クロスオーバー回です。
『トウコツの過去、冷徹との邂逅』
二千年前、キュウキが神殺しの罪を受け天界から追われる身となった頃のお話。
中国のとある小国、その王城の玉座には本来の王とは違った者が座っていた。
「はぁ…退屈だな…」
それこそのちの四凶の一人、トウコツである。
「おい、そこのお前とお前…殺し合え」
トウコツは近くにいた家臣であろう男二人にそう命ずる。
「え! あの…何故私達なのでしょうか?」
「何より何故そのような事を…」
「やかましい、さっさとしろ…私が直接やっても良いんだぞ?」
そういってトウコツが男二人全身からおぞましい殺気を放ちながら睨む。
「「はい! 喜んで殺し合わせていただきます!」」
その殺気に飲まれた男二人はそう叫んだ後、腰に下げた刀を抜き殺し合いを始めた。
「ふふ、中々良いな…酒がさらに美味くなる…」
トウコツが何故この小国の玉座に座り何故王のように振る舞っているのか、真相は単純な物でトウコツが本来の王を抹殺しその玉座を奪っただけである。
「と、トウコツ様…お客様の起こしです…」
「ん? あぁ…少しだけ待て」
その瞬間殺し合いをしていた男二人の首が宙を舞った。
頭を失った体は力無く倒れていった。
首をはねた手についた返り血をトウコツはうっとりとした表情で舐める。
「ん…ふぅ…やはり血の味はいい…よし、通して良いぞ」
「は…はい…」
そう言うとトウコツは再び玉座に腰を下ろす。
トウコツの前に客人が連れられてくる。
その客人は黒い和服姿で、その目はつり上がりまるで亀のようである。そしてその額には角が一つ生えている。
「初めましてトウコツ様、私日本の地獄から参りました、鬼灯と申します」
「…ほぅ…その鬼灯殿がこの私にどんなご要件で?」
「少しばかりお話がございます」
「言ってみろ…内容次第では…覚悟をしておいた方が良いぞ?」
トウコツは本能で、この鬼灯という男がただ者では無いことを察していた。
「はい、実は中国地獄に来る亡者の数が不自然に増加しており、その原因がトウコツ様と関係しているらしい…との事で増加した亡者の対応に追われる中国地獄の方々の代理としてお話を伺いに参りました」
「…なるほど…そう言う事か…あぁ、関係している所か私が原因だ」
トウコツの悪びれる様子の無いその態度に鬼灯の目つきがわずかにきつくなる。
「ふふふ…その顔、私に今の生活を辞めろと言いたそうだな…良いだろう、鬼灯殿…この私と決闘を行おう」
「何故そのような事を「貴殿がこの私を打ち負かす事が出来れば…その時は私はこの小国から出て行き、人に害をなすことを自重するとしよう、どうだ? 悪くない話だろ?」
「…はぁ…嫌と言っても無理矢理にでも戦わされそうですね…分かりました」
二人は城の中庭へと移動する。
「武器は何を使用しても構わない…その呪いの金棒でもな…」
「この金棒をご存じでしたか…」
「あぁ…いつか手に入れたかったが…よし、私が勝てばその金棒を貰おう…拒否権は無い」
そう言うとトウコツは鬼灯に飛びかかり、首をめがけ手刀を繰りだす。
しかしその手刀は鬼灯の腕により阻まれる。
「ほぅ…止めるか…まぁそう出ないと面白く無い…」
「言っておきますが…手加減はしませんよ…?」
「構わない…むしろそうしてくれ…その方が私は楽しめる…」
その言葉を皮切りに激しい打ち合いが始まった。
それから三時間後…
立っていたのは鬼灯であった。
「まさか…ここまで私を追い詰めるとはな…」
トウコツは満身創痍となり、至る所から血を流していた。
「しかし…良い…体から血が流れ出るこの感覚…久しいな…」
だがその顔には悔しさや苦しみの感情は無く、代わりに恍惚とした表情を浮かべていた。
「はぁ…そういう感じの人だったんですね…貴方…」
鬼灯はどこか呆れたような表情でそうつぶやく。
「ふっ…約束は守ろう…私はこの国を去る…中々楽しかったが…しょうが無い…ところで鬼灯殿…相談がある…」
「? 何でしょう」
「…私とつがいに「お断りします」…そうか…」
その後トウコツは言葉通りその小国から去り、しばらく大人しくしていた為、中国地獄にての不自然な亡者の増加は解消された。
国を去り、三日後…
(あぁ…やはり傷が深かったのだろうな…もう体が動かない…)
トウコツは山奥の道に倒れていた。
(構わない…こうなる事は覚悟していた…私のような者はいつか必ず滅びる…それが定めだ…)
そしてトウコツはゆっくりとその両目を閉じた…
故に気づけなかった、青い肌の羽根が生えた青年に背負われどこかへと連れて行かれた事に…
外伝弐凶目 終
鬼灯様の喋り方間違えてるかも…
鬼灯ファンの皆様、ごめんなさい!