転生!アテナの大冒険   作:塚原玖美

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【20】最後(?)の戦いに向けて

「じゃあ、今日は一日トレーニングするか」

 

マトリフが意を決したように言った。

 

「そうですね、そちらは魔法力の強化などを行っていて下さい。」

 

アバンはそう言って分厚い本を出した。

ブロキーナは特訓と言って山にこもった。

マトリフとアテナは魔法力を上げるべく、対戦形式のトレーニングをする事になった。

 

「よし、このあたりで良いか」

 

マトリフがニヤリと笑ってから魔法力を開放する。

アテナも負けじと魔法力を開放する。

 

しばらく睨み合った後、呪文の応酬となる。

魔法力の限界を超えて戦い続けた後、アテナが先にギブアップしたところで休憩をした。

 

休憩をしながらマトリフが言い出したのは、呪文の契約だった。

 

「おめえ、この4つの呪文を契約しておけ」

 

そう言って提示された呪文は、スカラ、スクルト、ルカニ、ルカナンだった。

 

「自分1人と敵1匹に使うならスカラとルカニだけで良いが、家族や国民を守る必要があんだろうし、敵も群衆だからな、覚えて置くに越したことはない。茶ぁ飲み終わったら始めるぞ」

「了解」

 

残ったお茶を飲み干し、一息ついて立ち上がる。

 

「さあ、はじめようか」

 

契約が終わって一息ついたら、ない魔法力を振り絞って睨み合い。

少し休んでは睨み合い。

最終決戦に向けての特訓だけあって、本当に手加減なしの呪文の打ち合いを繰り広げる内に、アテナは極大呪文まで使いこなせるようになっていた。

そうして、倒れるまで続けた。

 

気付いた時にはアバンが覗き込んでいた。

 

「まったく、マトリフ、お姫様相手に無茶しすぎですよ」

「最後の戦いに備えるからには、これくらい当然だ」

「パプニカ王に見つかったら、姫さまの立場がなくなりますよ、まったくもう」

 

最後の一言に、ちょっと引っかかるものを感じたアテナは素直に聞き返す。

 

「え?ロラ姉の立場がなくなる?」

 

”姫さま”と言っただけで”ロラ姉”と言い放つ少女に、男2人は驚く。

 

「私はカールから来たとは言った覚えがないのですが…なぜ知っているのですか?」

「アバンとロカの着けている鎧が、カールの騎士が着けている物と同じだったから…。それに、ロカは私の誕生日祝にロラ姉の護衛でついて来てたの、覚えてたし」

「やっぱり姫君なんだなぁ。人の顔覚えるのは俺は苦手でねぇ。女の顔だけはすぐ覚えられるんだがな」

 

マトリフの最後の一言にアバンが呆れている。

しかし、マトリフは何か気になっているようだった。

 

「アテナ、おめぇ、何か隠してねぇか?」

「え?」

 

アテナは驚いて聞き返す。

 

「敵を取りたいのは解るけどよ、どうもそれだけには見えないぜ。なんか隠してるだろ?」

 

アバンもその言葉には何か感じたようで、考えこむ。

マトリフとアバンの妙な勘の良さにアテナが頭を抱えていると、そこにブロキーナが戻ってきた。

 

「どうしたんじゃ?深刻そうな顔をして。戦いの事だけには見えんがの?」

「老師…」

 

マトリフが意を決したようにアテナに詰め寄る。

 

「おめぇ、何を隠してる?何を知ってやがる?まさか、今夜の戦いの結末は知らんだろうな?」

「…」

「知ってんのか?ええ?アバンはどうなる?魔王の封印は成功するか?」

 

ここまで問いつめられて、まるっきり答えないのも失礼か…

流されやすい性格に、とことん嫌気がさすが、答えることにした。多少誤魔化すけど。

 

「封印は成功するよ。ただし、永久に封印する事は出来ない。凍れる時間の秘法はいつか解ける。また戦わなくてはならない。ただし、レイラの出産は平和に済む…と思う」

「そうか…アバンは封印に巻き込まれる事はないのか?」

「それは…」

 

言葉を濁すと、マトリフは一瞬険しい顔をした後、諦めたように言った。

 

「わかった。もういい。だが、なぜそんな未来の事を知っているかのように言えるんだ?」

 

(そっちが聞いてきたくせに…)

 

「説明しても、多分納得出来ないと思うよ。それに、私の存在は既に未来を変えている。私の知っている事が100%そのまま起こるかどうかも、わからない」

「おめぇの存在が未来を変える?おめぇは本来この世にはいねぇはずだったみたいな言い方じゃねぇか?」

「そういうこと。…これ以上は今は言えない。マトリフ、あなたが生きてる間には全部話せる事を祈ってるよ」

「そうか…その話を聞くのを楽しみにしてるぜ」

 

全員が一息ついたところで、ブロキーナが口を開く。

 

「ところで、特訓はうまくいったかの?」

「まあ、上々だな。アバンはどうだ?」

「こちらもバッチリです」

「じゃあ、明日の夜に向けてしっかり休んでおかないとね」

「もう、今日の夜ですよ」

 

え?え?となっているアテナに、アバンがクギをさすように言う。

 

「あなた、一晩中眠っていたんですから。ちゃんと食べないと駄目ですよ?」

 

気がつけば太陽はかなり高いところにあった。

 

「もしかして、もうお昼近い?」

「もしかしなくても、もうすぐお昼ですよ」

「しっかり食べとかねぇとな」

 

昼食を4人で取ったあと、アテナは3人に別れを告げた。

そして城に戻っていった。

 

その晩、魔王ハドラーに挑んでいったアバンは、魔王とともに凍れる時に封印された。

 


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