士官「リニアキャノン着弾。敵、無傷です」

戦術士官「テンペスト第5編隊着弾。敵ダメージなし。!?......確認しました。壁のようなもので攻撃が遮られているようです」

司令「マザーシップを覆えるほどの防御スクリーンだと?なんというテクノロジーだ!」

戦術士官「......作戦は失敗。マザーシップ2隻撃沈、2隻中破。残りマザーシップ戦力8隻。これより地空海戦力による攻撃に移ります」

 

 

【港湾エリア】

 

早紀「なんてことなの.......?」

 

柳谷《こちらレンジャー3-8、作戦終了です》

 

司令《了解した.......。本部へ帰投しろ》

 

輸送船団は巨大生物の投下を行うことなく作戦エリアを離れていた。

ついに戻ってきたのだ。これから地球は地獄と化すのだろう。

 

アナウンサー《緊急速報です。フォーリナーが再び姿を現しました。先程EDFが撃沈作戦を行い、結果2隻のマザーシップを撃沈したとのことです。ですが、残り8隻は攻撃を逃れ上空に到達しようとしています。市民の皆さんは今後の外出は極力さけて下さい。十分な水と食糧を準備し、シェルターへの避難をして下さい。なお、国営シェルターの選抜方法が決ま〜》

 

 




少しスマホ版などでは見辛さが増してしまいましたが、英語の会話も臨場感を出すために入れることになりました。ストーリーの進行+イベント無線をよく聞いている方なら分かるかと思いますが、その場面になったら違う国の描写も入れるつもりです。英語での会話を入れるにあたって、「英文(翻訳文)」を設けます。

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