転生!アテナの大冒険   作:塚原玖美

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【15】パプニカ城にモンスター現る

それはある夜、月が雲に隠れた時の事だった。

ベッドで眠っていたが、兵士たちが駆けまわる声で目が覚めた。

 

「モンスターだ!モンスターが攻めてきた!」

「王様達はご無事か!?」

「お守りしろ!」

「急げ!」

 

!!!!!

 

ベッドから起き上がり、慌てて身支度をしていると、ダマラとバダックが駆け込んできた。

 

「アテナさま!!ご無事ですか!?」

「ええ、私は大丈夫よ!」

 

返事をしながら、剣を腰に下げる。

 

「とりあえず謁見の間に行ってみましょう、きっと皆集まるわ!」

 

3人が皆頷き、謁見の間へと急ぐ。

城の者達が全員謁見の間に集まるのに、そう時間はかからなかった。

 

城の者全員が集まったのを確認すると、王が朗々と命じる。

 

「第1軍隊は北、第2軍隊は東、第3軍隊は港、第4軍隊は西に配置!親衛隊は城の警備を!」

 

「「「 承知しました 」」」

 

隊長達は一礼し、隊を引き連れてすぐに任地へと向かった。

 

「ロイ、サラ、アテナ、お前たちはバラバラにならないように気をつけろ。バダック、ついていてやってくれ」

 

「了解した」

「心得ました」

 

王の言葉に、父とバダックが返事をする。

と、その時、窓からモンスターの大群が押し寄せてきた。

 

「やっちまえーーー」

「キィーーー」

「カカカカカ」

 

謁見の間が一瞬にして戦場になる。

きちんと身支度しておいて良かったとばかりに、父と娘が身を構える。

 

「バダック!皆を頼む!」

「お願いね!ヒャダルコ!!」

 

アテナが呪文でモンスターを凍らせ、ロイが粉々に砕いていく。

連携の取れた攻撃で、モンスターを一掃する。

 

モンスターは次々とやってくる。夜が明けるまで、その戦いは続いた。

夜明けとともに、モンスター達は散り散りに帰っていった。

 

傷ついた兵たちの手当をし、倒れたモンスターの亡骸を片付けるのに苦労している間に、悲劇が起こった。

 

「「きゃーーーーーーっ!!!!!!!???」」

 

女官の声のした部屋に向かって全員が駆け出す。

 

「王太后さまが!!」

「母上!?」

「おばあさま!?」

 

駆けつけた時には遅かった。ガーゴイルが1体、窓から逃げていった。

ひいおばあさまの体には、たった一つ、刺し傷が…

 

「母上!母上!」

「おばあさま!」

 

傷ついた母を抱きかかえる王、歩み寄って触れる王子。

そして隙間から手を伸ばして回復呪文をかける姫。

 

「ベホイミ!」

 

光は弱々しく消えていく。

もともと衰弱し始めていた王太后の傷が塞がる事はなかった。

 

「ベホイミ!」

 

繰り返し唱えるが効果はなかった。

 

「ひいおばあさま…」

 

現実に起きた戦いの残酷さに、アテナはへたり込む。

どんなに剣術や呪文の訓練をしても、平和に生きてきた者が、ましてや年寄りが、突然の襲撃に耐える力など持っているわけないのだ、と悟った。

 

ひいおばあさまの葬儀は慎ましく執り行われた。

 

1度魔王軍が退いてからは、兵隊によって国は守られたが、皆自分の事に精一杯で、国と国との交流は無くなっていった。

 

それから1月後、幼き姫に呪文の指導をしていた賢者の死が伝えられた。

兵たちの回復に力を注ぎ、魔法力が尽きたところを狙われたらしい。

 

曾祖母と師の犠牲に心を砕かれたアテナは、密かに決意した。

 

(ひいおばあさまと、先生の敵は絶対取る!)

 

こっそり城から抜け出し、髪を切った。

 

髪を売って資金を作り、装備を整えた頃には、誰にも王女と気付かれなかった。

この時に城下町を歩きまわって知ったが、パプニカには”アテナ”という名の娘が沢山居た。

8年ほど前に産まれた王女の名前にあやかった、と誰もが疑わなかった。

 

アテナはモンスターに襲われる事の多い地区に腰を落ち着けた。

訓練して来た事を実践で確認するには丁度良いと考えた。

だが、襲ってくるモンスターの数は想定していたより多く、苦戦を強いられた。

 


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