転生!アテナの大冒険   作:塚原玖美

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【16】転機となった出会い

とある村に腰を落ち着けてから、3日に1度はモンスターの群衆と戦っていた。

実際に命をかけて戦う生活を続けているうちに、剣の腕も魔法力も、急激に上がっていった。

大抵は、配置されている兵達も共に戦っていたが、それでも毎回苦戦を強いられていた。

 

とても良く晴れた日の昼過ぎの事。その日も、村をモンスターが襲った。

空から現れたモンスターの軍勢に、人々は逃げ惑った。

この日に限って、兵士は、誰1人駆け付けなかった。

 

(呼びに行っていたら間に合わない…!)

 

アテナはとにかく村人を避難させ、追ってくるモンスターたちの進路を塞いだ。

 

「とう!」

「ベギラマ!」

 

建物を崩さないように気を付けながら剣を振るい、呪文を放つが、なかなか追い払う事が出来ない。

人々を逃がし、彼らを追いかけるようにしながら戦い続けた。

 

リーダー格らしきモンスターを倒した時、民衆たちに襲いかかっていたモンスターたちは散り散りに去って行った。皆が腰を落ち着けたところに、青い髪の少年と黒髪の若い女性が歩いてきた。

 

「落ち着いているようですね」

「ええ、大きな怪我をした人はいないようですが…」

 

と言って立ち止まった2人の目が、こちらを見る。

 

「あなた!大丈夫ですか!?」

 

(え?私?)

 

アテナは、夢中になって戦っていて、自分が傷だらけになっていた事に気付いていなかった。

 

「ベホマ」

 

駆け寄ってきた若い女性が回復呪文をかけてくれた。

 

「ありがとう、大丈夫です」

 

と言うと、回りを観察していた少年が声をかけてきた。

 

「武器を持っている人を他に見かけませんが…まさか、あなた1人でモンスターを追い払ったのですか?」

「え?武器を持っている人がいない?」

 

じっとこちらを見る2人に、ため息とともに答える。

 

「戦える人たちは皆、兵として取り立てられているので、女子供ばかりなんですよ。その兵たちは、この町にも駐在しているんですけど、なんでか助けに来なかったので仕方なく…」

 

というと、少年は呆れた様に呟く。

 

「確かに他に戦えそうな人はいませんけど…」

 

そこへ、豪快そうな青年と偏屈そうな老人がやって来た。

 

「おーい、アバン、レイラ、いたいた」

「ロカ、マトリフ、兵隊さんたちの詰め所の様子はどうでしたか?」

「どうもこうもねえよ、みんな呪文で眠らされてやんの」

「俺たちが叩き起こしてやったから、後は何とかなるだろうさ」

「そうですか、こちらは大した怪我人はいませんでした、彼女以外」

 

4人がこちらを見つめる。

 

「え、おまえ、家族は?」

 

と豪快そうな青年が問う。

 

「…」

 

返事が出来ないでいると、青い髪の少年が困惑した顔で問う。

 

「まさか、あなた、1人ですか?」

 

黙っていると、少年はハッと気付いたように話し始めた

 

「あ、あなたの事ばかり質問するなんて、し、失礼でしたね。私の名前はアバン。各地のモンスターと闘いながら旅をしています。こちらがレイラ、あちらがロカとマトリフです」

「あ、私はアテナです」

 

名前を紹介されたので、アテナも名前を答える。

 

「アテナ、ですか。お姫様と同じ名前ですね。この国にはアテナさんが大勢いるようですね。いま見て回ってきた中でも、何人かいましたよ」

「そうですね、アテナは大勢います。私もその1人です」

 

みなし子(?)に話しかけてしまった4人は困った顔をするが、ロカがふと気付く。

 

「おまえ、剣なんて使えるのか?」

「そうそう、武器を持っていたのも、大きな傷を負っていたのも、彼女だけなんです」

「そうか」

 

ロカは一息ため息をつくと、アテナの顔をまじまじと見ながら言った。

 

「おまえ、どこかで会わなかったか?」

「え?」

「どこだっけな〜、どこかで見た顔なんだが…思い出せない…」

 

ロカはアテナを睨むように見つめていたが、やはり思い出せなかったのか、諦めたようだった。

しかし、次の瞬間には何かひらめいたようで、名案とばかりに言った。

 

「おまえ、稽古つけてやろうか?」

 

皆、え…という顔でロカを見やるが、ロカは気に入ったらしい。

 

「こいつ、連れて行ったら役にたつんじゃねえか?」

「はあ?こんな小さな女の子を、魔王との戦いに連れて行こうって言うの?信じられない」

 

レイラが呆れた様につっこむ。

 

「でも、このままここに置いて行ったら、こいつ死ぬんじゃないか?1人で戦ってたんだろう?」

 

ロカの言葉に、レイラは一瞬戸惑うも、確かに1人では分が悪い・・・と考えていると

 

「確かに、置いて行って死なれちゃ夢見が悪いよなぁ。魔法も使えそうだし、連れて行ってみるか。俺もしごいてやるよ」

 

マトリフもノリ気の様子を見せる。

 

「マトリフまで!」

 

悲鳴に近い、レイラの叫びがあがる。

そして、大きなため息をついて、アバンが言う。

 

「2人とも、彼女の事が気に入ってしまったみたいですね」

 

こちらへ向き直って問う。

 

「アテナ、どうしますか?私たちについて来たら、魔王と戦う羽目になりそうなんですが…」

 

”魔王と戦う”

昔なら、ただ面白そうだと思っただろう。

だが、魔王が現れて実際に戦うと、旅の面白さだけでは語れない痛みを感じる。

ひいおばあさまも、先生も、モンスターに殺された。

どこかに尻込みする気持ちもあったが、それでも戦わなければ城から抜け出してきた意味がない。

敵を取るために、城を抜け出してきたのだから。

 

「わかりました。連れて行って下さい」

 

こうして、勇者アバンの元に集った仲間たちと戦う事になった。


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