転生!アテナの大冒険   作:塚原玖美

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【18】魔王現る

モンスターの襲撃に遭ったのは、その日の夕方。

 

アバンが第一声を発する。

 

「魔王は居ないようですね。アテナの特訓に利用させてもらいましょう。

アテナは剣だけで戦って下さい。まずはゴーレムを、続いてガーゴイルを攻めて下さい。

残りの余計なモンスター達は、ロカ、レイラ、マトリフの3人で片付けて下さい。」

 

「「「了解」」」

 

まずはゴーレムに向かっていくが、ゴーレムの体は固くてなかなか切れない。

 

「余計な力を抜いて、難しい技を使おうとしない事。」

 

アバンのアドバイスを元に、じっくりとやりあう。

ひたすら攻撃し尽くした所で面倒くさくなり(これは前世からの考え方のクセ)、力任せに剣を振り下ろした。

 

「ウオオオオ!!」

 

ゴーレムが倒れた。

 

「飲み込みが早いですねぇ。見事です」

 

そう言ってアバンが回復呪文をかけてくれた。

 

「さて、次はガーゴイル…と言いたいところですが、3人が倒してしまったようですね」

「結構余裕あったからなぁ」

 

ロカが会話に割って入る。

 

「力の技、これを大地斬と名付けたのですが、コツは掴めたようですね。今日はもう遅いので、続きは明日にしましょう。明日は海に行きますよ」

 

そう言ってアバンはサッサと街の方へ向かっていく。

4人が慌ててついて行く。

 

「アバンは存外せっかちだよなぁ」

 

マトリフがぼやく。

 

翌朝は本当に海に来た。

 

「さて、今度は、この波を斬ってもらいます」

 

(海波斬か…)

 

兵士に混じっての特訓で、スピードには自信があった。

 

「ハッ」

 

一瞬で波を切り裂いた。

 

「スピードはロカとの試合でも充分でしたからね。海波斬はすぐに出来ると思っていました」

 

アバンも何でもない事のように言ってのける。

だが、細かい説明は忘れない。

 

「この海波斬を使えば、炎のブレスなども斬る事が出来ますよ」

 

しかし、アバンの笑顔はすぐに消えた。

 

「私の必殺技の完成には何が足りないんでしょうか…」

 

そう言って、大きなため息をつく。

 

「力とスピード…後はなんだろうなぁ?」

 

ロカもため息をつく。

 

「答えが出ると良いのですがね。さて、山の方に行って訓練の仕上げをしましょうか?」

 

アバンの提案に3人が頷く。

 

滝のある岩場にやって来た5人。

 

「こっちは魔法力の訓練を勝手にやってるぜ」

 

マトリフはそう言ってレイラを連れて行ってしまった。

 

岩場の岩をひたすら斬る訓練、滝の流れをひたすら斬る訓練、アバンとロカと3人でひたすら続けた結果、3人揃ってクタクタになった。

 

一休みしているとモンスターの軍団に襲われた。

モンスターの群れの向こうにはマントを被った魔族が1人。

 

「魔王!!」

 

アバンの叫びとともに身構える。

アバンとアテナの魔法力は残っているが、体力は大分消耗している。

待ったなしで襲い掛かってくるモンスターたちを相手にしながらでは回復まで手が回らず、苦戦していた。

そこへ、1人の武闘家が乱入して来た。

 

軽々とモンスターを倒していく。

マトリフとレイラが異変に気付いて戻ってきた頃には、おおかたのモンスターは倒されていた。

 

「フフフ、手の内は出揃ったようだな。明後日の夜、カールの西のマリスの森の窪地で待っているぞ。」

 

そう言って”魔王”ハドラーは去って行った。

 

さっそうと現れた武闘家に、アバンが声を掛けようとすると、すかさずマトリフが声をあげる。

 

「よお、大将じゃねーか」

「お知り合いですか?」

「ああ、こいつ、ロモスで有名な武闘家のブロキーナだよ。街で噂にも聞いただろ?」

「ええっ?この爺さん…いや、この人が有名なブロキーナ老師かよ?」

「そういうこった。若けぇ頃、時々一緒に暴れまわってたのさ」

「今はすっかり年寄りじゃよ、ふくらはぎチクチク病に冒されておってな、ゴホゴホッ」

 

(やっぱり咳をするのか…)

 

アバンの必死の説得に、武闘家の”老師”ブロキーナは渋々と言った様子を見せながらも、仲間になると約束してくれた。

ブロキーナは世界でも有数の有名な武闘家で、年老いている割には体力は衰えていないようであった。

 

仲間が6人になり、大パーティーになったところでいよいよ総力戦…かと思ったところで、アバンが提案した作戦は”凍れる時間の秘法”による”封印”であった。

 


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