「俺の力を見たい?」
「ああ」
カイルにそう言われ、思わず眉を顰めるアキト。無理もないだろう。会って間もない人間にそんなことを言われれば、誰だってそんな反応をするはずだ。アイリスはそんな様子を遠目で眺めていた。
「手合わせしてもらいたいと?」
「違う、俺の狩りを手伝え」
「断る」
迷うことなく断るアキト。カイルとの狩りに意味を感じられなかったのだろう。アキトはこの周辺のモンスターならば、苦戦することはないし、今更共同で狩りをしてなんになる、と言うことなのだろう。頬杖をつきながらそんな様子を眺めつつ、頭の中に浮かんだ奇妙なフレーズを口遊む。
「……あうあうあううあううあうあうあううああうあうあう」
もしかしたら疲れているのかもしれない。
「おいアイリス」
「はうッ!?」
「いや驚かせてないだろ」
奇妙な歌を歌っていたせいだろう、奇妙な声が口から漏れた。
「ど、どうしたの、アキト」
「いや、話し聞いていた通り、金髪槍野郎に狩りに誘われたんだが」
相変わらず口の悪いこと。しかし、あんなに渋っていたのに結局行くことにしたのか、とそんな風に言いたげな視線をアイリスはそんなアキトに送った。当の本人はそれをスルーしていたが。
「うん」
「アイリスは来るか?」
「私はいいかな」
「そうか」
アキトは黒の剣を担ぐと、森の方へと向かう。
「なるべく早く戻る。おい金髪、行くぞ」
「ちょ、おい待てよ」
そんなアキトたちを見送った後に、アイリスはゆっくりと立ち上がった。どうせ彼らが帰ってくるのは日が暮れる頃だろう。それまで山菜でも積みに行こうではないか。そう思っていた時期が私にもありました。
「またこれ……?」
またグラマラスクイーンに捕まったのだ。この運命からは逃れられないのだろうか。思わずため息を吐いてしまう。
あの時も貞操が守られていたことしか記憶にないが、今回もそう行くとは限らない。反抗しようとバーンナップで焼き払おうと試みたが、そのグラマラスクイーンには火炎耐性があったのか、なぜか攻撃が通らなかった。
「キャトラは……いないか」
いなくてよかった。心の底からそう思う。もしこの状況をきっと、キャトラの話のネタにされていただろう。もしこの場にアキトがいれば───そう思うと、今回の狩りにはついて行くべきだったのかもしれない。蔦がアイリスの背中を撫でる。
───。
「……悪意があるような縛り方にしか思えない……わよね」
なんで亀甲縛り?
先程からどうも神経を逆撫でするような触れ方をするグラマラスクイーン。この植物がそう言う趣味があるとは到底思えないのだが、もしかしたらその常識すら変わっているのかもしれない。そう考えていると、グラマラスクイーンの蔦がアイリスの胸に絡み付いた。
「ちょ、どこ触って……!?」
必死に蔦を解こうと体を動かすも、動かせば動かすほど蔦が強く絡み付いて動きを探してくる。
「っ!!?」
痛みと変な感覚が同時に押し寄せて───光景がフラッシュバックする。
『〇〇、一緒にお風呂に入ろう』
『〇〇、一緒に寝よう』
『〇〇ー?』
『〇〇?』
『〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇……』
「い、いや……」
過去の光景を思い出す。
父親に言われた記憶。同学年の男子共に言われた記憶。
全てが忌まわしきすべて忘れようとした記憶。
……嫌だ、嫌だ……。怖い、怖い……!
「だ、誰か……助け……むぐっ!?」
再び、口元を触手で抑えられる。
意識が遠ざかる……だが、必ず一矢報いてやる───!
そう思いながら再び意識を失うアイリスなのであった。
次回
チョ☆ロ☆イ☆ン☆爆☆誕
追記
念願のノア様(双剣)が当たりました。
私にもう怖いものなどないから、早くアイリスさんと黒の王子が欲しいです。なんで私の友達は全員当たってるのに私は当たらないんだ?