転生!アテナの大冒険   作:塚原玖美

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【7】欲望は叶えられず

窓から陽の光が差し込んで、アテナは目が覚めた。

ベッドから起き上がり、今日も座ったまま手を合わせ、目を閉じる。

 

”主よあわれみ給え”

 

紘一郎と千夏の姿を思い浮かべる。

思い出せる紘一郎と千夏は歳もとらなければ成長もしない。

それでも、この”祈り”の時間はアテナの大切な時間だった。

 

目を開いて笑顔を一つ作る。

 

今日は起きるのが少し早かったらしい。ダマラはまだ来ない。

まあいいか、とベッドから下り、顔を洗って着替える。

脱いだものを綺麗にたたんで、籠に入れる。

お手洗いを済ませ、部屋に戻って一息つく。

 

椅子に腰掛けた時、ダマラがやって来た。

 

「アテナさま、おはようございます。」

「おはよう、ダマラ」

「あら、もうお支度が終わっているのですね」

「うん」

「お食事の時間まで少しありますから、のんびりしましょうか」

「うん…」

 

窓の方へ行って外を眺めるアテナ。

 

「どうしましたか?絵本、読みませんか?」

「ん〜、街に出てみたいな、と思って」

 

城から脱走して木登りなどを楽しんではいたが、街には出たことがなかった。

 

「王様やロイさまに聞いてみないと…私が勝手に良いですよ、とは言えないのですが…」

「そうだね、お父さまに聞いてみる」

 

そう言って、また窓の外を眺める。

 

「アテナさま」

「そろそろ時間だね。食堂に行こうか。」

「はい」

 

食堂にはまだ誰も来ていなかった。

仕方ないのでいつもの席に座ると、父と母がやって来た。

 

「お父さま!お母さま!おはようございます!」

「おはよう、アテナ」

「おう、おはよう、アテナ。今日も元気いっぱいだな」

「お父さま、お母さま、お願いがあるんだけど…」

「お願い?なぁに?」

 

「街に出てみたいの!」

「!!!!!」

「窓から見える街が、いつも賑やかで、楽しそうで…。行ってみても良い?」

 

両親がビックリしていると、祖父母がやって来た。

 

「聞こえていたぞ。アテナ、街に行きたいのか?」

「うん、おじいさま」

「うむ…」

 

祖父は暫く考えてから言葉を発しようとした。

その次の瞬間、兵士が駆け込んできた。

 

「王様!コロネの町がモンスターの軍団に襲撃されました!」

 

その表情はとてつもなく固い。

 

「またか…」

「トルガ村、カナンの街に続いて襲撃に遭うのはこれで3度目でございます」

「うむ…」

 

王は再び考えて言った。

 

「第5軍隊をコロネの町に送れ。生き残りの町人を保護し、食料も充分に与えるように取り計らえ」

「かしこまりました!それでは失礼致します」

 

兵士は一礼して退室した。

 

「アテナ」

「はい」

 

一呼吸おいてから、王は申し訳なさそうに言った。

 

「町は危ない。城の中であればお前を守れるが、街に出て何かあっても守ってやれない。悪いが諦めてくれ」

 

モンスターが城下町を襲ったことはないが、それでも万が一の事は考えなければならない。

王の判断は間違っていないだろう。

 

悔しい気持ちを抑えるのに一苦労したが、それでも諦めるしかなかった。

 


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