「おーい、マトリフ〜!」
洞窟に着くなり、そう叫びながら入って行ったが、洞窟の中にはマトリフはいなかった。
「おっかしいなぁ、どこに行ったんだろう?」
ドーーーーーン!!!
「外だ!ダマラ、ちょっとそこで待ってて!」
音のした方向を確認しながら、アテナは洞窟の外へ駆け出した。
洞窟の南で、マトリフが呪文の実験をしていた。
「マトリフ!」
駆け寄った時、振り向いたマトリフがアテナに向かって呪文を放ってしまった。
「アテナ!よけろ!」
マトリフは叫んだが、よける暇はなかった。
アテナは驚いて叫んだ。
「主よ!」
その瞬間、指輪が群青色の光を放ち、呪文の内容を読んだアテナは、夢中で相殺した。
加減が分からず、魔法力を使い果たしたアテナはへたり込んだ。
そこへ、マトリフが慌てて飛んできた。
「危ねぇじゃねえか!ってか、なんで相殺出来てんだよおめぇ?」
「びっくりした〜」
2人して息を切らせていて、落ち着いて話をするのにしばらくかかった。
「まあ、茶でも飲めや」
洞窟に戻った2人は、まずお茶を飲んで一息ついた。ダマラは隅で居心地悪そうに見ていた。
2人は、先ほどの呪文について議論する。
「おめえ、さっきの呪文、なんで相殺出来たんだ?」
バンとテーブルを叩いて立ち上がるマトリフ。
「なんでって…。わっかんないけど、夢中で…」
「夢中ったって、あれ、何やってっかわかんねぇと相殺出来ねぇぜ」
「…いや、何となく、としか言えないんだけど…自分でも驚いてはいるよ。でも、なんでメラとヒャドなの?」
あっさりとした顔で問うアテナに、マトリフは腰を抜かす。
へなへなと椅子に座り込んだ。
「だから、どういうセンスしてたら、あれをメラとヒャドってすぐに見抜けんだよ。おれが必死に考えたのによ。悔しいったらありゃしねえや」
再びお茶をすする2人。
マトリフが仕方なしに呪文の講釈を始める。
「メラ系とヒャド系の呪文、全部言えるか?」
「メラ、メラミ、メラゾーマ。ヒャド、ヒャダルコ、ヒャダイン、マヒャド」
淡々と答えるアテナに、マトリフは更に問う。
「じゃあ、メラゾーマやマヒャドを、”極大呪文”って言うか?」
「言わないね」
しばらく考えて(というか、考えたふりをして)、アテナはしたり顔で言う。
「なるほど、だからメラとヒャドで”消滅呪文”か」
「そういうこった。”極大消滅呪文メドローア”だ」
「メドローア、ね。上手いこと名前つけたね」
「おめぇの物わかりの良さには感心するぜ。反射攻撃には注意しろよ」
「もちろん」
そこまで話してお茶がなくなった時、異変は起きた。
洞窟の外がざわざわと殺気立っている。
一瞬で察したマトリフとアテナは身支度を整える。
「俺はアバンのとこに行くぜ!」
「私はネイル村!アバン捕まえたらネイル村に集合ね!」
「了解」
ドーン、とアテナがルーラでネイル村に着いた時、目の前にいたのは、前回アテナたちがネイル村に初めて来た時に最初に会ったあの少年、ライだった。よく見ると震えている。
「ライ、こんなところで何やってんの?一人じゃ危ないよ」
そう言って先を促し、ロカたちの家へ向かった。
「アテナ!無事だったか?マトリフは?」
「マトリフは真っ先にアバンのところに飛んでった。ここに集合と約束してある」
マァムの顔を見ながら、夕食を食べている時に、ライが駆け込んできた。
「モンスターが襲ってきた!」
「なんだって?」
レイラはマァムを抱えて身構える。
ロカとアテナは武器を取って家を出る。ダマラは困惑して動けずにいた。
ロカとアテナが村の男たちとともにモンスターたちを追い払った直後、マトリフがやってきた。
青い髪の少年を連れて…
お久しぶりの更新です。
色々と不自然だと思うところが有ったので編集し直しました。
また更新していければと思います。