夜明けと時を同じくし、身支度を整える。
今日はアテナの7歳の誕生日。
大神殿での儀式と、パーティーが行われるため、城中の者たちが朝から慌ただしく準備していた。
大神殿での儀式では、今回は”賢者の儀式”として魔法陣も用意されていた。
この魔法陣は慣例によって行われていたもので、賢者の素質があってもなくても7歳の祝の儀式として行われるものだった。
いつもの事だが、城下町の者たちもお祭りのように集まっていた。
今回は7歳という事もあり、装飾品も着けられていたので、民衆たちはその美しさにため息を…ついたらしかった。
儀式の時にしか見る事の出来ない姫君を、こぞって見に来るので衛兵達は大変である。
大神殿に入場、儀式が始まる。
神官が祈りの言葉を捧げ、魔法陣に向かって唱える。
「この幼き王女に神の御心を与え給わん」
魔法陣が光り輝く…
この光によって神の祝福を受け、賢者として認められる…
という建前になっているが、アテナはすでに神の加護(?)を得ている。
魔法陣は大きな光を発し、そして消えた。
儀式は今回もつつがなく終わった。
自室でパーティー用のドレスに着替え終わったところに、父がやって来た。
「アテナ、これは父さんからの特別なプレゼントだ」
そう言って渡されたのは、鍔に黄色と橙の宝石があしらわれた、美しい剣であった。
よくよく見れば、訓練で使っている木刀と同じくらいの長さであった。
「ベンガーナで一番と噂の鍛冶屋に造ってもらった剣だぞ。パプニカの金属を持ち込んで特注であつらえたんだ。感謝しろ!」
柄の部分に何やら書いてある。
”この剣をアテナ姫に献上仕る ジャンク”
なるほど、特注だ。
あれ?ジャンクってどこかで聞いた名前だな…なんでだろう、思い出せない…
まあ、それを考えるのは後にしよう。
「お父さま、ありがとうございます」
そう言って剣を壁際に立てかけた。
「さあ、パーティーが始まるぞ。今回はお前も壇上で一言挨拶の言葉を述べるのだから、気を引き締めろよ」
パーティーが始まる。
大臣が壇上で高らかと宣言する。
「これより、我がパプニカの王女アテナ姫の誕生祝いパーティーを始めさせて頂きます。」
続いて王が一声。
「アテナも7歳となった。どうか皆様のお力添えを」
そして、アテナの挨拶。
「皆様、本日は私の誕生祝いにお集まり頂き、心よりお礼申し上げますとともに、よろしくご指導ご鞭撻のほどお願い致します。」
朗々と挨拶をすると、歓声があがる。
大臣が進み出て乾杯の音頭を取る。
「乾杯!」
壇から下りると、いつも通り、2人の姫君がやってくる。
「アテナ、お誕生日おめでとう。はい、これ、ブレスレット」
「私からは首飾りをプレゼントするわ」
「ソア姉、ロラ姉、ありがとう…じゃなかった。」
コホン、と咳払いをして言い改める。
「ソアラ姫さま、フローラ姫さま、贈り物感謝致します」
ソアラとフローラは顔を見合わせる。
そして2人ともこの上ない笑顔を見せ、
「よく出来ました」
と言った。
そこへベンガーナ王クルテマッカ6世とシーザー王子が挨拶に来た。
「アテナ姫、お誕生日おめでとう御座います」
「ベンガーナ王、本日はお越し頂きありがとうございます」
「うむ、ずいぶんしっかりされたな。」
側で見ていた父がやって来て会話に加わる。
「ベンガーナ王、ようこそおいで下さいました。楽しんでいって下さい」
「おお、ロイ殿、あなたも逞しくなられたな」
「あなたにそう言って頂けるとは、光栄に存じます」
ここでシーザーが口を開いた。
「ロイ殿、アテナ姫、私もお招き頂き、ありがとうございます」
「おお、シーザー殿、貴殿も壮健そうだ」
「このシーザー、半年後に結婚する事となった。ついては結婚式と披露宴にご招待させて頂きたいのだが…」
おお、何とめでたい。
「おめでとうございます。ぜひ列席させて頂きます」
ニッコリと返事をした父ロイは、シーザー王子を引き寄せ、
「お前も結婚か、頑張れよ」
と笑った。
パーティーはアテナ姫の誕生日にシーザー王子の婚約の話題が加わった事で更に盛り上がったのは言うまでもない。
ソア姉はブレスレット大好きです(笑)
5歳のお祝いの時もプレゼントはブレスレットでしたね。
多分、このブレスレットは手作りしているんだと思います。多分。