やって来ました、ベンガーナ王国。
明日、シーザー王子の結婚式が行われる事になっている。
国の防衛は、期間限定ではあるが隊長たちに権限を委譲して来たので問題はない。
船着場から大きな馬車に乗って移動、もちろん贈り物はどっさり。
贈り物のほとんどが、パプニカの技術で作られた、法衣用の織物だ。
途中デパートも見学し、夕方には宿屋に着いた。
王様御用達の宿なだけあり、内装も美しく、もてなしも良かった。
翌日の花嫁を楽しみに、皆ベッドに入った。
翌朝…ベンガーナ城に入り、挨拶を済ませ、女性と男性に別れ控室に通される。
王族のパーティードレスへの着替えはここで行われる。
まずは結婚式用の法衣に着替える。
そして、結婚式場である教会に通された。
教会の飾り付けは見事であった。
祭壇にはこれでもかと言うほどの供物が捧げられている。
オルガンの音が鳴り響き、教会の扉が開く。
盛装したシーザー王子が深々と頭を下げた後入場。
神父の元に立ち、祝福を受けると、再びオルガンの音が鳴り響き、教会の扉が開く。
美しいドレスを着た花嫁が、父親にエスコートされて入場する。
王子と花嫁は祭壇の前で出会い、そして神父へと向き直る。
「シーザー。汝は、アイリーンを妻とし、健やかなる時もやめる時も愛し続ける事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「アイリーン。汝は、シーザーを夫とし、健やかなる時もやめる時も愛し続ける事を誓いますか?」
「はい、誓います」
結婚誓約書に互いの名前をサインする。
列席者は、指輪の交換を見守り、誓いのくちづけにため息が漏れる。
改めて祭壇に一礼した新郎新婦が、扉に向き直り、揃って退場する。
新郎新婦は城のバルコニーに出て、国民たちに姿を見せる。
それから披露宴が始まるまでの間は、列席者は控室で着替えて待つ事となる。
「花嫁のアイリーン姫は美しい方ですわね…」
「シーザー王子も素敵でしたね…」
列席者たちは、口を揃えて新郎新婦を誉め称え、それぞれ自分の結婚式を思い出したり夢見たりしている。
「結婚式かぁ…」
アテナは紘一郎との結婚式を思い出していた。
にわかにラメの光るベージュのタキシードを着た紘一郎と、セミオーダーのドレスを身に纏う自分。
しかし、以前の自分の姿も、すでにおぼろげだった。
(生まれ変わってから7年以上経ってるんだから、当たり前か…)
一人しんみりしていると、ソアラとフローラが声をかけてきた。
「アテナ姫、どうしたの?具合悪い?」
フローラに問われて振り返り、首を横に振る。
「いいえ、花嫁さまがあまりにも綺麗だったので、思い出していました」
取り繕った言葉に2人が納得した様子を見せたのでホッとする。
「そう言えば、フローラ姫さま、お父様のお体はいかがですか?」
体調の優れない父王に代わって民を取りまとめる事が増えてきて、最近は会う機会の無かったフローラに問う。
「ええ、休んでいれば、問題がない程度には、落ち着いているわ」
フローラはそう言ってため息をつく。なれない公務に少し気後れしているようであった。
「相談になら乗るわよ」
「ええ、ありがとう」
ソアラの言葉に、フローラは笑顔を作って答える。
しばらくすると、城の女官が控室にやって来て、披露宴の会場に案内された。
美しく飾られたテーブルの数々。
流石に王家の結婚式、会場の大きさたるや…
披露宴が始まってからはベンガーナ王と王妃、アイリーン姫のご両親が忙しそうに挨拶回りをしていた。
オルガンの音が鳴り響き、聖歌隊が歌い、踊り子達が踊っている。
そして新郎新婦の席を見れば、脇で画家たちが肖像画を描いている。
(そうか、写真はないのか…画家も大変だなあ…)
と、せっせと書き続ける画家をみていると、次々とご馳走が運ばれてくる。
「ご馳走の食べ方の練習をして来て良かったわね」
母の言葉に
(そこかよ…)
とツッコミながら、次々と運ばれてくるご馳走を平らげた。
披露宴が続く間に、王族の集まっているベンガーナにモンスターの群衆が襲撃したようだったが、ベンガーナの兵隊と、戦士の旅団が活躍したようで宴会場には何の被害もなかった。
花嫁のお色直しは2回あり、宴は夜遅くまで続いた。