シーザー王子の結婚式以来、何度かアイリーン姫と会ううちに意気投合し、度々女子会を開いた。
主な出席者は、アイリーン姫の他にソアラ姫と、母サラ、アテナ、祖母と、時々曾祖母、そして側にダマラ…と言った顔ぶれ。
フローラ姫は王様代理としてだいぶ働く様になっていたため、滅多に参加出来なくなった。
魔王軍との攻防も激しくなって来ているので、もしかしたら今後しばらくは集えないかもしれないが…。
「フローラ姫は大丈夫かしら…」
全員の心配事はフローラの事であったが、だからと言って手伝えるわけでもない。
心配する以外何も出来ない事に、皆心を痛めていた。
「まだ幼い姫君が国を治めるとは大変な事じゃろうなあ」
ひいおばあさまが口を開けば、おばあさまも答える。
「ええ、モンスター達も襲撃の範囲を広げているようですし、カールは騎士が大勢いるからか、王子たちは王位を争って無謀なやり口で魔王軍と戦って亡くなってしまって…、フローラ姫が1人になったところを逆に狙われているみたいですし。幼い姫の肩に国を背負うのは大変でしょうね…」
「我が国は恵まれておる。王がいて、王子がいて、その下に姫もおる。無謀な事をする者もおらん。安心じゃな」
その一言を聞くや、ソアラが苦笑いしながら言う。
「アテナ、期待されているみたいよ。大丈夫?」
アイリーンも明日は我が身とばかりに頷く。
「だ、大丈夫なように、今の内に遊んでおこうかな…」
こちらも苦笑いで返す。
「アテナは本当に遊ぶのが好きよね。それでいて勉強もきちんとするなんて、偉いわ」
「本当に、難しい本を読んでいるみたいだし…」
姫君2人に寄ってたかってからかわれるのも困り物。
(ほとんど、呪文か剣術の本なんだけど…)
と心の中でつぶやきながら、あはは…と笑う。
実際は、図書室の本はパプニカの国史を中心に片っ端から読み終えていて、しっかり頭には入っているが、やはり一番興味があるのは呪法と剣術だった。
そして、お茶菓子とお茶を持った女官達が入れ替わり立ち代わり出入りしているのを見やり、話を逸らす。
「こんなに食べたら、夕飯入らないわよね…」
「あら、別腹よ、べ・つ・ば・ら♪」
意にも介さない口ぶりで、母サラがパクパクとケーキを頬張る。が、
「最近少し太ったんじゃないかい」
と言う、ひいおばあさまの一言に撃沈。
一瞬ヒヤリとした空気が流れた後、おばあさまが笑い始める。
(よ、嫁姑バトル…どこでも同じなんだなあ…)
と思いながら苦笑いしていると、ソアラとアイリーンが引きつった様に笑う。
そして話は振り出しに…
「アテナのおすすめの本はなあに?」
(え、だから、呪文か剣術の本…)
などと答えるのもはばかられ、しばらく考えこむ。
「歴代の王様や王妃様の伝記が好きです。色々な国の王様の伝記を読んでいると、どの王様も王妃様も国の者たちを大切にしているのが、よく分かります。それでいて謀反を画策する者が現れると、きちんと罰を与える知恵にも心奪われます」
(自分がなりたいとは思わないけれど…)
と答えれば、
「アテナは良い女王様になりそうね」
とアイリーンがほほえむ。
(いや、出来ればなりたくない…)
とも言えず、必死に取り繕う。
「いや、まだ国政の事は何も勉強していませんし…」
「そうね、これからよ」
「頑張りましょう」
「あら、一番頑張らないといけないの、私かしら」
ソアラとアイリーン、そして母サラの順に口を開き、皆笑う。
「大丈夫じゃ、皆若い、これからじゃ」
ひいおばあさまがニコニコと言えば、
「この本、おすすめよ」
と、おばあさまが読んでいる本を見せる。
”国王の心のあり方とは”
と書かれている本をみるや、
「拝見させて下さい」
とソアラが受け取り、読み始める。
「王の勤めとは、国民が心安らかに暮らせるよう、心を砕き、力を尽くす事」
なるほど、知識ではなく心か、と皆納得している。
(どこかで聞いたような節だな…)
少し考えたら、答えはすぐに出た。
(ああ、幻水5のリムだ…やっぱり本物の女王から学ぶことは多いのか…)
一人別のところに納得し、顔を上げれば、後は全員がその本に夢中になっていた。
ここでしか出て来ない予定の、リムは、クロスオーバーになるんでしょうか?