転生!アテナの大冒険   作:塚原玖美

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【26】戦闘再開

「いやぁ、凍れる時間の秘法、解けちゃいましたね…あれからどれくらい経っているんですか?」

「…1年も経ってねぇよ」

 

アバンの問に、マトリフが答える。

 

「そうですか…また戦わなければなりませんね…」

 

アバンは申し訳なさそうに言う。

 

「今度は私もついて行くからね」

「アテナ!?あなた、お城に戻らなくて良いんですか?」

 

アテナの発言にアバンが驚く。

 

「戻ったけど…おじいさま亡くなったし…」

「…敵をとりたい、という事ですか?」

「…うん。でも一度城に戻ってお父さまの許しは得てこないと…。命の危険を伴うとなれば、ダマラは連れて行けないしね」

「そうですね。そうした方が良いでしょうね。」

 

アテナは、もう退く気はなかった。王に止められても、アバンたちに父を訪問させてでも、戦いに赴く決心をしていた。

もう優柔不断はやめだ。

大切な者を、これ以上失いたくない。その気持ちがアテナを頑なに決心させていた。

 

「どちらにしろ、装備を整え直さないとならないでしょう?ロカやレイラも行くの?マァムはどうするの?」

 

一瞬で決められる問題ではなかった。

いち早く行動を決めたのは、アテナだった。

 

「私は父に話をつけて来るから、ここに集合ね。勝手に行かないでよ」

 

そう言ってアテナは、ダマラを連れて、ルーラでパプニカ城に戻った。

 

王は早速とばかりに話を始めた。

 

「アテナ、よく戻ってきた。またモンスターが暴れているようだが、どういう事だ?」

「凍れる時間の秘法による魔王の封印が解けたようです」

「そうか…」

 

考えこむ王に、アテナは意を決して言う。

 

「お父さま、私、今度こそ勇者たちとともに戦いたいんです」

「なんだって?」

 

驚いて、しばし沈黙した王だったが、諦めたように言った。

 

「決心の強い目をしているな。どうせ止めても行くのだろうな。仕方あるまい」

「お父さま…!」

「ダマラはどうする?」

「お父さま。その事なのですが、正直連れて行きたくはないのです。命を賭けた戦いになるのは間違いありません。ダマラを守りながら戦うのは却って危険だと思うのです」

 

「そうか…それも仕方ないな。…そうだ」

 

思いついたように、父王はアテナを連れて宝物庫へ赴いた。

 

「何か気になるものがあれば持っていけ」

 

父の言葉に頷き、宝物庫を一通り眺めるアテナ。

数分眺めていると、奥の方から呼ばれているような気がした。

 

「えーと…これだ!」

 

アテナが見つけたのは、宝物庫の一番奥にあった宝箱だった。

開けてみると、そこには錆びついた剣が一振り入っていた。

 

「こんな錆びた剣が欲しいのか?」

「なんか、この剣に呼ばれた気がして…」

 

アテナは錆びた剣を手に取った。

その途端、剣に据えられていた宝玉が光輝き、錆びついていた剣はすっかり美しい剣に変化した。

 

「これは…おどろいたな」

 

父はしばらく絶句していた。

 

「この剣…すごく良い剣。お父さま、この剣、もらって行って良いですか?」

「あ、ああ…大事に使えよ」

 

アテナはこの剣が”すいせいのつるぎ”であると、何故かわかった。

すいせいのつるぎには、意志があるようだった。

言葉になるわけではないが、その意志を感じ取ったアテナは、よほどの時に限り使うと決め、剣を鞘に納め、腰に下げた。

 

「魔王を倒したら、必ず帰って来なさい」

「分かりました、お父さま」

 

その話を通りかかった母サラが聞いて、混乱したような声を上げて入ってきた。

 

「モンスターが歩きまわるのに1人で城の外に出るなんて!アテナが死んでしまったら、私は…!」

 

荒れ狂うサラを、ダマラがなだめる。

 

「大丈夫ですよ、王妃さま。アテナさまは必ず帰ってきます。信じましょう」

「ダマラ…」

 

お茶を飲む時間を設けて、サラが落ち着いたところで、話をつけた。

 

「必ず帰ってきてね」

「もちろんです、お母さま。ダマラ、お母さまの事、お願いね」

「かしこまりました。アテナさま、気をつけて行ってらっしゃいませ」

 

そしてアテナがネイル村に戻ると、ロカとレイラは既にマァムをシスターに預ける決断をしていて、アバン、マトリフとともに装備品の調達について話し合っているところだった。

 

「アテナ、お帰りなさい。どうでしたか?」

「うん、一応、許してもらったよ。必ず帰ってくるようにってクギさされた」

 

アテナの旅立ちが許された事に、皆驚きを隠せない。

 

「王様、よく許したなぁ。…?それに、随分良い剣持ってるじゃねぇか?」

「これも父からもらった」

 

目を見開いて感嘆するロカを気にせず、アテナは続ける。

 

「装備品を調達する資金まで出してくれたよ。3万ゴールド」

「「「「3万………!!!!???」」」」

 

資金の豊富さに、またもや驚く4人。でも、これで装備品の調達ルートは決まった。

 

「ベンガーナのデパートに行くか」

「そうですね、1ヶ所で全て揃いますから、都合が良いでしょう」

「じゃあ、出発は明日だ。ロカ、レイラ。マァムとしっかり向き合っておけよ」

「ああ」

 

頷くロカとレイラ。

 

その晩はシスターも含めて7人で過ごした。

翌日、朝食を食べて片付けた後、パーティは出発した。

 

デパートで、主にアバン、ロカ、レイラの装備品を調達した。

マトリフの強い勧めで、アテナも鎖かたびらを下着と服の間に着込んだ。

 

装備を整えた後、カール城に行って、アテナ以外の面々はフローラに挨拶を済ませた。

パプニカ城にも立ち寄り、王との謁見を済ませ、正式に王の許可を取り付けた。

 

そして、まずは体慣らしも兼ねて、町々のモンスターを退治していくところから始めた。

 




大変久しぶりの続話投稿です。

ダイの大冒険ファンの方々には、「勇者アバンと炎獄の魔王」も読んでいらっしゃる方が多数いらっしゃると思いますが、この物語を書き始めた時にはまだ無かった作品であり、更にまだ完結していませんので、独自の展開を繰り広げて行きますが、アテナ視点での物語ということで、ご容赦いただければ幸いに思います。

…読んで下さる方がいらっしゃればの話ですが(汗)

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